研究業績 Teaching

研究業績Publication

2024

  • Numasawa M, Nawa N, Yamaguchi K, Akita K, Yamawaki M. Association between grit and depressive symptoms among medical students, moderated by academic performance. Med Educ Online. 2024 Dec 31;29(1):2373523.

  • Kawahara T, Doi SK, Isumi A, Matsuyama Y, Tani Y, Fujiwara T*. Impact of COVID-19 Pandemic on Children Overweight in Japan in 2020. Pediatr Obes. 2024 Aug;19(8):e13128.

  • Koyama Y, Nawa N, Ochi M, Surkan PJ, Fujiwara T. Joint Roles of Oxytocin- and Dopamine-Related Genes and Childhood Parenting Experience in Maternal Supportive Social Network. Child Psychiatry Hum Dev. 2024 Jun;55(3):614-621.

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    「母親への支援的ソーシャルネットワークに対するオキシトシンおよびドパミン関連遺伝子と幼少期のペアレンティングの相互作用」

    産後の母親へのソーシャルサポートの形成に関して、遺伝的影響およびペアレンティングの影響はそれぞれ示唆されてきたが、それらの相互作用について、遺伝子環境相互作用(Gene-by-environment interaction)の観点からは明らかにされていません。親子3世代からなるデータを用いて、母親の産後のソーシャルサポートの形成には、遺伝的リスクとペアレンティングの相互作用が存在することが示されました。

    【背景】
    産後うつの重要な予防因子である母親へのソーシャルサポートの形成に対して、母親自身の遺伝子と幼少期に受けたペアレンティングがそれぞれ単独で関連があることは示唆されてきたが、それらの相互作用については明らかになっていない。

    【方法】
    祖母、母親、乳児からなる115組の3世代のデータを用いて、社会性に関連する遺伝子(OXTR rs53576, rs2254298, rs1042778; COMT rs4680)に関する遺伝リスクと幼少期に受けたペアレンティングとの相互作用を分析した。

    【結果】
    遺伝的リスクの高い母親は、幼少期に不適切なペアレンティングを受けていた場合、ソーシャルサポートが少ない(B = - 0.02, 95%CI = - 0.04 to - 0.01)ことが示された一方で、遺伝的リスクの低い母親では、ペアレンティングとソーシャルサポートの間に関連は認められなかった。遺伝的リスクの高い母親では、ソーシャルサポートが少ないことは、産後うつと関連していた(B = - 0.88, 95%CI = - 1.45 to -0.30)。

    【考察】
    社会性に関連する遺伝子のリスクアレルを多く持つ母親は、幼少期のペアレンティングに対してより強い感受性を示すことを示唆した。産後の母親の援助希求の理解において、遺伝的リスクと幼少期に受けたペアレンティングの両方を考慮する重要性を示した。

  • Suzuki E, Nawa N, Okada E, Akaishi Y, Kashimada A, Numasawa M, Yamaguchi K, Takada K, Yamawaki M. Mixed-methods study of medical students’ attitudes toward peer physical examinations in Japan. BMC Med Educ. 2024 Jun 20;24(1):681.

  • Goto Y, Nagamine Y, Hanafusa M, Kawahara T, Nawa N, Tateishi U, Ueki Y, Miyamae S, Wakabayashi K, Nosaka N, Miyazaki Y, Tohda S, Fujiwara T*. Association of excess visceral fat and severe illness in hospitalized COVID-19 patients in Japan: a retrospective cohort study. Int J Obes (Lond). 2024 May;48(5):674-682.

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    「日本のCOVID-19入院患者における内臓脂肪過多と重症化との関連:後方視的コホート研究」

    【背景/目的】
    BMIで定義される肥満は、COVID-19の重症化因子として知られている。また、脂肪組織は感染に対する身体反応において重要な要素であり、日本人に多くみられる内臓脂肪過多が重症化に寄与している可能性がある。本研究では、日本における肥満および内臓脂肪とCOVID-19重症化との関連を評価することを目的とした。

    【対象/方法】
    この後方視的コホート研究は、3次病院に入院した成人COVID-19患者550人を対象とし、BMIと胸部CT画像から計測した体組成のデータを取得した。主要評価項目は、入院中のCOVID-19による重症化(死亡を含む)とした。ロジスティック回帰分析では、年齢、性別、皮下脂肪、傍脊柱筋放射線密度、内臓脂肪に影響する併存疾患(COPD、5年以内のがん、免疫抑制剤使用)などの共変量を調整した後、COVID-19重症化に対するBMIと内臓脂肪(各四分位群Q1~Q4)の関連を検討した。

    【結果】
    全体の年齢中央値は56.0歳(20~94歳)で、71.8%が男性であった。入院中に82例(14.9%)が重症化した。多変量解析において、BMI(Q4)はBMI(Q1)と比較してCOVID-19の重症化との有意な関連を認めなかった(OR 1.03; 95%CI 0.37-2.86; p = 0.95)。一方で内臓脂肪(Q3、Q4)は、内臓脂肪(Q1)と比較して重症化リスクが高かった(OR 2.68; 95%CI 1.01-7.11; p = 0.04、OR 3.66; 95%CI 1.30-10.26; p = 0.01)。BMI 25kg/m2で層別化し共変量で調整した解析では、BMI<25kg/m2群においてのみ、内臓脂肪とCOVID-19 重症化との間に正の相関が示された。

    【結論】
    高BMI は日本の入院患者におけるCOVID-19重症化の独立したリスク因子ではなかったが、内臓脂肪は特にBMI<25kg/m2の患者において有意に影響した。

  • Ishii T, Nawa N, Hosokawa S, Morio T, Fujiwara T. Exploring Viral Infections’ Role in Kawasaki Disease Onset: A Study during the COVID-19 Pandemic. J Med Virol. 2024 May;96(5):e29660.

  • Shibata T, Yamaoka Y, Nawa N, Nishimura H, Koyama Y, Kuramochi J, Fujiwara T*. Association of Lifestyle and Flourishing during the COVID-19 pandemic in Japan. Front Psychol. 2024 May 30:15:1341711.

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    「日本におけるCOVID-19パンデミック時のライフスタイルと包括的幸福度の関連性について」

    【背景】
    COVID-19は私たちのライフスタイルを変化させたが、COVID-19流行時の私たちのライフスタイルと包括的幸福度がどのように関連しているかはほとんど知られていない。本研究では、睡眠時間、飲酒、喫煙などのライフスタイルとCOVID-19流行時の包括的幸福度との関連を検討した。

    【方法】
    2021年11月に実施されたUtsunomiya COVID-19 seROprevalence Neighborhood Association (U-CORONA)調査を用いて、睡眠時間、飲酒、喫煙などの生活習慣と栄転との関連を検討した(n=473)。包括的幸福度は、5つのドメインを持つ10項目の多次元尺度であるFlourishing indexで評価した。多変量線形回帰分析は、性、年齢、収入、教育で調整して行った。

    【結果】
    睡眠時間が6時間未満の群では、6~8時間の群に比べてFlourishing indexが有意に低いことがわかった(coef= -0.49, SE = 0.17, p <0.01)。また、飲酒回数が月1~数回、週1~数回の群では、ほとんど飲まない群よりもFlourishing Indexが高いことがわかった(coef= 0.57、SE= 0.19、p <0.01)。喫煙はFlourishing Indexとは関連していなかった。

    【結論】
    睡眠時間と飲酒習慣は、COVID-19パンデミック時のFlourishing Indexに重要であるが、喫煙は重要でない可能性がある。

  • Sasaki N, Watanabe K, Kanamori Y, Tabuchi T, Fujiwara T, Nishi D*. Effects of expanded adverse childhood experiences including school bullying, childhood poverty, and natural disasters on mental health in adulthood. Sci Rep. 2024 May 26;14(1):12015.

  • Yamaoka Y, Ochi M, Fukui M, Isumi A, Doi S, Fujiwara T, Nawa N. Home visitors’ needs and perceptions of the benefits of a home visiting program for childcare support in Japan: a qualitative study of home visitors. Child Abuse Negl. 2024 May 14:153:106853.

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    「日本における養育支援訪問事業のニーズと利点について:訪問員を対象とした質的研究」

    【背景】
    日本で実施されている養育支援訪問事業(Home Visiting Program for Childcare Support: HV-CCS)は、子育て支援を必要とする家庭や児童虐待のリスクのある家庭を対象としている。

    【方法】
    本研究は、HV-CCSにおける訪問員が抱えるニーズと訪問によるメリットをどう認識しているかを明らかにすることを目的とした。同意した16人の訪問員に半構造化面接を実施し、約18時間のデータを主題分析を用いて分析した。

    【結果】
    訪問員には、養育者や子どものメンタルヘルスに関する個人のスキルや知識を高めるための研修が必要であること、また環境面では、特に交通費や駐車場などの支援が必要であることが示唆された。訪問員は、養育スキルや家庭環境の改善、母親への心理的支援、家族の親密な空間への介入ができることが、児童虐待の予防に有益であると認識していた。

    【結論】
    日本における家庭訪問の継続性と向上を確保するためには、訪問員が抱えるニーズに対応することが不可欠である。

  • 山岡祐衣、越智真奈美、福井充、伊角彩土井理美藤原武男那波伸敏. 養育支援訪問事業における家庭訪問型支援の意義、支援の困難な状況、支援員の関係性作りの心構えについて:インタビュー調査より. 子どもの虐待とネグレクト、2024 May 14;26(1).

    日本語アブストラクト

    【背景】
    養育困難・子ども虐待のリスクを抱える家族に対する訪問型支援に関する研究は乏しい。

    【方法】
    本研究では、養育支援訪問事業の専門的相談支援に従事する支援員16名を対象に、養育支援訪問事業による家庭訪問の意義、養育支援訪問事業を実施するのが困難な状況、家庭訪問型支援を行う上での心構えを明らかにすることを目的に実施した。Zoomを用いた半構造化インタビューを実施し主題分析を行った。

    【結果】
    養育困難な家庭や不適切な養育状態や虐待のおそれがある家庭に対する家庭訪問型の支援の意義として、「時間をかけて寄り添う支援」、「普段の生活の中で行う支援」、「孤育てを防ぐ支援であること」が抽出された。支援を行う上での困難な状況は、「信頼関係が築けない」、「支援目標を到達できない」、「一人で訪問する負担」から生じていた。その中で支援員は「身近な存在になる」と「来週も訪問できることを最優先にする」ということを心掛けながら訪問していた。

    【結論】
    「家の中まで入る支援」である養育支援訪問事業の良さを最大限に活用していくためにも、支援上の細やかな工夫に関する経験値の共有と支援員への丁寧なサポートが必要である。

  • Terada S, Isumi A, Yamaoka Y, Fujiwara T. Years of education mediate the association between adverse childhood experiences and unintended pregnancy: A population-based study in Japan. Child Abuse Negl. 2024 May 7;153:106817. doi: 10.1016/j.chiabu.2024.106817. Online ahead of print.

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    「教育年数が小児期逆境体験と予定外妊娠の関連を媒介する:日本における集団ベースの研究」

    【背景】
    小児期逆境体験(ACE)は、予定外妊娠(Mistimed pregnancy(早すぎた妊娠)やUnwanted pregnancy(望まない妊娠)など)と関連する可能性が諸外国から報告されている。しかし、教育年数がこの関連を媒介するかについてはわかっていなかった。そこで本研究では、日本におけるACEと予定外妊娠との関連を明らかにするとともに、教育年数の媒介効果について検討することを目的とした。

    【方法】
    千葉県の4か月児健康診査を受診した母親7,652人を対象に後方視的コホート研究を行った。ACEおよび予定外妊娠は自記式質問紙で尋ねた。多項ロジスティック回帰分析を用いて、予定外妊娠に対するACEの相対リスク比を推定した。また、因果媒介分析により、教育年数の媒介効果を評価した。

    【結果】
    4つ以上のACEを有する女性は、早すぎた妊娠のリスクが2.4倍(95%信頼区間: 1.6-3.8)、望まない妊娠のリスクが5.0倍(95%信頼区間: 3.1-8.2)高かった。教育年数は、ACEと予定外妊娠の関連を約10-20%媒介していた。

    【結論】
    ACEは、早すぎた妊娠・望まない妊娠の両者と関連していた。教育年数はわずかにこの関連を媒介していた。

  • Manabu S, Nawa N, Noguchi Y, Taki A, Kashimada A, Honda I, Koyama A, Okazaki K, Kondo M, Miyahara H, Ito K, Yamauchi T, Kondo T, Honda-Ozaki F, Kusuda S, Morioka C, Fujiwara T, Morio T, Kashimada K. Stage III Chorioamnionitis reduces risk of severe retinopathy of prematurity. J Pediatr. 2024 May 2:114085. doi: 10.1016/j.jpeds.2024.114085. Online ahead of print.

  • Kawahara T, Isumi A, Ochi M, Doi SK, Surkan PJ, Fujiwara T. Association between maternal dissatisfaction with oneself at birth and shaking and smothering toward the offspring up to 18 months old. Child Abuse Negl. 2024 May 1;153:106816. doi: 10.1016/j.chiabu.2024.106816. Online ahead of print.

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    「出生児の母親の自己実現への不満足と、生後18か月までの子どもに対する揺さぶり・首絞めなどの身体虐待との関連」

    【背景】
    自己実現への不満足を抱える母親は、子供に対して揺さぶるまたは窒息させるなどの虐待行為に及ぶことがあります。この関連性を理解することは、効果的な予防策を立てる上で重要です。

    【方法】
    研究には、東京の2つの産科病棟で最近出産した434人の母親が参加しました。縦断的デザインを採用し、出産後のアンケートを使用して、母親の自己実現への不満足を測定しました。これには、個人的な基準や自己イメージに達していないと感じる度合いの評価が含まれます。3、6、12、18か月での幼児の身体的虐待(特に揺さぶりや首絞め)を追跡しました。データ分析には、多変量解析、グループベースの軌道モデリング、および多変量ロジスティック回帰が含まれ、母親の自己実現への不満足と子どもへの身体的虐待との関連を調査しました。

    【結果】
    多変量解析によると、自己実現に対する中程度または高い不満を持つ母親は、低い不満を持つ母親に比べて、乳幼児を虐待する可能性が高くなることが示されました(調整オッズ比 [aOR] 5.71, 信頼区間 [CI], 1.06-30.78およびaOR 12.47, 95 % CI, 2.11-73.69)。軌道分析によると、中程度または高い不満を持つ母親は、18か月まで一貫して幼児を虐待する可能性が高いことが示されました(aOR 8.08, 95% CI 1.61-40.53およびaOR 6.42, 95% CI 1.27-32.43)。

    【結論】
    この研究の発見は、母親の自己実現への不満足と乳幼児への身体的虐待の高いリスクとの強い関連を浮き彫りにしています。これらの洞察は、幼児虐待の予防策の包括的な見直しを求めています。

  • Terada S, Nishmura H, Miyasaka N, Fujiwara T*. Ambient temperature and preterm birth: a case-crossover study. BJOG. 2024 Apr; 131(5):632-640.

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    「気温と早産の関連」

    【背景】
    早産(妊娠37週未満の出生)は、5歳未満の子どもたちの最も多い死亡原因であり、世界的に深刻な問題です。また、地球温暖化の影響で寒さや暑さが極端になることで、人々の健康に悪影響を及ぼすことは広く知られていますが、これが早産にどのように影響するかはよくわかっていませんでした。日本は、全国どこでもほぼ同じような周産期医療を受けることができ、かつ国土が南北に長いため気温の変動が様々です。その特徴を利用し、妊娠期の女性が寒さや暑さにさらされると早産が増えるかどうか明らかにすることを目指して、この研究が行われました。

    【方法】
    この研究では、2011年から2020年までの10年間にわたり、日本の46都道府県(沖縄県を除く)を対象に、日平均気温と早産発生件数の関連を調べました。調査には日本産科婦人科学会の周産期登録データベースと気象庁の気象データを活用し、気温の影響が現れるまでの時間差(ラグ効果)を考慮しました。

    【結果】
    妊娠期の女性が寒さや暑さにさらされると、早産のリスクが高くなることが明らかになりました。

     ●一日の平均気温が0.8℃(寒さの上位1%)の場合
     早産のリスクが15%増加 (95%信頼区間: 5%~29%)
     ●一日の平均気温が30.2℃(暑さの上位1%)の場合
     早産のリスクが8%増加 (95%信頼区間: 0%~17%)
     ※気温16℃を基準としています。

    今回調査した21万件の早産のうち約5000人は寒さ(16℃未満)に起因すると推測され、それは早産全体の2.3%に及びました。(95%信頼区間0.6%~4.0%)
    また、寒さや暑さによる早産のリスク上昇は、35歳未満の女性や、妊娠34週以降の後期早産において、より強く見られました。

    【意義】
    この研究により、妊娠期の女性が寒さや暑さにさらされることが早産のリスクを高める可能性が明らかになりました。これは、妊娠期の女性に対する介入や予防策において気温に留意することが重要であることを示唆しています。将来的には、例えば熱中症警戒アラートのように、早産の予防対策として妊娠期の女性に対して気温に関する情報を提供し、予防行動を促すことが有効であるかもしれません。地球温暖化の影響をますます身近に感じるようになる中、極端な気温が健康に与える影響を最小限にするために、医療機関は一層の取り組みが求められます。これによって、妊娠期の女性や胎児の健康を守り、社会全体の健康促進につながることが期待されます。

  • Kosugi Y, Plianchaisuk A, Putri O, Uriu K, Kaku Y, Hinay AA Jr, Chen L, Kuramochi J, Sadamasu K, Yoshimura K, Asakura H, Nagashima M, Ito J; Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan) Consortium; Sato K. Characteristics of the SARS-CoV-2 omicron HK.3 variant harbouring the FLip substitution. Lancet Microbe. 2024 Apr;5(4):e313.

  • Tani Y, Kawahara T, Sugihara G, Machida M, Amagasa S, Murayama H, Inoue S, Fujiwara T, Shobugawa Y. Childhood book availability helps to preserve cognitive function in older adults with low education: Results from the NEIGE study. J Gerontol B Psychol Sci Soc Sci . 2024 Apr 3:gbae052.

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    「教育歴が低い場合、子どもの頃に家に本があることが高齢期の認知機能維持に役立つ:NEIGE Study」

    【背景】
    教育歴が低いことが高齢期の認知機能低下と関連することはよく知られている。子どもの頃に家に本があったかどうか(本の利用可能性)は、低学歴の高齢者の認知機能の維持に役立つ可能性がある。本研究の目的は、子どもの頃の本の利用可能性が、教育歴の低さによる高齢期の認知機能の低さを緩和するかを調べこと、および脳領域体積が子どもの頃の本の利用可能性と認知機能との関連を媒介するかどうかを検討することである。

    【方法】
    65~84歳の地域在住日本人高齢者を対象としたNeuron to Environmental Impact across Generations (NEIGE)の横断データを用いた(n=474)。認知機能はMini-Mental State Examination(MMSE)を用いて評価した。子どもの頃の本の利用可能性は、15歳時点に家にあった本の数を質問票にて評価した。脳領域体積は磁気共鳴画像法を用いて測定した。解析には多変量回帰分析と構造方程式モデリングを用いた。

    【結果】
    教育歴の高さと子どもの頃の本の利用可能性は、ともに高齢期の認知機能の高さと独立して関連していた。教育歴の違いごとに分けて解析してみると、教育歴が低い参加者では、子どもの頃の本の利用可能性が認知機能と正の関連を示したが(係数=1.48、95%信頼区間(CI):0.31~2.66)、教育歴が中または高い参加者ではその関連は認められなかった(教育歴中:係数=-0.01、95%CI:-1.44~1.42、教育歴高:係数=-1.21、95%CI:-3.85~1.42)。教育歴が低い参加者では、左上側頭葉皮質体積が子どもの頃の本の利用可能性と認知機能との関連を媒介した。

    【結論】
    教育歴が低い高齢者において、子どもの頃に本が利用可能だった場合、左上側頭葉皮質体積を介して認知機能の維持に役立つ可能性が示唆された。これらの知見を再現するためには、さらなる研究が必要である。

  • 福岡豊、西澤颯大、西沢エリック辰哉、天笠志保、村山洋史、藤原武男、井上茂、菖蒲川由郷. GPSおよび加速度データからの高齢者に共通の身体活動場所の抽出法、電気学会論文誌C. 2024 Apr 1;144(4) :309-315.

  • Kosugi Y, Kaku Y, Hinay AA Jr, Guo Z, Uriu K, Kihara M, Saito F, Uwamino Y, Kuramochi J, Shirakawa K, Takaori-Kondo A; Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan) Consortium; Sato K. Antiviral humoral immunity against SARS-CoV-2 omicron subvariants induced by XBB.1.5 monovalent vaccine in infection-naive and XBB-infected individuals. Lancet Infect Dis. 2024 Mar;24(3):e147-e148.

  • Suzuki E*, Nawa N, Matsuyama Y, DeYoung K, Fujiwara T. The impacts of legalization of physician assisted suicide on binge drinking among US adults. International Journal of Mental Health and Addiction. 2024 Feb 16; https://doi.org/10.1007/s11469-023-01208-6. Online ahead of print.

  • Surkan PJ, Malik A, Perin J, Atif N, Rowther A, Zaidi A, Rahman A. Anxiety-focused cognitive behavioral therapy delivered by non-specialists to prevent postnatal depression: a randomized, phase 3 trial. Nat Med. 2024 Feb 16. doi: 10.1038/s41591-024-02809-x. Online ahead of print.

  • Terada S, Isumi A, Doi S, Tani Y, Fujiwara T. Association between gestational weight gain and behavioral problems of the offspring aged 6–7 years: A population-based study in Japan. Int J Gynaecol Obstet. 2024 Feb 10. doi: 10.1002/ijgo.15410. Online ahead of print.

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    「妊娠中の体重増加量と6-7歳児の行動に関する問題との関連: 日本における集団ベースの研究」

    【目的】
    妊娠中の体重増加量と、小学1年生における行動に関する問題や向社会的行動との関連を明らかにすること。

    【方法】
    「足立区子どもの健康・生活実態調査(A-CHILD)」のデータを用いて、東京都足立区の全公立学校の小学1年生(2017年・2019年・2021年)を対象に後ろ向きコホート研究を実施した(n=11,048、回答率=80.1%)。妊娠中体重増加量は、自記式質問票を用いて、母子健康手帳の記録に基づき保護者が回答した。行動に関する問題(総合的困難さ)や向社会的行動は、子どもの強さと困難さアンケート (SDQ)を用いて保護者が回答した。妊娠中体重増加量をスプライン関数または五分位として扱ったロジスティック回帰モデルを用いて、交絡因子を調整したうえで、妊娠中体重増加量と総合的困難さおよび向社会的行動の異常との関連を検討した。

    【結果】
    妊娠中体重増加量と総合的困難さの関連は逆J字型のパターンを示した。中央値(+10kg)を基準として、 妊娠中体重増加量が10kg未満ではリスクが増加したが、10kg以上では有意なリスク増加は認められなかった。第3五分位(+10kg)と比較し、第1五分位(7kg未満)ではオッズ比1.20、95%信頼区間1.01-1.42、第5五分位(14kg以上)ではオッズ比1.03、95%信頼区間0.85-1.24だった。また、 妊娠中体重増加量が+10kg以上では、向社会的行動の異常のリスクは低下し、第5五分位(14kg以上)ではオッズ比0.77、95%信頼区間0.62-0.95だった。

    【結論】
    妊娠中体重増加量は小学校1年生における総合的困難さや向社会的行動と関連していた。日本産科婦人科学会の示す体重増加の目安の範囲内において、妊娠中の十分な体重増加を促す栄養指導が重要かもしれない。

  • Khin YP, Yamaoka Y, Abe A, Fujiwara T*. Association of child-specific and household material deprivation with depression among elementary and middle school students in Japan. Soc Psychiatry Psychiatr Epidemiol. 2024 Feb;59(2):329-339.

    日本語アブストラクト

    「日本の小中学生の抑うつ症状と子どもおよび家庭の物質的困窮の関連性」

    【背景】
    本研究の目的は、日本の小中学生を対象に、子どもおよび家庭内の物質的困窮と抑うつ症状との関連を調査することである。

    【方法】
    小学校5年生(G5)10,505人、中学校2年生(G8)10,008人とその養育者の横断データを用いた。データは2016年8月から9月にかけて東京都の4市町村で、2017年7月から11月にかけて広島県の23市町村で収集された。養育者は世帯収入と物質的困窮を含む質問票に記入し、子どもは子ども特有の物質的困窮とBirlesonうつ病自己評価尺度日本語版(DSRS-C)を記入した。関連性を調べるために、欠損データのmultiple imputationsを行った後、ロジスティック回帰分析を用いた。

    【結果】
    G5の14.2%、G8の23.6%が、抑うつ症状のリスクを示すDSRS-Cスコアが16以上であった。物質的困窮で調整した場合、G5とG8の両方において、世帯収入は小児期の抑うつ症状と関連しないことがわかった。一方、家庭の物質的困窮の少なくとも1項目は、G8生の抑うつ症状と有意に関連していたが(OR = 1.19, CI = 1.00, 1.41)、G5生では関連していなかった。5項目以上の子ども特有の物質的困窮は、両年齢群において抑うつ症状と有意に関連していた(G5:OR = 1.53, CI = 1.25, 1.88; G8:OR=1.45, CI=1.22,1.73)。

    【結論】
    子どものメンタルヘルスに関する今後の研究では、子どもの視点、特に幼児の物質的困窮を考慮する必要がある。

  • Suzuki A, Tani Y, Anzai T, Isumi A, Doi S, Ogawa T, Moriyama K, Fujiwara T. Association between short stature at grade 1 and permanent teeth caries at grade 6 in elementary school children in Japan: a population-based cohort study. IJERPH. 2024 Jan 17;21(1):105.

    日本語アブストラクト

    「日本の小学生における小学1年生の低身長と小学6年生の永久歯う蝕との関連:人口ベースのコホート研究」

    【背景】
    小児の低身長は栄養状態の低さの指標であり、う蝕との関連が示唆されている。しかし、このテーマに関する縦断的研究は少ない。

    【方法】
    東京都足立区の小学生を対象とした縦断的データを分析した。2015年に、小学1年生の児童の保護者が質問票に回答し、学校健康診断で測定された身長とう蝕の情報が統合され、小学6年生まで追跡された(N = 3576、追跡率 = 83.3%)。小学1年生での低身長(WHOの基準による年齢別身長において-2.01 SD(標準偏差) - -3.00 SD、または-3.00 SD未満)と小学6年生での永久歯う蝕、喪失歯、または処置歯の数(DMFT)との関連を、ロバスト標準誤差を用いた多変量ポアソン回帰を用いて調べた。

    【結果】
    共変量の調整後、小学1年生で低身長の子供は、小学6年生のDMFTが高かった。平均比率(95%信頼区間)は、年齢別身長が-2.01 SD - -3.00 SDの子供では1.17 (0.89 - 1.54)であり、年齢別身長が-3.00 SD未満の子供では2.18 (1.03 - 4.64)だった。

    【結論】
    小学1年生の低身長は、小学6年生での永久歯う蝕の指標となる可能性が示唆された。