
研究業績Publication
2021
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Mikami R, Mizutani K, Matsuyama Y, Matsuura T, Kido D, Takeda K, Takemura S, Nakagawa K, Mukaiyama Y, Suda T, Yasuda T, Ohta S, Takaya N, Fujiwara T, Izumi Y, Iwata T. Association between periodontal inflammation and serum lipid profile in a healthy population: A cross-sectional study. J Periodontal Res. 2021 Dec;56(6):1037-1045.
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Katz I, Priolo-Filho S, Katz C*, Andresen S, Bérubé A, Cohen N, Connell CM, Collin-Vézina D, Fallon B, Fouche A, Fujiwara T, Haffejee S, Korbin JE, Maguire-Jack K, Massarweh N, Munoz P, Tarabulsy GM, Tiwari A, Truter E, Varela N, Wekerle C, Yamaoka Y. One year into COVID-19: What have we learned about child maltreatment reports and child protective service responses? Child Abuse Negl. 2021 Dec 31;105473.
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Morishita S, Yoshii T*, Inose H, Hirai T, Yuasa M, Matsukura Y, Ogawa T, Fushimi K, Katayanagi J, Jinno T, Okawa A, Fujiwara T. Perioperative Complications of Laminoplasty in Degenerative Cervical Myelopathy -A Comparative Study Between Ossification of Posterior Longitudinal Ligament and Cervical Spondylotic Myelopathy Using a Nationwide Inpatient Database. Global Spine J. 2021 Dec 17;21925682211063867.
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Doi S*, Koyama Y, Tani Y, Murayama H, Inoue S, Fujiwara T, Shobugawa Y. Do Social Ties Moderate the Association between Childhood Maltreatment and Gratitude in Older Adults? Results from the NEIGE Study. Int J Environ Res Public Health. 2021 Oct 21;18(21):11082.
日本語アブストラクト
「高齢者における社会的つながりは子ども期の虐待経験と感謝の関連を修飾するか?:NEIGE Study」
【背景】
子ども期の虐待経験があると、感謝する傾向が低いことが示されているが、高齢者においても同様の結果が得られるのか、その関連における保護要因はわかっていない。本研究では、1)高齢者における子ども期の虐待経験と感謝との関連について検討する、2)社会的つながりが子ども期の虐待経験と感謝の関連を修飾するかを検討することを目的とした。
【方法】
2017年に実施されたNeuron to Environmental Impact across Generations (NEIGE)の横断データを用いて、新潟県十日町市の機能的障害がない65歳から84歳までの地域高齢者524名を対象とした。質問紙を用いて、18歳までの3種類の虐待経験(身体的虐待、情緒的ネグレクト、心理的虐待)、感謝の度合い(人生で感謝することがたくさんある、いろいろな人に感謝する)、社会的つながり(ご近所付き合い、友人に会う頻度)について回答を求めた。
【結果】
情緒的ネグレクト(親から愛されていると感じなかった経験)は感謝の度合いの低さと関連していることが示された。さらに情緒的ネグレクトと感謝における負の関連は、社会的つながりが低い高齢者においてのみ見られた。
【結論】
社会的つながりを高めることで、情緒的ネグレクトが感謝の度合いに与える悪影響を軽減できる可能性が示唆された。 -
Doi S, Isumi A, Fujiwara T*. Impact of school closure due to COVID-19 on the social-emotional skills of Japanese preschool children. Front Psychiatry. 2021 Oct 21;12:739985.
日本語アブストラクト
「COVID-19による保育所閉鎖が日本の未就学児における非認知スキル(社会情動的スキル)に与える影響」
【目的】
本研究では、2020年における新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の第1波による自主的な保育所閉鎖に伴う、園行事の縮小が日本の未就学児の社会情動的スキルに与える影響を検討することを目的とした。
【方法】
本研究では、厳しい園封鎖は行われておらず、自主的な園封鎖が推奨されていた東京都内の3つの保育所に通園する4〜5歳の32名の子どもを対象とした。子どもの社会情動的スキルは、Devereux Student Strengths Assessment mini (DESSA-mini)を用いて、2019年11月、2020年1月(COVID-19拡大前)、および2020年3月(COVID-19第1波中)の3回にわたり、担任保育士によって評価された。すべての保育所が2020年3月2日から自主的な園封鎖を実施し、2園(A園、B園)が園行事である発表会を中止し、1園(C園)のみが3月4日に発表会を開催した。COVID-19拡大前と第1波中のDESSA-miniのT得点の違いを検討するために、反復測定分散分析を実施した。
【結果】
C園の子どもは、安定したDESSA-miniのT得点を示したものの、A園とB園の子どもは、COVID-19前と比べて第1波中のT得点は低くなっていた。また、時間と園の交互作用が示された(F=7.05, p<0.001)。
【考察】本研究の結果から、保育所での発表会が、COVID-19のパンデミック下でも子どもの社会情動的スキルを維持するために重要であった可能性が示唆された。 -
Doi S, Isumi A, Fujiwara T*. Association between Adverse Childhood Experiences and Time Spent Playing Video Games in Adolescents: Results from A-CHILD Study. Int J Environ Res Public Health. 2021 Oct 2;18(19):10377.
日本語アブストラクト
「思春期児童における逆境体験とテレビゲーム時間の関連:A-CHILD Study」
【背景】
過度なテレビゲーム時間は、思春期児童の健康に悪影響があることがわかっている。親子関係の問題や友人関係の問題は、ゲーム時間の長さを予測するとされているが、子ども期の逆境体験(ACE)がテレビゲーム時間と関連するかは明らかになっていない。本研究では日本の思春期児童を対象にACEとテレビゲーム時間との関連を明らかにすることを目的とした。
【方法】
2016年、2018年に実施された足立区子どもの健康・生活実態調査(Adachi Child Health Impact of Living Difficulty (A-CHILD) study)の小学4年生、小学6年生、中学2年生合計6799名の横断データを用いた。思春期児童は、平日1日におけるテレビゲーム時間(1時間未満、1時間以上3時間未満、3時間以上)、ACE(8タイプ)について質問紙で回答した。
【結果】
順序ロジスティック回帰分析の結果、共変量を調整後もACE得点の高い(ACEの数が多い)ほど、テレビゲーム時間が長いことが示された(1 ACE: OR = 1.28, 95%信頼区間 = 1.10–1.48; 2 ACEs: OR = 1.25, 95%信頼区間 = 1.06–1.48; 3 + ACEs: OR = 1.44, 95%信頼区間 = 1.14–1.82, p for trend < 0.001)。ACEの8つのタイプそれぞれについて検討した結果、ひとり親家庭であること、保護者に精神疾患の既往歴があること、友人から孤立していることが、独立してテレビゲーム時間の長さと関係していた。
【結論】
子ども期の逆境体験の問題に取り組む健康政策が、思春期児童のテレビゲーム時間の短縮に重要である可能性がある。 -
Morita T, Fujiwara T. Association between Childhood Parental Involvement and Late-Life Cognitive Function: A Population-based Cross-Sectional Study among Cognitively Intact Community-dwelling Older Adults in Japan. Geriatr Gerontol Int. 2021 Sep;21(9):794-801.
日本語アブストラクト
「子ども期における親の関わりと高齢期の認知機能:日本人地域在住高齢者を対象にした横断研究」
【背景】
劣悪な養育環境下で育った子どもは、そうでない子どもと比べて、高齢期の認知機能が低いことが知られています。しかし、ポジティブな育児行動が、劣悪な養育環境とは独立して高齢期の認知機能に与える影響についてのエビデンスは少なく、本研究は、子ども期の親の関わりと高齢期における認知機能との関連を検討しました。
【方法】
認知障害の兆候がない宮城県涌谷市在住の高齢者266名(65~88歳)を対象に調査を実施しました。子ども期の親の関わりは質問票で評価し、高齢期の認知機能は日本語版のQuick Mild Cognitive Impairment(QMCI)スクリーンテスト(得点範囲:0-100)で測定した。重回帰分析を行い、交絡因子と媒介因子の影響を考慮した解析を行いました。
【結果】
年齢・性別・子ども期の虐待経験・貧困・栄養状態・小学6年時の学業成績を調整した結果、子ども期に親の関わりが高い高齢者は、そうでない高齢者に比べて総合得点が6.00(95%CI:2.39、9.61)ポイント高くありました。子ども期における親の関わりは、総合得点(p<0.001)、時計描画テスト得点(p<0.05)、言語的流暢性得点(p<0.001)と有意な用量反応的な正の関連を示しました。6種類のポジティブな親の関わり方のうち、本の読み聞かせは総合得点(p < 0.01)および論理的記憶スコア(p < 0.01)と有意な独立した正の相関を示しました。上記の関連は、成人期以降の社会的環境や生活習慣の影響を調整後も有意でありました。
【考察】
子ども期の親の積極的な関わりが高齢期の高い認知機能と関連することが示されました。今回検討した親の関わりの中では、本の読み聞かせが、高い論理的記憶能力と関連することが示されました。
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Doi R, Kobayashi M*, Ogawa K, Morisaki N, Jwa CS, Fujiwara T. Validity of dietary patterns extracted from the food intake frequency questionnaires of Japanese pregnant women. Journal of Human Nutrition & Food Science. 2021 Sep 18;9(1):1140.
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Yanagimachi M, Fukuda S, Tanaka F, Iwamoto M, Takao C, Oba K, Suzuki N, Kiyohara K, Kuranobu D, Tada N, Nagashima A, Ishii T, Ino Y, Kimura Y, Nawa N, Fujiwara T, Naruto T, Morio T, Doi S, Mori M*. Leucine-rich alpha-2-glycoprotein 1 and angiotensinogen as diagnostic biomarkers for Kawasaki disease. PLoS One. 2021 Sep 9;16(9):e0257138.
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Doi S, Fujiwara T, Isumi A. Association between maternal adverse childhood experiences and mental health problems in offspring: An intergenerational study. Dev Psychopathol. 2021 Aug;33(3):1041-1058.
日本語アブストラクト
「母親の幼少期の逆境体験と子どものメンタルヘルスとの関連」
【目的】
幼少期の逆境体験は成人期のメンタルヘルスの問題につながることがわかっている。さらに、その幼少期の逆境体験による悪影響は世代を超えて、次の世代の子どもにおける発達および身体的健康とも関連していることが明らかとなっている。一方で、母親の幼少期の逆境体験と、その子どものメンタルヘルスとの関係を検証した研究はない。そこで本研究では、母親の幼少期の逆境体験と、思春期児童におけるメンタルヘルスの問題との関連を明らかにすることを目的とした。
【方法】
2016年に実施された「高知県子どもの生活実態調査」に参加した高知県の小学5年生(3,144組)、中学2年生(3,497組)、高校2年生(4,169組)の児童・生徒10,810名を対象とした。児童・生徒の母親に、幼少期の逆境体験、子どもの頃の社会経済的状況、現在のメンタルヘルス、現在の社会経済的状況、ポジティブな養育行動、不適切な養育行動、Strength and Difficulty Questionnaireを用いて子どもの問題行動について回答を求めた。児童・生徒には、Depression Self-Rating Scaleを用いて抑うつ症状について回答を求めた。
【結果】
交絡変数を調整した多変量回帰分析の結果、幼少期の逆境体験の数が多い母親を持つ子どもほど、問題行動が多く見られ(p for trend < 0.001)、抑うつ症状がある(p for trend < 0.001)ことが明らかとなった。また、母親の現在のメンタルヘルスの問題は、母親の幼少期の逆境体験と子どものメンタルヘルスの問題との関係を媒介していた。
【結論】 母親の幼少期の逆境体験は、世代を超えて、思春期児童の問題行動および抑うつ症状に悪影響を与えることが示唆された。今後は、母親の幼少期の逆境体験とその子どものメンタルヘルスの関連を媒介するその他の要因について詳しく検討する必要がある。
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Morishita S, Yoshii T, Inose H, Hirai T, Yuasa M, Matsukura Y, Ogawa T, Fushimi K, Okawa A, Fujiwara T. Comparison of Perioperative Complications in Anterior Decompression With Fusion and Posterior Decompression With Fusion for Cervical Spondylotic Myelopathy: Propensity Score Matching Analysis Using a Nationwide Inpatient Database. Clin Spine Surg. 2021 Aug 1;34(7):E425-E431.
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Yamaoka Y, Obikane E, Isumi A, Miyasaka M, Fujiwra T. Incidence of hospitalization for abusive head trauma in Chiba City, Japan. Pediatrics International. 2021 Jun 30 ;64(1):e14903.
日本語アブストラクト
「千葉市における虐待による頭部外傷の入院症例の発生率」
【背景】本研究では住民ベースのサンプルを用いて、千葉市における12ヶ月未満の乳児における虐待よる頭部外傷(Abusive Head Trauma: AHT)の入院症例の発生率を推測するために実施した。
【方法】2011〜2015年に千葉市内の全ての小児二次医療・三次医療機関に入院した乳児の診療記録を後方視的に調査した。多職種による院内虐待対応チームによってAHTと評価された13例を、さらに1人の小児放射線科医と2人小児科医が頭部CT画像と診療記録をレビューし、臨床的にAHTが強く疑われる症例と中程度疑われる症例と判定した。
【結果】乳児人口10万人年あたり、AHTの発生率は34.5人(95%信頼区間: 18.4-59.1)であり、そのうち強く疑う事例が 13.3人(95%信頼区間: 4.3-31.0)、中程度の疑い事例が 21.3人(95%信頼区間: 9.2-41.9)であった。強く疑われる症例と中程度疑われる症例ではCT所見には統計学的な有意差は認められなかった。
【結論】住民ベースの乳児におけるAHTの入院症例の発生率は、他諸国で報告されているものと類似していた。 -
Miyamura K, Nawa N, Isumi A, Doi S, Fujiwara T*. The association of passive smoking and dyslipidemia among adolescence in Japan: Results from A-CHILD Study. J Clin Endocrinol Metab. 2021 Jun 16;106(7):e2738-e2748.
日本語アブストラクト
「日本での思春期児童における受動喫煙と脂質異常症の関連:A-CHILD Study」
【背景】子どもの受動喫煙と脂質異常症との関連は欧米では報告されているが、アジアでの報告は少なく、またその関連の性差については明らかになっていない。本研究では日本の思春期児童を対象に男女における受動喫煙と脂質異常症との関連を明らかにすることを目的とした。
【方法】2016年、2018年に実施された足立区子どもの健康・生活実態調査(Adachi Child Health Impact of Living Difficulty (A-CHILD) study)の中学2年生1166名の横断データを用いた。質問紙により調査した受動喫煙の頻度と脂質(総コレステロール値、LDLコレステロール値、HDLコレステロール値)の関連を男女で層別化し、多変量解析で評価した。
【結果】男子においてのみ、受動喫煙に全く曝露されていない場合、受動喫煙に頻繁に曝露されている場合と比較しHDLコレステロール値が3.19㎎/dl (95%信頼区間 -5.84, -0.55)低かった。総コレステロール値及びLDLコレステロール値については男女とも受動喫煙との関連はみられなかった。
【結論】日本の思春期児童において男子でのみ受動喫煙とHDLコレステロール値との関連がみられた。今後縦断研究により同様の関連が見られるか確認する必要がある。
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三瓶舞紀子、伊角彩、藤原武男. 妊娠期における乳幼児揺さぶられ症候群の教育的動画視聴による知識向上効果の検証. 日本公衆衛生雑誌. 2021 Jun 25;68(6)393-404.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jph/68/6/68_20-061/_article/-char/ja/
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Kawatani K, Nambara T, Nawa N, Yoshimatsu H, Kusakabe H, Hirata K, Tanave A, Sumiyama K, Banno K, Taniguchi H, Arahori H, Ozono K. A human isogenic iPSC-derived cell line panel identifies major regulators of aberrant astrocyte proliferation in Down syndrome. Commun Biol. 2021 Jun 14;4(1):730.
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Matsumoto Y, Fujino J, Shiwaku H, Miyajima M, Doi S, Hirai N, Jitoku D, Takagi S, Tamura T, Maruo T, Shidei Y, Kobayashi N, Ichihashi M, Noguchi S, Oohashi K, Takeuchi T, Sugihara G, Okada T, Fujiwara T, Takahashi H. Factors affecting mental illness and social stress in hospital workers treating COVID-19: paradoxical distress during pandemic era. J Psychiatr Res. 2021 May;137:298-302.
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Koyama Y, Nawa N, Yamaoka Y, Nishimura H, Sonoda S, Kuramochi J, Miyazaki Y, Fujiwara T*. Interplay between social isolation and loneliness and chronic systemic inflammation during the COVID-19 pandemic in Japan: Results from U-CORONA Study. Brain Behav Immun. 2021 May;94:51-59.
日本語アブストラクト
「COVID-19パンデミックにおける社会的孤立・孤独感と慢性全身性炎症との相互作用:U-CORONA研究」
【背景】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行によって、ソーシャルディスタンシングやロックダウン政策が実施され、結果として多くの人が社会的孤立や孤独に陥った。社会的孤立や孤独と心身の健康状態の悪化、そのメカニズムの一つとして慢性的な炎症が知られているが、社会的孤立と孤独の相互作用については明らかになっていない。そこで、本研究は、COVID-19パンデミックにおいてどのように社会的孤立と孤独が相互に作用し、慢性炎症マーカーと関連するかを明らかにすることを目的とした。
【方法】宇都宮市在住の無作為抽出された世帯を対象とした「宇都宮 新型コロナウイルス感染症調査(U-CORONA)」(2020年実施)のデータから、成人624人(18-92歳、平均51.4歳)を解析対象とした。社会的孤立は、日常的に担っている社会的役割の数を評価し、孤独感はUCLA孤独感尺度で測定した。慢性炎症のバイオマーカーとして好中球-リンパ球比(NLR)と高感度C反応性蛋白質(CRP)の濃度を測定した。一般化推定方程式(GEE)を用いて解析を行った。
【結果】男性において、孤立-孤独状態がNLRの上昇と関連していた。また、女性および労働年齢層において、非孤立-孤独状態がCRPの低下と関連していた。
【考察】社会的に孤立していること、孤独を感じていることは相互に作用しあい、慢性炎症と関連していることが明らかとなった。社会的孤立と孤独感の両方を評価することは、特にCOVID-19パンデミック下において、社会的関係と健康の影響を緩和するための適切な介入を行うために重要である。 -
Koyama Y, Fujiwara T*, Isumi A, Doi S, Ochi M. The impact of public assistance on child mental health in Japan: results from A-CHILD study. J Public Health Policy. 2021 Mar;42(1):98-112.
日本語アブストラクト
「生活保護が子どものメンタルヘルスに及ぼす影響:足立区子どもの健康・生活実態調査より」
【背景】日本は子どもの貧困率が2015年現在で13.9%であり、他のOECD諸国と比較して高い。貧困対策として、現金給付は広く行われている政策であり、日本における生活保護はその一つである。しかし、スティグマや羞恥心などを含めたメンタルヘルスに対する影響については明らかになっていない。本研究では、生活保護が子どものメンタルヘルスに与える影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】足立区子どもの健康・生活実態調査のデータより、2015年度および2017年度の小学1年生6920人を対象に解析を行った。親子を「生活保護受給群」「生活保護非受給・貧困群」「生活保護非受給・非貧困群」の3つのグループに分類し、子どものメンタルヘルスについて問題行動・向社会的行動・レジリエンス・登校しぶりについてアセスメントを行った。背景因子についてプロペンシティスコアマッチングを行い、子どものメンタルヘルスについて比較を行った。
【結果】相対的貧困下で生活する子どもは、問題行動が多く、レジリエンスが低く、より多くの子どもが登校しぶりを示す傾向があることが分かった。貧困世帯群間でマッチングを行い比較したところ、受給世帯と非受給世帯との間で生活様式については有意な差は見られなかったが、受給世帯では非受給世帯に比べて、登校しぶりを示す子どもの割合が高い傾向のあることが明らかとなった(OR=4.00, 95%CI 0.85-18.84)。
【考察】本研究では、生活保護が子どもの問題行動・レジリエンス・登校しぶりと関連していることを示す十分なエビデンスは得られなかった。
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Morita A*, Fujiwara T. Association between Positive Grandparental Involvement during Childhood and Generativity in Late Life Among Community-Dwelling Cognitively Intact Older Adults in Japan. Geriatr Gerontol Int. 2021 Mar.21(3);331-337.
日本語アブストラクト
「子どもの頃に祖父母から受けたポジティブな養育経験と高齢期における世代性(次世代の育みに関する関心や関与)の関連」
【背景】 世代性(次世代の育みに関する関心や関与)は地域社会の活力の基礎であり、またヘルシー・エイジングの鍵としても注目されています。中高年期における世代性と子どもの頃に親から受けた養育経験が関連することはわかっていますが、祖父母から受けた養育経験との関連は明らかになっていません。本研究では、認知機能が健康な日本の地域高齢者を対象に、子ども期に祖父母から受けたポジティブな養育経験と高齢期の世代性の関連を検証することを目的としました。
【方法】 2017年に実施された涌谷町中高年者の健康と生活実態調査のデータと健診データをプールし、認知機能が健康な地域在住高齢者(N = 173)を対象としました。重回帰分析を用いて、18歳以前における祖父母からの勉学や趣味の応援、悩み相談、経済的支援、しきたりや経験の継承の有無に基づくポジティブな養育経験の程度(低・中・高)が、Loyola Generativity Scale日本語訳の短縮版を用いて測定した世代性の程度と関連するかを検証しました。
【結果】年齢、性別、記憶力、抑うつ症状、子どもの頃の社会経済的状況および親の関わりを調整した結果、祖父母からのポジティブな養育経験が低い群よりも多い群の方が、世代性が高いことが示されました。世代性を発揮する機会に寄与すると考えられる教育歴や孫育ての機会を調整しても、同じ関係がみられました。
【結論】日本の認知機能が健康な地域在住の高齢者において、子どもの頃に祖父母から受けたポジティブな養育経験が、次世代の育みに関する高い関心や関与と関連していることが示唆されます。
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Matsuyama Y, Subramanian SV, Fujiwara T. Relative deprivation and educational aspiration of 15-year-old adolescents in Japan. Soc Psychol Educ. 2021 Mar 17;24:573-588.
https://link.springer.com/article/10.1007/s11218-021-09619-w
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Machida M, Takamiya T, Amagasa S, Murayama H, Fujiwara T, Odagiri Y, Kikuchi H, Fukushima N, Kouno M, Saito Y, Yoshimine F, Inoue S*, Shobugawa Y. Objectively measured intensity-specific physical activity and hippocampal volume among community-dwelling older adults. J Epidemiol. 2021 Mar 13. doi: 10.2188/jea.JE20200534. [Epub ahead of print]
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Isumi A*, Takahashi K, Fujiwara T. Prenatal sociodemographic factors predicting maltreatment of children up to 3 years old: A prospective cohort study using administrative data in Japan. Int J Environ Res Public Health. 2021, 18(5), 2505.
日本語アブストラクト
「3歳児までの虐待を予測する妊娠期の社会的属性要因:日本の業務データを用いた前向きコホート研究」
【背景】妊娠期からリスク要因を把握することは虐待を予防する上で重要である。しかし、妊娠届出時に把握している妊娠期のリスク要因を検証した研究は少ない。本研究では、妊娠届のポピュレーションデータを用いて、3歳児までの虐待を予測する妊娠期のリスク要因を特定することを目的とした。
【方法】愛知県で協力の得られた5市町において2013年10月から2014年2月の間に3–4カ月健診に対象となったすべての子どもの母親を対象とし、子どもが3歳になるまで追跡した。虐待があったことを示唆する要保護児童対策協議会(要対協)への登録データを妊娠届データと突合した(N=893)。精確ロジスティック回帰を用いて分析を行った。
【結果】3歳になるまで要対協に登録があった児童は11名(1.2%)であった。要対協への登録と有意な関連があった妊娠届時のリスク要因は、未婚、中絶経験、妊娠前および妊娠中の喫煙であった。また、これらのリスク要因を合計してリスクスコアを算出したところ(0〜7点)、このリスクスコアは高い予測精度を示し(ROC曲線下面積0.805、95%信頼区間0.660–0.950)、2点以上がカットオフ値と考えられた(感度72.7%、特異度83.2%)。
【結論】妊娠届で把握できるリスク要因によって3歳までの虐待を予測できる可能性が明らかになった。
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Nawa N, Yamaguchi K*, Kawakami C, Nakagawa M, Fujiwara T, Akita K. Differential effects of interprofessional education by gender and discipline among medical and dental students in Japan. MedEdPublish. 2021 Feb 22. doi: 10.15694/mep.2021.000052.1
Differential effects of interprofessional education … | MedEdPublish
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Shiwaku H, Doi S, Miyajima M, Matsumoto Y, Fujino J, Hirai N, Jitoku D, Takagi S, Tamura T, Maruo T, Shidei Y, Kobayashi N, Ichihashi M, Noguchi S, Oohashi K, Takeuchi T, Sugihara G, Okada T, Fujiwara T, Takahashi H. Novel brief screening scale, Tokyo Metropolitan Distress Scale for Pandemic (TMDP), for assessing mental and social stress of medical personnel in COVID-19 pandemic. Psychiatry Clin Neurosci. 2021 Jan;75(1):24-25.
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Funakoshi Y, Xuan Z, Isumi A, Doi S, Ochi M, Fujiwara T*. The association of community and individual parental social capital with behavior problems among children in Japan: results from A-CHILD longitudinal study. Soc Psychiatry Psychiatr Epidemiol. 2021 Jan;56(1):119-127.
日本語アブストラクト
「地域レベル、個人レベルでのソーシャル・キャピタルと子どもの問題行動との関連:A-CHILD縦断研究」
【背景】子どもの問題行動に関連する種々の要因が示唆されているが、個人、地域双方のレベルでのソーシャル・キャピタルと子どもの問題行動との関連を縦断的に検討した研究は少ない。
【目的】個人および地域のソーシャル・キャピタルと子どもの問題行動との関連を検討すること。
【方法】本研究は2015年、2016年に悉皆追跡調査を行った「足立区子どもの健康・生活実態調査(A-CHILD
Study)」のデータを用いた(対象者5,494名)。東京都足立区内の全公立小学校69校を対象とし、小学校1年生の保護者を対象に質問紙調査を実施、小学校2年生時に追跡調査を行った。ソーシャル・キャピタルはそれぞれ信頼、凝集性、互酬性を測る3つの質問への回答をもとに評価した。子どもの問題行動は日本語版のStrengths
and Difficulties
Questionnaire(SDQ)を用いて連続値で評価した。向社会的行動と問題行動について、2015年と2016年のSDQ得点の差をアウトカムとし、個人をレベル1、小学校区をレベル2としたマルチレベル解析を行った。本研究では、両年でソーシャル・キャピタル、問題行動に有効な回答があった3,656名を解析対象とした。
【結果】共変量を考慮後、地域のソーシャル・キャピタルは向社会的行動の増加と正の相関がみられたが (偏回帰係数: 0.19; 95%信頼区間:
0.03 , 0.36)、問題行動の増加との関連は見られなかった。一方、個人のソーシャル・キャピタルは向社会的行動の増加と正の相関(偏回帰係数:0.27;
95%信頼区間: 0.12, 0.41)、問題行動の増加と負の相関がみられた(偏回帰係数: -0.54; 95%信頼区間:-0.89,
-0.19)。
【結論】地域レベルのソーシャル・キャピタルは子どもの向社会的行動の増加と関連すること、個人レベルのソーシャル・キャピタルは子どもの向社会的行動の増加と問題行動の減少の双方と関連することが示唆された。個人と地域のソーシャル・キャピタルを高めることは子どもの健康を推進する方策の一つとなりうる。
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Hibiya S, Matsuyama Y, Fujii T, Maeyashiki C, Saito E, Ito K, Shimizu H, Kawamoto A, Motobayashi M, Takenaka K, Nagahori M, Kurosaki M, Yauchi T, Ohtsuka K, Fujiwara T, Okamoto R, Watanabe M. 5-aminosalicylate-intolerant patients are at increased risk of colectomy for ulcerative colitis. Aliment Pharmacol Ther. 2021 Jan;53(1):103-113.
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Mikami R, Mizutani K, Gohda T*, Gotoh H, Matsuyama Y, Aoyama N, Matsuura T, Kido D, Takeda K, Izumi Y, Fujiwara T, Iwata T. Association between circulating tumor necrosis factor receptors and oral bacterium in patients receiving hemodialysis: A cross-sectional study. Clinical and Experimental Nephrology. 2021 Jan;25(1):58-65.
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Badrakhkhuu N, Matsuyama Y, Araki MY, Yasuda YU, Ogawa T, Tumurkhuu T, Ganburged G, Bazar A, Fujiwara T*, Moriyama K*. Association between malocculusion and academic performance among Mongolian adolescents. Front Dent Med. 2021 Jan 22. doi: 10.3389/fdmed.2020.623768.
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fdmed.2020.623768/full
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Udagawa T*, Matsuyama Y, Okutsu M, Motoyoshi Y, Okada M, Tada N, Kikuchi E, Shimoda M, Kanamori T, Omori T, Takahashi M, Imai K, Endo A, Fujiwara T, Morio T. Association between Immunoglobulin M and steroid resistance in children with nephrotic syndrome: A retrospective multicenter study in Japan. Kidney360.
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Doi S, Isumi A, Fujiwara T*. Association Between Serum Lipid Levels, Resilience, and Self-Esteem in Japanese Adolescents: Results From A-CHILD Study. Front Psychol. 2021 Jan 12;11:587164. doi: 10.3389/fpsyg.2020.587164. eCollection 2020.
日本語アブストラクト
「思春期児童における血清脂質濃度とレジリエンスおよび自己肯定感との関連:足立区子どもの健康・生活実態調査より」
【背景】血清脂質濃度は、成人期のメンタルヘルスの問題と関係していることがわかっています。しかし、血清脂質濃度が、思春期に発達するレジリエンスや自己肯定感といったメンタルヘルスのポジティブな側面に関係するかは明らかになっていません。本研究では、日本の思春期児童を対象に、血清脂質濃度とレジリエンスおよび自己肯定感との関連を検証することを目的としました。
【方法】2016年と2018年に実施された足立区子どもの健康・生活実態調査(A-CHILD)のデータをプールし、足立区の中学2年生とその保護者(N=1,056)を対象としました。児童のレジリエンスは保護者による質問紙、自己肯定感は児童による質問紙で評価されました。児童の血清脂質濃度(総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール)、身長、体重は学校健診で測定されました。重回帰分析を用いて標準化した総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロールが、子どものレジリエンスおよび自己肯定感と関係するかを検証しました。
【結果】思春期児童のBMI、生まれ月、性別、親の有無、世帯年収、保護者のメンタルヘルス、児童の生活習慣(食生活、身体活動、睡眠など)を調整した結果、LDLコレステロールの高さがレジリエンスの低さに関係していました。また、総コレステロールとLDLコレステロールの高さが自己肯定感の低さと関係していました。一方で、HDLコレステロールはレジリエンスおよび自己肯定感には関係がありませんでした。
【考察】日本の思春期児童において、総コレステロールとLDLコレステロールが、レジリエンスおよび自己肯定感のバイオマーカーとなる可能性が示唆されました。