
研究業績Publication
2020
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Isumi A, Doi S, Yamaoka Y, Takahashi K, Fujiwara T*. Do suicide rates in children and adolescents change during school closure in Japan? The acute effect of the first wave of COVID-19 pandemic on child and adolescent mental health. Child Abuse Negl. 2020 Dec;110(Pt 2):104680.
日本語アブストラクト
「休校中に子どもの自殺がどう変化するか:新型コロナウイルス感染症流行の第一波が子どものメンタルヘルスに与える短期的影響」
【背景】
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は子どもたちの生活に甚大な影響を及ぼしている。第一波の間に起こった重要な変化のひとつである休校によって、子どもたちは友達や先生など人との接触が減り、家族と過ごす時間が増えた。これは、メンタルヘルスの客観的指標である自殺に良い影響も悪い影響も与えうる。しかし、COVID-19の流行が子どもの自殺にどのような影響を与えているかはまだわかっていない。
【目的】
本研究では、日本で学校が休校になっている期間に注目し、COVID-19流行の第一波が子どもの自殺に与える短期的影響を検討した。
【方法】
データは2018年1月から2020年5月における、20歳未満の子どもの月間自殺数を用いた。ポワソン回帰分析を用いて、休校期間中(2020年3〜5月)と2018年、2019年の同時期の自殺数を比較した。2018年1月から2020年5月の全てのデータを用いたポワソン回帰分析、さらには、過分散をモデル化できる負の2項回帰分析も行い、頑健性を確認した。
【結果】
休校期間中の自殺率は、休校期間外の自殺率と有意な違いが見られなかった(罹患率比 1.15、95%信頼区間 0.81ー1.64)。月の主効果は有意に見られた、つまり、3月に比べて5月は1.34倍(95%信頼区間 1.01ー1.78)自殺が増加していることがわかった。しかし、月と休校の交互作用は統計的に有意でなかった(p>0.1)。
【結論】
本研究は暫定的な結果として、COVID-19流行の第一波が子どもの自殺に与える短期的影響は休校期間中に見られなかったことを明らかにした。
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Matsuyama Y, Isumi A, Doi S, Fujiwara T*. Poor parenting behaviours and dental caries experience in 6- To 7-year-old children. Community Dent Oral Epidemiol. 2020 Dec;48(6):493-500.
日本語アブストラクト
「養育行動と小学1年生のう蝕の関連の横断研究」
【目的】不適切な養育行動と子どものう蝕の関連が示唆されているが、いまだ明らかでない。本研究は保護者の養育行動と小学1年生のう蝕および口腔の健康行動の関連を明らかにすることを目的とした。
【方法】2015年と2017年に東京都足立区で実施された「子どもの健康・生活実態調査」の横断調査に参加した小学1年生計6,703名を対象とした。保護者への質問紙調査で養育行動および子どもの口腔の健康行動(1日2回未満の歯磨き、好きな時間の間食、毎日ジュースを飲むこと)を測定した。学校歯科検診データからう蝕の情報を得、質問紙調査データと突合した。因子分析の結果、不適切な養育行動として、親子の関わりが少ないこと、虐待傾向であること、子の健康行動に注意を払わないこと、の3因子が抽出された。これらの因子得点とう蝕経験歯数および口腔の健康行動との関連をポワソン回帰分析で検証した。
【結果】親子の関わりが少ないことおよび子の健康行動に注意を払わないことは、子どものう蝕が多いことと有意に関連した。因子得点が1標準偏差増加するごとに、う蝕の平均本数がそれぞれ1.05倍(95%信頼区間: 1.03, 1.07)、1.18倍(95%信頼区間: 1.16, 1.21)増加した。これらは口腔の健康行動とも関連した。虐待傾向はう蝕との関連はみられなかったが(平均本数の比: 0.99; 95%信頼区間: 0.96, 1.01)、子どもの口腔の健康行動に有意に関連し、因子得点が1標準偏差増加するごとに1日2回未満の歯磨き、好きな時間の間食、毎日ジュースを飲むことがそれぞれ1.11倍(95%信頼区間: 1.06, 1.16)、1.11倍(95%信頼区間: 1.06, 1.16)、1.06倍(95%信頼区間: 1.00, 1.11)多く見られた。
【結論】親子の関わりが少ないことおよび子の健康行動に注意を払わないことはう蝕が多いことに有意に関連した。虐待傾向も含め、今回抽出された3つの不適切な養育行動のすべてが子の口腔の健康行動が悪いことに関連した。
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Morishita S, Yoshii T*, Okawa A, Inose H, Hirai T, Ogawa T, Fushimi K, Fujiwara T. Comparison of Perioperative Complications Between Anterior Fusion and Posterior Fusion for Osteoporotic Vertebral Fractures in Elderly Patients: Propensity Score-Matching Analysis Using Nationwide Inpatient Database. Clin Spine Surg. 2020 Dec;33(10):E586-E592.
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Nawa N, Kuramochi J, Sonoda S, Yamaoka Y, Nukui, Miyazaki Y, Fujiwara T*. Seroprevalence of SARS‐CoV‐2 in Utsunomiya City, Greater Tokyo, after the first pandemic in 2020. Journal of General and Family Medicine. 2020 Des 16. doi: 10.1002/jgf2.408.
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Aoki H, Ozeki N, Katano H, Hyodo A, Miura Y, Matsuda J, Takahashi K, Suzuki K, Masumoto J, Okanouchi N, Fujiwara T, Sekiya I*. Relationship between medial meniscus extrusion and cartilage measurements in the knee by fully automatic three-dimensional MRI analysis. BMC Musculoskelet Disord. 2020 Nov 12;21(1):742.
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Morishita S, Yoshii T*, Okawa A, Inose H, Hirai T, Yuasa M, Fushimi K, Fujiwara T. Risk factors related to perioperative systemic complications and mortality in elderly patients with osteoporotic vertebral fractures-analysis of a large national inpatient database. J Orthop Surg Res. 2020 Nov 10;15(1):518. doi: 10.1186/s13018-020-02050-5.
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Amagasa S, Inoue S*, Murayama H, Fujiwara T, Kikuchi H, Fukushima N, Machida M, Chastin S, Owen N, Shobugawa Y. Associations of sedentary and physically-active behaviors with cognitive-function decline in community-dwelling older adults: compositional data analysis from the NEIGE study. J Epidemiol. 2020 Nov 5;30(11):503-508.
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Arai K*, Kunisaki R, Kakuta F, Hagiwara S-I, Murakoshi T, Yanagi T, Shimizu T, Kato S, Ishige T, Aomatsu T, Inoue M, Saito T, Iwama I, Kawashima H, Kumagai H, Tajiri H, Iwata N, Mochizuki T, Noguchi A, Kashiwabara T, Shimizu H, Suzuki Y, Hirano Y, Fujiwara T. Phenotypic characteristics of pediatric inflammatory bowel disease in Japan: results from a multicenter registry. Intest Res. 2020 Oct;18(4):412-420.
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Nakagawa M, Nawa N, Takeichi E, Shimizu T, Tsuchiya J, Sato A, Miyoshi M, Kawai-Kitahata F, Murakawa M, Nitta S, Itsui Y, Azuma S, Kakinuma S, Fujiwara T, Watanabe M, Tanaka Y, Asahina Y*; Ochanomizu Liver Conference Study Group. Mac-2 binding protein glycosylation isomer as a novel predictive biomarker for patient survival after hepatitis C virus eradication by DAAs. J Gastroenterol. 2020 Oct;55(10):990-999.
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Koyama Y, Fujiwara T*, Isumi A, Doi S. Association of parental social network diversity with behaviour problems and resilience of offspring in a large population-based study of Japanese children. BMJ Open. 2020 Oct 21;10(10):e035100. doi: 10.1136/bmjopen-2019-035100.
日本語アブストラクト
「親の社会的つながりの多様性と、子どもの問題行動およびレジリエンスとの関連:日本における子どもの大規模調査より」
【背景】ソーシャルネットワークとは、個人を取り巻く社会関係の構造や特性のことであり、親のソーシャルネットワークと子どもの健康との関係について報告されてきた。しかし、ソーシャルネットワークの多様性については、その関係は明らかになっていない。本研究は、親のソーシャルネットワークの多様性が、その子どもの問題行動およびレジリエンスに与える影響を解明することを目的とした。
【方法】2016年に実施された「高知県子どもの生活実態調査」のデータを用いて、小学1年生・5年生・中学2年生の子ども(n=9653)を対象に解析を行った。親が日常的につながっている人の社会的役割の種類の数により親の構造的ソーシャルネットワークの多様性を、ソーシャルサポートを与えてくれる人の社会的役割の種類の数により機能的ソーシャルネットワークの多様性を算出した。親のソーシャルネットワークの多様性および子どもの問題行動とレジリエンスは、質問紙により親の回答を得た。
【結果】親の構造的・機能的ソーシャルネットワークが多様である子どもは問題行動が少なく、向社会的行動とレジリエンスが高かった。構造的・機能的ソーシャルネットワークの多様性と問題行動の関係はそれぞれ36%および43%が親のメンタルヘルスによって説明された。一方、機能的ソーシャルネットワークの多様性と向社会的行動との関係は、親の子に対するポジティブな関わりによって31%説明された。
【考察】子どものメンタルヘルス向上のために子どもに対して直接介入するのではなく、親のソーシャルネットワークの多様性に焦点を当てた新たな介入の可能性を提示した。
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Koyama Y, Fujiwara T*, Isumi A, Doi S. Is Japan’s child allowance effective for the well-being of children? A statistical evaluation using data from K-CHILD study. BMC Public Health. 2020 Oct 6;20(1):1503.
日本語アブストラクト
「子ども手当は、子どものウェルビーイングに効果的か?:高知県子どもの生活実態調査による結果」
【背景】子ども手当は、世帯に対する金銭的サポートによって、子どもの貧困格差を縮小することを目的とした社会保障制度の一つであるが、この制度が子どもの健康に与える影響については明らかになっていない。したがって、本研究は子ども手当が、子どもの身体的・精神的健康に与える影響および、親の子どもに対する投資に与える影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】2016年に実施された「高知県子どもの生活実態調査」のデータを用い、高知県に在住している小学1年生・小学5年生・中学2年生(n=8207)を対象とした横断研究である。保護者は子ども手当の受給状況、子どものBMI、問題行動について質問紙で回答した。抑うつ症状および主観的健康度については子ども自らが回答した。プロペンシティスコアマッチングおよび多重回帰分析を用いて交絡因子について調整した。
【結果】子ども手当を受け取っている世帯の子どもは問題行動が少なく、肥満のリスクが少なかった。親の子どもに対する投資およびその他の健康指標については統計的な優位差は見られなかった。
【結論】子ども手当は、子どもの問題行動および肥満のリスクを減らす可能性のあることが示唆された。今後、縦断調査などを用いて、子ども手当の用途について詳細に検討すること、また子どもの健康との関係のメカニズムを明らかにすることが必要である。
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Koyama Y, Fujiwara T*, Isumi A, Doi S. Degree of influence in class modifies the association between social network diversity and well-being: Results from a large population-based study in Japan. Social Science & Medicine. 2020 Sep;260:113170.
日本語アブストラクト
「子どものクラス内における影響力は、ソーシャルネットワークの多様性とウェルビーイングの関係性を修飾するのか」
【背景】ソーシャルネットワークの多様性は身体的・精神的健康と関係があることが知られている。しかし、この関係は、家族以外の人との関係性が重要度を増してくる思春期の子どもにおいて報告がなく、また、この関係を修飾すると考えられる子ども自身の社会的地位を考慮した研究はない。そこで、本研究は、思春期の子どもにおいて、ソーシャルネットワークの多様性と身体的・精神的健康との関係を明らかにすること、およびクラス内における主観的な影響力がその関係性を修飾するのかを明らかにすることを目的とした。
【方法】2016年に実施された「高知県子どもの生活実態調査」のデータを用いて、小学5年生・中学2年生・高校2年生の子ども(n=9998)を対象に解析を行った。ソーシャルネットワークの多様性は、日常的な人間関係において担っている社会的役割の種類によって評価した。社会的地位は、「あなたの意見や行動はクラスメイトにどの程度影響を与えていますか」という質問を用いて、クラスにおける影響力により評価した。
【結果】ソーシャルネットワークが多様である子どもは、抑うつ症状及び問題行動が少なく、主観的健康度が高く、向社会的行動が多いことが明らかとなった。ソーシャルネットワークの多様性と抑うつ症状および主観的健康度の関係は、クラス内における主観的影響力の低い子どもにおいて強くなることが示された。
【考察】ソーシャルネットワークの多様性と思春期の子どもの身体的・精神的健康の間には用量反応関係があり、多様であるほど健康であることが明らかとなった。また、クラスでの影響力が低い子どもではその関係性が強くなることが示され、ソーシャルネットワークの多様性とクラスにおける社会的地位が子どもの健康を高める手掛かりとなることが示唆された。
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Sato R, Fujiwara T*, Kino S, Kawachi I. The association between father involvement in caregiving and early childhood overweight or obesity. Pediatr Obes. 2020 Sep;15(9):e12652. doi: 10.1111/ijpo.12652.
日本語アブストラクト
「父親の育児参加と幼児期の子供の肥満との関連」
【背景】近年、父親の育児参加が増加傾向であるにもかかわらず、育児と子供の肥満に関する研究において父親が与える影響は明らかになっていない。
【目的】日本の縦断データを用いて、父親の育児参加の有無と子供の肥満との関連を検討する。
【方法】本研究は日本におけるコホート研究である21世紀出生縦断調査の2001年、2002年、2004年のデータを用いた(対象者29,584名)。父親の育児参加の有無(18カ月時)と3.5歳時の子供の肥満の有無を変数とした解析を行った。また、父親の育児参加の有無と母親の就業の有無に基づいて対象者を4つの集団に割り付け、交互作用を評価した。
【結果】父親の育児参加の度合いが高い子供は肥満である割合が低かった(オッズ比:0.96、95%信頼区間:0.94-0.98)。また、母親が就業している場合、父親の育児参加の度合いが高い子供は低い子供と比較して肥満である割合が30%低かった(95%信頼区間:0.55-0.90)。
【結論】本研究から、父親の育児参加の有無は幼児期の子供の肥満と関連することが明らかになり、また、母親の就業の有無と子供の肥満との関連にも影響することが示唆された。育児休暇の拡張等、両親がともに育児に参加することを支援する社会的制度を整備することが、子供の肥満の防止のために必要であると考えられる。
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Doi S*, Isumi A, Fujiwara T. The association between parental involvement behavior and self-esteem among adolescents living in poverty: Results from the K-CHILD study. Int J Environ Res Public Health. 2020 Aug 28;17(17):6277.
日本語アブストラクト
「生活困難下にある思春期児童における養育行動と自己肯定感の関連:高知県子どもの生活実態調査」
【背景】生活困難下にある児童のなかでも、自己肯定感が高い児童とそうではない児童がいますが、その理由は明らかになっていません。生活困難下にある児童の自己肯定感を向上する重要な要因として親の養育行動が挙げられます。本研究では、生活困難下にある児童において、どの養育行動がより自己肯定感の向上につながるかを明らかにすることを目的としました。
【方法】2016年に実施された高知県子どもの生活実態調査(K-CHILD)のデータ(N=10,784)の一部を用いて、高知県に住む小学5年生、中学2年生、高校2年生の児童およびその保護者を対象としました。児童と保護者は、親子の関わりに関する9個の養育行動(例:「学校生活について話す」)、子どもの身体的健康へのケアに関する5個の養育行動(例:「必要なときに病院に連れていく」)を含む14個の養育行動、社会経済的状況などについて質問紙で回答しました。14個の養育行動、9個の親子の関わり、5個の子どもの身体的健康へのケアそれぞれについて、自己肯定感との関係を検証しました。
【結果】養育行動が多ければ多いほど、児童の自己肯定感の高さを関係していました。この関係性は、生活困難下にある児童においても、そうではない児童においても示され、生活困難と養育行動の相互作用は認められませんでした。また、親子の関わり、子どもの身体的健康へのケアのいずれも、自己肯定感の高さと関係していましたが、親子の関わりの方が効果量は大きいことが明らかになりました。
【考察】生活困難下にある児童の自己肯定感を向上するために、保護者は子どもとの関わりを増やし、子どもの身体的健康面へのケアをすることが重要だと考えられます。
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Hirata K, Nambara T, Kawatani K, Nawa N, Yoshimatsu H, Kusakabe H, Banno K, Nishimura K, Ohtaka M, Nakanishi M, Taniguchi H, Arahori H, Wada K, Ozono K, Kitabatake Y*. 4-Phenylbutyrate ameliorates apoptotic neural cell death in Down syndrome by reducing protein aggregates. Sci Rep. 2020 Aug 20;10(1):14047.
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Amagasa S, Inoue S*, Murayama H, Fujiwara T, Kikuchi H, Fukushima N, Machida M, Chastin S, Owen N, Shobugawa Y. Changes in rural older adults’ sedentary and physically-active behaviors between a non-snowfall and a snowfall season: compositional analysis from the NEIGE study. BMC Public Health. 2020 Aug 17;20(1):1248.
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Yoshii T*, Morishita S, Inose H, Yuasa M, Hirai T, Okawa A, Fushimi K, Fujiwara T. Comparison of perioperative complications in anterior decompression with fusion and posterior decompression with fusion for cervical ossification of the posterior longitudinal ligament: Propensity score matching analysis using a nation-wide inpatient database. Spine. 2020 Aug 15;45(16):E1006-E1012.
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Doi S*, Fujiwara T, Isumi A. Association between maternal adverse childhood experiences and child’s self-rated academic performance: Results from the K-CHILD study. Child Abuse Negl. 2020 Jun;104:104478.
日本語アブストラクト
「母親の子ども期の逆境体験と子どもの学業成績との関連:高知県子どもの生活実態調査」
【背景】母親の子ども期の逆境体験(Adverse Childhood Experiences: ACEs)は、その子どもの身体的・精神的健康や発達に悪影響を及ぼすことがわかっている。一方で、母親のACEsが思春期児童の学業成績と関連するかは明らかになっていない。
【目的】母親のACEsが、子どもの学業成績と関係するかを明らかにする。
【方法】本研究では、2016年に実施された高知県子どもの生活実態調査のデータの一部を用いて、高知県の小学校5年、中学校2年、高校2年の全児童・生徒およびその保護者10,810組を対象とした。母親のACEs(両親の離婚、虐待やネグレクトなど7項目)、年齢など基本属性、幼少期の経済状況、現在のメンタルヘルスおよび虐待傾向について、母親に回答を求めた。子どもの基本属性、学校の成績に関する自己評価(1項目5件法)、自己肯定感について、子どもに回答を求めた。保護者回答が母親以外である、ACEsと学業成績に欠損がある、自己肯定感が低いことで学業成績の自己評価が低くなるというバイアスを回避するために、自己肯定感の得点が下位10%以下であった児童を除外し、7,964名を解析の対象とした。母親のACEs(0個、1個、2個、3個以上)を説明変数、子どもの自己評価による学業成績を目的変数とした順序ロジスティック回帰分析を行なった。
【結果】母親の年齢を交絡変数として調整した場合、母親のACEsと子どもの学業成績の関連は用量反応関係にあった(p trend < 0.001)。母親のACEsの中でも、親の不在(両親の離婚または親の死)が子どもの低い学業成績と関係していた(オッズ比:1.31、95%信頼区間:1.16-1.47)。一方、幼少期の被虐歴と子どもの学業成績との関連は有意ではなかった(オッズ比:1.10、95%信頼区間:0.99-1.22)。
【結論】本研究から、母親のACEsの経験個数が多いほど、その子どもの学業成績は低くなることが明らかとなった。また、母親のACEsの中でも親の不在が子どもの成績に影響している可能性が示唆された。今後は、母親のACEsが子どもの学業成績に与えるメカニズムを解明する必要がある。
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Tani Y*, Fujiwara T, Kondo K. Cooking skills related to potential benefits for dietary behaviors and weight status among older Japanese men and women: a cross-sectional study from the JAGES. Int J Behav Nutr Phys Act. 2020 Jun 26;17(1):82.
日本語アブストラクト
「高齢者の調理技術と食行動及び体格との関連について」
■背景:家庭で調理をすることが、食事の質向上や適切な体重維持に重要であることが報告されています。家庭での調理を促すには、食事を準備する人の調理技術が重要であると考えられますが、調理技術が家庭での調理頻度や健康に及ぼす影響についてはほとんど明らかにされていません。また、調理技術には性差があり、食事を作ってくれる人がいない男性の場合、調理技術の低さが大きな健康リスクにつながる可能性があります。そこで、本研究では日本人向け調理技術尺度を作成し、高齢者の調理技術と食行動及び体格との関係性について男女別に解析を行い、さらに食事を作ってくれる人がいない男性についてもそれらの関係性を調べました。
■対象と方法:2016年に実施したJAGES調査に参加した全国39市町在住の要介護認定を受けていない65歳以上の高齢男性9,143名、女性10,595名。調理技術は、参加者に7項目(1, あなたの調理技術はどのくらいですか 2, 野菜や果物の皮をむくことができますか 3, 野菜や卵をゆでることができますか 4, 焼き魚を作ることができますか 5, 野菜や肉の炒め物を作ることができますか 6, 味噌汁を作ることができますか 7, 煮物を作ることができますか)について全くできないからよくできるまで、6段階で評価(1〜6点)してもらい、全項目の平均点を調理技術スコアとし、スコア>4.0を高調理技術群, 2.1–4.0を中調理技術群, ≤2.0を低調理技術群と定義しました。女性は低調理技術群の割合が1%と少なかったため、中調理技術群と合わせたものを中/低調理技術群(≤4.0)としました。「あなたの日頃の食事は、主にどのように準備されますか」の問いに「家族が調理」以外を選択した男性を「食事を作ってくれる人がいない男性」と定義しました。食行動は低調理頻度(男:0回、女:≤2回/週)、高外食頻度(≥3回/週)、低野菜果物摂取(<1回/日)と定義しました。体格はやせをBMI < 18.5 kg/m2、肥満を≥ 27.5 kg/m2と定義しました。低調理頻度リスク、高外食頻度リスク、低野菜果物摂取リスク、やせリスク、肥満リスクは、年齢、教育歴、収入、婚姻状況、治療中または後遺症のある病気(がん、心臓病、脳卒中、糖尿病、高血圧、高脂血症)の影響を調整して統計学的な評価を行いました。
■結果:調理技術スコアの平均点は男性より女性の方が高く、男4.1点、女5.6点でした。男性では、高調理群が4751人、中調理群が3269人、低調理群が1123人、女性では、高調理群が9968人、低調理群が627人でした。調理頻度は、男性では54%(n=4917)が調理をしていないのに対し、女性では83%(n=8762)が週に5回以上調理しており、週2回以下の割合は9%(n=931)でした。男性は週3回以上外食していた人が8%(n=704)、女性では3.5%(n=371)でした。年齢、教育歴、収入、婚姻状況、治療中または後遺症のある病気の影響を取り除いて解析した結果、高調理群に比べ、調理技術が低いと、低調理頻度リスクが男女とも約3倍、食事を作ってくれる人がいない男性では8倍、高外食頻度リスクは男性で1.3倍、食事を作ってくれる人がいない男性では2.3倍、低野菜・果物摂取リスクは女性で1.6倍、やせリスクは男性で1.4倍、食事を作ってくれる人がいない男性では3倍でした。
■結論:調理技術が低いと不適切な食行動とやせのリスクとなる可能性が示唆されました。さらに、食事を作ってくれる人がいない男性ではそのリスクが高いことがわかりました。
■本研究の意義:高齢期になると、生活環境の変化や配偶者が調理困難になる等により家庭内で食事を準備する人が変化する可能性があります。調理技術を高める介入が健康維持に効果的かもしれません。
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Yamada A, Isumi A, Fujiwara T*. Association between Lack of Social Support from Partner or Others and Postpartum Depression Among Japanese Mothers: A Population-Based Cross-Sectional Study. Int J Environ Res Public Health. 2020 Jun 15;17(12):4270.
日本語アブストラクト
「夫や他の人からのソーシャルサポートの欠如と母親の産後うつとの関連:人口ベース横断研究」
【背景・目的】ソーシャルサポートの欠如は産後うつのリスク因子として知られている。しかし、夫や他の人からのソーシャルサポートの欠如と産後うつの関連は十分解明されていない。そこで本研究ではこれらの関連を明らかにすることを目的とした。
【方法】2012年10~11月に愛知県で3~4ヶ月健診に参加した母親9707名に質問紙を配布し6590名(回答率:68%)から回答を得た。夫や他の人からのソーシャルサポートは、夫および他の人(両親、親戚、友人)に育児について相談できるかに基づいて評価した。産後うつはエジンバラ産後うつ病質問票を用いて評価した。母親を4つのカテゴリーすなわち、夫および他の人のいずれのサポートもなし、夫のサポートのみあり、他の人のサポートのみあり、夫および他の人の両方のサポートあり、に分類し多重ロジスティック回帰分析を行った。
【結果】夫および他の人の両方のサポートのある母親と比べ、夫および他の人のいずれのサポートもない母親では産後うつが7.22倍(オッズ比:7.22, 95%信頼区間:1.76–29.6)、夫のみのサポートがある母親では2.34倍(オッズ比:2.34, 95%信頼区間:1.37–3.98)、他の人のみのサポートがある母親では3.13倍(オッズ比:3.13, 95%信頼区間:2.11–4.63)、多かった。
【結論】他の人からのソーシャルサポートがある母親においても、夫からのソーシャルサポートの欠如は産後うつのリスクとなることが明らかとなった。夫からのサポートのない母親に着目した産後うつ予防の取り組みが必要であると考えられる。
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Yang J, Tani Y, Tobias DK, Ochi M, Fujiwara T*. Eating Vegetables First at Start of Meal and Food Intake among Preschool Children in Japan. Nutrients. 2020 Jun 12;12(6):1762.
日本語アブストラクト
「保育園児における野菜から食べることと食物摂取量との関連」
【背景】食行動は、食事の質や長期的な健康にとって重要です。本研究では、就学前の子どもたちが、食事の際に「最初に野菜を食べる」という食行動と食物摂取量との関連を調べました。
【方法】東京都足立区にある7つの保育園の幼児135人を対象とした横断データを用いました。保護者は、子どもの食行動と食事に関する調査に記入しました。食事の調査は幼児用簡易型自記式食事歴法質問票(BDHQ3y)を用いました。最初に野菜を食べる頻度とそれぞれの食品群の食物摂取量を頻度線形回帰分析にて解析し、パーセント差と対応する95%信頼区間(95%CI)を算出しました。
【結果】子ども達が食事の際に最初に野菜を食べる頻度は、「毎回」が25.2%、「時々」が52.6%、「ほとんどまたはまったくない」が22.2%でした。多変量解析の結果、他の共変量を調整した後でも、最初に野菜を食べる行動と野菜摂取量については有意な関連があり、最初に野菜を食べる頻度が「ほとんどまたはまったくない」群と比較して、「時々」群では27%(95%CI:0〜63%)、「毎回」群では93%(95%CI:43–159%)でした。果物、肉、魚、穀類、お菓子など、他の食品群では、最初に野菜を食べる頻度による摂取量に有意差は見られませんでした。
【結論】日本の就学前児童では、食事の際に最初に野菜を食べる頻度が多い子どもは、最初に野菜を食べる頻度が少ない子どもと比較して、野菜の総摂取量が多いことがわかりました。
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Doi S, Fujiwara T*, Isumi A, Mitsuda N. Preventing postpartum depressive symptoms using an educational video on infant crying: A cluster randomized controlled trial. Depress Anxiety. 2020 May;37(5):449-457.
日本語アブストラクト
「乳児の泣きに関する教育ビデオによる産後うつ症状の予防効果:クラスターランダム化比較試験」
【背景・目的】母親の産後の抑うつ症状のリスク要因の中でも、乳児の泣きに対する認識と対処行動は変容可能なリスク要因である。乳児の泣きは虐待(乳児の揺さぶりや口塞ぎ)につながることから、乳児の泣きに関する教育ビデオが複数開発され、虐待の予防効果が示されている。一方、乳児の泣きに関する教育ビデオによる産後の抑うつ症状の予防効果は明らかにされていない。そこで本研究では、産科での入院中(産後1週間)に、乳児の泣きに関する教育ビデオを視聴することによって、産後1ヶ月時点で抑うつ症状を呈する母親の割合が減少するか検討することを目的とした。また、乳児の泣きに対する認識と対処行動は母親の年齢によって異なるため、母親の年齢によって予防効果が異なるかも検討した。
【方法】大阪府の150の産科医療機関のうち47施設が研究参加に同意した。地域別および病院の機能別に層別化し、参加施設を介入群と対照群に無作為に割り付けた。介入群の母親は、産後1週間の入院中に約11分の乳児の泣きに関する教育ビデオを視聴した。44施設(介入群22施設、対照群22施設)が実施し、産後1ヶ月時点の質問紙への回答が得られた介入群1,040名、対照群1,561名を解析対象とした(回答率:介入群=47.2%、対照群=69.3%)。産後の抑うつ症状の評価には、Edinburg Postnatal Depression Scale(EPDS)を使用し、9点以上を「抑うつ症状あり」とした。
【結果】産後1ヶ月に抑うつ症状を呈していた母親は、対照群で250名(16.0%)、介入群で142名(13.7%)であった。Intention-to-treat analysisの結果、介入群と対照群で産後の抑うつ症状の割合に差はなかった(OR=0.85; 95%CI=0.64-1.12)。一方、25歳未満の母親を対象とした場合、対照群と比べて介入群の抑うつ症状を呈する母親が67%減少していた(OR=0.33; 95%CI=0.15-0.72)。25歳以上の母親を対象とした場合には、予防効果は認められなかった(OR=0.94; 95%CI=0.70-1.26)。
【結論】産後1週間の入院中における乳児の泣きに関する教育ビデオの視聴によって、産後1ヶ月の抑うつ症状を予防する効果は認められなかった。しかし、若年の母親(25歳未満)に限った場合は、乳児の泣きに関する教育ビデオ視聴によって産後の抑うつ症状が予防されることが明らかとなった。産後1週間の入院という既存の枠組みに加えられること、専門的スタッフが必要ないことなど、低いコストで実施可能な予防的介入の一つとなるだろう。今後は、若年以外の母親に対する予防的介入について検討する必要がある。
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Shinsugi C, Tani Y, Kurotani K,Takimoto H, Ochi M, Fujiwara T*. Changein growth and diet quality among preschool children in Tokyo, Japan. Nutrients. 2020 May 1;12(5):1290.
日本語アブストラクト
「就学前児童の食事の質と発育の変化の関連」
背景:幼少期における健やかな発育には、質・量ともに適切な食事摂取が重要である。本研究は、就学前児童の食事の質と1年後の発育状況との関連を検討することを目的とした。
方法:東京都足立区保育園の幼児110名(男児54名及び女児56名、ベースライン時4-5歳)を解析対象とした。体格は、WHOの成長曲線を基に、年齢に対する身長のZスコア(height-for-age z-score, HAZ)及び年齢に対するBMIのZスコア(BMI-for-age z-score, BAZ)を算出し、身体発育状況を評価した。食事の質スコアは、日本人幼児用簡易型自記式食事歴訪質問票(BDHQ3y)を用いて収集した食事摂取量より、食事バランスガイドを基に、主食、副菜、主菜、牛乳・乳製品、果物、総エネルギー、菓子・嗜好飲料由来のエネルギーの各摂取量を10点満点として評価し、70点満点の食事バランスガイド遵守得点を算出した。
結果:ベースライン時の痩せ(BAZ<-1SD)及び発育阻害(HAZ<-2SD)の割合は、4.6%、10.0%、肥満を含む過体重(BAZ>+1SD)の割合は14.6%であった。回帰分析の結果、食事の質と1年後の発育には統計的に有意な関連はみられなかった(低スコアと比べて、BAZ:中スコアβ= 0.16(95%信頼区間: -0.29-0.60)、高スコアβ= −0.14(95%信頼区間: −0.61-0.33)、HAZ:中スコア β= −0.15(95%信頼区間: −0.50-0.21)、高スコアβ= −0.06(95%信頼区間: −0.43-0.30)。
結論:幼児の健やかな発育に資する適切な食事摂取に関して、さらなる研究が必要である。
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Morishita S, Yoshii T*, Okawa A, Fushimi K, Fujiwara T. Comparison of perioperative complications between anterior decompression with fusion and laminoplasty for cervical spondylotic myelopathy: Propensity score-matching analysis using Japanese diagnosis procedure combination database. Clin Spine Surg. 2020 Apr;33(3):E101-E107.
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Michihata N, Fujiwara T*, Okuyama M. Impact of a govermnmental intervention to improve access to child psychiatric services in Japan. Ann Clin Epidemiol. 2020 Apr 28;2(2):51-60.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ace/2/2/2_No.20-07/_article/-char/ja/
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井上裕子、松山祐輔、伊角彩、土井理美、越智真奈美、藤原武男*.「子どものう蝕に対する保護者の消極的受診態度に関する要因の探索的研究」日本公衆衛生雑誌. 2020;67(4):283-294.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jph/67/4/67_19-026/_article/-char/ja/
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Fujiwara T*, Isumi A, Sampei M, Yamada F, Miyazaki Y. Effectiveness of using an educational video simulating the anatomical mechanism of shaking and smothering in a home-visit program to prevent self-reported infant abuse: A population-based quasi-experimental study in Japan. Child Abuse Negl. 2020 Mar;101:104359.
日本語アブストラクト
「揺さぶりに関する解剖学的メカニズムと口塞ぎに関する教育的ビデオを家庭訪問で使用した場合の自己申告乳児虐待の予防効果:日本における人口ベースの擬似実験的研究」
背景:より視聴者にとってインパクトのある、乳児の頭が揺さぶられることによってどうなるかをコンピューターグラフックスによる解剖学的なメカニズムに基づいて示したビデオの効果検証を行ったものはない。また、泣きに対して口塞ぎを行なってはいけないことを明示したビデオの効果検証もこれまでにない。
目的:本研究は、乳児の泣きおよび揺さぶり、口塞ぎの危険性に関する教育的ビデオを産後2ヶ月における家庭訪問で視聴させた時に、4ヶ月健診における自己申告の揺さぶりおよび口塞ぎがどの程度予防できるのかを検証することである。
方法:日本のA市における擬似実験的研究として、助産師、保健師、トレーニングされたボランティアによる産後2ヶ月時の家庭訪問において教育的ビデオの介入を行った。4ヶ月健診時において、対象となった産婦にビデオの視聴状況、自己申告による揺さぶり、口塞ぎ行動および他の共変量について質問紙で調査した。ビデオ視聴と自己申告の揺さぶり、口塞ぎへ関係について多変量ロジスティック解析を行った。
結果:合計で5961名の産婦が質問紙に有効回答をした(有効回答率:73.8%)。調整したモデルにおいて、ビデオを見た産婦は、乳児を揺さぶる割合が74%(オッズ比:0.36, 95%信頼区間:0.21-0.64)、口塞ぎの割合が43%(オッズ比:0.57, 95%信頼区間:0.37-0.89)、どちらかの乳児虐待は52%(オッズ比:0.48, 95%信頼区間:0.33-0.69)、低かった。
結論:乳児の泣きおよび解剖学的なメカニズムに基づく揺さぶりおよび口塞ぎの危険性に関する教育的ビデオは産後4ヶ月時における自己申告の揺さぶりおよび口塞ぎを半減させる可能性が示唆された。
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Miura R, Tani Y, Fujiwara T*, Kawachi I, Hanazato M, Kim Y. Multilevel analysis of the impact of neighborhood environment on postpartum depressive symptoms. J Affect Disord. 2020 Feb 15;263:593-597.
日本語アブストラクト
「近所の環境が産後うつ症状に与える影響に関するマルチレベル分析」
【背景】日本では10人に1人の母親が産後うつを経験します。うつの個人的、社会的なリスクファクターについては報告されてきましたが、近所の環境に関する研究は少ないのが現状です。そこで本研究では、日本人女性における近所の環境と産後うつの関連について調べました。
【方法】2012年に名古屋市で3,4か月健診の際に実施した母親を対象とした質問紙調査のデータを用いました。産後うつ症状は、エジンバラ産後うつ病質問票(EPDS)で評価しました。近所の環境は、地理情報システムに基づき、産後の母親が日常的に訪れるスーパー、コミュニティセンター、遊び場の小学校区ごとの数で評価しました。データの階層構造を考慮して、有効回答の得られた2298名を338の小学校区にネストし、マルチレベル分析を行いました。
【結果】母親の年齢などの個別要因で調整し、遊び場の多い小学校区に住んでいる母親の方が、EPDSが低い、つまり産後うつになりにくいという関連がみられました(回帰係数: -0.12、95%信頼区間: -0.24, -0.01)。遊び場以外の環境要因で調整した後も同様の関連がみられました(回帰係数: -0.14、95%信頼区間: -0.27, -0.02)。
【結論】これらの結果は、近所に遊び場があることが産後うつに予防的な効果があることを示唆しました。
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Yamaoka Y, Fujiwara T*, Fujino Y, Matsuda S, Fushimi K. Incidence and age distribution of hospitalized presumptive and possible abusive head trauma of children under 12 months old in Japan. J Epidemiol. 2020 Feb 5;30(2):91-97.
日本語アブストラクト
「日本における虐待による頭部外傷(AHT)の入院発生率と月齢分布」
【背景】乳幼児の致死的な虐待の多くは虐待による頭部外傷(AHT)である。しかし、日本におけるAHTの入院症例の発生率は報告されていない。本研究では12ヶ月未満乳児の頭蓋内損傷による入院症例の発生率と月齢分布について調べることを目的とした。
【方法】包括医療費支払い制度(DPC)のデータを用いて、2010〜2013年に36ヶ月未満の頭蓋内損傷にて入院した症例を調べた。米疾病管理センター(CDC)が推奨する疾病分類コード(ICD10)におけるコードの組み合わせにより、「確定的なAHT」と「AHTの可能性あり」を定義した。
【結果】2010〜2013年におけるAHTの発生率は、年間10万人乳児あたり「確定的なAHT」 が7.2人(95% 信頼区間: 7.18-7.26)、「AHTの可能性あり」が41.7人(95%信頼区間: 41.7-41.8) であった。月齢分布は、「確定的なAHT」と「AHTの可能性あり」のどちらでも、2ヶ月と8ヶ月にピークを認めた。
【結論】本研究は、国内におけるDPCデータを用いて、「確定的なAHT」と「AHTの可能性あり」の入院症例における発生率を報告した初めての研究である。特にリスクの高い月齢における予防的介入の効果評価を行うために、このデータを用いたさらなる研究が必要である。