研究業績 Teaching

研究業績Publication

2023

  • Isumi A, Doi S, Ochi M, Kato T, Fujiwara T. School- and community-level protective factors for resilience among chronically maltreated children in Japan. Soc Psychiatry Psychiatr Epidemiol. 2023 Mar;58(3):477-488.

    日本語アブストラクト

    「日本で継続的に虐待を受けた子どもたちのレジリエンスを高める学校や地域レベルでの保護要因」

    【背景と目的】
    継続的に虐待を受けている思春期前の子どもたちのレジリエンス(逆境から回復し対処する能力)が、学校や地域レベルで介入可能な要因によって向上するかということを調べた研究はほとんどない。そこで本研究では、虐待に対するレジリエンスを高める学校や地域レベルでの要因を検証することを目的とした。

    【方法】
    東京都足立区における全公立小学校の1年生全員を対象に2015年から実施されている縦断調査「足立区子どもの健康・生活実態調査」のデータを用いた。小学1年時と4年時に虐待を受けており、レジリエンスの得点が欠損でない789名の児童を対象とした。児童が小学4年時に回答した学校レベルの要因(例:学校のソーシャル・キャピタル、相談できる友人の数)と地域レベルの要因(例:親以外でロールモデルとなる大人がいること、サポートしてくれる大人がいること、第三の居場所があること)が、親回答による小学4年時の子どものレジリエンスとどのように関連しているかを検討するため、単回帰および重回帰分析を行なった。これらについて男女別にも解析した。

    【結果】
    小学1年時のレジリエンスを含む共変量を調整しても、小学4年時の学校のソーシャル・キャピタルと親以外のロールモデルの存在はレジリエンスと正の関連を示した(係数:3.63, 95%信頼区間:2.26,4.99; 係数:2.52, 95%信頼区間:0.57, -4.38)。男女別の解析からは、女子においては、ロールモデルではなく、サポートしてくれる大人の存在がレジリンエンスと関連していることが明らかになった。

    【考察】
    本研究では、学校や地域レベルでの要因が虐待に対するレジリエンスを高めること、それらの要因が男女で異なることが示唆された。

  • Ishii E, Nawa N, Hashimoto S, Shigemitsu H, Fujiwara T*. Development, validation, and feature extraction of a deep learning model predicting in-hospital mortality using Japan’s largest national ICU database: a validation framework for transparent clinical Artificial Intelligence (cAI) development. Anaesth Crit Care Pain Med. 2023 Apr;42(2):101167.

    日本語アブストラクト

    「日本最大の全国ICUデータベースを用いた院内死亡率予測のためのディープラーニングモデルの開発:透明性の高い臨床人工知能(cAI)開発のための妥当性検証フレームワークを用いて」

    【背景と目的】
    臨床人工知能(cAI)を用いた死亡率予測モデルや関連研究が増加する一方で、外部検証研究の欠如や、全体の精度低下につながる不十分なモデルキャリブレーションなどの制限が観察されている。この問題に対処するため、我々は透明性の高いcAI開発を促進するために、新しいディープニューラルネットワーク(DNN)と検証フレームワークを開発し評価した。


    【方法】
    日本最大のICUデータベースのデータを用いてDNNモデルを開発し、ICU退院後の日数でICUを含む院内死亡率およびICU後の死亡率を予測した。モデルにとって最も重要な変数をSHapley Additive exPlanations(SHAP)で抽出し、DNNの有効性を検証するとともに、外部からの検証も行うモデルを用いた。


    【結果】
    ICU死亡率の予測におけるROC曲線下面積(AUC)は0.94[0.93-0.95]、院内死亡率については0.91[0.90-0.92]で、ICU退院から1年間を通して0.91-0.95の範囲だった。上位20の変数のみを用いた外部検証では、従来の重症度スコアよりも高いAUCが得られた。


    【結論】
    我々のDNNモデルは、ICU退院後の日数に関係なく、一貫して0.91-0.95の間のAUCを生成した。また、DNNにとって最も重要な20の変数は、ICU退院後の日数に関係なく、従来の重症度スコアよりも高いAUCを生み出した。我々の知る限り、これはICU退院後1年以上経過した日数でcAIを用いてICUおよび院内死亡率を予測した最初の研究である。この知見は、cAIアプリケーションの透明性を高めることに貢献すると考えられる。

  • Osako M, Yamaoka Y, Takeuchi C, Fujiwara T, Mochizuki Y*. Benefits and challenges of pediatric-to-adult health care transition in childhood-onset neurological conditions. Neurol Clin Pract. 2023 Apr;13(2):e200130.

    日本語アブストラクト

    「小児期発症の神経疾患における小児から成人への移行医療のメリットと課題」

    【背景と目的】
    小児から成人への移行医療(HCT)の重要性は認識されているが、小児期発症の神経疾患患者は小児から成人へのHCTでしばしば問題に直面し、HCTの利点はまだ理解されているとは言い難い。我々は、患者の視点を取り入れて改善された移行システムを開発するために、小児期発症の神経疾患を持つ個人における現在のHCT状況を評価した。

    【方法】
    本横断研究は、2020年11月から2020年12月にかけて、東京都立北療育医療センターにて実施した。内科を受診した小児期発症の神経難病の成人患者とその家族を対象とした。127名に配布したアンケートでは、小児から成人へのHCTに関する経験(小児科受診時のHCTに関する教育機会、移行時の困難、成人診療のメリット・デメリットなど)、小児から成人へのHCTに関するご家族の考え方について質問した。また、患者の障害の程度を調べるために、患者さんの医療記録をレビューした。

    【結果】
    111名の患者から回答を得ることができた(回答率:87%)。ほとんどの患者が重度の身体障害と知的障害を併せ持ち、約半数が身体障害レベルがGross Motor Function Classification System V、重度の知的障害であった。回答者の半数は、小児科医から成人病科へのHCT移行をしておらず、正式な紹介プロセスを経ずに自ら成人病科を受診していた。また、成人医療従事者や相談員に関する知識不足など、HCT中の困難を経験していた。しかし、HCTを受けた人たちは、年齢や症状に応じたケア、成人専門医の診察、成人向けサービスの導入など、健康、経験、サービス利用の面で恩恵を受けていた。また、予約の管理や大人の医師が自分の病歴を理解することなどの課題にも取り組んでいた。しかし、小児科受診時に成人期の疾患や医療・福祉資源について知らされておらず、将来的な計画について小児科医と相談することを希望していた。

    【考察】
    小児期発症の神経疾患患者に対して、小児から成人へのHCTを十分に提供するシステムが求められている。患者・家族への生涯教育,小児科医へのHCTに関する研修,神経内科医への小児期発症疾患・障害に関する研修,患者・家族を支える臨床と人材が望まれる.

  • Fujiwara T, Doi S, Isumi A. Detecting intimate partner violence during pregnancy using municipal pregnancy registration records: An administrative data analysis. J Interpers Violence. 2023 Apr;38(7-8):5682-5698.

    日本語アブストラクト

    行政の妊娠届データを用いた妊娠中の親密なパートナーからの家庭内暴力の予測: リアルデータ分析

    【背景と目的】
    妊娠中の親密なパートナーからの暴力(IPV)は、母子ともに健康上の悪い結果をもたらすため、予防する必要がある。しかし、IPVにまつわるスティグマや、女性がIPVを告白することをためらうなどの理由で、保健師や公衆衛生における担当者がIPVに苦しむ女性を発見することは容易ではない。本研究の目的は、行政の妊娠届データを用いて妊娠中のIPV予測尺度を開発することである。

    【方法】
    2016年度の東京都足立区の妊娠登録記録の行政データを使用した(N = 5,990)。IPVは、保健師による最初の面接または別の機会でさらに評価された。使用したデータは、登録情報、人口統計、健康状態および周産期状態、社会環境などである。IPVの予測には、多重ロジスティック回帰モデルを使用した。

    【結果】
    IPVは24例(0.4%)であった。第2子以降(オッズ比[OR]:3.45,95%信頼区間[CI][1.02-11.6]),シングル(OR:7.96,95%CI[2.88-22.2]),やせ(OR:3.17,95%CI[1.13-8.90]),過去の4度以上の妊娠(OR:5. 25, 95% CI [1.35-20.4]), 家族とトラブルがある (OR: 5.45, 95% CI [1.95, 15.2]), 貧困 (OR: 6.27, 95% CI [2.25-17.5]) はIPVと有意な関連を示した.これらの変数は,IPVを良好な予測力で検出した(ROC曲線下面積=0.89,95%CI[0.81-0.98]).IPVを直接問わない妊娠届に基づく尺度を用いて,妊娠中のIPVを強力に検出できることが示された。

    【考察】
    本研究は、妊娠中のIPVを検出し、妊娠中のIPVによるさらなる健康上の有害な結果を防止するために有用である。

  • Kawahara T, Doi S, Isumi A, Ochi M, Fujiwara T*. Interventions to change parental parenting behavior to reduce unintentional childhood injury: A Randomized Controlled Trial. Inj Prev. 2023 Apr;29(2):126-133.

    日本語アブストラクト

    「子どもの不慮の事故を減らすために父親の子育て行動を変える介入研究:無作為化比較試験」

    【背景と目的】
    これまでの研究で、父親の育児への関与が幼児の不慮の事故に影響を与えることが示されているが、その因果関係は不明である。本研究の目的は、父親の育児への関与に関する教育ビデオの介入により、幼児の不慮の事故を予防できるかどうかを検討することである。

    【方法】
    日本において2つの産科病棟で生まれた子どもの親を対象とした無作為化比較試験(n=451、介入群:223、対照群:228)を実施した。介入群の親は父親の育児参加を促す教育ビデオを、対照群の親は揺さぶら症候群の予防に関する教育ビデオを視聴した。参加者は、子どもの誕生後、最長で18カ月間追跡調査を実施した。本研究の主要アウトカムは、3、6、12、18カ月時点の不慮の事故、副次的アウトカムは、母親の観察に基づく父親による育児への関与であった。経時的な不慮の事故防止率をCox比例ハザードモデルで評価した。

    【結果】
    介入群の子どもは、対照群と比較して、火傷(HR: 0.29 (95% CI: 0.09 to 0.87))やドアに挟まれる(HR: 0.66 (95% CI: 0.48 to 0.91) )などの不慮の事故の発生が少なかった.介入群の父親は、子どもを散歩に連れて行く頻度が高かった(係数:0.19(95%CI:0.05~0.32))。

    【結論】
    父親の育児参加を促す教育ビデオは、不慮の事故の予防に有効である。

  • Uchida Y, Yokoyama M*, Fujiwara M, Nakamura Y, Ishikawa Y,  Fukuda S, Waseda Y, Tanaka H, Yoshida S, Fujiwara T, Fujii Y. Preservation of erectile and ejaculatory functions after tetramodal bladder-sparing therapy incorporating consolidative partial cystectomy against muscle-invasive bladder cancer. Urology Research & Practice . 2023 Apr 20; DOI:10.5152/tud.2023.22214.

  • Maeda Y, Doi S, Isumi A, Terada S, Sugawara J, Maeda K, Satoh S, Mitsuda N, Fujiwara T. Association between poor parent-daughter relationships and the risk of hyperglycemia in pregnancy: a hospital-based prospective cohort study in Japan. BMC Pregnancy Childbirth. 2023 Apr 4;23(1):227.

    日本語アブストラクト

    「親娘関係の悪さと妊娠中の高血糖リスクとの関連:日本における病院ベース前向きコホート研究」

    【背景と目的】
    子どもの頃の虐待や家庭の機能不全を総称する子ども期の逆境体験(Adverse Child Experience(ACEs))は、不健康な行動、肥満、ストレス反応系の機能不全のリスク増加を通じて、妊娠前の糖尿病、妊娠糖尿病(GDM)、妊娠中の顕性糖尿病などの妊娠高血糖(HIP)の危険因子となる。ACEは病院での評価が困難な場合が多いが、親娘関係、すなわち妊婦と両親の関係は、HIPと関連する可能性のあるACEの測定可能な指標として使える可能性がある。本研究の目的は、親娘関係の悪さとHIPの関連性を検討することである。

    【方法】
    日本で病院ベースの前向きコホート研究を実施した(N = 6,264)。2019年4月から2020年3月の間に分娩のために参加58施設を訪れた妊婦を対象とした。親娘関係は、参加者が親との関係に満足しているかどうかを尋ねる質問票で評価した。HIPは、日本で使用されている基準に基づいて診断された。共変量を調整するために、多重ロジスティック回帰モデルを適用した。

    【結果】
    両親との関係にあまり満足していない妊婦、全く満足していない妊婦、HIPはそれぞれ343人(5.5%)、74人(1.2%)、274人(4.4%)であった。親娘関係にあまり満足していない妊婦は、粗モデルにおいてHIPと有意な正の関連を示した(オッズ比(OR):1.71、95%信頼区間(CI):1.11-2.63)。精神疾患歴で層別化すると、精神疾患歴のない人(OR: 1.77, 95% CI: 1.11-2.84)では有意な正の関連が認められたが、精神疾患歴のある人(OR: 0.61, 95% CI: 0.16-2.28) では見られなかった。

    【結論】
    親娘関係の悪さは、精神科疾患歴のない妊婦においてHIPリスクと関連しており、ACEについて直接尋ねることが困難な場合に、この簡単な質問でHIPのリスクを推定できる可能性が示唆された。この関連性のメカニズムを解明するためには、さらなる研究が必要である。

  • Isamu K, Takamiya T, Amagasa S, Machida M, Kikuchi H, Fukushima N, Inoue S, Murayama H, Fujiwara T, Shobugawa Y. The association of subjective vision with objectively measured intensity-specific physical activity and bout-specific sedentary behavior among community-dwelling older adults in Japan. Jpn J Ophthalmol. 2023 Mar;67(2):164-174.

  • Hosoya S, Maeda Y, Ogawa K, Umehara N, Ozawa N and Sago H. Predictive factors for vaginal delivery by induction of labor in uncomplicated pregnancies at 40-41 gestational weeks: A Japanese prospective single-center cohort study. J Obstet Gynaecol Res. 2023 Mar;49(3):920-929.

  • Hanafusa M, Ito Y, Ishibashi H, Nakaya T, Nawa N, Sobue T, Okubo K, Fujiwara T*. Association between Socioeconomic Status and Net Survival after Primary Lung Cancer Surgery: A Tertiary University Hospital Retrospective Observational Study in Japan. Jpn J Clin Oncol. 2023 Mar 30;53(4):287-296.

    日本語アブストラクト

    「社会経済指標と原発性肺がん術後の純生存率との関連:院内がん登録を使用した日本の三次医療機関での観察研究」

    【目的】
    社会経済的指標(SES)による手術機会の格差は、原発性肺がんの生存率格差の一因として知られている。本研究では、肺がん治癒目的の手術後でもSESによる生存率の格差が存在するかどうかを分析した。

    【方法】
    2010~2018年の間に東京医科歯科大学病院で新たに原発性肺がんと診断されたすべての患者を院内がん登録から抽出し、患者IDと手術日を用いて呼吸器外科の手術データ(院内がん登録では収集されない、術式の詳細や併存症などの詳細な臨床情報)と紐付けた。また、国政調査の結果から計算された町・字別の地理的剥奪指標(地域の貧困の程度を推定した値)を全国の分布に基づいて三分位に分けた。これを肺がん診断時の患者住所と紐付け、個人のSESの代理指標とし、SESによる肺がん術後の準生存率を比較した。

    【結果】
    1,039人(裕福層450人[43.3%]、中間層372人[35.8%]、困窮層217人[20.9%])について、裕福な層から困窮な層の5年純生存率(95%CI)はそれぞれ、82.1%(76.2-86.6)、77.6%(70.8-83.0)、71.4%(62.7-78.4)であった。SESによる純生存率の格差について過剰ハザードモデルを用いて比較したところ、性・年齢を調整した術後5年死亡についての過剰ハザード比(EHR)は、困窮な層で裕福な層より有意に高かった(EHR=1.64、95%CI:1.09-2.47)。続いて、この差をもたらすメカニズムを調べるために、考えられる寄与因子について順次モデルに投入した。リスク因子(BMI、PS、喫煙歴、併存症)を追加で投入した後のEHRは1.5(95%CI:1.00-2.25)とわずかに減少し、さらに腫瘍組織型を投入すると1.47(95%CI:0.98-2.21)と有意差は消失し、さらに病期を投入するとEHRは著しく1に近づいた(EHR: 1.13, 95%CI: 0.75-1.71)。

    【結論】
    原発性肺がんに対して治癒目的の手術を受けた患者においても、SESによる5年純生存率の格差が存在し、手術時の病期の違いがこの差を説明しうることが示唆された。

  • Wakai H, Nawa N, Yamaoka Y, Fujiwara T. Stressors and coping strategies among single mothers during the COVID-19 pandemic. PLoS One. 2023 Mar 8;18(3):e0282387.

    日本語アブストラクト

    「COVID-19パンデミック時のシングルマザーのストレス要因および対処戦略について」

    【背景と目的】
    COVID-19のパンデミックに関連する社会的変化によって、親のストレスレベルの上昇が報告されている。社会的支援はストレス要因の防御因子として知られているが、パンデミックによる制約が社会的支援の提供や形態に影響を与える可能性がある。現在までのところ、ストレス要因と対処戦略を詳細に検討した質的研究はほとんどない。特に、パンデミック時のシングルマザーに対する社会的支援の役割については、まだほとんど明らかになっていない。本研究の目的は、COVID-19パンデミック時のシングルマザーのストレス要因と対処戦略を、対処戦略としての社会的支援に焦点をあてて検討することである。

    【方法】
    2021年10月から11月にかけて、日本で20人のシングルマザーに対して詳細なインタビューを実施した。データは、対処戦略としてのソーシャルサポートに焦点を当て、ストレッサーと対処戦略に関連するコードに基づき、テーマ別コーディングを使用して演繹的にコード化した。

    【結果】
    ほとんどのインタビュー対象者は、COVID-19の発生後に追加のストレッサーを認識していた。ストレス要因としては、(1)感染への恐怖、(2)経済的な不安、(3)子どもとの交流によるストレス、(4)保育施設の制限、(5)家にいることに関するストレス、の5つが挙げられていた。主な対処法は、(1)家族、友人、同僚からのインフォーマルな社会的支援、(2)自治体やNPOからのフォーマルな社会的支援、(3)自己対処法であった。

    【結論】
    日本のシングルマザーは、COVID-19の発生後、さらなるストレッサーを認識していた。この結果は、シングルマザーがパンデミック時のストレスに対処するためには、対面またはオンラインによるフォーマルおよびインフォーマルな社会的支援の両方が重要であることを支持するものである。

  • Fukuya Y, Nawa N, Morita A, Fujiwara T. Association of revision of Money Lending Business Act and suicide rate in Japan: an interrupted time series analysis. Suicide Life Threat Behav. 2023 Mar 1. doi: 10.1111/sltb.12950.

    日本語アブストラクト

    「改正貸金業法と自殺率との関連」

    【目的】
    これまでに借金問題と自殺に関連あることが報告されている。本邦では、多重債務の問題に対処するために2006年12月に貸金業法が改正され、2010年6月に完全施行された。本研究は、改正貸金業法と自殺率との関係を明らかにすることを目的とした。

    【方法】
    2000年1月から2016年12月までの死亡個票データを用いて、自殺により死亡した15歳以上の男女を対象に、interrupted time series analysisを行い、改正貸金業法の完全施行前後の自殺率の変化を比較した。その際、男女別のほかに、年齢別(15歳~39歳、40歳~64歳、65歳以上)による層別化を行った。

    【結果】
    40歳~64歳の男性群において、改正貸金業法の完全施行後に自殺率(10万人あたり)の減少(-0.3085 :95% 信頼区間-0.529 to -0.0881)とその後のトレンドの減少(-0.0165: 95%信頼区間 -0.0215 to -0.0115)に関連を認めた。40歳~64歳および65歳の女性群においては、改正貸金業法の完全施行後に自殺率の一時的な上昇が認められた。

    【結論】
    改正貸金業法の完全施行と中年男性の自殺率の減少との間に関連が認められた。本結果から、借金問題に対する政策的な介入は、自殺予防に寄与する可能性が示唆された。

  • Soma T, Fukuda S, Matsuyama Y, Ikeda R, Inoue M, Waseda Y, Tanaka H, Yoshida S, Yokoyama M, Matsuoka Y, Fujiwara T, Kageyama Y, Fujii Y. Peritoneal closure and the processus vaginalis transection method to prevent inguinal hernia after robot-assisted radical prostatectomy. Int J Urol. 2023 Feb 28. doi: 10.1111/iju.15170.

  • Tani Y, Isumi A, Doi S, Fujiwara T. Food categories for breakfast and mental health among children in Japan: Results from the A-CHILD study. Nutrients. 2023 Feb 22;15(5):1091.

    日本語アブストラクト

    「日本の子どもたちの朝食の食品カテゴリーと精神的健康: A-CHILD研究からの結果」

    【背景】
    子どもが朝食に何を食べるかが、子どもの精神的健康に寄与するというエビデンスはほとんどない。

    【目的】
    本研究は、日本の子どもたちの朝食の食品カテゴリーと精神的健康との関連性を調べることを目的とした。

    【方法】
    日本の足立区子どもの健康・生活実態調査(Adachi Child Health Impact of Living Difficulty (A-CHILD) )研究の9-10歳の参加者のうち、毎日朝食を食べている人の一部が対象となった(n = 281)。朝食に食べた食品は、7日間連続で毎朝子どもたちから報告され、日本食事バランスガイドの食品カテゴリーに従って定義された。子どもの精神的健康は、保護者が「強さと困難さ尺度(SDQ)」を用いて評価した。1週間あたりの平均摂取頻度は、穀物料理が6回、乳製品が2回、果物が1回であった。

    【結果】
    線形回帰分析により、潜在的な交絡因子を調整した結果、米やパンを問わず穀物料理の摂取頻度と問題行動との間に逆相関があることがわかった。しかし、菓子類(主に甘いパンやペストリー)は、問題行動との関連は見られなかった。

    【結論】
    朝食時に甘くない穀物料理を摂取することは、子どもの問題行動の予防に有効である可能性がある。

  • Miyamura K, Nawa N, Isumi A, Doi S, Ochi M, Fujiwara T*. Association between skipping breakfast and prediabetes among adolescence in Japan: Results from A-CHILD Study. Front Endocrinol (Lausanne). 2023 Feb 22;14:1051592.

    日本語アブストラクト

    「日本人の思春期における朝食欠食と糖尿病予備軍との関連: A-CHILD研究の結果」

    【目的】
    青年期の糖尿病予備軍は、その後の人生で2型糖尿病を発症するリスクが高い。思春期における糖尿病前症の危険因子を明らかにすることが必要である。本研究の目的は、日本の青少年における朝食欠食と糖尿病前症との関連を検討することである。

    【方法】
    2016年、2018年、2020年に東京都足立区で実施された足立区子ども健康・生活実態調査(A-CHILD)の中学2年生の横断データを用いた。朝食欠食は自己報告式の質問紙を用いて評価した(N=1510)。糖尿病予備軍は、ヘモグロビンA1c(HbA1c)値が5.6~6.4%と定義した。朝食欠食と糖尿病予備軍との関連は、多変量ロジスティック回帰分析を用いて評価した。また、太り過ぎを1SD以上と定義し、BMIが1SD以上、1SD未満で層別化解析を行った。

    【結果】
    朝食を抜いた生徒は16.4%(n=248)であった。糖尿病予備群の有病率は3.8%(n=58)であった。朝食欠食は、性別、世帯年収、糖尿病の家族歴、BMI、調査年で調整後、糖尿病予備軍と有意な関連を示した(OR:1.95、95%CI:1.03~3.69)。層別解析では、太り過ぎ(BMI≧1SD)の生徒でより強い関連が示された(OR=4.31、95%CI:1.06~17.58)が、太り過ぎでない生徒(BMI<1SD)では有意ではなかった(OR=1.62、95%CI:0.76~3.47)。

    【結論】
    日本人の思春期の子ども、特に過体重の子どもにおける朝食欠食は、糖尿病予備軍と関連していた。朝食欠食を避けることは糖尿病予防に役立つ可能性がある。

  • Matsuyama Y, Fujiwara T, Aida J. Tap water natural fluoride and parent-reported experience of child dental caries in Japan: Evidence from a nationwide birth cohort survey. Community Dent Oral Epidemiol. 2023 Feb 13. doi: 10.1111/cdoe.12847.

    日本語アブストラクト

    「日本における水道水の天然フッ化物と親が報告する子どものう蝕経験との関連:全国規模の出生コホート調査からのエビデンス」

    【背景と目的】
    水道水のフッ素化は、う蝕予防に有効な手段である。日本では,人工的な水道水フロリデーションは実施されておらず,また,土壌の性質が異なるため,水道水天然フッ化物濃度は地域によって異なる.本研究では,水道水天然フッ化物と保護者が報告する子どものう蝕経験との関連を検討することを目的とした.

    【方法】
    2001年1月10日~17日、7月10日~17日に生まれたすべての乳児を追跡した全国出生コホート研究「21世紀出生児縦断調査」のデータを分析した。養育者は、5.5歳から12歳まで毎年、子どものう蝕の代理であるう蝕治療歴に回答した(N = 34 998人の子どもから202 517件の観測)。居住地の自治体における水道水天然フッ素濃度の年次データは、国の統計から入手した。平均所得や歯科クリニックの密度など、子ども、世帯、自治体の特性を調整し、マルチレベルのポアソン回帰モデルを用いた。

    【結果】
    市町村の水道水天然フッ化物濃度の平均値は 0.0887ppm(SD = 0.0422)であった.養育者が報告した子どものう蝕治療経験の割合は24.9%(12歳時)から40.3%(7歳時)であり、天然フッ化物濃度の高い自治体に住む子どもでう蝕治療経験の割合は低く、0.10ppm未満、0.10~0.19、0.20~0.29、0.30ppm以上ではそれぞれ35.0%、 35.4%、 33.4%、 32.3%であった。すべての共変量を考慮した結果、水道水天然フッ化物が 0.1ppm 増加すると、親が報告する小児う蝕治療の有病率は 3.3%、有意に低下した(有病率=0.967、95%信頼区間: 0.939,0.996)。

    【結論】
    水道水中の天然フッ素は,親が報告する小児う蝕の経験に対して保護効果を示した.

  • Ogawa T, Fukushima K, Niimi M, Schermann H, Motoyoshi T, Moross J, Hashimoto M, Hirai T, Fujiwara T, Okawa A, Kurosa Y, Yoshii T. A comparison of spinopelvic alignment and quality of life between farmers and non-farmers: A cross-sectional population-based study in Japanese rural area. J Clin Med. 2023 Feb 9;12(4):1393.

  • Miyake R, Komatsu H, Ihira K, Hasegawa A, Maeda Y, Takemori S, Noguchi M, Dofutsu M, Onodera Y, Shinagawa M, Suemitsu T, Sugita Y, Higuchi Y, Izaki N, Kodera C, Nagase Y, Odawara K, Ogura J, Osaku D, Ohsuga T, Enomoto N, Kanai T, Mishima S, Morita K, Otsuka S, Suzuki K, Miura K, Yoshida Y. “Welcome to OBGYN World!” A novel recruitment event for medical students organized by the Japan Society of Obstetrics and Gynecology. J Obstet Gynaecol Res. 2023 Feb;49(2):487-492.

  • Fujiwara T, Koyama Y, Isumi A, Matsuyama Y, Tani Y, Ichida Y, Kondo K, Kawachi I. “What did you do in the War, Daddy?”: Paternal military conscription during WWII, economic hardship and family violence in childhood and health in late life in Japan. J Interpers Violence. 2023 Feb 16:8862605231153889.

    日本語アブストラクト

    「"パパ、戦争で何してたの?": 第二次世界大戦中の父親の徴兵参加と戦死、子ども期の経済的困難と家庭内暴力、高齢期の健康状態の関連」

    【背景と目的】
    子ども期の逆境体験は、晩年における健康不良の危険因子であり、経済的困難や家庭内暴力が含まれ、その有病率は徴兵された父親の子弟に高いことが知られている。我々は、日本の高齢者において、第二次世界大戦中の父親の軍事徴兵(paternal military conscription、PMC)および父親の戦死(paternal war death、PWD)と自己評価健康度(self-rated health、SRH)との関連を評価した。

    【方法】
    2016年に日本全国39市町村の65歳以上の機能的自立者の人口ベースコホートからデータを取得した。PMCとSRHに関する情報は、自己報告式の質問票により取得した。合計20,286人の参加者を多変量ロジスティック回帰で分析し、PMC、PWD、および健康不良の関連を調査した。幼少期の経済的困難と家庭内暴力が関連を媒介するかどうかを確認するために媒介分析も行なった。

    【結果】
    参加者のうち、19.7%がPMCを報告した(3.3%のPWDを含む)。年齢・性別調整モデルでは、PMCを有する高齢者は健康不良のリスクが高いことを示し(オッズ比[OR]:1.16、95%信頼区間[CI][1.06、1.28])たが、PWDを有する者は関連がなかった(OR:0.96、95%CI[0.77、1.20])。媒介分析では、PMCと健康不良の関連に子ども期の家庭内暴力曝露が媒介効果を示した(媒介された割合:6.9%)。経済的困難は、関連を媒介しなかった。PWDではなくPMCが高齢期の不健康リスクを増加させたが、これは子ども期の家庭内暴力への曝露によって部分的に説明された。

    【結論】
    戦争が及ぼす世代を超えた健康への影響は、年齢を重ねても子孫の健康に影響を与え続けるようである。

  • Shimazu A, Fujiwara T, Iwata N, Kato Y, Kawakami N, Maegawa N, Nakao M, Nomiyama T, Takahashi M, Tayama J, Watai I, Arima M, Hasegawa T, Matsudaira K, Matsuyama Y, Miyazawa Y, Shimada K, Takahashi M, Watanabe M, Yamaguchi A, Adachi M, Tomida M, Chen D, Doi S, Hirano S, Isokawa S, Kamijo T, Kobayashi T, Matsuzaki K, Moridaira N, Nitto Y, Ogawa S, Sakurai M, Sasaki N, Tobayama M, Yamauchi K, Obikane E, Odawara M, Sakka M, Takeuchi K, Tokita M. Effects of work-family life support program on the work-family interface and mental health among Japanese dual-earner couples with a preschool child: A randomized controlled trial. J Occup Health. 2023 Jan;65(1):e12397.

  • Hanafusa M, Nawa N, Goto Y, Kawahara T, Miyamae S, Ueki Y, Nosaka N, Wakabayashi K, Tohda S, Tateishi U, Fujiwara T. Effectiveness of remdesivir with corticosteroids for COVID-19 patients in intensive care unit: a hospital-based observational study. J Med Virol. J Med Virol. 2023 Jan;95(1):e28168.

    日本語アブストラクト

    「集中治療室のCOVID-19患者に対する副腎皮質ステロイドを併用したレムデシビルの有効性:病院ベースの観察研究」

    【背景と目的】
    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)において、特に集中治療室(ICU)で治療された症例の生存に対するレムデシビルの有効性は議論の余地がある。我々は、実際のICU臨床において、副腎皮質ステロイドを併用したレムデシビルのCOVID-19患者の生存率に対する有効性を調査した。

    【方法】
    東京都内の3次病院のICUに入院し(2020年4月~2021年11月)、副腎皮質ステロイドを投与された検査確定COVID-19患者について、確定から投与までの期間が9日以内または10日以上で層別した生存に対するレムデシビルの有効性をCox回帰モデルで後方視的に解析した。

    【結果】
    合計168名の患者を対象とした。レムデシビルを使用しなかった35人(対照)、9日以内にレムデシビルを使用した96人、10日以上の間隔でレムデシビルを使用した37人であった。院内死亡率はそれぞれ45.7%、10.4%、16.2%であった。
    併存疾患、検査データ、酸素要求量、肺炎のレベルなど、考えられる共変量を調整した結果、症状発現から9日以内のレムデシビル使用は死亡リスクを低下させた(ハザード比[HR].0.10、95%信頼区間(CI):0.025-0.428)。しかし、間隔が10日以上のレムデシビルの使用は、死亡率との有意な関連を示さなかった(HR:0.42、95%CI:0.117-1.524)。

    【結論】
    ICUで副腎皮質ステロイドを投与されたCOVID-19患者において、症状発現から9日以内のレムデシビル使用は、院内死亡リスクの低減と関連していた。

  • Miyamura K. Nawa N, Isumi A, Doi S, Ochi M, Fujiwara T. Impact of exposure to secondhand smoke on the risk of obesity in early adolescence. Pediatr Res. 2023 Jan;93(1):260-266.

    日本語アブストラクト

    「思春期早期の肥満リスクに対する受動喫煙曝露の影響」

    【背景と目的】
    受動喫煙への曝露は、小児の肥満と関連する可能性がある。本研究では、思春期早期の受動喫煙への曝露状況の変化が肥満リスクと関連するかどうかを明らかにすることを目的とした。

    【方法】
    足立区で実施された子どもの健康・生活実態調査(Adachi Child Health Impact of Living Difficulty (A-CHILD) study)の小学生3605名の2018年(4年生)および2020年(6年生)の縦断データを用いた。小学4年生と6年生時の受動喫煙曝露の状況から、受動喫煙に継続して曝露された群、4年生時には曝露があったが6年生時には曝露がなくなった群、4年生時には曝露がなかったが6年生時には曝露があった群、継続して曝露がなかった群の4群に分類し、それらの受動喫煙曝露状況と小学6年生時のBMIカテゴリー(低体重または標準体重、過体重、肥満)の関連を順序ロジスティック回帰モデルを用いて評価した。

    【結果】
    受動喫煙に継続して曝露された群は、受動喫煙曝露が継続してなかった群と比較し、高BMIカテゴリーに入るリスクが高かった(OR=1.51、95%信頼区間
    1.16-1.96)。性別による層別解析では、男子では同様の関連が認められたが(OR=1.74、95%信頼区間 1.25-2.44)、女子では認められなかった(OR=1.14、95%信頼区間
    0.74-1.76)。小学6年生時に受動喫煙への曝露がなくなった群は、受動喫煙への曝露が継続してなかった群と比較し、高BMIカテゴリーに入るリスクが高くなく(OR=1.11、95%信頼区間 0.75-1.66)、男子も同様の結果であった(OR 1.46、95%信頼区間
    0.88-2.41)。

    【結論】
    継続的な受動喫煙への曝露は、思春期初期の男子において肥満の危険因子であった。しかし、思春期初期に受動喫煙曝露をなくすことは、肥満の予防につながる可能性がある。

  • Koyama Y, Cortes Hidlgo AP, Lacy RE, White T, Jansen PW, Fujiwara T, Tiemeier H. Poverty from fetal life onward and child brain morphology. Sci Rep. 2023 Jan 23;13(1):1295.

    日本語アブストラクト

    「胎児期からの貧困と子どもの脳の形態」

    概要
    貧困は子どもの発達を阻害する因子であり、その関連は脳の形態で説明できる可能性がある。これまでの研究では、前向き研究として妊娠中の貧困状態を評価しているものがなく、さらにマジョリティ/マイノリティに関する層別化がなされていなかった。我々は、母子2166組を対象に、胎児期からの家庭の貧困と10歳時の脳形態差との関連を調査した。その結果、全体として、生後早期のいかなる貧困曝露も、脳容積との関連は示されなかった。しかし、胎児期に貧困にさらされた子どもは扁桃体積が小さい(B = - 0.18, 95%CI - 0.30; - 0.07, pFDR-adjusted = 0.009)という時期効果のエビデンスがあった。また、マジョリティ/マイノリティの状態による関連性の違いも見られた(大脳白質:交互作用のp=0.04)。幼少期に貧困にさらされたオランダの子どもは、マイノリティである対照群と比較して大脳白質容積が小さかった(B = - 0.26, 95%CI - 0.45; - 0.06, pFDR-adjusted = 0.035).この関連は、マイノリティ集団では観察されなかった(B = - 0.05, 95%CI - 0.23; 0.12, pFDR-adjusted = 0.542).大脳白質容積の小ささは、オランダの子どもにおける幼少期の貧困と学業成績の低下との関連を媒介するものであった。この結果は、胎児期における貧困曝露の重要性を指摘し、マジョリティ/マイノリティグループ間で異なるメカニズムや脆弱性を示唆するものである。

  • Nagamine Y*, Shobugawa Y, Sasaki Y, Takagi D, Fujiwara T, Khin YP, Nozaki I, Shirakura Y, Kay Thi L, Poe Ei Z, Thae Z, Win HH. Associations between socioeconomic status and adherence to hypertension treatment among older adults in urban and rural areas in Myanmar: a cross-sectional study using baseline data from th BMJ Open. 2023 Jan 17;13(1):e065370.e JAGES in Myanmar prospective cohort study.

    日本語アブストラクト

    「ミャンマーの都市部と農村部の高齢者における社会経済的地位と高血圧治療アドヒアランスの関連:JAGES in Myanmar前向きコホート研究のベースラインデータを用いた横断的研究」

    【背景と目的】
    本研究は、ミャンマーの農村部と都市部の高齢者において、社会経済的地位(SES)と高血圧治療薬のアドヒアランスに差異があるかどうかを調査し、どのようなSESがアドヒアランスと関連しているかを調査することを目的とする。

    【方法】
    参加者:日本老年学的評価研究(JAGES)inミャンマー前向きコホート研究のベースラインデータを用いた横断的研究。各地域で多段階ランダムサンプリング法を適用した。
    設定: ミャンマーの都市部と農村部。
    参加者: 2018年にミャンマーの60歳以上の高齢者計1200人を無作為に抽出した(農村部と都市部から各600人)。そのうち、573人が高血圧症であり、解析の対象となった(都市部:317人、農村部:256人)。
    アウトカム: 高血圧治療薬のアドヒアランス(はい/いいえ)が関心のあるアウトカムである。3種類のSES(財産、教育歴、現在の雇用形態)を説明変数とした。

    【結果】
    調査対象者のうち、都市部住民の21.5%、農村部住民の48.4%が非アドヒアランスであることがわかった。治療指示に従わないことの有病率比(PR)を推定するために、地域によって層別化したポアソン回帰モデリングを実施した。人口統計学的情報と高血圧の合併症は、可能性のある交絡因子としてすべてのモデルで調整した。SESの観点からは、都市部では低レベルと比較して中レベルの富裕層がアドヒアランス不良と有意に関連していたが(PR 2.68, 95% CI 1.28~5.59 )、学歴と雇用形態は同様の関連を示さなかった。中・高校以上と比較した低学歴は、農村部ではアドヒアランス不良と有意に関連した(学校なし: PR 3.22, 1.37-7.58; 修道院: 3.42, 1.16-5.07; 小学校: 2.41, 1.18-4.95) しかし、財産と収入には同様の関連は見られなかった。

    【結論】
    ミャンマーの農村部と都市部の高齢者において、SESと高血圧治療薬のアドヒアランスは異なる関連性を示した。すべての国民が高血圧治療への医療アクセスを確保するためには、都市部/農村部におけるSESとアドヒアランスの差異のある関連性を認識する必要がある。

  • Nawa N, Numasawa M, Yamaguchi K, Morita A, Fujiwara T, Akita K. Association between the social network of medical students and their academic performance on the anatomy written examination. Anat Sci Educ. 2023 Jan 9. doi: 10.1002/ase.2249.

    日本語アブストラクト

    「医学生のソーシャルネットワークと解剖学の筆記試験における学力との関連性」

    【背景と目的】
    医学生は友人やクラスメートの社会的ネットワークの中で人体解剖学を学んでいるが、社会的ネットワーク構造が人体解剖学試験における学生の成績とどのように関連しているかを調べた研究は限られている。本研究では、解剖学実習開始前の中心性(クラス内で他の学生とつながっている度合い)と、実習開始と最終日の変化が筆記試験にどのように影響するかを検討することを目的とした。

    【方法】
    データは、2018年と2019年に解剖学の授業を受けた東京医科歯科大学の医学生全211名であった。解剖実習前のクラス内の社会的ネットワークは、部活の種類、出身高校、課外活動の所属について、つながりが2つ以上ある場合を「つながりあり」と定義した。さらに、解剖班のグループのネットワークを追加した。ロジスティック回帰モデルを用いて、固有ベクトルの強さと中心性、および解剖実習後の中心性の変化と筆記試験不合格との関連性を推定した。

    【結果】
    211名の学生のうち、38名が試験に不合格となった。解剖実習前の固有ベクトル中心性の1標準偏差の増加は、試験に失敗する確率の44%減少と有意に関連していた(OR: 0.56, 95% CI: 0.34, 0.92).中心性尺度の変化は、試験における学生の成績とは関連しなかった。

    【結論】
    クラス内のネットワーク中心性が高いほど、解剖学の筆記試験で不合格になる確率が低くなることと関連した。

  • Mishima Y, Nawa N, Asada M, Nagashima M, Aiso Y, Nukui Y, Fujiwara T, Shigemitsu H. Impact of Antibiotic Time-Outs in Multidisciplinary ICU Rounds for Antimicrobial Stewardship Program on Patient Survival: A Controlled Before-and-After Study. Crit Care Explor. 2023 Jan 6;5(1):e0837.