研究業績 Teaching

研究業績Publication

2022

  • Kobayashi M, Matsuyama Y, Nawa N, Isumi A, Doi S, Fujiwara T*. Association between community social capital and access to preventive dental care among elementary school children in Japan. Int J Environ Res Public Health. 2022 Dec 21;20(1):47.

    日本語アブストラクト

    「日本の小学生における地域ソーシャルキャピタルと歯科検診へのアクセスとの関連性」

    【背景】
    地域のソーシャルキャピタルと子どもの虫歯の関連性は報告されているが、歯科検診に焦点を当てた研究は少ない。本研究では,日本の小学校1年生(6~7歳)を対象に,地域のソーシャルキャピタルと歯科検診の受診との関連を調査した。

    【方法】
    東京都足立区の小学校1年生(6-7歳)を対象に、2017年(n=5260,回答率:81.6%)と2019年(n=5130,回答率:78.8%)に全69小学校の小学1年生の保護者に対して実施した「足立区子どもの健康・生活実態調査」のデータを用いて,親が評価した地域のソーシャルキャピタル(社会信頼,結束,共助の合計点)と子どもの歯科健診(治療以外の目的で年1回以上歯科健診)の関連を調べた。子どもの月齢、性別、母親の学歴、母親の就業状況、兄弟の有無、祖父母との同居、学区内の歯科医院の密度を調整した、小学校区を単位とするマルチレベル回帰分析を用いた。

    【結果】
    分析対象となった7936人のうち、82.7%の子どもが少なくとも年に1回、歯科検診を受けていた。個人レベルのソーシャルキャピタルは,子どもの歯科検診利用率と正の関連を示した(1四分位範囲(IQR)あたりの有病率比(PR) = 0.935 ;95%信頼区間(CI): 0.877-0.996 )。地域のソーシャルキャピタルは、子どもの歯科検診利用率との有意な関連は見られなかった(PR = 0.934 ; 95% CI: 0.865~1.008)。

    【考察】
    個人レベルのソーシャルキャピタルは、日本の小学生における歯科検診を促進する可能性が示唆された。

  • Hirama C, Zeng Z, Nawa N, Fujiwara T*. Association between cooperative attitude and high-risk behaviors on spread of COVID-19 infection among medical students in Japan. Int J Environ Res Public Health. 2022 Dec 9;19(24):16578.

    日本語アブストラクト

    「日本の医学生におけるCOVID-19パンデミックに関する協調的態度とハイリスク行動との関連」

    ハイリスク行動が若者のCOVID-19パンデミックに与える影響は、取り組むべき重要な問題である。本研究では、協調性とハイリスク行動との関連を分析した。東京医科歯科大学の医学部4年生を対象に横断研究を行った。学生には、「以前は協力して課題を遂行しなかった見知らぬ同級生と一緒に課題を遂行する」という仮想的な状況において、協力的態度について質問した。回答項目は以下の通りである: 回答項目は、「協力する(協力型)」、「協力したくないので一人でやる(非協力型)」、「協力したくないので相手に一人でやらせる(懲罰型)」であった。外食とワクチン接種の忌避をCOVID-19パンデミックの高リスク行動として扱った。ポアソン回帰を用いて、デモグラフィックで調整した上で、協力的態度と各ハイリスク行動との関連を調査した。98名中、「非協力型」23名(23.5%)、「協力型」44名(44.9%)、「懲罰型」31名(31.6%)であった。協力型の学生は非協力型の学生に比べ2.77倍(PR:2.77、95%CI:1.03-7.46)、懲罰型の学生は3.16倍(PR:3.16、95%CI:1.14-8.75)外食・飲酒のリスクが高かった。医学生では、「協力型」と「懲罰型」がパンデミック時の外食の高リスク群であった。

  • Saimon Y, Doi S, Fujiwara T*. No moderating effect of coping skills on the association between bullying experience and self-esteem: Results from K-CHILD study. Front Psychol. 2022 Dec 14;13:1004482.

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    「対処スキルを有することはいじめと自己肯定感の関係に影響しない:高知県子どもの生活実態調査」

    【背景】
    いじめられた経験と低い自己肯定感との関連に対する対処スキルの調整効果を調べた研究はほとんどない。本研究では、日本の小中学生を対象に、いじめられた経験と自己肯定感の関連に対処スキルが調整効果を持つかどうかを検討することを目的とした。

    【方法】
    2016年に高知県で実施された子どもの健康・生活実態調査(Kochi Child Health Impact of Living Difficulty(K-CHILD)study)のデータを使用した。研究対象者は、高知県の小学5年生と中学2年生で合った。子ども5,991人を対象とした質問紙で、いじめられた経験、自己肯定感(日本語版Harter’s Perceived Competence Scale for Children)、6種類からなる対処スキル(小学生のコーピング尺度短縮版)の評価を行った。多変量線形回帰分析により、いじめられた経験と自己肯定感の関連を検討することに加え、6種類の対処スキルが相互作用項としていじめられた経験と自己肯定感の関連に対する調整効果を検討した。

    【結果】
    いじめられた経験と自己肯定感の低さが関連していた。交絡要因を調整した場合でも、6種類の対処スキルはいずれも、いじめられた経験と低い自己肯定感との関連を緩和しなかった(交互作用のPはすべて>0.15)。

    【考察】
    対処スキルは、いじめられた経験と自己肯定感との関連を緩和しなかったことから、いじめられた経験の悪影響を緩和するために対処スキルを高める介入は期待できない可能性が示唆された。

  • Yamaoka Y, Doi S, Isumi A, Fujiwara T*. Health and social relationships of mothers of children in special education schools. Res Dev Disabil. 2022 Dec;131:104374.

    日本語アブストラクト

    「特別支援学校在籍児童の母親の健康と社会的関係性」

    【背景と目的】
    日本では、特別支援学校の児童生徒数が増加している。本研究では、日本国内の人口ベースのサンプルを用いて、特別支援学校への在籍と、その学校に通う子どもを持つ母親の健康・社会的関係性との関連を検討することを目的とした。

    【方法】
    本研究では、2016年の高知県子どもの健康影響調査(K-CHILD)のデータを使用した。高知県のすべての学校の小学1年生、5年生、8年生、11年生の子どもが対象となった(n = 12,623)。学校種別(普通科または特別支援学校)と母親の心身の健康および社会的関係性との関連を多変量回帰モデルにより検討した。

    【結果】
    特別支援学校の子どもは134人(1.1%)、普通学校の子どもは12,489人であった。特別支援学校の児童の母親は、BMIが高く、精神的健康状態が悪く、ご近所づきあいに関するスコアが低い傾向があった。通常学級の子どもの母親は、子どもの行動問題が高いほどBMIが高くなった。

    【結論】
    特別支援学校に通う子どもの母親は、肥満、精神的健康の低下、社会的関係性の減少のリスクを抱えている。子どもの行動上の問題や学校のシステムに応じて、介護者のためのサービスやサポートを拡充する必要がある。

  • Khin YP, Matsuyama Y, Fujiwara T. Association between social capital and COVID-19 preventive behaviors: country-level ecological study. Int J Disaster Risk Reduct. 2022 Nov;82:103335.

    日本語アブストラクト

    「ソーシャルキャピタルとCOVID-19の予防行動との関連性: 国レベルの生態学的研究」

    【背景と目的】
    ソーシャルキャピタルとCOVID-19の予防行動との関連性については、依然として議論がある。我々は、ソーシャルキャピタルとCOVID-19に対する予防行動との関連を国レベルで検討した。

    【方法】
    国レベルのソーシャルキャピタル(社会的信頼、グループへの所属、市民的責任、国家機関への信頼など)に関するデータは、世界価値観調査(World Value Survey)を用いた。予防行動は、2020年7月から10月にかけて、Facebookユーザーを対象とした調査から、COVID-19の予防行動(物理的距離、手指衛生、マスクの使用など)をとった人の割合を算出した(23カ国9ウェーブ、207データポイント)。ソーシャルキャピタルに関するスコアは標準化した。関連性はマルチレベル線形回帰分析で調査した。

    【結果】
    高い市民的責任(1標準偏差、SDあたり)は、身体的距離(β=-4.66、95%信頼区間、CI:7.23、-2.09)、手指衛生(β=-2.88、95% CI:3.98, -1.78 )、マスク使用(β=-3.95、95% CI:5.29, -2.62 )と負の関連を示した。グループへの所属は、身体的距離(β = 2.96, 95% CI: 0.35, 5.58)およびマスクの使用(β = 1.80, 95% CI: 0.45, 3.16)の高さと正の関連を示した。社会的信頼は、手指衛生と有意な正の関連を示した(β = 1.22, 95% CI: 0.09, 2.35)。

    【結論】
    これらの結果は、市民的責任のレベルが高い国では、パンデミック時に予防行動をより強化する必要があることを示唆した。

  • Maeda Y, Ogawa K, Morisaki N, Sago H. The association between gestational weight gain and perinatal outcomes among underweight women with twin pregnancy in Japan. Int J Gynaecol Obstet. 2022 Nov;159(2):420-426.

  • Terada S, Fujiwara T, Tabuchi T. Threshold of equivalent annual income for self-harm ideation in mothers with infants in Japan: a cubic spline analysis. Psychiatry Clin Neurosci. 2022 Nov;76(11):605-606.

    日本語アブストラクト

    「乳幼児の母親において自傷念慮リスクが上昇する等価年収の閾値」
    家庭の経済状況は自殺のリスク因子として知られていますが、産後の女性において自殺リスクが上昇する閾値がいくらなのかはわかっていませんでした。本論文は、 全国規模で実施されたインターネット調査「日本におけるCOVID-19問題による社会・健康格差評価研究(JACSIS研究)」のデータを用いて、2歳未満の子を持つ母親が自傷念慮を抱く等価年収(世帯人数を調整した世帯年収)を、スプライン関数を用いて解析しました。その結果、等価年収にして290万円以下で自傷念慮のリスクが上昇する傾向を認めました。

    【目的】
    COVID-19パンデミック時の収入の減少は女性の自殺リスク上昇に寄与していると考えられるが、自殺予防に必要な個々の世帯所得は不明である。我々は、2歳未満の乳幼児を持つ女性において、自殺のリスク因子である自傷念慮の閾値となる等価所得を明らかにすることを目的とした。

    【方法】
    2021年7月から8月にかけて実施された全国規模のインターネット調査(JACSIS研究)のデータを用いた(N=4,788)。参加者に世帯年収を申告してもらい、それを世帯人数の平方根で割って等価所得を算出した。自傷念慮はエジンバラ産後うつ病尺度で評価した。

    【結果】
    合計346名(7.2%)の母親が過去7日以内に自傷念慮を抱いていた。多変量ロジスティック回帰モデルにおいて、等価年収100万円未満および100万円以上200万円未満の母親は、等価年収600万円以上の母親に比べ、自傷念慮を経験するリスクがそれぞれ3.04(95%信頼区間[CI]:1.37-6.72)および1.87(95%CI:1.05-3.34)倍高くなることが示された。制限付き三次スプライン関数により、等価年収が35パーセンタイル(290万円)未満でオッズ比が急上昇する非線形の関係が確認された。

    【結論】
    乳幼児を持つ母親の中でも、低所得世帯(特に等価所得が290万円以下)の母親において、自傷念慮のリスクが高い可能性がある。本研究は、産後の女性の自殺を予防するための経済的支援政策の必要性を支持するものである。

  • Morita A, Shikano A, Nakamura K, Noi S, Fujiwara T*. Oxytocin Reactivity during a Wilderness Program without Parents in Adolescents. Int J Environ Res Public Health. 2022 Nov 22;19(23):15437.

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    「思春期の子どもが両親から離れて自然の中で生活するプログラム中のオキシトシン反応性」

    【背景と目的】
    子どもが親から離れて自然の中で生活するキャンプなどのプログラムは、思春期の心理的自立を促すための実現可能な介入として認識されているが、生理的変化についてはほとんど知られていない。本研究では、社会的認知や行動に重要なホルモンであるオキシトシン(OT)に着目し、思春期の子どもたちの本プログラム中のOT濃度の変化について調査した。

    【方法】
    小学4~7年生21名が親元を離れ、栃木県茂木町の森林で31日間、火起こしなども含めた自然の中での生活に取り組み、9~13歳の男子20名のデータセットを解析に使用した。2、5、8、13、18、20、21、22、30日目の早朝唾液サンプル中のOT濃度をELIZAを用いて測定した。多変量回帰分析を行い、潜在的な共変数を調整した上で、一人だけとチームによるサバイバルチャレンジの前後、および9つの観測点にわたるOT濃度を比較した。

    【結果】
    子ども達は、生存のために他者の協力や支援を必要とする状況において、OT濃度が上昇することがわかった(係数:2.86、SE:1.34、p=0.033)。さらに、両親と長く離れている間、ベースラインのOTレベルを徐々に低下させることがわかった(係数:-0.083、SE:0.034、p = 0.016)。

    【結論】
    これらの知見を総合すると、OTレベルは心理的自立のマーカーとなりうることが示唆される。

  • Matsuyama Y, Isumi A, Doi S, Fujiwara T*. Impacts of the COVID-19 pandemic exposure on child dental caries: Difference-in-differences analysis. Caries Res. 2022;56(5-6):546-554.

    日本語アブストラクト

    「COVID-19パンデミックが子どものう蝕に与える影響: 差分の差分析」

    【背景と目的】
    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによるう蝕への影響は不明である。我々は、COVID-19を経験したコホート(曝露群)とCOVID-19を経験していないコホート(非曝露群)の2つのコホート間で小学4年生から6年生までのう蝕の増加を比較することにより、日本におけるCOVID-19パンデミックの子どものう蝕への影響を差分の差分析で解析した。

    【方法】
    分析対象は、2016年に小学4年生、2018年に小学6年生だった人(非曝露コホート、N=399)と、2018年に小学4年生、2020年に小学6年生だった人(曝露コホート、N=3,082)の2つのコホートで実施した。子どもたちのう蝕は学校歯科医が診察した。時間で変化する変数、すなわち世帯の社会経済状態、子どもの口腔保健行動、介護者の心理的苦痛を調整した差分の差分析が行われた。

    【結果】
    小学4年生では、永久歯におけるう蝕歯、欠損歯、充填歯(DMFT)の数は、COVID-19非曝露群と曝露群の間で差がなかった(それぞれ平均0.241と0.242)。6年生では、DMFTは非暴露コホートで0.067、曝露コホートで0.180増加した。差分の差分析によるう蝕の学年とコホートの交互作用項では、COVID-19曝露コホートのう蝕は、COVID-19未曝露コホートと比較して0.116(95%信頼区間0.015、0.216)個の有意な増加を示した。

    【結論】
    COVID-19パンデミック後、子どものう蝕はわずかに増加した。パンデミックが子どものう蝕に与える影響を評価するためには、より長期間の追跡調査を行う必要がある。

  • Saito A, Tamura T, Zahradnik J, Deguchi S, Tabata K, Anraku Y, Kimura I, Ito J, Yamasoba D, Nasser H, Toyoda M, Nagata K, Uriu K, Kosugi Y, Fujita S, Shofa M, Monira Begum M, Shimizu R, Oda Y, Suzuki R, Ito H, Nao N, Wang L, Tsuda M, Yoshimatsu K, Kuramochi J, Kita S, Sasaki-Tabata K*, Fukuhara H, Maenaka K, Yamamoto Y, Nagamoto T, Asakura H, Nagashima M, Sadamasu K, Yoshimura K, Ueno T, Schreiber G, Takaori-Kondo A; Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan) Consortium; Shirakawa K, Sawa H, Irie T, Hashiguchi T, Takayama K, Matsuno K, Tanaka S, Ikeda T*, Fukuhara T*, Sato K*. Virological characteristics of the SARS-CoV-2 Omicron BA.2.75 variant. Cell Host Microbe. 2022 Nov 9;30(11):1540-1555.e15.

  • Kachi Y*, Fujiwara T, Inoue A, Baba S, Eguchi H, Ohta H, Tsutsumi A. The effects of pregnancy discrimination on postpartum depressive symptoms: a follow-up study. BMC Pregnancy Childbirth. 2022 Nov 8;22(1):825.

  • Terada S, Doi S, Tani Y, Maeda Y, Isumi A, Sugawara J, Maeda K, Satoh S, Mitsuda N, Fujiwara T*. Relationship trajectories of pregnant women with their parents and postpartum depression: A hospital-based prospective cohort study in Japan. Front Psychiatry. 2022 Nov 3;13:961707.

    日本語アブストラクト

    「妊婦とその両親の妊娠中の関係性の変化と産後うつの関連:多施設共同前向きコホート研究」

    【背景】
    妊婦の幼少期の被虐歴やその後の両親との関係(親娘関係)の悪さは、産後うつの危険因子として知られている。親娘関係は妊娠中に変化することがあるが、その軌跡が産後うつに影響を与えるかどうかは分かっていない。そこで本研究では、妊娠中の親娘関係の軌跡が産後うつと関連するかどうかを明らかにすることを目的とした。

    【方法】
    日本で実施された前向き多施設コホート研究において、4,772人の女性を初診から産後1ヶ月検診まで追跡した(追跡率:77.4%)。親娘関係は、①初診時および②出産直後に、親との関係に満足しているかどうかを質問し、「一貫して満足」「妊娠中に改善」「妊娠中に悪化」「一貫して不満足」の4つの軌跡を定義した。産後うつはエジンバラ産後うつ病質問票で評価した。 共変量を調整するためにロジスティック回帰モデルを適用した。

    【結果】
    親娘関係の軌跡は、「改善群」が129例(2.7%)、「悪化群」が122例(2.6%)、「一貫して不満足群」が181例(3.8%)だった。交絡因子調整後、「一貫して満足群」に比べ、産後1か月での産後うつのリスクが「悪化群」では 2.81倍(95%信頼区間1.73-4.55)、「一貫して不満足群」では2.39倍(95%信頼区間1.58-3.62)高かった。

    【結論】
    妊娠中に両親との関係が「悪化」または「一貫して不満足」と感じていた女性は、産後うつのリスクが高いことがわかった。妊婦検診や保健指導の場面で、妊婦とその両親との関係に注意を払い、前向きな変化を促すことが、産後うつの予測・予防に役立つと考えられた。

  • Hirahata K, Nawa N, Fujiwara T*. Characteristics of long COVID: Cases from the First to the Fifth Wave in Japan. J Clin Med. 2022 Oct 31;11(21):6457.

    日本語アブストラクト

    「コロナ後遺症の特徴:日本における第1波から第5波までの事例」

    【目的】
    COVID-19患者の約25~60%は、コロナ後遺症として知られる長期後遺症を発症する。本研究は、日本におけるコロナ後遺症の社会人口統計学的および臨床的特徴を検討することを目的とした。

    【方法】
    2020年1月6日から2021年10月2日の間に、発症から28日以降に症状を呈した患者と定義されるコロナ後遺症患者のデータを東京の外来診療所で収集した(N = 1891)。年齢、性別、就労、感染波、ワクチン接種、日常生活動作障害、症状に関する情報は電子カルテから入手した。線形回帰を用いて患者の特徴とパフォーマンスステータスとの関連を分析した。

    【結果】
    発症からの平均日数は77.6日(SD:71.3)であった。女性、勤務時間短縮者、休職者、解雇者、退職者、無職者はパフォーマンスステータスの低下と関連していた。疲労、抑うつ症状、脳霧、呼吸困難、動悸、体の痛み、食欲不振、発熱はパフォーマンスステータスの低下と関連していたが、頭痛、不眠、嗅覚障害、味覚障害、脱毛、咳は関連していなかった。

    【結論】
    性別と雇用形態は、コロナ後遺症患者のパフォーマンスステータスの低下と関連していた。コロナ後遺症患者の特徴の全貌を明らかにするための研究が必要である。

  • Furukawa S, Nawa N, Yamaoka Y, Fujiwara T. Concerns and needs of people with intellectual disabilities and their caregivers during the COVID-19 pandemic in Japan. Journal of Intellectual Disabilities. J Intellect Disabil. 2022 Oct 26;17446295221135274.

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    「日本におけるCOVID-19パンデミック時の知的障害者とその介護者の懸念とニーズ」

    【背景と目的】
    知的障害者(ID)とその介護者は、COVID-19のパンデミック時に困難に直面すると想定される。しかし、特に日本では、彼らの課題を包括的に調査した研究は限られている。我々は、日本におけるCOVID-19パンデミック時の知的障害者とその介護者の懸念とニーズを明らかにすることを目的とした。

    【方法】
    2021年3月から8月にかけて、日本国内の中等度から重度のIDを持つ人の主な介護者を対象に、27人に詳細なインタビューを実施した。そして、インタビューを書き起こし、彼らの日常生活の困難に焦点を当てたあらかじめ決められたコードを用いて演繹的コーディングを行った。さらに、重要なテーマが見落とされていないことを確認するために帰納的コーディングを行った。

    【結果】
    IDを持つ人とその介護者の間で、4つの懸念と4つのニーズが重要なテーマとして見出された。

    【結論】
    今回の結果は、IDを持つ人とその介護者、特に医療や社会的ケアを必要とする人の中で、感染対策として物理的距離を取らなければいけない政策のもとで支援する際に有益な情報を提供するものであった。

  • Shimamura M, Matsuyama Y, Morita A & Fujiwara T. Association between procrastination in childhood and the number of remaining teeth in Japanese older adults. J Epidemiol. 2022 Oct 5;32(10):464-468.

    日本語アブストラクト

    日本人高齢者における子ども期の先延ばし傾向と残存歯数との関連

    【背景と目的】
    傾向は、ストレスや不健康な行動と関連することがわかっている。口腔内の状態は、個人のストレス曝露や口腔保健行動の長期的な履歴を反映すると考えられるが、小児期の先延ばし傾向と高齢期の残存歯数との関連に関する実証研究は限られている。我々は、ある地域の日本人高齢者を対象に、子ども期の先延ばし傾向と残存歯数の関連性を調らべた。

    【方法】
    宮城県涌谷市の国民健康保険・高齢者医療制度に加入している地域在住の高齢者1,616名を対象に、歯の本数に関する自記式アンケートを実施した。先延ばし傾向は、子ども期の夏休みの宿題を終わらせたタイミングに関する質問を用いて測定した。残存歯数は、20本以上、10~19本、1~9本、0本の選択肢に夜質問票によって評価した。解析には潜在的な交絡因子(性別、年齢、母親の教育、子ども期の社会経済的地位(SES)、子ども期の虐待、勤勉さに関する特性)と媒介因子(成人期のSES、喫煙歴、アルコール使用歴)を調整した順序ロジスティック回帰モデルを用いた。

    【結果】
    参加者の46%が、子ども期に先延ばしにする傾向が高かったと報告した。歯が20本以上、10~19本、1~9本、0本の参加者の割合は、それぞれ39.6%、22.7%、24.0%、13.7%であった。すべての共変量を調整した結果、幼少期に先延ばしする傾向が高いことは、残存歯数が少ないことと有意に関連していた(オッズ比1.28、95%信頼区間、1.05-1.57)。

    【結論】
    幼少期に先延ばし傾向が強いと、その後の人生で残存指数が少ないことと関連することが分かった。

  • Hayashi N, Matsuyama Y, Fujiwara T*. Association between residential distance from home to hospital and amputation of the lower extremity among peripheral artery disease patients in Japan. Int J Environ Res Public Health. 2022 Oct 12;19(20):13088.

    日本語アブストラクト

    「日本の末梢動脈疾患患者における通院距離と下肢切断の関連性」

    【要旨】
    医療機関へのアクセスの悪さは末梢動脈疾患(PAD)患者の予後不良につながる。今回、千葉県南房総地域でPAD患者における通院距離と下肢切断の関連性について調査した。後ろ向きコホート研究により、2010-2020年の間に千葉県の2ヶ所の病院を受診した630人のPAD患者を対象とした。診療録より病歴、住所などを得た。Cox比例ハザードモデルを用いて、通院距離と下肢切断(趾を含む)の関連性について分析した。年齢、性別、Fontaine分類、血管内治療(EVT)、透析、糖尿病、高血圧、脂質異常症、現在または過去の喫煙歴、アスピリンで調整した。通院距離の中央値は18.9km (IQR=22.1km)で、92人(14.6%)が観察期間中に切断に至った。共変量の調整後に通院距離が長いことが下肢切断の高リスクになることがわかった(hazard ratio per IQR = 1.35, 95% confidence interval, 1.01-1.82)。今回、通院距離が長いという病院へのアクセスの悪さがPAD患者の下肢切断に関連があることがわかった。

    【緒言】
     PADは循環器疾患では一般的である。高齢化や糖尿病、脂質異常症、腎機能障害、喫煙のリスク因子が増加していることから、PAD患者数は世界的に見ても2010年の1億6400万人から2010年の2億200万人と増加の一途を辿っている。PADは心疾患や脳卒中後のアテローム硬化性血管疾患の第三の原因である。PAD患者の約10-20%に間欠性跛行があり、他の50%には非典型的な下肢の症状があり、労作時痛がない患者は可動性が悪く、死亡のリスクや主な心血管イベントが3倍になる。
    ある北海道の田舎での研究は、PAD有病率は60歳以下では男性は1.6%、女性は3.3%、60歳以上では男性は3.65、女性は3.3%になると報告している。PAD患者の約1-2%は重症下肢虚血(CLI)に進行し、そのうち40%が大切断になる。PADによる下肢の大切断が必要になる患者は急性死亡率が30%上昇し、5年生存率は30%以下と言われている。下肢切断のリスク因子は糖尿病、慢性腎不全、ABI<0.4、脳血管疾患、心疾患、下肢の血行再建歴があると言われている。
    一方で、通院距離は他の外科領域で術後の不良因子になると報告されている。唯一、アメリカでCLI患者を対象とした、通院距離と下肢切断の関連性を調べた研究があるが、通院距離が長いことがリスクになるという結果は出ていない。しかし、地理学的な違いや健康保険システムの違いがあるのでこの結果を他の国や地域に当てはめることはできない。つまり、健康保険システムは交絡因子になり得る。従って、日本のような皆保険を有する国のPAD患者における通院距離と下肢切断の関連性を調べることは重要である。
    南房総地域は千葉県の半島の一部であり、人口は234,227人、面積は1188km2(197人/km2)である。人口の42%が65歳以上と日本全体平均の28.4%より高く、高齢者の多い地域である。この地域では2ヶ所の病院のみ下肢切断ができる。従って、南房総地域のPAD患者は病院まで長距離移動を強いられ、多くが自動車を用いて通院している。このような地域では通院距離がPAD患者のケアやアウトカム(下肢切断)に強く影響しうると予測される。この論文では日本の田舎のPAD患者における通院距離と下肢切断の関係性を調査した。

    【方法】
    2010年4月1日から2020年3月31日の期間に安房地域医療センターと亀田総合病院でPADと診断された患者の診療録を後方視的に調べた。904人がPADと診断された。そのうち274人に一部データ欠損があり除外され、630人が解析に使用された。この研究は亀田総合病院、安房地域医療センタ、東京医科歯科大学の倫理委員会の承認を得ている。
    この研究のアウトカムは下肢切断(趾を含む)であり、通院距離はArcGIS pro version 2.7を用いて算出された。図1は通院距離の分布を表している。中央値18.9kmで患者を2群に分けカプランマイヤー生存曲線を描き、コックス比例ハザードモデルはIQR(22.2km)で割った距離を連続変数として使用した。その他に、年齢、性別、術前ADL(歩行、杖歩行、車椅子、寝たきり)、Fontaine分類、EVT、バイパス歴、合併症、喫煙歴、家族有無、薬歴を診療録から得た。
    切断のない生存率を出すために、距離の中央値で2群に分けてカプランマイヤー生存曲線、ログランクテストを行なった。多変量コックス比例ハザードモデルを用いて通院距離と下肢切断の関連性を調べた。PADの悪化因子である年齢、性別、Fontaine分類、EVT、透析、糖尿病、高血圧、脂質異常症、現在もしくは過去の喫煙歴、アスピリン内服歴で調整した。全ての解析はSTATA version15を用いて行なった。

    【結果】
    表1はPAD患者の2群それぞれの人口統計学的特性を示した。2群間で下肢切断に有意差はなかった。(遠い: 57.6% 近い: 42.4%, p = 0.114). 同様に、性別、術前ADL、糖尿病、高血圧、脂質異常症、心疾患、Af、皮膚潰瘍、家族有無、ワーファリン、シロスタゾール、サルポグレラート塩酸塩(アンプラーグ)、EPA、メコバラミンに2群間で有意差はなかった。一方、年齢、観察期間、Fontaine分類、EVT、バイパス歴、慢性腎不全、現在または過去の喫煙歴、COPD、骨髄炎、アスピリン、スタチン、クロピドグレル、リマプロストアルファデクス(オパルモン)は2群間で有意差があった。
    図2は切断のない生存曲線を示している。2群間で有意差は出なかったが、通院距離が18.9kmより短い患者は切断のない生存率が高かった(p = 0.0537)。
    表2はコックス比例ハザードモデルを表している。単解析では通院距離は下肢切断の高リスクになる(hazard ratio, HR per IQR = 1.46; 95% CI, 1.08–1.98; p = 0.014)。また、Fontaine 分類III (HR = 14.0; 95% CI, 1.77–111.0; p = 0.012), IV (HR = 173; 95% CI, 24.0–1244; p < 0.001), EVT (HR = 1.86; 95% CI, 1.20–2.89; p = 0.006), 透析 (HR = 1.84; 95% CI, 1.22–2.78; p = 0.004), 糖尿病(HR = 3.48; 95% CI, 2.16–5.62; p < 0.001), 現在または過去の喫煙歴 (HR = 1.70; 95% CI, 1.035–2.80; p = 0.036)も下肢切断の高リスクになり得る。多変量解析では、通院距離(HR per IQR = 1.35; 95% CI, 1.01–1.82; p = 0.044)、Fontaine分類III (HR = 15.2; 95% CI, 1.88–123.4; p = 0.011) と IV (HR = 163; 95% CI, 22.1–1204; p < 0.001) が下肢切断の高リスクになる。

    【考察】
    この論文は、PAD患者の通院距離と下肢切断の関連性をアメリカ以外で調査した初めての論文であり、通院距離が長いことが下肢切断の高リスクになることを示した。
    これまでのアメリカでの研究ではCLI患者において通院距離と下肢切断の関連性について調べたものがあるが関連性は示されていない。今回の論文ではCLI患者を含めたPAD患者を対象とした。今回の論文とこれまでのアメリカの研究結果が異なるのは母集団、健康保険システム、地理学的な違いが原因と考えた。
    これまでに他の領域でも通院距離が長くなれば入院日数の増加、化学療法の治療率の低下、医療機関の利用率の低下につながると報告されている。
    今回の論文では、ほとんどのPAD患者は糖尿病(49.1%)、透析(31.4%)、高血圧(70%)、脂質異常症(41.6%)、慢性腎不全(46.7%)、心疾患(44.8%)を合併していた。PADの悪化に関係する合併症は下肢血流を悪くする。そのため、かかりつけ医の定期的な診察ができなければ、合併症が増悪する可能性がある。特に糖尿病を合併しているPAD患者はCLIに進展しないように予防的ケアが重要である。定期的なHbA1c検査、糖尿病患者の足のケア、血管評価は下肢切断の予防になる。在宅療法は高齢者の多い田舎においてこのような格差を軽減するのに役立つ。また、今回の結果は医師が通院距離の長い患者に対してより注意を払う必要があることを示唆している。
    今回の論文にはいくつかの限界がある。1つ目は、通院距離は直線距離を用いており、病院までのルートがわからないので道路の距離を用いていない点である。2つ目は、データがないため、公共交通機関、経済状況、通院の時間帯、家族や友人のサポート体制について考慮していない点である。3つ目は、一般的に下肢切断のリスクになる喫煙が今回の論文ではリスクにならなかった点である。これは、今回の論文ではデータ不足のため現在または過去の喫煙歴を分けて解析できなかったためと考えている。最後に、健康保険システム、地理学的違いから今回の論文の結果を一般化することはできない点である。

    【結論】
    日本において、南房総地域のような高齢が多く、病院へのアクセスが悪い田舎ではPAD患者にとって通院距離の長さと下肢切断には関連がある。田舎のPAD患者へより良い結果をもたらすには医療機関へのアクセスは改善されるべきである。

  • Maeda Y, Hasegawa A, Miyake R, Dofutsu M, Higuchi Y, Osaku D, Suemitsu T, Onodera Y, Shozu M, Miura K, Yoshida Y, Komatsu H, Watari H. Association of online activities with obstetrics and gynecology specialty choice: a nationwide online survey. Int J Med Educ. 2022 Sep 28;13:261-266.

  • Morita A*, Takahashi Y, Takahashi K, Fujiwara T. Depressive Symptoms Homophily among Community-Dwelling Older Adults in Japan: A Social Networks Analysis. Frontiers in Public Health. 2022 Sep 20;10:965026.

    日本語アブストラクト

    「社会的ネットワーク分析を用いた日本人高齢者における抑うつ症状の類似性の検証」

    人は自分と似た人とつながろうとする傾向があり、また近しい人の感情が伝染することが報告されていますが、高齢者の社会的ネットワークにおける抑うつ症状の類似性はわかっていません。
    同じ町に住む日本人地域高齢者のネットワークを分析することによって、抑うつ症状、特に無気力度が似ている者同士で構成されている可能性を明らかにしました。

    【背景】
    老年期うつ病は、高齢者における深刻な事態を引き起こす精神疾患であり、認知症とならんで発症頻度が高いものの、大多数は未治療であり、再発が多いことが知られている。
    本研究は、高齢者の社会的ネットワークにおける抑うつ症状の類似性を検証し、効果的な介入方法を考察することを目的とした。

    【方法】2017年、宮城県涌谷町の国保または高齢者医療制度に加入する地域高齢者を対象に、地域で困りごとや不安を相談する相手・抑うつ症状(GDS-15に基づいて測定)・性別・年齢などの基本属性・世帯構成・生活機能に関する質問票を配布した。分析対象者660名における217,470個の潜在的な結びつきについて、Exponential Random Graph Modelを適用し、全体的および特異的な抑うつ症状の類似度による親密な関係性の有無のオッズ比を推定した。

    【結果】
    全体的な抑うつ症状の共起はわずかに有意であり(p<0.10)、2人の地域在住高齢者の抑うつ症状の度合いの差(最大15ポイント)が1ポイント増加すると、親密な関係である確率は5%減少することが示された(オッズ比[OR]、0.95;95%信頼区間[CI]、0.90-1)。うつ症状の特定領域に着目したところ、自殺念慮の度合いの差は親密な関係との関連が認められなかった(OR, 1.00; 95%CI, 0.87-1.14)。しかし、2人の地域在住の高齢者の間のアパシーの度合いの差(最大3ポイント)が1ポイント増加すると、親密な関係である可能性が19%減少することが示された(OR, 0.81; 95%CI, 0.67-0.98)。


    【結論】高齢者の社会的ネットワークは、抑うつ症状が類似する者達で構成されている可能性が示唆された。老年期うつ病予防には、ネットワーク介入が重要と考えられる。

  • Kashiwabara T, Fujiwara T, Doi S, Yamaoka Y. Association between Hope for the Future and Academic Performance in Adolescents: Results from the K-CHILD Study. International Journal of Environmental Research and Public Health. 2022 Sep 20;19(19):11890.

    日本語アブストラクト

    「思春期における将来の夢と学業成績の関連:高知県子どもの生活実態調査」

    【背景】
    日本の学校では将来の夢を持つことが重要視されている。本研究は、思春期における将来の夢と学業成績の関係を検討することを目的とした。

    【方法】
    2016年に高知県で実施された子どもの健康・生活実態調査(Kouchi Child Health Impact of Living Difficulty(K-CHILD)study)からデータを取得し、調査には高知県の中学2年生(=13~14歳)3,477人が参加した。将来の夢、学業成績、勉強や遊びなどの時間に関する情報は、児童記入のアンケートを用いて、レジリエンスに関しては保護者記入のアンケートを用いて、傾向スコア法を用いて解析を行った。

    【結果】
    2,283人(65.6%)が将来の夢を持っていると回答した。将来の夢を持つ児童は、自己評価の成績が良く(β=0.21、95%信頼区間(CI)=0.10~0.32)、授業以外にも勉強し(オッズ比(OR)=1.89、95%CI=1.37 to 2.61)、本を読み(OR=1.45, 95% CI =1.19 to 1.75)、レジリエンスが高かった(β=1.48, 95% CI =0.98 to 1.98)。テレビやDVDを見る時間には違いがなかった(p=0.61)。

    【考察】
    以上の結果より、成績向上のため、思春期に将来の夢を持つよう促すことが重要であることが示唆された。

  • Hosokawa Y, Zaitsu M, Okawa S, Morisaki N, Hori A, Nishihama Y, Nakayama SF, Fujiwara T, Hamada H, Satoh T, Tabuchi T. Association between heated tobacco product use during pregnancy and fetal growth in Japan: A nationwide web-based survey. Int J Environment Res Public Health. 2022 Sep 19;19(18):11826.

  • Koyama Y, Nawa N, Ochi M, Surkan PJ, Fujiwara T. Joint Roles of Oxytocin- and Dopamine-Related Genes and Childhood Parenting Experience in Maternal Supportive Social Network. Child Psychiatry & Human Development. 2022 Sep 13. https://doi.org/10.1007/s10578-022-01434-4

    日本語アブストラクト

    「母親への支援的ソーシャルネットワークに対するオキシトシンおよびドパミン関連遺伝子と幼少期のペアレンティングの相互作用」

    産後の母親へのソーシャルサポートの形成に関して、遺伝的影響およびペアレンティングの影響はそれぞれ示唆されてきたが、それらの相互作用について、遺伝子環境相互作用(Gene-by-environment interaction)の観点からは明らかにされていません。親子3世代からなるデータを用いて、母親の産後のソーシャルサポートの形成には、遺伝的リスクとペアレンティングの相互作用が存在することが示されました。

    【背景】
    産後うつの重要な予防因子である母親へのソーシャルサポートの形成に対して、母親自身の遺伝子と幼少期に受けたペアレンティングがそれぞれ単独で関連があることは示唆されてきたが、それらの相互作用については明らかになっていない。

    【方法】
    祖母、母親、乳児からなる115組の3世代のデータを用いて、社会性に関連する遺伝子(OXTR rs53576, rs2254298, rs1042778; COMT rs4680)に関する遺伝リスクと幼少期に受けたペアレンティングとの相互作用を分析した。

    【結果】
    遺伝的リスクの高い母親は、幼少期に不適切なペアレンティングを受けていた場合、ソーシャルサポートが少ない(B = - 0.02, 95%CI = - 0.04 to - 0.01)ことが示された一方で、遺伝的リスクの低い母親では、ペアレンティングとソーシャルサポートの間に関連は認められなかった。遺伝的リスクの高い母親では、ソーシャルサポートが少ないことは、産後うつと関連していた(B = - 0.88, 95%CI = - 1.45 to -0.30)。

    【考察】
    社会性に関連する遺伝子のリスクアレルを多く持つ母親は、幼少期のペアレンティングに対してより強い感受性を示すことを示唆した。産後の母親の援助希求の理解において、遺伝的リスクと幼少期に受けたペアレンティングの両方を考慮する重要性を示した。

  • Matsuyama Y, Isumi A, Doi S, Shibata A, Ishii K, Oka K, Fujiwara T. Timing and intensity of physical activity and late sleeping habit among children in Japan. Frontiers in Pediatrics. 2022 Sep;10:915758.

    日本語アブストラクト

    「日本の子どもにおける時間帯別の身体活動と遅寝の関連」

    本論文では、藤原研究室が東京都足立区と共同で実施している「子どもの健康・生活実態調査」として、小学4年生と中学2年生の身体活動を活動量計で測定し、時間帯ごとの身体活動と睡眠習慣の関係を分析しました。始業前の低強度の身体活動が早寝を促す可能性が示唆されました。早稲田大学との共同研究です。

    【背景】
    どのような時間帯や強度の身体活動が子どもの睡眠習慣に関連するかは明らかでない。本研究は日本の子どもの時間帯別・強度別の身体活動と遅寝の関連を明らかにすることを目的とした。

    【方法】
    2018年に、東京都足立区の小学4年生と中学2年生を対象に始業前、始業後、放課後の身体活動量(低強度:1.5-2.9 METs、中強度:3.0-5.9 METs、高強度:6.0-20.0 METs)を活動量計で測定した(N = 411)。各時間帯・強度の身体活動と自己回答による平日の遅寝(小学4年生は22時以降の就寝、中学2年生は23時以降の就寝)の関連をポアソン回帰分析で分析した。学年、性別、世帯収入、BMI、運動部への所属、平日の起床時間、同時間帯の別強度の身体活動を調整した。

    【結果】
    総身体活動は遅寝と関連しなかった。始業前の低強度の身体活動は遅寝が少ないことに関連した(有病率比 = 0.82、95%信頼区間:0.68, 0.99)。始業後や放課後の身体活動は遅寝と関連しなかった。

    【結論】
    始業前の低強度の運動は子どもの早寝を促す可能性が示唆された。

  • Nakajima H, Morita A, Kanamori S, Aida J, Fujiwara T. The frequency of job participation and well-being of older people in Japan: Results from JAGES study. 2022 Sep-Oct;102:104720.

    日本語アブストラクト

    「日本における高齢者の仕事頻度と幸福度: JAGES研究による結果」

    【背景と目的】
    日本の高齢者における仕事への頻度と幸福度の関連について、前向き全国調査である日本老年学的評価研究(JAGES)のデータを用いて調査した。

    【方法】
    仕事の頻度は「仕事をしていない」、「時々以下」(≦3回/週、以下「時々働く」)、「しばしば以上」(≧4回/週、以下「よく働く」)に分類し、アウトカムごとにロジスティック回帰またはポアソン回帰、線形回帰を用いて分析を実施した。

    【結果】
    共変量で調整した結果、「よく働く」「時々働く」参加者は、仕事をしていない人に比べて、主観的健康状態が悪い可能性が低いことがわかった(よく働く=オッズ比(OR):0.55、95%信頼区間(CI):0.48~0. 62; 時々働く= OR: 0.57, 95% CI: 0.49~0.67)。同様に、うつ病のリスクも低く(よく働く = OR: 0.62, 95% CI: 0.53~0.73; 時々働く = OR: 0.58, 95% CI: 0.47~0.71 )、さらに幸せである傾向が高いことが分かった(よく働く= 有病比 (PR): 1.05、95% CI: 1.03 to 1.07; 時々働く = PR: 1.03, 95% CI: 1.00 to 1.05)。順序離散的なアウトカムの線形回帰分析でも同様の傾向が見られ、より多く仕事をすることがより多くの健康と幸福に関する利益をもたらすことが示唆された。また、「よく働く」参加者は、「時々働く」参加者よりも主観的健康状態が悪くなりにくく、幸福度が高かった(線形係数はそれぞれ -0.04 と 0.15 )。

    【結論】
    高齢期における頻繁な仕事参加と健康・幸福との関連について、考えられる説明を調査するために、さらなる研究が必要である。

  • Miyamura K, Nawa N, Nishimura H, Fushimi K, Fujiwara T. Association between heat exposure and hospitalization for diabetic ketoacidosis, hyperosmolar hyperglycemic state, and hypoglycemia in Japan. Environ Int. 2022 Sep;167:107410.

    日本語アブストラクト

    「日本における熱中症と糖尿病性ケトアシドーシス、高浸透圧高血糖状態、低血糖症による入院との関連性」

    【背景と目的】
    地球温暖化に伴い、猛暑の増加が報告されている。環境温度における熱曝露は、糖尿病患者の全死因死亡率および全死因入院と関連している。しかし、熱曝露と糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)、高浸透圧高血糖状態(HHS)、低血糖などの高血糖緊急症による入院との関連は不明である。本研究の目的は、熱曝露がDKA、HHS、低血糖症の入院に与える影響を明らかにすることである。

    【方法】
    日本全国の行政データベース(DPC)から高血糖緊急事態(すなわち、DKAまたはHHS)および低血糖症の入院日数データを抽出し、2012~2019年の日本の各都道府県の気温とリンクした。分布ラグ非線形モデルを適用し、熱曝露が高血糖緊急事態の入院に及ぼす非線形効果およびラグ効果を評価した。

    【結果】
    0~3ラグ日の暑熱効果(気温75%値を基準とした気温90%値)および猛暑効果(気温75%値を基準とした気温99%値)の高血糖緊急事態のプール相対リスクはそれぞれ1.27(95 %CI:1.16-1.39)および1.64(95 %CI:1.38-1.93)だった。低血糖症による入院と0-3ラグ日における猛暑効果のプール相対リスクは、それぞれ1.33(95 %CI:1.17-1.52)および1.65(95 %CI:1.29-2.10)だった。これらの関連は、高血糖緊急事態のタイプや糖尿病のタイプによって一貫しており、地域によっても概ね一致していた。

    【結論】
    熱への曝露は、DKA、HHS、低血糖症による入院と関連していた。これらの結果は、致死的な高血糖緊急症や低血糖症のリスクに対する予防措置の指針として有用であると考えられる。

  • Okawara A, Matsuyama Y, Yoshizawa AM, Unnai YY, Ogawa T, Tumurkhuu T, Ganburged G, Bazar A, Fujiwara T, Moriyama K. Association between child abuse and oral habits in Mongolian adolescents. Int J Environment Res Public Health. 2022 Aug 26;19(17)10667.

    日本語アブストラクト

    「思春期のモンゴル人における子ども虐待と口腔習慣の関連」

    【背景と目的】
    本研究は、思春期のモンゴル人における子ども虐待と口腔習慣の関連を調査することを目的とした。

    【方法】
    モンゴル国ウランバートルの子どもとその養育者を対象に横断的調査を行った。モンゴル国ウランバートルの2つの公立学校に在籍する770名の児童の保護者が、児童が受けた身体的・心理的虐待と望ましくない口腔習慣(爪・唇・ペンを噛む、ブラキシズム)の有無についてアンケートに回答した。年齢、性別、母親の年齢、親の教育、家庭の所得水準、出生順位、祖父母との同居状況などを調整した多変量ポアソン回帰モデルを用いた。

    【結果】
    「爪・唇・ペンを噛む」「ブラキシズム」は、それぞれ39.0%、17.5%であった。「爪・唇・ペンを噛む」ことは身体的虐待と有意に関連していたが、心理的虐待とは有意に関連していなかった(PR [95% confidence interval, CI]: それぞれ1.44 [1.07-1.95]、1.34 [0.98-1.83])。しかし、ブラキシズムは身体的虐待や心理的虐待とは関連しなかった(PR[95%CI]:それぞれ1.16[0.77-1.77]、1.04[0.68-1.61])。

    【結論】
    子ども虐待は思春期のモンゴル人における噛み癖と関連していた。

  • 長嶺由衣子*、藤原武男. コロナ禍の訪問診療対象患者の受療プロセスの不透明さと新たに生じた睡眠障害との関連. 日本在宅医療連合学会誌.2022 Aug;3(3):27-31.

    https://www.jstage.jst.go.jp/article/jahcm/3/3/3_3.3_27/_pdf/-char/en

  • Ojio M, Maeda Y, Tabuchi T, Fujiwara T*. The association between types of COVID-19 information source and avoidance of child health checkups in Japan: Findings from The JACSIS 2021 study. Int J Environ Res Public Health. 2022 Aug 7;19(15):9720.

    日本語アブストラクト

    「日本におけるCOVID-19に関する情報源の種類と小児健康診断の回避の関連性: The JACSIS 2021研究の結果」

    【背景と目的】
    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、メディアによる描写により母親が子どもの健康診断を回避することを通して、子どもの幸福に影響を与える可能性がある。本研究では、母親が受け取ったCOVID-19に関する情報源の種類と、子どもの健康診断の回避との関連性を調べた。


    【方法】
    本研究はオンライン調査であり、参加者は調査期間中に2歳未満の子どもを持つ母親5667人であった。0-3ヶ月、4-6ヶ月、6ヶ月以上の子どもを持つ女性の3つのグループを、日本における子どもの健康診断の時期に合わせて分析した。


    【結果】
    その結果、382名(6.7%)の女性が子どもの健診を回避していた。多変量ロジスティック回帰分析の結果、COVID-19に関する情報源として「雑誌」を利用している6ヶ月以上の子どもを持つ母親は、子どもの健康診断を避ける傾向があることがわかった(調整オッズ比(aOR).3.19、95%信頼区間(CI):1.68-6.05)。一方、政府や自治体など公のウェブサイトを利用している人は、子どもの健康診断を避ける可能性が低かった(aOR 0.58, 95% CI 0.43-0.77)。


    【結論】
    本研究は、COVID-19に関する特定のタイプの情報源が、子どもの健康診断に関する母親の意思決定にさまざまな影響を与える可能性があることを示唆した。

  • Koyama Y, Fujiwara T, Doi S, Isumi A, Morita A, Matsuyama Y, Tani Y, Nawa N, Mashiko H, Yagi J, the Great East Japan Earthquake Follow-up study for Children (GEJE-FC) team. Heart rate variability in 2014 predicted delayed onset of internalizing problems in 2015 among children affected by the 2011 Great East Japan Earthquake. J Psychiatr Res. 2022 Jul;151:642-648.

    日本語アブストラクト

    「2011東日本大震災の被災児における、心拍変動と内的問題行動の関連について」

    【背景】
    自然災害を経験することは、長期的に、子どもの内的問題のリスクを高めることが知られている。我々は、災害でのストレスへの曝露が、その後のストレス体験に対する反応性を高める(神経回路の感作)ことで、災害の慢性期における内的問題行動を引き起こすのではないかと仮説を立てた。災害でのストレスへの曝露による神経回路感作のバイオマーカーとして心拍変動(HRV)に着目し、HRVと内的問題行動の関連を明らかにすることを目的とした。

    【方法】
    被災地3県(宮城、福島、岩手)と非被災地1県(三重)の4-6歳の子どもとその兄弟姉妹、両親を対象に、4年間にわたり追跡調査を行った(n= 155)。子どもの内的問題行動は、「子どもの行動チェックリスト(CBCL)」を用いて親により評価された。

    【結果】
    T2時点でのHRVはT3時点での子どもの内的問題行動と関連が認められなかった。しかし、T3時点におけるLF-HRVが低いほど、T4時点での内的問題行動の得点が高いことが示された(B= -1.72, 95%CI= -3.12 to -0.31)。

    【考察】
    災害の慢性期における内的問題行動の悪化は、自律神経系の機能障害によって予測される可能性があることが示唆された。

  • Koyama Y, Nawa N, Yamaoka Y, Nishimura H, Kuramochi J, Fujiwara T. Association between social engagements and stigmatization of COVID-19 infection among community population in Japan. Int J Environ Res Public Health. 2022 Jul 25;19(15):9050.

    日本語アブストラクト

    「社会的つながりとCOVID-19感染に対するスティグマの関係」

    【背景】
    未知のリスクに対峙した際、人は差別心や偏見ースティグマーを抱きやすくなる。本研究では、社会的つながりとCOVID-19感染に対するスティグマの度合いの関連性を検討することを目的とした。

    【方法】
    宇都宮市で実施されたコホート研究「宇都宮市 新型コロナウイルス感染症調査(U-CORONA)」に参加した429名のデータを分析した。質問紙により自分や周囲の人が感染した場合に感じるスティグマを測定した。また、ソーシャルキャピタル、社会的つながりの多様性と大きさについても尋ね、一般化推定方程式(GEE)を用いた重回帰分析によってスティグマとの関連性を調べた。

    【結果】
    全体として、女性は男性よりもスティグマ的な認識が強いことが示された。低学歴と抑うつ症状も強いスティグマと関連を示したが、年齢、世帯収入、既往歴の数は関連がなかった。また、ソーシャルキャピタルが高い人ほど、スティグマが弱かった(B=-0.69, 95%CI=-1.23 to -0.16)。一方、社会的つながりの多様性と大きさはスティグマの強さとは関連がなかった。

    【考察】
    社会的つながりの多様性や大きさではなく、ソーシャルキャピタルを高めることが、スティグマを緩和することに寄与する可能性が示唆された。

  • Matsuyama Y*, Tabuchi T. Heated tobacco product use and combustible cigarette smoking relapse/initiation among former/never smokers in Japan: the JASTIS 2019 study with 1-year follow-up. Tob Control. 2022 Jul;31(4):520-526.

    日本語アブストラクト

    「日本における元・非喫煙者の加熱式タバコ製品使用と可燃性タバコ喫煙の再発と開始:JASTIS 2019年1年追跡調査より」

    【背景と目的】
    日本で発売された加熱式タバコ製品(HTP)の使用は、世界的に急速に広まっている。本研究では、元・可燃性タバコ喫煙者のうち、HTPの使用が可燃性タバコ喫煙の再発・開始と関連しているかどうかを調査することを目的とした。

    【方法】
    JASTISの2ウェーブ分のデータを前向きコホートとして分析した。2019年のベースライン調査に回答した一度も/元可燃性タバコ喫煙者7766人のうち、2020年のフォローアップ調査に回答したのは5947人(フォローアップ率:76.6%)だった(年齢範囲18~73歳、男性50.5%)。潜在的な交絡因子を調整した多変量ロジスティック回帰分析により、1年後のHTP使用と可燃性喫煙との関連性を調査した。

    【結果】
    回答者のうち、ベースライン時にHTPを使用していたのは308名(5.2%)であった。1年後、非HTP使用者97名(1.7%)、HTP使用者39名(12.7%)が可燃性のタバコを吸っていた。1年以上禁煙していた元喫煙者と未喫煙者では、HTPの使用は1年後の可燃性タバコの喫煙と有意に関連していたが(それぞれOR=2.80、95%CI 1.42~5.52, OR=9.95, 95% CI 3.39~29.16, )、最近やめた元喫煙者ではその関連性は有意でなかった。

    【結論】
    HTPの使用は、1年後の可燃性タバコの喫煙の再発/開始と関連していた。その後の可燃性喫煙を含め、HTP使用のリスクは注意深く観察する必要がある。

  • Takaku R, Yokoyama I, Tabuchi T, Oguni M, Fujiwara T. SARS-CoV-2 Suppression and Early Closure of Bars and Restaurants: A Longitudinal Natural Experiment. Sci Rep. 2022 Jul 23;12(1):12623.

    日本語アブストラクト

    「バーやレストランの早期閉店でSARS-CoV-2は抑制できたか: 縦断的自然実験」

    深刻な経済的被害にもかかわらず、SARS-CoV-2の世界的な蔓延を抑えることを期待して、フルサービスのレストランやバーが閉鎖されている。本稿では、2021年2月にレストランやバーを早期に閉店したことで、日本におけるSARS-CoV-2の症状が軽減したかどうかを検討する。全国的な大規模縦断調査を用いたところ、レストランやバーの早期閉鎖は、若年者(OR: 0.688;95%CI: 0.515-0.918)およびパンデミック前にこれらの場所を訪れていた者(OR: 0.754;95%CI: 0.594-0.957)の利用率を低下させた。しかし、SARS-CoV-2の症状は、これらの活動的で高リスクの下位集団では減少しなかった。高齢者のような活動的で低リスクの下位集団では、レストランやバーの利用率、SARS-CoV-2の症状ともに、明確な影響は観察されなかった。これらの結果は、レストランやバーの早期閉鎖は、他の同時対策なしではSARS-CoV-2の抑制に寄与しないことを示唆している。

  • Matsuyama Y, Fujiwara T, Murayama H, Machida M, Inoue S, Shobugawa Y. Differences in brain volume by tooth loss and cognitive function in older Japanese adults. Am J Geriatr Psychiatry. 2022 Jun 17;S1064-7481(22)00442-0. [Epub ahead of print]

    日本語アブストラクト

    「日本人高齢者における歯の喪失により脳容積が低下し認知機能が低下する」

    【背景と目的】
    日本人高齢者において、歯の喪失と構造的な脳容積との関連、および歯の喪失と認知機能との関連に対する媒介効果について検討した。

    【方法】
    十日町市に住む65~84歳の地域在住者494名を無作為に抽出したデータを用いて横断研究を実施した。全脳容積(TBV)、灰白質容積(GMV)、白質容積(WMV)、海馬容積(HV)は磁気共鳴画像で測定した。自己申告の歯数(20本以上、1~19本、0本)と、日本語版クイック軽度認知障害スクリーニング(Qmci)で評価した認知機能および脳構造体積との関連を検討した。構造的脳体積の媒介効果を評価するために、媒介分析を行った。年齢、性別、社会経済状態、健康行動、併存疾患、総頭蓋内容積を調整した。

    【結果】
    歯がない回答者は、20本以上の歯がある回答者に比べて、認知機能(係数=-4.01、95%信頼区間[CI]:-7.19、-0.82)、TBV(係数=-10.34、95% CI:-22.84, 2.17 )、GMV(係数=-6.92、95% CI:-14.84, 0.99 )が低かった(傾向に関するP値はそれぞれ、0.003, 0.035, 0.047).歯の数は、WMVやHVと有意な関連はなかった。GMVは、歯の数と認知機能との関連に有意な媒介効果を示したが(係数=-0.38、95% CI: -1.14, -0.002, 全効果の9.0%に相当)、TBVには見られなかった。

    【結論】
    GMVは、歯の喪失と認知機能の低下との関係を媒介することが示唆された。

  • Katagiri A, Nawa N, Fujiwara T. Association Between Length of Only-Child Period During Early Childhood and Overweight at Age 8 – A Population-based Longitudinal Study in Japan. Frontiers in Pediatrics. 2022 Jun 14;10:782940.

    日本語アブストラクト

    「幼児期の一人っ子期間の長さと8歳時の太り気味との関連性-日本における人口ベースの縦断研究」

    【背景と目的】
    先行研究では、一人っ子である子どもは、兄弟がいる同級生と比較して、最年長、中間、最年少にかかわらず、太りやすいことが示されている。本研究の目的は、きょうだいが生まれる前の幼児期に一人っ子期間を経験した子どもについて、一人っ子期間の長さと太り気味となるリスクとの間に関連があるかどうかを明らかにする。

    【方法】
    日本で実施された21世紀縦断調査から、合計7,576人の初産男子と7,229人の初産女子を調査した。一人っ子期間の長さは、「出生間隔」、すなわち、第一子の出生から第二子の出生までの間隔によって決定された。この期間は、短い(1.5年未満)、中程度(1.5年以上4年未満)、長い(4年以上8年未満)、一人っ子(第2子が8年間生まれない)に分類された。太り気味は、8歳時の体格指数(BMI)zスコアが1標準偏差以上と定義した。ロジスティック回帰を用いて、共変数を調整した上で、一人っ子期間の長さと8歳時点での太り気味との関連を検討した。

    【結果】
    中程度の出生間隔は、男児(オッズ比(OR):0.83、95%CI、0.72-0.96)、女児(OR:0.75、95%CI、0.63-0.88)とも、一人っ子と比べて太り気味になりにくかった。長い出生間隔も、男児で逆向きの関連を示し(OR: 0.78, 95% CI, 0.62-0.97) 、女児では関連はわずかだった(OR: 0.80, 95% CI, 0.62-1.04).

    【結論】
    第二子までの出生間隔が短い第一子では、太り気味のリスクは認められなかった。出生間隔が1.5~8年を経験した第一子は、一人っ子と比較して小児期の太り気味のリスクが低かった。

  • Aung MN, Koyanagi Y, Nagamine Y, Nam EW, Mulati N, Kyaw MY, Moolphate S, Shirayama Y, Nonaka K, Field M, Cheung P, Yuasa M. Digitally Inclusive, Healthy Aging Communities (DIHAC): A Cross-Cultural Study in Japan, Republic of Korea, Singapore, and Thailand. Int J Environ Res Public Health. 2022 Jun 7;19(12):6976.

  • Kobayashi T, Tani Y, Kino S, Fujiwara T*, Kondo K, Kawachi I. Prospective Study of Engagement in Leisure Activities and All-Cause Mortality Among Older Japanese Adults. J Epidemiol. 2022 Jun 5;32(6):245-253.

    日本語アブストラクト

    「日本人高齢者における余暇活動への参加と全死因死亡率に関する前向き研究」

    【背景】
    高齢者の余暇活動への参加は死亡リスクの低下と関連している。しかし、複数の種類の余暇活動における死亡リスクとの関連性の違いに焦点を当てた研究は行われていない。

    【方法】
    日本の高齢者コホートにおいて、余暇活動への参加と全死因死亡率との関連を前向きに検討した。日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study)には65歳以上の48,216人が参加した。平均追跡期間5.6年の間に、5,575人(11.6%)の死亡が観察された。潜在的な交絡因子を調整したCox比例ハザードモデルを用いて、余暇活動の総数、および25種類の余暇活動の組み合わせを調査した。

    【結果】
    余暇活動の総数と死亡ハザードとの間に直線的な関係が認められた(調整ハザード比、0.93;95%CI、0.92-0.95)。さらに、身体活動を伴う余暇活動やグループベースの交流への参加は、死亡率の低下と最も強い関連を示した。対照的に、文化的余暇活動や孤独な余暇活動への参加は、全死因死亡率とは関連していなかった。

    【結論】
    交絡の残存を否定することはできないが、今回の知見は、身体的に活動的な集団ベースの余暇活動への参加を奨励することが高齢者の長寿を促進する可能性を示唆している。

  • Tani Y, Koyama Y, Doi S, Sugihara G, Machida M, Amagasa S, Murayama H, Inoue S, Fujiwara T, Shobugawa Y. Association between gratitude, the brain and cognitive function in older adults: results from the NEIGE study. Arch Gerontol Geriatr. May-Jun 2022;100:104645.

    日本語アブストラクト

    「高齢者における感謝、脳、認知機能との関連:NEIGE研究の結果」

    【背景と目的】
    感謝の気持ちを持つことは、認知症の危険因子である社会的孤立やうつ病の軽減と関連する。しかし、感謝の気持ちが認知機能と直接的に関連しているかは不明である。本研究では、健康な高齢者を対象に、感謝の気持ちと認知機能との関連性を明らかにし、脳領域の媒介役割を検証することで、その背景にある生物学的メカニズムを明らかにすることを目的とした。

    【方法】
    65歳以上の地域在住高齢者(n = 478)を対象とした2017年のNeuron to Environmental Impact across Generations(NEIGE)研究の横断的データを使用した。認知機能は、Mini-Mental State Examination (MMSE)を用いて評価した。感謝のレベルは、2項目の感謝質問票を用いて評価された。感情処理と社会的相互作用に関連する脳領域の容積は、MRIによって測定した。線形回帰モデルおよび構造方程式モデルを用いて、感謝の度合い、脳容積、認知機能との関連を検討した。

    【結果】
    感謝度スコアは平均で6.3(SD=0.9)、MMSEスコアの平均は27.1(SD=2.5)であった。回帰分析の結果、年齢、性別、教育、配偶者の有無、抑うつ症状を調整した上で、感謝のレベルが高いほど認知機能の高さと関連していた(係数=0.25、95% CI: 0.01, 0.49).感謝のレベルが高いほど、右扁桃体および左楔状回の体積が大きくなることが示された。構造方程式モデル分析の結果、扁桃体の体積は感謝と認知機能との関連を媒介することが示された。

    【結論】
    感謝のレベルが高いほど認知機能と正の関連があり、感情や記憶の処理に関与する扁桃体を部分的に介在していることが示された。

  • Miyagi T, Nawa N, Fujiwara T, Surkan P. Social media monitoring of suicidal content and change in trends of Japanese Twitter content around the Zama Suicide Pact Slayings. Psychiatry Res. 2022 May;311:114490.

    日本語アブストラクト

    「座間9人殺害事件前後の日本の自殺に関するツイッターでの投稿内容とその傾向の変化」

    【背景と目的】
    ソーシャルメディアに関連した自殺は、この問題への取り組みにもかかわらず、依然として深刻な問題である。2017年10月31日、犯人がソーシャルメディアを使って自殺願望を表明した被害者を狙った「座間9人殺害事件」が報道された。我々は、この殺害事件に関連して、自殺念慮に関するTwitter上のコミュニケーションがどのように利用されたかを分析した。

    【方法】
    2017年10月1日から11月30日の間にハッシュタグ「#死にたい」を使用したTwitterアカウント1,246件からデータを抽出した。これらのTwitterアカウントとそのツイートの特徴を明らかにするために、テーマ別内容分析を行った。事件前と事件後の関連投稿の数とカテゴリーを比較した。

    【結果】
    関連するツイッター上のコミュニケーションは、事件後、159から1,037のTwitterアカウントに増加した。事件前、ほとんどのアカウントで、自殺やメンタルヘルスの問題に関連したツイートがあり、つながりを求めていた。事件後、これらのアカウントからのツイートは、意見(特に攻撃的なもの)や予防を目的としない広告に関連するものが多くなった。その結果、事件後、自殺に関連するテーマをツイートするアカウントは減少し、攻撃的な意見や予防につながらない広告を投稿するアカウントは増加したことが示唆された。

    【結論】
    ソーシャルメディアを利用した予防策の効果が、このようなコンテンツによって損なわれている可能性がある。

  • Doi S, Isumi A, Fujiwara T. Association between maternal adverse childhood experiences and child resilience and self-esteem: Results from the K-CHILD study. Child Abuse Negl. 2022 May;127:105590.

    日本語アブストラクト

    「母親の子ども期の逆境体験と子どものレジリエンスおよび自己肯定感の関連:高知県子どもの生活実態調査」

    【背景】
    母親の子ども期の逆境体験(Adverse Childhood Experiences: ACEs)は、その子どもの精神的健康に悪影響を及ぼすことがわかっている。一方で、母親のACEsが、その子どものストレス状況を対処する能力であるレジリエンスおよび自己肯定感と関連するかは明らかになっていない。

    【目的】
    母親のACEsが、子どものレジリエンスおよび自己肯定感と関係するかを明らかにする。

    【方法】
    本研究では、2016年に実施された高知県子どもの生活実態調査のデータの一部を用いて、高知県の小学校1年(2,759組)、小学校5年(2,878組)、中学校2年(3,143組)、高校2年(3,611組)の全児童・生徒およびその保護者12,391組を対象とした。母親のACEs(両親の離婚、虐待やネグレクトなど7項目)、交絡変数となる基本属性、子ども(小学校1年、小学校5年、中学校2年)のレジリエンスについて、母親に回答を求めた。子どもの基本属性、自己肯定感について、小学校5年、中学校2年、高校2年の児童・生徒に回答を求めた。

    【結果】
    交絡変数を調整した場合、母親のACEsは、子どものレジリエンスの低さ(p trend < 0.001)と自己肯定感の低さ(p trend < 0.001)と関連していた。媒介変数を調整した場合には、有意な関連性は認められなかった。母親のメンタルヘルス、現在の社会経済的状況、育児行動が、母親のACEsと子どものレジリエンスおよび自己肯定感との関連を媒介していた。

    【結論】
    本研究から、母親のACEsの経験数が多いほど、その子どものレジリエンスは低く、自己肯定感が低いことが明らかとなった。また、母親のメンタルヘルス、現在の社会経済的状況、育児行動が、その関係性を媒介することが示唆された。今後は、母親のACEsが子どものレジリエンスと自己肯定感に与える影響を軽減するような介入研究が必要である。

  • Morishita S, Yoshii T, Inose H, Hirai T, Yuasa M, Matsukura Y, Ogawa T, Fushimi K, Okawa A, Fujiwara T. Comparison of perioperative complications in anterior decompression with fusion and posterior decompression with fusion for thoracic ossification of the posterior longitudinal ligament -A retrospective cohort study using a nationwide inpatient database. J Orthop Sci. 2022 May;27(3):600-605.

  • Yamazaki J, Kizuki M, Fujiwara T. Association between frequency of conversations and suicidal ideation among medical students during COVID-19 pandemic in Japan. Int J Environ Res Public Health. 2022 May 24;19(11):6385.

    日本語アブストラクト

    「日本におけるCOVID-19パンデミック時の医学生における会話の頻度と自殺念慮の関連」

    COVID-19の蔓延を緩和するため、日本の大学では対面授業からオンライン授業に移行したが、これにより社会的交流が減少し、学生の精神的問題が増加した可能性がある。COVID-19発生の第4波である2021年5月に東京の医学部4年生を対象に自己報告式の質問紙を実施し、会話頻度と自殺念慮の関連を検討した。質問紙では、会話の頻度と、Mini International Neuropsychiatric Interviewの一部を用いて、自殺念慮を評価した。113人の学生のうち、98人(86.7%)が回答し、そのうち20人(20.4%)が自殺念慮を有していた。ポアソン回帰分析の結果、性格、家族関係、所得水準、一人暮らし、友人数、性別、年齢を調整した結果、会話の回数が週1回未満と全くない人は、週3回以上の人に比べ、自殺念慮のリスクが有意に高いことが判明した。これらの結果から、会話頻度が少ないほど、医学生の自殺念慮のリスクが高まることがわかった。パンデミック時に大学が対面授業を休止する場合、学生へのメンタルヘルスサポートを強化する必要がある。

  • Okamoto Y, Doi S, Isumi A, Sugawara J, Maeda K, Satoh S, Fujiwara T, Mitsuda N. Development of Social Life Impact for Mother (SLIM) scale at first trimester to identify mothers who need social support during postpartum: a hospital-based prospective study in Japan. Int J Gynaecol Obstet. 2022 May 16. doi: 10.1002/ijgo.14263.

    日本語アブストラクト

    「産後に社会的支援を必要とする母親を妊娠初期にアセスメントするSocial Life Impact for Mother(SLIM)尺度の開発:日本における病院ベースの前向き研究」

    【背景と目的】
    産後に社会的支援を必要とする社会的ハイリスク妊産婦をアセスメントするためのSocial Life Impact for Mother(SLIM)尺度を日本で開発し、検証することを目的とした。

    【方法】
    日本の4県(宮城県、大阪府、香川県、大分県)で病院ベースの前向き研究を実施した。合計7462人の妊婦が妊娠初期にSLIM尺度を記入し、産後の社会的支援を必要とする課題(産後うつ病、ボンディング障害)の有無を出産後1ヶ月で評価した(N = 5768、追跡率77.3%)。多変量ロジスティック回帰を適用し、SLIMスケールと産後の社会的支援を必要とする課題との関連を検討した。

    【結果】
    SLIM尺度は、人間関係の問題、経済状態の低下、ソーシャルサポートの欠如など、9つの危険因子で構成された。SLIMスケールは、産後の社会問題を中程度の精度で予測した(曲線下面積0.63、95%信頼区間0.60-0.65)。地域性、診療所や3次病院によるさらなる層別化は、推定値に影響を与えなかった。

    【結論】
    妊娠初期における妊婦健診でのSLIM尺度の活用は、産科医が妊産婦が産後の社会的支援を必要とする課題を抱える母親をアセスメントするのに有用であると考えられる。SLIM尺度を用いたさらなる介入研究が必要である。

  • Tai SY, Cheon S, Yamaoka Y, Chien YW, Lu TH. Changes in the rankings of leading causes of death in Japan, Korea, and Taiwan from 1998 to 2018: a comparison of three ranking lists. BMC Public Health. 2022 May 10;22(1):926.

  • Mikami R, Mizutani K, Matsuyama Y, Gohda T, Gotoh H, Aoyama N, Matsuura T, Kido D, Takeda K, Saito N, Fujiwara T, Izumi Y, Iwata T. Association of type 2 diabetes with periodontitis and tooth loss in patients undergoing hemodialysis. PLoS One. 2022 May 6;17(5):e0267494.

  • Okuzono SS, Shiba K, Kim ES, Shirai K, Kondo N, Fujiwara T, Kondo K, Lomas T, Trudel-Fitzgerald C, Kawachi I, VanderWeele TJ. Ikigai and Subsequent Health and Wellbeing Among Japanese Older Adults: Longitudinal Outcome-wide Analysis. Lancet Reg Health West Pac. 2022 Apr; 21: 100391.

  • Morita A, Takahashi T, Fujiwara T. Investigation of Age-associated Cognitive Functional Homophily in Community-Dwelling Older Adults’ Confidant Social Networks Using Exponential Random Graph Model. Int J Environ Res Public Health. 2022 Apr 11;19(8):4574.

    日本語アブストラクト

    「Exponential Random Graph Modelを用いた地域在住高齢者の親密な社会ネットワークにおける認知機能の同類性の検討」

    【背景と目的】
    高齢者の孤独や社会的孤立に取り組むための有名な介入策の1つに、社会的促進がある。本研究では、認知機能の同類性が、高齢者の親密な社会的ネットワークにおいて果たす役割を調査した。

    【方法】
    宮城県涌谷市の地域在住高齢者252名で、2017年に市が実施した自記式質問票と認知健康診査に回答したデータを分析した。Exponential Random Graph Modelを用いて、密度、相互性、年齢、性別の居住形態、手段的日常生活動作の障害の有無、学歴、認知障害の状態を調整しながら、学歴、志向性、単語登録、時計描画、遅延再生、言語流暢、論理記憶の同類性を調査した。

    【結果】
    高齢者と親密な関係になる確率は、論理記憶の1点差で6%(オッズ比(OR):0.94、95%信頼区間(CI):0.90-0.99)、遅延想起の1点差で5%(OR: 1.05, 95% CI: 1.00-1.11)、 有意に増加することがわかった。学歴と他の年齢別認知機能スコアとの間には、有意な関連は見られなかった。

    【結論】
    本研究の結果は、日本の地域在住高齢者の親密な社会的ネットワーク構築には、論理的記憶機能が同類であることが重要であることを示唆するものである。

  • Doi S, Isumi A, Fujiwara T. Association of Adverse Childhood Experiences Including Low Household Income and Peer Isolation with Obesity Among Japanese Adolescents: Results from A-CHILD study. Frontiers in Public Health. 2022 Apr 5;10:754765.

    日本語アブストラクト

    「日本の思春期児童における低所得世帯と友人からの孤立を含む逆境体験と肥満の関連:A-CHILD study」

    【背景】

    子ども期の逆境体験(ACE)は、成人および思春期児童における肥満の主なリスク因子であることがわかっている。友人からの孤立と低所得世帯はACEの1つと考えられるが、これらの体験をACEとして取り上げた研究はほとんどない。そこで本研究では、友人からの孤立と低世帯所得を含むACEが、思春期児童の肥満と関連するかどうかを検討することを目的とした。

    【方法】

    2016年、2018年に実施された足立区子どもの健康・生活実態調査(Adachi Child Health Impact of Living Difficulty (A-CHILD) study)の小学4年生、小学6年生、中学2年生合計6946名の横断データを用いた。8タイプあるACEうち、児童は友人からの孤立に関する1項目、保護者はその他の7項目について質問紙にて回答した。児童のBMIは学校健診データから、世界保健機関(WHO)の基準に沿って算出した。多項ロジスティック回帰を用いて、ACEの経験数および各タイプのACEと、BMIとの関連性を検討した。

    【結果】

    共変量で調整した結果,ACEの数は青年期の過体重や肥満と関連しなかった。ACEの種類別では,ひとり親世帯と低所得世帯が肥満と有意な独立した関連を示した。

    【結論】

    ACEの数は、日本人思春期児童の過体重や肥満と関連しなかったが、ひとり親世帯と低所得世帯は、肥満と有意な正の関連を示した。今後は、思春期児童におけるこの関連を再現するために縦断的研究が必要である。

  • Hosokawa Y, Okawa S, Hori A, Morisaki N, Takahashi Y, Fujiwara T, Nakayama SF, Hamada H, Satoh T, Tabuchi T. The prevalence of COVID-19 vaccination and vaccine hesitancy in pregnant women: an internet-based cross-sectional study in Japan. J Epidemiol. 2022 Apr 5;32(4):188-194.

  • Ashida T, Fujiwara T, Kondo K. Childhood socioeconomic status and social integration in later life: Resultsof the Japan gerontological evaluation study. SSM Population Health. 2022 Apr 4;18:101090.

  • Terada S, Fujiwara T, Obikane E, Tabuchi T. Association of paternity leave with father-infant bonding: Findings from a nationwide online survey in Japan. Int J Environ Res Public Health. 2022 Apr 2;19(7):4251.

    日本語アブストラクト

    「育児休業と父子のボンディング障害との関連」

    【目的】
    育児休業を取得する父親が増加しているが、育児休業が父親と幼児のボンディング(情緒的な絆)に与える影響については、まだ十分に検討されていない。本研究では、2歳未満の子どもを持つ父親を対象に、育児休業と父親と幼児のボンディングの関連を評価することを目的とした。

    【方法】
    2021年7月から8月にかけて実施した全国規模のインターネット調査(JACSIS研究)のデータを用いて横断研究を行った(N=1194)。父子のボンディングは、2つの下位尺度(愛情不足(LA)、怒り・拒絶(AR))からなる赤ちゃんへの気持ち質問票(MIBS-J)で評価し、得点が高いほどボンディングが悪いとした。

    【結果】
    400名(33.5%)の父親が育児休暇を取得したと回答した。育児休業は、共変量調整後のMIBS-J合計点およびARスコアの高さと関連したが(それぞれβ=0.51;95%信頼区間[CI] 0.06-0.96,β=0.26;95%CI 0.03-0.49)、LAスコアとは関連がなかった(β=0.10;95%CI-0.13-0.34)。育児休業とMIBS-J合計点との関連には、子どもの年齢層による傾向は見られなかった(P for trend=0.98)。

    【結論】
    育児休業は、2歳未満の子どもを持つ父親において、絆の障害、特に怒りや拒絶の増加と関連していた。

  • Koyama Y, Fujiwara T, Yagi J, Mashiko H, Great East Japan Earthquake Follow-up for Children study team. Association of parental dissatisfaction and perceived inequality of post-disaster recovery process with child mental health. Soc Sci Med. 2022 Mar;296:114723.

    日本語アブストラクト

    「災害後の復興過程における親の不満や不平等感の認識と子どもの心の健康との関連性」

    【背景と目的】
    災害後、資源へのアクセスの不平等がしばしば強調され、子どもの精神的健康に影響を与える可能性がある。我々は、災害後の復興過程に対する認識(不満や不平等感)と子どものメンタルヘルスとの関連性を明らかにすることを目的とし解析を行なった。

    【方法】
    2012年8月から2018年1月にかけて、日本の東日本大震災の被災3県(宮城、福島、岩手)の子ども(震災時4~6歳)とそのきょうだい、親を対象とした東日本大震災子どもフォローアップ調査(GEJE-FC)のデータを分析した。復興プロセスの不満と不平等感、親のメンタルヘルス(K6と幸福感)およびソーシャルキャピタル、子どものメンタルヘルス(子どものうつ病自己評価尺度)を自己評価式質問紙で評価した。不満や不平等感、精神的健康の縦断的な関連性を線形混合モデリングと構造方程式モデリングで検討した(n = 168組の親子)。

    【結果】
    不満と不平等感は、親の幸福度の低さと子どもの抑うつ症状の多さを予測した。構造方程式モデリングにより、親の精神的健康はソーシャルキャピタルの低下を介して不平等感と関連していることが明らかになった。興味深いことに、親によって知覚された不平等感は、親のメンタルヘルスとソーシャルキャピタルを通じて、直接、間接的に子どもの抑うつ症状と関連していた。

    【結論】
    災害後の復興過程における不満と不平等感は、子どもの精神的健康の重要な予測因子であった。災害の影響を軽減し、復興過程における子どものメンタルヘルスへのダメージを回避するために、政策立案者は復興過程における被災者の不満と不平等の認識を考慮すべきである。

  • Isumi A, Doi S, Ochi M, Kato T, Fujiwara T. Child maltreatment and mental health in middle childhood: a longitudinal study in Japan. Am J Epidemiol. 2022 Mar 24;191(4):655-664.

    日本語アブストラクト

    「学童期における子ども虐待とメンタルヘルス:日本における縦断研究」

    【背景】
    虐待によって生じる有害なストレスは、その後のメンタルヘルスにも影響を与えうる。しかし、虐待とメンタルヘルスの関連を検討した先行研究では未測定の交絡因子が考慮できていないものが多い。そこで本研究では、未測定の交絡因子を考慮した上で、小学低〜中学年における虐待とレジリエンスおよび問題行動の関連を検証することを目的とした。

    【方法】
    東京都足立区における全公立小学校の1年生全員を対象に2015年から実施されている縦断調査「子どもの健康・生活実態調査」のデータを用いた。2015年(小学1年時)、2016年(小学2年時)、2018年(小学4年時)すべてにおいて有効回答であった2,920名を対象とした。3時点の虐待傾向、レジリエンスおよび問題行動(すべて保護者による回答)の関連について、個人内の要因を除去できる固定効果モデルを用いて解析を行なった。

    【結果】
    時間で変化しない未測定の交絡因子、時間で変化する測定された交絡因子、調査年度を調整した結果、小学1年生から4年生において、虐待はレジリンスおよび向社会的行動と負の関連(係数:-0.89, 95%信頼区間:-1.05, -0.72; 係数:-0.03, 95%信頼区間:-0.05, -0.003)、問題行動と正の関連(係数:0.32, 95%信頼区間:0.27, 0.37)があった。さらに男女それぞれでも同様の関連が見られた。

    【結論】
    小学低〜中学年における虐待は、長期にわたりレジリエンスや向社会的行動の発達を阻害し、問題行動を引き起こす可能性が示唆された。今後の研究では、虐待を受けた子どもたちのメンタルヘルスにとって、介入可能な保護因子は何かを検討する必要がある。

  • Listl S, Matsuyama Y, Jürges H. Causal Inference: Onward and Upward! J Dent Res. 2022 Mar 20;220345221084283.

  • Yoshimoto T, Nawa N, Uemura M, Sakano T, Fujiwara T*. The impact of interprofessional communication through ICT on health outcomes of older adults receiving home care in Japan – a retrospective cohort study. Journal of General and Family Medicine. 2022 Mar 20;23(4):233-240.

    日本語アブストラクト

    「ICTを活用した職種間コミュニケーションが在宅療養高齢者の健康転帰に及ぼす影響-後方視的コホート研究」

    【背景】
    情報通信技術(ICT)は現代のコミュニケーションと情報共有に不可欠である。また、高齢者のケアにおいて、効果的な専門職間の連携は不可欠である。しかし、在宅での高齢者ケアにおけるICTの効果についてはほとんど知られていない。この後方視的コホート研究では、ICTを用いた職種間連携が高齢者在宅ケア患者の健康転帰に及ぼす影響について検討する。

    【方法】
    Team®モバイルアプリケーションは地域医療における連携を促進するシステムである。これにより、医療提供者はクラウドベースの単一プラットフォーム内で患者情報を取得・共有することができる。2015年から2020年に在宅介護サービスを受けた長岡市(新潟県)の患者554人のデータを収集し、分析した。プラットフォームを利用して異なる職種間で情報が共有された患者と、情報が共有されなかった患者について、死亡または病院もしくは介護施設への入所の累積ハザード比(HR)を算出した。Cox比例ハザードモデルを用い、共変量で調整し、傾向スコアマッチングを適用した。

    【結果】
    研究集団の平均年齢は83.5歳、追跡期間中央値は579.0日であった。情報共有群では、対照群と比較して死亡または病院もしくは介護施設への入所のリスクが有意に減少した(調整後HR:0.47[p<0.01])。傾向スコアマッチング後も有意性は維持された(HR:0.58;p=0.01)

    【結論】
    ICTを用いた専門職間の連携は、日本の高齢在宅ケア患者の死亡または病院もしくは介護施設への入所リスクを低下させる可能性がある。

  • Ishii T, Nawa N, Fujiwara T*. Association between nationwide introduction of public-access defibrillation and sudden cardiac death in Japan: An interrupted time-series analysis. Int J Cardiol. 2022 Mar 15;351:100-106.

    日本語アブストラクト

    「日本におけるパブリック・アクセス除細動の全国導入と心臓突然死との関連性: 断続的時系列分析」

    【背景と目的】
    自動体外式除細動器の全国的な普及による心臓突然死(SCD)症例数の減少効果は未だ不明である。本研究では、2004年に全国で導入されたパブリック・アクセス除細動器(PAD)が、日本における心臓突然死(SCD)の年間発生率の推移に影響を与えたかどうかを評価することを目的とした。

    【方法】
    日本の人口動態統計(1995-2015)から、5歳以上で発生した全国のSCD数を抽出した。年齢と性別で層別化した中断時系列データに対して分割回帰分析を行い、日本におけるPAD導入後の年間SCD発生率の傾向の変化を評価した。

    【結果】
    2004年のPAD導入後、5~19歳の年間SCD発生率のトレンドに有意な減少が観察された(PAD導入前後のトレンドの比(RT)=0. 886, 95%CI: 0.801 ~ 0.980)、20-34歳(RT = 0.932; 95%CI: 0.906 ~ 0.958)、35-49歳 (RT = 0.953; 95%CI: 0.929 ~ 0.977) および50-64歳 (RT = 0.971; 95%CI: 0.971 ~ 0.991) の各世代で、有意な減少が認められた。しかし、65歳以上では減少が認められなかった。年齢と性別で層別化した解析では、男性5-64歳、女性35-49歳でRTの有意な減少がみられた。

    【結論】
    5歳から64歳までのSCDの年間発生率の全国的な傾向は、日本では2004年のPAD導入後、有意に減少した。さらに、その減少は男性でより顕著であった。

  • Okuzono SS, Shiba K, Lee HH, Shirai K, Koga H, Kondo N, Fujiwara T, Kondo K, Grodstein F, Kubzansky L, Trudel-Fitzgerald C. Optimism and Longevity Among Japanese Older Adults. J Happiness Stud. 2022 Mar 11;23:2581-2595.

    https://link.springer.com/article/10.1007/s10902-022-00511-8

  • Kusama T*, Kiuchi S, Tani Y, Aida J, Kondo K, Osaka K. The lack of opportunity to eat together is associated with an increased risk of weight loss among independent older adults: a prospective cohort study based on the JAGES. Age Ageing. 2022 Mar 1;51(3):afac022.

  • Kawahara T, Ueki Y, Nawa N, Miyamae S, Hanafusa M, Goto Y, Tohda S, Fujiwara T*. Characteristics of SARS-CoV-2 super-spreaders in Japan. J Infect. 2022 Feb;84(2):e6-e9.

    日本語アブストラクト

    「日本における新型コロナウイルス感染症スーパースプレッダーの特徴」

    【背景】
    新型コロナウイルス感染症の診断には RT-PCR 検査※1が重要な役割を果たし、RT-PCR 検査によりウイルスコピー数の定量的な評価が可能となります。2003 年の SARS※2あるいは 2012 年の MERS※3流行時から、すべての患者が等しく感染を広げるのではなく、高いウイルスコピー数をもつ特定の患者が特に感染を広げていくことが知られていました。これらの患者はスーパースプレッダーと呼ばれ、新型コロナウイルス感染症においてもスーパースプレッダーが高い感染力と死亡率をもつことが知られています。スーパースプレッダーを早期に
    同定することは、治療および周囲への二次感染の拡大防止の観点から重要ですが、これまでスーパースプレッダーの決定要因については解明されていませんでした。私たちの研究グループは 2020 年 3 月から 2021 年26 月までに、中等症から重症の新型コロナウイルス感染症で東京医科歯科大学病院に入院し、少なくとも 1 回以上 RT-PCR 検査が行われた患者 379 名を対象とし、スーパースプレッダーを特定する要因について検討を行いました。

    【方法】
    入院患者の電子カルテの情報を基に、高血圧・糖尿病・脂質異常症・高尿酸血症・関節リウマチ・癌・慢性腎不全・脳梗塞・心疾患・呼吸器疾患・アレルギーといった既往歴について調査を行い、分析しました。

    【結果】
    年齢や性別、喫煙歴で調整した分析の結果、上記の既往を3つ以上重複して有する患者では、既往のない患者と比較して、ウイルスコピー数が 87.1 倍(95%信頼区間 5.5, 1380.1)高くなることが明らかになりました。また、糖尿病患者では 17.8 倍(95%信頼区間 1.4, 223.9)、関節リウマチ患者では 1659.6 倍(95%信頼区間 1.4, 2041737.9)、脳梗塞患者では 234.4 倍(95%信頼区間 2.2, 25704.0)倍、ウイルスコピー数が高くなることが明らかになりました。入院時の血液検査結果の解析では、入院時に血小板と CRP※4が低い患者は高いウイルスコピー数を有することが明らかになりました。さらに、複数回 RT-PCR 検査を行った患者を分析した結果、90%以上の患者が初回または2回目の検査で最大のウイルスコピー数に達していることが判明しました。

    【示唆】
    2022 年初頭の現在、新型コロナウイルス感染症は再流行の兆しをみせています。特に感染を広げる原因となりうるスーパースプレッダーを既往歴や入院時の血液検査の情報から特定することで、臨床医は個室で患者を隔離し院内感染を防ぐための注意喚起を行うなど、感染管理措置を取ることが可能になります。また、スーパースプレッダーである可能性の高い患者に対しては、特に感染の初期において注意深い感染管理措置が必要なことが示されました。私たちの研究は新型コロナウイルス感染症におけるスーパースプレッダーの特徴を明らかにし、院内における二次感染の拡大を予防する可能性を示しました。

  • Ogawa T*, Schermann H, Khadka A, Moross J, Moriwaki M, Fushimi K, Fujiwara T, Yoshii T, Okawa A, Shirasawa S. Impact of orthogeriatric care management by orthopedic surgeons and physicians on in-hospital clinical outcomes: A difference-in-difference analysis. Geriatr Gerontol Int. 2022 Feb;22(2):138-144.

  • Ukawa S*, Tamakoshi A, Tani Y, Sasaki Y, Saito J, Haseda M, Shirai K, Kondo N, Kondo K, Kawachi I. Leisure activities and instrumental activities of daily living: A 3-year cohort study from the Japan Gerontological Evaluation Study. Geriatr Gerontol Int. 2022 Feb;22(2):152-159.

  • Koyama Y, Fujiwara T*, Murayama H, Machida M, Inoue S, Shobugawa Y. Association between adverse childhood experiences and brain volumes among Japanese community-dwelling older people: Findings from the NEIGE study. Child Abuse Negl. 2022 Feb;124:105456.

    日本語アブストラクト

    「日本の地域ベース調査における高齢者の子ども期の逆境体験と脳容積の関連性: NEIGE研究からの知見」

    【背景】
    子ども期の逆境体験(ACE)は、脳の構造的な違いを介して、その後の人生の健康結果に影響を与える可能性がある。しかし、脳の形態的な違いが高齢期まで残っているかどうかについては、十分な報告がない。

    【目的】
    高齢者におけるACEと脳容積の関連性を検討した。

    【方法】
    十日町市の65~84歳の住民を無作為にリクルートし、491名を分析対象とした。
    ACEは自己記入式の質問紙で評価した。また、MRIにより、注目した7つの脳領域の体積を評価した。

    【結果】
    合計143名(27.1%)の参加者が1つのACEを経験し、33名(6.7%)が2つ以上のACEを経験した。2回以上のACEを経験した参加者は、前帯状皮質の体積が大きく(B = 0.346, 95% 信頼区間 [CI] = 0.04~0.66) 、海馬(B = -0.287, 95% CI = -0.58~0.001) および扁桃体(B = -0.313, 95% CI = -0.59~-0.03) は小さくなった。興味深いことに、ACEの分類である剥奪と脅威に分けて見ると、剥奪は扁桃体積の減少(B = -0.164, 95% CI = -0.32 to -0.01)と、脅威は前帯状皮質体積の増加(B = 0.401, 95% CI = 0.11 to 0.70)と関連があった。

    【結論】
    ACEは、高齢者の感情や自己調節を担う前帯状皮質、海馬、扁桃体などの脳領域の体積と関連していた。扁桃体に対するACEの影響は、剥奪体験によるものが多く、前帯状皮質に対するそれは脅威によるものであった。

  • Doi S, Isumi A, Fujiwara T. Association of paternal workplace and community social capital with paternal postnatal depression and anxiety: A prospective study. Front Psychiatry. 2022 Feb 17;13:782939.

    日本語アブストラクト

    「父親における職場と地域のソーシャル・キャピタルと産後のうつ・不安との関連に関する縦断調査」

    【背景】

    うつ・不安を予防する要因としてソーシャル・キャピタルがわかっているが、父親における職場と地域のソーシャル・キャピタルと産後のメンタルヘルス不調との関連は明らかではない。そこで、父親における職場と地域のソーシャル・キャピタルと産後3ヶ月時点でのうつと不安の関連を明らかにすることを目的とした。

    【方法】

    東京都の2つの産科医療機関で研究参加募集を行い、417名の父親が本研究に参加した(参加率76.2%)。父親は、職場のソーシャル・キャピタル、地域のソーシャル・キャピタル、抑うつ症状(Edinburgh Postnatal Depression Scale)、不安症状(State-Trait Anxiety Inventory)に関する質問紙に、産後1週および3ヶ月時点で回答した(N=398、追跡率91.2%)。欠損値は多重代入法を用いて処理し、重回帰分析を行った。

    【結果】

    重回帰分析の結果、共変量を調整した後も、地域のソーシャル・キャピタルの高いほど、産後3ヶ月時点の抑うつ症状(Coefficient = -0.21, 95%信頼区間 = -0.33 to -0.08)と不安症状(Coefficient = -0.38, 95%信頼区間 = -0.66 to -0.11)が低いことが示された。一方、職場のソーシャル・キャピタルは、産後1週時点での抑うつ症状または不安症状を調整した後は、産後3ヶ月時点の抑うつ症状と不安症状との関連は認められなかった。

    【結論】

    父親における地域のソーシャル・キャピタルの高さは、産後3ヶ月時点までの抑うつ症状と不安症状を予防しうることが明らかとなった。父親における産後のメンタルヘル不調を予防するために、職場のソーシャル・キャピタルよりも地域のソーシャル・キャピタルを促進するような介入が必要である可能性が示唆された。

  • Nishimura H, Nawa N, Ogawa T, Fushimi K, Fujiwara T*. Association of ambient temperature and sun exposure with hip fractures in Japan: A time-series analysis using nationwide inpatient database. Sci Total Environ. 2022 Fab 10; 807(Pt 1)150774.

    日本語アブストラクト

    「平均気温・日照時間と大腿骨頸部骨折との関連: 日本における大規模入院症例データベースを用いた時系列解析」

    【背景】
    気象条件と大腿骨頸部骨折(HF)との関連に関するエビデンスは限られている。本研究は、日本における平均気温・日照時間とHFによる入院との関連を明らかにすることを目的とした。

    【方法】
    急性期入院医療を対象とする診断群分類(DPC: Diagnosis Procedure Combination)データベースから、2015年から2018年のHFによる入院を抽出した。ラグ0-39日のDistributed lag non-linear modelを用いた疑似ポアソン回帰分析により、HFの都道府県別相対リスク(RR)を推定した。また、ランダム効果メタ解析によりプールRRを推定した。

    【結果】
    355,563人を対象とした。当日から過去2日(ラグ0-2日)の平均気温について、低温(各都道府県における2.5パーセンタイルの平均値により定義)で相対リスク(RR)は1.349 (95%信頼区間(CI): 1.305, 1.395)だった。高温(各都道府県における97.5パーセンタイルの平均値により定義)でRRは0.754 (95%CI: 0.727, 0.782)だった。ラグ0-2日の日照時間について、短日照時間(各都道府県における2.5パーセンタイルの平均値により定義)でRRは0.929 (95%CI: 0.913, 0.946)だった。長日照時間(各都道府県における97.5パーセンタイルの平均値により定義)でRRは1.056 (95%CI: 1.029, 1.085)だった。これらの関連は施設入居者よりも自宅生活者で強かった。過去3日から39日(ラグ3-39日)の長日照時間で、RRは0.770 (95%CI: 0.696, 0.851)であった。

    【結論】
    短期的(ラグ0-2日)には低温・長日照時間でHFのリスクは上昇し、高温・短日照時間でHFのリスクは低下した。これらの関連は入院経路により異なった。長期的(ラグ3-39日)には長日照時間でHFのリスクは低下した。

  • Ishii E, Nawa N, Matsui H, Otomo Y, Fujiwara T*. Response to the Letter to the Editor on “Comparison of Disease Patterns and Outcomes Between Non-Japanese and Japanese Patients at a Single Tertiary Emergency Care Center in Japan”. J Epidemiol. 2022 Fab 5;32(2):114.

  • Ishii E, Nawa N, Matsui H, Otomo Y, Fujiwara T*. Comparison of disease patterns and outcomes between non-Japanese and Japanese patients at a single tertiary emergency care center in Japan. J Epidemiol. 2022 Feb 5;32(2):80-88.

    日本語アブストラクト

    「日本の三次救急医療センターにおける日本人患者と外国人患者の疾患パターンと転帰の比較」

    【背景】

    日本は歴史的に移民が少ないものの、近年のインバウンド政策により外国人旅行者は急増した。しかし、日本における外国人医療における疾患パターンは明らかではない。本研究は、グローバル化が急速に進む日本において、日本人と外国人患者の疾患パターンと転帰の相違を明らかにすることを目的とした。

    【方法】
    2010年から2019年の間に東京医科歯科大学医学部附属病院の救命救急センターに三次医療またはICUやHCU入院を必要とした外国人患者325人と日本人患者13,370人を対象に、カルテデータの二次解析を行った。多変量線形回帰モデルとロジスティック回帰モデルを適用し、言語障壁の影響を考慮して、Glasgow Coma Scale(GCS)スコアで層別化し、性別と年齢の調整後、診断率、死亡率、入院滞在期間の差を検討した。

    【結果】
    外国人患者は日本人患者に比べて、アナフィラキシー、熱傷、感染症が多く、心血管系の診断は少なかった。性別と年齢の調整後、外国人患者のアナフィラキシー(調整オッズ比(aOR)2.7(95%信頼区間(CI): 1.7, 4.4)および感染症(aOR 2.2(95%CI:1.3, 3.7))の診断が有意に多く、熱傷(aOR 2.3(95%CI:0.96, 5.3))の診断の方がわずかに多かった。GCSスコアにかかわらず、アナフィラキシー、熱傷、感染症の入院滞在期間は、外国人と日本人患者の間に有意差はなかった。

    【考察】
    日本人患者と比較して、アナフィラキシー、熱傷、感染症と診断された外国人患者の割合が多かったが、入院滞在期間における有意差はなかった。外国人観光客や在留外国人におけるアナフィラキシー、熱傷、感染症の予防対策が必要かもしれない。

  • Yamashita A, Isumi A, Fujiwara T*. Online Peer Support and Well-being of Mothers and Children: Systematic Scoping Review. J Epidemiol. 2022 Feb 5;32(2):61-68.

    日本語アブストラクト

    「オンラインのピアサポートと母親及び子どものウェルビーイング: 系統的スコーピングレビュー
    アブストラクト」

    【背景】
    オンラインピアサポートグループは一般的になってきており、幼い子どもを持つ母親にとって効果的なツールになり得る。本レビューの目的は、オンライン・ピアグループによるサポートの種類と、母親及びその子どもに対する健康への影響を検討することである。

    【方法】
    系統的なスコープレビューを行った。2019年12月にPubMed、CINAHL、Medline、Cochrane、医中誌(日本語)データベースを用いて既存文献の系統的レビューを実施した。

    【結果】
    包含基準および除外基準に基づき、初回検索により合計1,475件の論文が抽出されました。タイトル、抄録、全文を確認した結果、包含基準を満たした記事は合計21件であった。母親が受けたサポートの種類は、主に情報提供や感情的なサポートであった。また、母親は、つながりやコミュニティ所属感覚を感じていた。オンラインベースのピアサポートグループの健康効果は、母親の精神的なウェルビーイングの項目で見られた。子どもの栄養と母乳育児のための行動修正について、限定的な効果が見られた。

    【結論】
    介入研究におけるエビデンスが限られているため、オンラインベースのピアサポートグループの効果は結論が出なかった。厳密な研究デザインを用いたさらなる研究が、今後の研究に役立つと思われる。

  • Doi S*, Isumi A, Fujiwara T. Association of adverse childhood experiences with postpartum depression and anxiety in fathers: A prospective study. Psychiatry Clin Neurosci. 2022 Jan;76(1):35-36.

    日本語アブストラクト

    「子ども期の逆境体験と父親における産後のうつ・不安との関連に関する縦断調査」

    【背景】
    母親の子ども期の逆境体験(Adverse Childhood Experience: ACE)が産後のメンタルヘルス不調と関係していることがわかっているが、父親におけるACEと産後のメンタルヘルス不調との関連は明らかではない。そこで、父親におけるACEと産後1週および3ヶ月時点でのうつと不安の関連を明らかにすることを目的とした。

    【方法】
    東京都の2つの産科医療機関で研究参加募集を行い、417名の父親が本研究に参加した(参加率76.1%)。父親は、ACE、抑うつ症状(Edinburgh Postnatal Depression Scale)、不安症状(State-Trait Anxiety Inventory)に関する質問紙に、産後1週および3ヶ月時点で回答した(追跡率93.3%)。欠損値は多重代入法を用いて処理し、重回帰分析を行った。

    【結果】
    重回帰分析の結果、ACEを2つ以上経験していた父親は、ACEを経験していない父親と比べて、産後1週時点の抑うつ症状が高く(Coefficient = 1.77, 95%信頼区間 = 0.27 to 3.27)、産後1週時点および3ヶ月時点での不安症状が高かった(産後1週:Coefficient = 7.80, 95%信頼区間 = 3.73 to 11.85;産後3ヶ月:Coefficient = 4.41, 95%信頼区間 = 0.08 to 8.73)。一方、父親のACEと産後3ヶ月時点での抑うつ症状との関連は認められなかった(Coefficient = 1.60, 95%信頼区間 = -0.22 to 3.43)。

    【結論】
    父親におけるACEは、産後1週時点の抑うつ症状、産後1週および3ヶ月時点の不安症状と関連する要因であることが示唆された。

  • Koyama T, Nawa N, Itsui Y, Okada E, Fujiwara T. Facilitators and barriers to implementing shared decision making in Japan: a physician’s perspective. Patient Educ Couns. 2022 Jan 31;S0738-3991(22)00042-8.

    日本語アブストラクト

    「日本における共同意思決定導入の促進要因と障壁:医師の視点」

    【目的】
    共同意思決定(SDM)とは、患者さんと医療従事者が共同で医療上の意思決定を行う協働のプロセスである。この横断研究では、日本におけるSDMを実施する促進要因と障壁を明らかにし、病院の種類による修飾効果があるかどうかを探ることを目的とした。

    【方法】
    日本の医師129名を対象に、SDM-Q-Docに基づくSDMの認識と、統合行動モデル(IBM)の各コンストラクトに対応する促進因子と障壁に関する質問票に回答してもらった。促進因子および障壁とSDM-Q-docスコアとの関連は、線形回帰分析を用いて評価した。また、病院の種類による層別分析も実施した。

    【結果】
    有意な促進要因として、医師の態度、禁止規範、意図、習慣が挙げられた。有意な障壁は、医師の好ましくない態度、自己効力感の欠如、知識、重要性、経験であった。また、大学病院に勤務する医師は、自治体病院に勤務する医師と比較して、経験的態度(患者の特性に関する)、禁止規範(患者の嗜好に関する)、医師の習慣が有意な促進要因であった。

    【結論】
    日本におけるSDM導入の促進因子と障壁が明らかになった。

    【示唆】
    SDMに関する研修の機会を増やし,知識とスキルを提供することで,SDMを目に見えるようにし、習慣的な実践に寄与することが必要である。

  • Osawa E*, Asakura K, Okamura T, Suzuki K, Fujiwara T, Maejima F, Nishiwaki Y. Tracking pattern of total cholesterol levels from childhood to adolescence in Japan. J Atheroscler Thromb. 2022 Jan 1;29(1):38-49.