研究業績 Teaching

研究業績Publication

2019

  • Tani Y, Fujiwara T*, Doi S, Isumi A. Home cooking and child obesity in Japan: Results from the A-CHILD study. Nutrients. 2019 Nov 21;11(12):2859.

    日本語アブストラクト

    「家庭での調理頻度と子どもの肥満との関連」

    本研究の目的は、家庭での調理頻度と子どもの肥満との関連を調べることである。東京都足立区の9歳〜10歳の4年生とその保護者を対象として質問紙調査を実施し、学校健診で実測した子どもの身長体重データをリンクし、4258人を対象として解析を行いました。家庭での調理頻度は、質問紙を用いて保護者に「あなたのご家庭では、食事をつくる(料理する)ことがどのくらいありますか。目玉焼きなどの簡単(かんたん)な料理を含めて、あてはまる番号を選んでください。」と質問し、「週に6日以上」と回答した人を高調理頻度群、「週に4〜5日」と回答した人を中調理頻度群、「週に2〜3日」「週に1回以下」「つくらない」と回答した人を低調理頻度群と定義しました。子どもの体格については、身長・体重からBMIのZスコアを計算し、2SD以上を肥満と定義しました。全体として、子どもの2.4%および10.8%がそれぞれ家庭の調理頻度が低頻度および中頻度群に分類されました。交絡因子を調整した後、家庭での調理頻度が低い子どもは、家庭料理の頻度が高い子どもと比較して、肥満リスクが2.27倍(95%信頼区間:1.16–4.45)でした。潜在的な媒介因子として子どもの食行動(野菜摂取頻度、朝食欠食、間食習慣)を調整すると、家庭での調理頻度と肥満との有意な関連がなくなりました(1.90; 95%信頼区間:0.95–3.82)。家庭での調理頻度が少ないことは子どもたちの肥満と関連しており、この関連は不健康な食行動によって説明されるかもしれない。

  • Nishizawa T, Morita A, Fujiwara T*, Kondo K. Association between childhood socioeconomic status and subjective memory complaints among older adults: Results from the Japan Gerontological Evaluation Study 2010. Int Psychogeriatr. 2019 Dec;31(12):1699-1707.

  • 伊角彩藤原武男*、三瓶舞紀子.「揺さぶられ症候群の予防のための泣きに関する教育的動画の視聴効果:乳児期の子どもをもつ親を対象とした介入研究」日本公衆衛生雑誌. 2019;66(11):702-711.

    日本語アブストラクト

    目的
    本研究は,死亡率の高い乳幼児揺さぶられ症候群の予防のために厚生労働省が作成した乳児の泣きに関する教育的動画「赤ちゃんが泣き止まない」によって,乳児期の子どもをもつ親の泣きや揺さぶりに関する知識が向上するかについて効果検証を行うことを目的とした。

    方法
    調査協力の得られた全国の29自治体が,2013年4月1日~2014年3月31日に3〜4か月時の乳幼児健診などの機会を利用して1歳未満の子どもをもつ親を対象に教育的動画を視聴させ,その前後に配布した調査票データの2次解析を行った(N=1,444)。調査票を回収した1,354名(回収率93.8%)のうち,主たる変数の回答に欠損がない1,232名を分析対象とした。調査票では,泣きに関する知識を問う6項目(例:「赤ちゃんが泣いているときにいつもどこか具合が悪いサインだと思いますか」)と揺さぶりに関する知識を問う2項目(例:「泣き止ませるために赤ちゃんを激しく揺さぶることは,良い方法だと思いますか」)について4件法(0~3点)で親に回答を求めた。それぞれの知識に関して合計点(0-100点に換算)を求め,動画視聴の前後で比較した。また親・子ども・世帯の属性や妊娠・出産後の状況による層別化分析,さらに知識スコアの上昇分に関して回帰分析を行った。

    結果
    動画視聴によって泣きに関する知識が12.4点(95% 信頼区間: 11.7-13.2),揺さぶりに関する知識が4.7点(95% 信頼区間:3.9-5.6),有意に上昇した。親の年齢・性別,子の月齢・性別,第一子,婚姻状況,学歴,世帯収入,祖父母との同居,産後うつ,妊娠期からの家庭内暴力(DV),妊娠が分かった時の気持ち,居住地の規模に関してそれぞれ層別化した結果,既婚以外の群と身体的DV被害者群を除いた全てのサブグループで,有意な知識の増加が確認された。また,動画視聴前後の知識上昇分をアウトカムとして重回帰分析を行ったところ,親の学歴が低い場合より高い方が泣きの知識の上昇分が高かった。揺さぶりに関しては,女性より男性の方が知識が増加し,また祖父母と同居している場合より同居していない方が知識が増加していた。

    結論
    乳児の泣きに関する教育的動画の視聴は,3〜4か月時の乳児をもつ親の属性や状況に関わらず,泣きや揺さぶりの知識を向上させる効果があることが確認された。

  • Ikeda T, Tsuboya T, Aida J*, Matsuyama Y, Koyama S, Sugiyama K, Kondo K, Osaka K. Income and education are associated with transitions in health status among community-dwelling older people in Japan: The JAGES cohort study. Fam Pract. 2019 Nov 18;36(6):713-722.

  • Nakagawa Kang J, Unnai Yasuda Y, Ogawa T, Sato M, Yamagata Z, Fujiwara T*, Moriyama K*. Association between maternal smoking during pregnancy and missing teeth in adolescents. Int J Environ Res Public Health. 2019 Nov 16; 16(22); 4536.

  • Murayama H*, Amagasa S, Inoue S, Fujiwara T, Shobugawa Y. Sekentei and objectively-measured physical activity among older Japanese people: A cross-sectional analysis from the NEIGE Study. BMC Public Health. 2019 Oct 22;19(1):1331.

  • Kusama T, Aida J*, Sugiyama K, Matsuyama Y, Koyama S, Sato Y, Yamamoto T, Igarashi A, Tsuboya T, Osaka K. Does the type of temporary housing make a difference in social participation and health for evacuees of the Great East Japan Earthquake and tsunami? A cross-sectional study. J Epidemiol. 2019 Oct 5;29(10):391-398.

  • Koyama Y, Fujiwara T*. Impact of alcohol outlet density on reported cases of child maltreatment in Japan: Fixed effects analysis. Front Public Health. 2019 Oct 4; 7:265.

  • Momosaki R*, Wakabayashi H, Maeda K, Shamoto H, Nishioka S, Kojima K, Tani Y, Suzuki N, Hanazato M, Kondo K. Association between food store availability and the incidence of functional disability among community-dwelling older adults: results from the Japanese Gerontological Evaluation cohort study. Nutrients. 2019 Oct 4;11(10):2369.

  • Nawa N, Black MM, Araya R, Richiardi L, Surkan PJ. Pre- and post-natal maternal anxiety and early childhood weight gain. J Affect Disord. 2019 Oct 1;257:136-142.

  • Park S, Greene MC, Melby MK, Fujiwara T, Surkan PJ. Postpartum depressive symptoms as a mediator between intimate partner violence during pregnancy and maternal-infant bonding in Japan. J Interpers Violence. 2019 Sep 18:886260519875561. doi: 10.1177/0886260519875561. [Epub ahead of print]

  • Funakoshi Y*, Ito K, Morino S, Kinoshita K, Morikawa Y, Kono T, et al. Enterovirus D68 respiratory infection in a children’s hospital in Japan in 2015. Pediatr Int. 2019 Aug;61(8):768-776.

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    「2015年日本の小児病院におけるエンテロウイルスD-68型(EV-D68)呼吸器感染症のアウトブレイク」

    【背景】エンテロウイルスD-68型(EV-D68)の小児における呼吸器感染症のアウトブレイクが2014年世界中で報告された。日本では2015年秋にEV-D68のアウトブレイクを経験した。本研究の目的はEV−D68特異的PCR陽性群と陰性群とを比較することである。

    【方法】2015年9月より10月までに呼吸器症状を示し入院した患者を対象とした。鼻腔拭い液を採取、呼吸器感染症の原因となるウイルスに対するマルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびEV−D68特異的PCRを行った。EV−D68特異的PCR陽性群、陰性群間で患者背景、臨床情報を比較した。

    【結果】対象患者165名中76名の検体を採取し、52.6%(40/76検体)からEV−D68を検出した。陽性群、陰性群それぞれの年齢中央値は3.0(IQR5.5)歳、3.0(IQR4.0)歳であった。共感染は陽性群で32.5%、陰性群で47.2%だった。両群間では、喘息と反復性喘鳴の既往歴の有無、入院日数、集中治療室の入室率の差は明らかではなく、発症から検体採取までの期間は陰性群で長かった(3.0日vs5.0日、p=0.001)。系統樹解析ではクレードBであった。急性弛緩性麻痺症例はなかった。

    【考察】本研究では、アウトブレイク発生期間中に呼吸器症状を示して入院した小児の半数以上でEV−D68特異的PCRが陽性となった。喘息歴は重症呼吸器感染症の発症とは関連していなかった。

  • Watanabe M, Hikichi H, Fujiwara T*, Honda Y, Yagi J, Homma H, Mashiko H, Nagao K, Okuyama M, Kawachi I. Disaster-related trauma and blood pressure among young children: A follow-up study after Great East Japan earthquake. Hypertens Res. 2019 Aug;42(8):1215-1222.

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    「子どもにおける震災関連トラウマと血圧との関連:東日本大震災における追跡調査」

    【目的】本研究の目的は、2011年に起きた東日本大震災でのトラウマ体験と小児の血圧の関連を明らかにする事である。

    【方法】参加者は被災地3県(宮城・福島・岩手)と対照群(三重県)からの計320名である。震災後の2012年から2015年まで約4
    年間の追跡を行った。調査開始時の平均年齢は6.6歳で4年後の追跡率は71%であった。参加者とその保護者に対して質問紙・インタビューにより種々なトラウマ体験を調査した。調査開始時および追跡時に血圧を計測し、年齢・性別・身長に特異的なz-scoreに変換した値をアウトカムとして、震災関連トラウマとの関係を回帰分析によって調べた。

    【結果】トラウマ経験の合計数は弛緩期血圧の上昇と線量反応関係的に関連しており、BMI・年収・年齢・性別・住居(仮設住宅等)で調整した後も関連が見られた。4つ以上のトラウマ体験に暴露された群の弛緩期血圧上昇が有意傾向だった(β=0.43, p=0.059)。
    個々のトラウマ体験の中では、火事の目撃体験が有意に弛緩期血圧上昇と相関していた。(β=0.60, p=0.009)

    【結論】震災関連トラウマ体験が弛緩期血圧の上昇と関連している事が示された。本研究から因果関係は不明であるが、血圧の上昇は長期的な健康問題を引き起こす可能性があるため、さらなる追跡調査が必要である。

  • Morita A, Ochi M, Isumi A, Fujiwara T*. Association between grandparent coresidence and weight change among first‐grade Japanese children. J Pediatr Obes. 2019 Aug;14(8):e12524.

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    「祖父母同居と小学1年児の体重変化の関連について」

    【背景】世界的に祖父母と同居する児童が増えているが、祖父母同居が学童期における体重変化に与える影響について明確ではない。本研究は、平成27年度及び平成28年度に足立区で行われた「子どもの健康・生活実態調査」データを用いて、祖父母同居と学童期におけるBMIの変化との関連を検証した。

    【方法】解析対象としたのは、平成27年度「子どもの健康・生活実態調査(質問紙+健診)」に保護者が参加した小学1年児のうち、祖父母との同居形態を変えることなく平成28年度「子どもの健康・生活実態調査(質問紙+健診)」に参加した3422名であった。祖父母同居と肥満を誘発する食事、身体活動、TVやパソコンなどスクリーンタイムの座位行動との関連、祖父母同居と小学校1年から2年時における体格(性・年齢別Body
    Mass Index
    (BMI)zスコア)の変化との関連について、それぞれ頑健性のある分散誤差補正を行ったポワソン回帰分析と多変量線回帰分析を用いて検証した。

    【結果】解析の結果、祖父母同居している児童は、自由に間食を許されている割合が、祖父母と同居していない児童と比べて38%多いことが明らかとなった。しかし、小学1年児のBMIzスコア、出生体重、親の肥満度、母親の年齢、家族の社会経済的状況や世帯構成の影響、そして肥満誘発習慣を調整したところ、祖父母同居児は、祖父母と同居していない児童と比べて、BMIzスコアの変化が小さいことが示された。

    【考察】今回の研究から、日本の都市部において、祖父母との同居状況と低学年期における少ない体格の変化の関連性が示された。

  • Amemiya A, Fujiwara T*, Shirai K, Kondo K, Oksanen T, Pentti J, Vahtera J. Association between adverse childhood experiences and adult diseases in older adults: A comparative cross-sectional study in Japan and Finland. BMJ Open. 2019 Aug 24;9(8):e024609.

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    「子ども期の逆境体験と高齢期の成人疾患との関連:日本フィランド比較研究」

    目的
    子どもの頃の虐待などの逆境体験(adverce chiuldhood experience,ACE)と高齢期における成人疾患罹患との関連を調べた。

    方法
    解析には日本老年学的評価研究(JAGES)とフィンランドの公務員を対象とした②つのデータを用いて、日本とフィンランドのそれぞれ約1万人の高齢者を対象とした。子ども期の逆境体験は両親の離婚、虐待など家庭内における恐怖、子ども期の貧困を用いた。高齢期におけるがん・心疾患・脳卒中・糖尿病の罹患や不健康観、喫煙、肥満をアウトカムに用いた。分析にはロジスティック回帰分析を用いて性別や年齢、教育歴、婚姻歴、就業の有無を調整した。

    結果
    日本の高齢者では50%、フィンランドの高齢者では37%が子ども期の逆境体験を経験していた。子ども期の逆境体験は高齢期の成人疾患の罹患と有意な関連を示し、オッズ比についても不健康観では日本で1.35(95% 信頼区間: 1.25-1.46)、フィンランドで1.34 (95% CI: 1.27-1.41)と同様の値を示した。逆境体験の数どちらの国においてもがん、心疾患、脳卒中、糖尿病、喫煙、BMIの増加との有意な関連を示した。

    結論
    子ども期の逆境体験と高齢期における不健康観、成人疾患、不健康行動との関連は日本、フィンランドそれぞれで確認され、その関係性の強さも同程度であった。この研究結果から、子ども期の逆境体験の健康への影響が高齢期まで続くことは注目すべきであり、文化や環境の違いを超えて普遍的である可能性が示唆された。

  • Nagamine Y, Kondo N*, Yokobayashi K, Ota A, Miyaguni Y, Sasaki Y, Tani Y, Kondo K. Socioeconomic disparity in the prevalence of objectively evaluated diabetes among older Japanese Adults: JAGES cross-sectional data in 2010. J Epidemiol. 2019 Aug 5;29(8):295-301.

  • Morita A, Matsuyama Y, Isumi A, Doi S, Ochi M, and Fujiwara T*. Association between grandparent co-residence, socioeconomic status and dental caries among early school-aged children in Japan: A population-based prospective study. Scientific Rep. 2019 Aug 5;9(1):11345.

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    「学童期の子どものう蝕と祖父母同居および保護者の社会経済状態の関連についての前向き研究」

    世界的に多くの子供たちが祖父母と暮らしています。孫との受身的な関わり(要求されるままにお菓子をあたえるなど)を介して、祖父母との同居は幼児のう蝕に関連する可能性があります。しかし、学童期の子どもを対象にした研究は少なく、特に社会経済状態を考慮した研究は限られています。そこで本研究では、保護者の社会経済状態の影響を考慮したうえでの祖父母の同居と学童期の子どものう蝕の関連を明らかにすることを目的としました。

    東京都足立区にあるすべての小学1年生の保護者に祖父母との同居および子どもの口腔関連の健康行動についてアンケート調査をし、2年時の学校歯科検診の結果とリンクしました(N = 3,578)。データの階層構造を考慮したマルチレベルポアソン回帰分析で祖父母の同居とう蝕の関連を分析しました。

    その結果、未処置または治療済のう蝕をもつ子どもの割合は、祖父母と同居していない子ども(44.0%)よりも、祖父母と同居している子ども(48.9%)で多くみられました。しかし、歯の種類、子どもの年齢と性別、親の社会経済状態を調整するとした分析では祖父母との同居と子どものう蝕本数に有意な関連は見られませんでした(有病率比 = 1.13, 95%信頼区間: 0.90, 1.42)。日本の都市部における学童期の子どものう蝕と祖父母同居の関連は保護者の社会経済状態で説明されることが明らかになりました。

  • Honda Y, Fujiwara T*, Kawachi I. Higher child-raising costs due to maternal social isolation: Large population-based study in Japan. Soc Sci Med. 2019 Jul;233:71-77.

  • Nawa N, Hirata K, Kawatani K, Nambara T, Omori S, Banno K, et al. Elimination of protein aggregates prevents premature senescence in human trisomy 21 fibroblasts. PLoS One. 2019 Jul 29;14(7):e0219592.

  • Honda Y, Fujiwara T*, Yagi J, Homma H, Mashiko H, Nagao K, et al. Long-term impact of parental post-traumatic stress disorder symptoms on mental health of their offspring after the Great East Japan Earthquake. Front Psychiat. 2019 Jul 26;10:496.

    日本語アブストラクト

    「東日本大震災後の親のPTSDが子どものメンタルヘルスに与える長期的影響」

    目的
    本研究の目的は、東日本大震災に被災した地域における子どもの問題行動とその親の心的外傷後ストレス障害(PTSD)症状とを継続的にモニタリングし、両者の長期的な関連を明らかにすることである。

    方法
    東日本大震災に被災した3県(岩手・宮城・福島)で2011年3月の震災時4-6歳であった子どもとその親を追跡した。子どもの問題行動はChild Behavior Checklist (CBCL)、親のPTSDはImpact of Event Scale-R (IES-R)を用い、それぞれ2012年(ベースライン調査)と2014年(フォローアップ調査)において両者の関連を検討した。解析にはロジスティック回帰分析を用い、ベースラインの子どもの問題行動をその他の共変量(子ども:年齢・性別・トラウマ体験、親:年齢・教育歴、世帯:きょうだいの数・収入)を調整した。

    結果
    親のPTSD症状と子どもの問題行動の関連に対する横断的解析では、2012年は両者に関連が見られなかったのに対し、2014年は有意な正の関連が示された(adjusted odds ratio [AOR] = 3.03, 95% CI: 1.06-8.67) 。さらに縦断的解析結果において、2012年の親のPTSD症状は2014年の子どもの問題行動(内的尺度)と有意な関連を示した(AOR: 4.62, 95%CI:1.03-20.78)。

    結論
    東日本大震災被災地における親のPTSD症状と子どもの問題行動との関連は長期的であり、少なくとも3年間続くことが示唆された。被災地における親と子どもに対するメンタルヘルス支援において、この関連の可能性を検討する必要がある。

  • Doi S*, Fujiwara T. Combined effect of adverse childhood experiences and young age on self-harm ideation among postpartum women in Japan. J Affect Dis. 2019 Jun 15;253(15):410-418.

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    「産後の自傷念慮に与える幼少期の逆境体験と若年妊娠の付加効果」

    【背景】産後の母親における自殺は、先進国で大きな問題となっている。産後の自傷念慮に関連するさまざまなリスク要因が明らかにされてきているが、リスク要因の付加効果について検討した研究はない。そこで本研究では、産後の自傷念慮に与える母親の幼少期の逆境体験と年齢との付加効果について検討することを目的とした。

    【方法】本研究は、A県A市で2013年9月から2014年8月までの3-4ヶ月乳幼児健診に参加した母親8,074名を対象とした横断データを用いた。産後の自傷念慮は、Edinburgh Postnatal Depression Scale(EPDS)の項目10を用いて評価された。また、自傷念慮のリスク要因として、母親の幼少期の逆境体験、母親の属性、パートナーとの関係性、世帯の属性、子どもの属性、産後の状況、自傷念慮以外の産後の抑うつ症状について母親に回答を求めた。

    【結果】幼少期の逆境体験を3つ以上もつ若年(25歳未満)の母親は、幼少期の逆境体験をもたない35歳以上の母親と比較して、10.3倍(95%信頼区間=5.3-20.2)産後に自傷念慮を抱きやすいことが明らかとなった。初産の母親においても同様の付加効果が見られた(OR=7.6; 95%信頼区間=3.2-17.9)。

    【考察】幼少期の逆境体験を3つ以上もつ25歳未満の母親は、産後に自傷念慮を抱くリスクが高いことが示唆された。複数のリスク要因を持つ母親、特に幼少期の逆境体験をもつ若年の母親をターゲットとした予防的介入が必要である。

  • Aoki S, Doi S, Horiuchi S, Takagaki K, Kawamura A, Umeno R, et al. Mediating effect of environmental rewards on the relation between goal-directed behavior and anhedonia. Current Psychol. 2019 Jun 12. doi: 10.1007/s12144-019-00312-y.

  • Matsuyama Y*, Tsakos G, Listl S, Aida J, Watt RG. Impact of dental diseases on quality-adjusted life expectancy in US adults. J Dent Res. 2019 May;98(5):510-516.

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    「米国成人における歯科疾患の質調整余命への寄与」

    【背景】歯科疾患の健康への負荷を他の疾患と比較可能な指標で推計することは、政策決定に有用である。

    【目的】米国成人における、歯科疾患による質調整余命の損失年数およびその社会格差を推計すること。

    【方法】National Health and Nutrition Examination Surveyの2001-2002, 2003-2004, 2011-2012の3回の横断調査を統合し分析した(n = 9,445, 平均年齢48.4歳)。主観的健康感および過去30日間で身体的に不健康だった日数、精神的に不健康だった日数、活動に制限があった日数からdisutility score (0から1の値をとり、0が完全に健康な状態、1が死亡を表すQuality of Lifeの指標)を求め、歯科疾患(未治療のう蝕、喪失歯数、歯周病の程度)との関連を年齢で層別化した多変量線形回帰分析で検討した。共変量は年齢、性別、調査年度、教育歴、喫煙状況、糖尿病の有無とした。さらに、得られた推定値と米国の生命表から、平均的な米国成人の20歳時点での歯科疾患による質調整余命の損失年数を推定した。

    【結果】未治療のう蝕と喪失歯はdisutility scoreに統計的に有意に関連した。一方で、歯周病とdisutility scoreに統計的に有意な関連はみられなかった。未治療のう蝕とdisutliy scoreの関連は高齢者で大きく、喪失歯とdisutility scoreの関連は若い人で大きかった。歯科疾患による質調整余命の損失は一人平均0.43年(95%信頼区間:0.28, 0.59)と推定され、これは他の疾患の5.3%に相当した。高校卒業未満の人は、大学卒業以上の人にくらべ、歯科疾患による質調整余命の損失が0.32年多いという社会格差がみとめられた。

    【結論】質調整余命への歯の寄与は他の疾患にくらべても決して小さくなく、歯の状態を改善することは集団の健康度の改善に大きく寄与する可能性が示された。

  • 青木 俊太郎, 土井 理美, 堀内 聡, 河村 麻果, 梅野 礼弐, 坂野 雄二. 気分障害患者の環境中の主観的報酬と抑うつ気分および興味·喜びの喪失の関連性. 心身医学. 2019; 59(4):368.

  • Igarashi A, Aida J*, Sairenchi T, Tsuboya T, Sugiyama K, Koyama S, Matsuyama Y, Sato Y, Osaka K, Ota H. Does cigarette smoking increase traffic accident death during 20 years follow-up in Japan? The Ibaraki Prefectural Health Study. J Epidemiol. 2019 May 5;29(5):192-196.

  • Doi S, Fujiwara T*, Isumi A, Ochi M. Pathway of the association between child poverty and low self-esteem: Results from a population-based study of adolescents in Japan. Front Psychol. 2019 May 3;10:937.

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    「思春期児童における貧困から自己肯定感の低さへの経路について」

    【背景】子どもの貧困は、低い自己肯定感など、さまざまな悪影響を及ぼすとされている。自己肯定感の低さは、精神疾患、自殺、学力の低さのリスク要因であるが、子どもの貧困がどのようにして自己肯定感の低さにつながるかという経路は明らかになっていない。本研究では、家族レベル、学校レベル、地域レベルの要因を含むエコロジカルモデルに基づいて、子どもの貧困から自己肯定感の低さへの経路について検討することを目的とした。

    【方法】2016年度の「足立区子どもの健康・生活実態調査(Adachi Child Health Impact of Living Difficulty: A-CHILD)」に参加した足立区の小学4年生(534組)、小学6年生(530組)、中学2年生(588組)の児童・生徒及びその保護者(1652組)を対象とした。保護者の質問票では、子どもの貧困、保護者のメンタルヘルス、保護者の子どものとの関わり、保護者のソーシャルキャピタルについて尋ねた。子どもの質問票では、自己肯定感と学校のソーシャルキャピタルについて尋ねた。家族レベル(保護者のメンタルヘルス、子供との関わり)、学校レベル(学校のソーシャルキャピタル)、地域レベル(保護者のソーシャルキャピタル)の要因を用いて、構造方程式モデリング(SEM)によって子どもの貧困から自己肯定感の低さへの経路について検討した。

    【結果】子どもの貧困は自己肯定感の低さと関係していた。子どもの貧困は、保護者の子どもとの関わりの欠如に直接的につながっていることに加え、保護者のメンタルヘルスの問題と保護者のソーシャルキャピタルの欠如を媒介して子供との関わりの欠如につながっていた。そして、保護者の子どもとの関わりの欠如は直接的に自己肯定感の低さにつながり、かつ学校のソーシャルキャピタルを介して間接的に自己肯定感の低さに影響していることが明らかとなった。

    【考察】子どもの貧困が自己肯定感の低さに与える影響を弱めるために、家族レベル、学校レベル、地域レベルの要因に焦点を当てた包括的な政策が有効である可能性が示唆された。

  • Morishita S, Yoshii T*, Okawa A, Fushimi K, Fujiwara T. Perioperative complications of anterior decompression with fusion versus laminoplasty for the treatment of cervical ossification of the posterior longitudinal ligament: propensity score matching analysis using a nation-wide inpatient database. Spine J. 2019 Apr;19(4):610-616.

    日本語アブストラクト

    「頚椎後縦靱帯骨化症に対する前方除圧固定術と後方椎弓形成術における周術期合併症調査 全国入院患者データベースを用いた傾向スコアマッチング解析」

    要旨:
    頚椎後縦靱帯骨化症(OPLL)に対する代表的な術式として、前方除圧固定術と後方椎弓形成術がある。この2術式における周術期合併症を比較検討した文献は少なく、先行研究は小規模の症例対照研究が主である。今回我々は、本邦の全国入院患者データベースと傾向スコアマッチングを用いて、OPLLにおける前方手術と後方手術の周術期合併症を比較検討した。マッチング後の対象は各群1192名であり、心血管障害、嚥下障害、肺炎、髄液漏は前方群で有意に多く、それに伴い入院費も高くなった。一方、手術部位感染は後方群で有意に多かった。再手術率、死亡率に有意差はなかった。前方群は様々な合併症が起こっていたが、手術部位感染は後方群で多かった。本知見は、今後の頚椎OPLL治療において適切な術式選択と患者説明の一助になるものと考える。

    緒言:
    頚椎OPLLは骨化での脊髄圧迫により様々な脊髄症状を起こす疾患であり、転倒など軽微な外傷で重篤な脊髄損傷を起こす、厚生労働省指定の難病である。軽微な症状の患者は保存治療の適応であるが、多くは進行性の脊髄症状を起こし手術適応となる。手術方法は前方手術、後方手術の2つがあるものの、適切な術式については見解が分かれる。前方手術は良好な脊髄除圧が達成できるが手術難易度が高く、後方手術は手技として比較的容易であるが、症例によっては脊髄除圧が不十分となり、それぞれ一長一短である。
    頚椎OPLLの手術治療における先行研究では、それぞれの術式における合併症報告が複数なされている。しかしこれらは単一施設での症例対照研究が多く、選択バイアスもあってエビデンスレベルは十分でない。さらに、手術部位の局所合併症を中心に報告しているものがほとんどあり、全身合併症に焦点を当てた研究はない。OPLLは日本人を含むアジア系民族に多く発生するため、本邦において大規模な周術期合併症調査を行うことは非常に重要である。そこで我々は、本邦の入院データベースを用い、バイアスを最小限に抑えるため傾向スコアマッチング分析を併用して、頚椎OPLLにおける前方法と後方法の周術期合併症を比較検討した。

    方法:
    2010年4月~2016年3月において、本邦のDPCデータベースから頚椎OPLL(ICD10-code, M4882)に対して前方除圧固定術(前方手術)(Japanese original K-code, K142-1)または後方椎弓形成術(後方手術)(K142-6)を行った患者を抽出した。次いで、年齢、性別、BMI、喫煙指数、入院形態(予定入院か予定外入院か)、救急搬送の有無、入院時ADLスコア、脊椎手術歴の有無、病院種別(Teaching hospitalかNon-teaching hospitalか)、各入院時併存症(脳血管障害、糖尿病、関節リウマチ、腎障害、肝障害、消化性潰瘍および出血、心血管障害、心不全、心房細動、慢性閉塞性肺疾患、肺炎、骨粗鬆症、悪性腫瘍)を説明変数としてロジスティック回帰分析を行い、個々の患者における術式選択の傾向スコアを算出した。ロジスティック回帰の適合度評価のためのC統計量は0.692であり、比較的良好なモデルであることを確認し、Caliperを0.4と設定して1:1でnearest neighbor matchingを行った。これでマッチした患者を対象に、全身および局所の周術期合併症と再手術率、入院費、死亡率を、前方法と後方法で比較検討した。

    結果:
    マッチング前の対象は計8,818名、前方群1,333名、後方群7,485名であり、呼吸障害、嚥下障害、消化管出血などの全身合併症が前方群で高率に発生していた。マッチング前の患者背景では、年齢(前方/後方=60.3±11.3/65.1±10.9歳, P<0.001)、救急搬送の割合(以下同様、1.4/2.4%, P=0.037)、糖尿病(22.2/27.7%, P<0.001)、心不全(1.1/2.0%, P=0.015)、脳血管障害(2.3/3.7%, P=0.013)、腎不全(1.0/2.0%, P=0.011)、悪性腫瘍 (0.6/1.3%, P=0.036)の割合が後方群で有意に高く、脊椎手術歴の割合(2.8/0.2%, P<0.001)は前方群で有意に高かった。マッチング後の対象患者は計2384名、各群1192名ずつであった。マッチング後の1192組ではバイアスは調整され、2群間の患者背景はほぼ完全に統一された。全身合併症において、心血管障害(1.9/0.8%, P=0.013)、嚥下障害(2.4/0.2%, P<0.001)、肺炎(1.0/0.3%, P=0.045)は前方群で有意に高かった。少なくとも1つの全身合併症が発生する割合は前方群13.3%、後方群7.9%であり、前方群で有意に高かった(P<0.001)。全身的な再手術において、内視鏡を含む消化器手術が前方群で有意に多かった(0.6/0.1%, P=0.034)。その他の項目で有意差はなかった。局所合併症において、髄液漏は前方群で有意に多かったが(2.4/0.4%, P<0.001)、手術部位感染は後方群で有意に多かった(2.0/3.4%, P=0.033)。局所的な再手術率に有意差はなかった。前方群で入院費は437,999円高くなったが(2,499,091±1,233,738/2,061,092±885,152, P<0.001)、死亡率に差はなかった。 考察: 前方群では呼吸器系をはじめとして、高率に周術期合併症が起きた。前方手術は一般的に仰臥位の全身麻酔で行われ、これが残気量の低下を引き起こし無気肺の原因となる。また、アプローチの関係上術中に食道を牽引する操作が加わり、反回神経麻痺や後咽頭・後喉頭腔軟部組織の腫脹が出現して嚥下障害の原因となる。よって、誤嚥性肺炎が誘発され呼吸器合併症が高率となる。 また、前方群では心血管イベントも高率に起こっていた。OPLLにおける前方手術は椎体亜全摘による多椎間固定が必要となることが多く、一般的に出血量が多い。実際に本研究でも、前方群は後方群に比べ高率に輸血が行われていた。こうして、心血管系にストレスがかかり様々な心血管合併症が発生したと考えられる。先行研究では呼吸器系や心血管系の重篤な合併症に伴い医療費が増大すると報告されているが、我々の前方群の医療費増大も同様の理由が考えられる。 局所合併症において、髄液漏は前方手術で多いと言われる。我々の結果も同様であり、OPLLにおける前方手術では、硬膜の石灰化や後縦靱帯と硬膜の癒着により、除圧中に硬膜が切除されてしまい髄液が漏出し得る。前方手術における髄液漏は、偽性髄膜瘤、上気道閉塞、皮膚瘻孔、髄膜炎などを引き起こし重篤となるため、術中には十分注意を払うべきである。硬膜切除による髄液漏を避けるため、OPLL切除でなく非薄化して切除を必須としない、骨化浮上術が有用である。 以上、前方群では様々な合併症が高率に発生したが、興味深いことに手術部位感染は後方群にて高頻度であった。前方手術では筋間からのアプローチとなるため軟部組織に対し低侵襲である。一方、後方手術は後方傍脊柱筋の切離・剥離による侵襲を伴うため、軟部組織に侵襲が加わる。これが感染率の差につながった可能性がある。 本研究ではいくつかの限界がある。DPCデータベースに臨床的に重要な手術椎間数、術前後の神経学的所見などの情報が含まれていないこと、診断がコードによるものであり、臨床的な情報を反映できていない可能性があること、DPCデータベースには入院中の情報しか含まれないため、退院後に発生した合併症は分からないことである。 本研究は全国入院患者データベースを用い、傾向スコアマッチング分析にてバイアスを最小限に抑えた、OPLLにおける前方手術と後方手術の周術期合併症の大規模な調査を行った初めての研究である。OPLLは世界的には罹患率が低くまれな疾患であるものの、アジア圏では欧米圏よりは比較的高い。日本での本研究が、OPLLの治療において適切な術式選択、患者説明の一助になるものと考える。 結論: DPCデータベースを用いて傾向スコアマッチング解析を施行し、頚椎OPLLに対する前方手術と後方手術の周術期合併症を比較検討した。前方手術では様々な合併症が起こっており、入院費は増大した。一方で手術部位感染は後方手術で多かった。

  • Fujiwara T*, Weisman O, Ochi M, Shirai K, Matsumoto K, Noguchi E, et al. Genetic and peripheral markers of the oxytocin system and parental care jointly support the cross-generational transmission of bonding across three generations. Psychoneuroendocrinology. 2019 Apr;102:172-181.

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    「唾液中オキシトシンおよびオキシトシン関連遺伝子多型と親による養育態度が三世代にわたる親子関係の世代間連鎖を説明する」

    背景:人間および動物の研究から、親子関係にオキシトシンが重要な役割を果たすことがわかっている。そして人間の研究から、オキシトシン関連遺伝子の多型および体内のオキシトシン濃度が養育態度のパターンを決め、子どもの情緒社会的能力が決まるとされる。しかし、オキシトシンおよび養育態度の影響について両方を三世代に渡って調べた研究はこれまでにない。

    方法:本研究に参加したのは115組の祖母、母、その乳児(計345人)である。親子関係に関連することがわかっている唾液中のオキシトシン、オキシトシン受容体(rs53575およびrs2254298)とCD38(rs3796863)のSNP多型を全ての参加者で調べた。さらに、祖母から母に対しての、母から乳児に対しての養育態度を質問紙で調べた。

    結果:祖母から過保護な養育を受けていた母親は、オキシトシン受容体(rs53575)がG
    アレル(AG /GG)の場合、乳児に対してより拒否的な態度を取っていた。この過保護であった祖母のオキシトシンは低かった。乳児のオキシトシン受容体(rs2254298)がAアレル(AA /AG)で母親が拒絶を示した場合、乳児のオキシトシンは高かった。祖母のオキシトシン受容体(rs2254298)がGGであると、曽祖母から過保護な養育を受けていた場合、そうでない場合と比べて、母に対して望ましくない養育態度を行なっていた。

    結論:この研究は、オキシトシン関連遺伝子と体内のオキシトシン濃度が被養育体験との交互作用を通して次世代の親子関係を三世代に渡り形作ることを示した初めての研究である。この結果は世代を超えた愛着の適応(あるいは不適応)パターンの連鎖に関する生物学的および行動的決定要因を示唆する、重要なものである。

  • Amemiya A, Saito J, Saito M, Takagi D, Haseda M, Tani Y, et al. Social capital and the improvement in functional ability among older people in Japan: A multilevel survival analysis using JAGES data. Int J Environ Res Public Health. 2019 Apr 12;16(8):1310.

  • Tani Y*, Suzuki N, Fujiwara T, Hanazato M, Kondo K. Neighborhood food environment and dementia incidence: The Japan Gerontological Evaluation Study Cohort Survey. Am J Prev Med. 2019 Mar;56(3):383-392.

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    「近隣の食料品店数と認知症発症リスクについて」

    ■背景
    近隣の食料品店へのアクセスの悪さが健康に悪影響を及ぼす可能性が報告されていますが、認知症のリスクに ついては分かっていません。そこで、日本の高齢者を対象に、近隣の食料品店の数と認知症との関連について追跡 調査をしました。

    ■対象と方法
    2010年に実施したJAGES(Japan Gerontological Evaluation Study, 日本老年学的評価研究)調査に参加した 65歳以上の高齢者を約3年間追跡し、近隣の食料品店の数と認知症発症との関連について分析しました。性別、 年齢、認知症、近隣の食料品店の数の情報が得られており、歩行・入浴・排泄に介助が必要な人を除いた49,511 名のデータを使用しました。近隣の食料品店数は、主観的方法と客観的方法の2通りで測定しました。主観的方法 では「あなたの家から1キロ以内に、新鮮な野菜や果物が手に入る商店・施設はどのくらいありますか」という質問に 対し、4段階の選択肢「たくさんある、ある程度ある、あまりない、まったくない」を用いて4群に分けました。客観的方 法では、参加者の居住地の半径500m内にある生鮮食料品店数をGIS(Geographic Information System)により算 出し、四分位で4群に分けました。認知症は介護保険賦課データにある「認知症高齢者の日常生活自立度」のラン クⅡ以上と定義しました。認知症リスクは年齢、年齢、性別、教育歴、経済状況、同居の有無、婚姻状況、就労状 態、車の利用、バス電車の利用、在住都道府県の影響を調整して統計学的な評価を行いました。

    ■結果
    主観的方法と客観的方法の両方で測定した食料品店の数が認知症リスクと関連がありました。主観的方法で は、近隣に野菜や果物が手に入る店が「たくさんある、ある程度ある、あまりない、まったくない」と回答した人がそれ ぞれ7,898人、30,013人、8,935人、2,665人でした。そのうち、約3年間の追跡期間中に認知症となった人が381 人、18,16人、701人、264人でした。客観的方法では、居住地の半径500m内にある食料品店数が多い群から順 に12,375人、12,010人、12,685人、12,441人であり、認知症となった人が508人、781人、943人、930人でし た。年齢、性別、教育歴、経済状況、同居の有無、婚姻状況、就労状態、車利用、バス電車利用、在住都道府県 の影響を取り除いて解析した結果、主観的方法では近隣の野菜や果物が手に入る店が「たくさんある」と回答した人 に比べ、「ある程度ある」「あまりない」「まったくない」と回答した人の認知症リスクはそれぞれ1.2倍、1.4倍、1.7倍で した。客観的方法では居住地の半径500m内にある食料品店数が最も多い群に比べ、少ない群の認知症リスクは 1.3から1.5倍でした。

    ■結論・本研究の意義
    近隣の食料品店へのアクセスの悪さが認知症リスクとなる可能性が示されました。また、レストランなどの飲食店 やコンビニエンスストアではなく、食料品店へのアクセスが認知症に重要である可能性が示唆されました。徒歩圏内 に食料品店が存在することが認知症予防に重要かもしれません。

  • Doi S, Fujiwara T*, Isumi A. Development of the Intimate Partner Violence during Pregnancy Instrument (IPVPI). Front Public Health. 2019 Mar 21;7:43.

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    「妊娠期の親密なパートナーからの暴力(DV)を予測する尺度(Intimate Partner Violence during Pregnancy Instrument(IPVPI))の開発」

    【背景】妊娠期の親密なパートナーからの暴力(Intimate Partner Violence: IPV)は、母親にもその子どもにも悪影響を与える。
    IPVは世界的にも重大な問題とされているものの、IPVは報告されにくいことから、その発生率は過小評価されていると考えられている。本研究では、報告されていない妊娠期のIPVも把握できるようなツールを開発することを目的とした。

    【方法】3-4ヶ月乳幼児健診に参加した愛知県の6,590名の女性が質問紙調査に参加した。質問紙には妊娠期のIPV(身体的IPV、言葉によるIPV )の経験、母親の属性、パートナーの属性、世帯の属性に関する質問項目が含まれ、健診前に郵送配布または健診時に直接配布された。質問紙は健診時に回収、または郵送にて回収した。妊娠期のIPVの予測モデルは先行文献をもとに選定されたリスク要因を用いて作成された。

    【結果】妊娠期のIPVに関する質問に回答があった6,530名のうち(有効回答率67.3%)、妊娠期のIPVを経験した割合は11.1%であった(身体的IPV = 1.2%; 言葉によるIPV = 10.8%)。多変量ロジスティック回帰分析の結果、母親の年齢(25歳未満)、経産、人工中絶の経験、妊娠発覚時にネガティブな感情を抱いた(例:困った)、妊娠期のサポートがない、パートナー関係での問題がある、妊娠期のパートナーの喫煙、経済的困難が妊娠期のIPVと関係していた。この結果に基づき、測定されない妊娠期のIPVを把握するための8項目からなるIntimate Partner Violence during Pregnancy Instrument (IPVPI)を開発した。IPVPIの得点範囲は0〜16点であり、中程度の予測力を有し(ROC曲線 = 0.719, 95%信頼区間 = 0.698-0.740)、カットオフ値は2点であった(感度= 79.5%, 特異度= 47.1%)。

    【考察】妊娠期IPVの経験を直接尋ねることなくIPVを把握しようとするIPVPIは、プライマリケアや産科において報告されない妊娠期IPVを把握することに役立つと考えられる。

  • Morita A*, O’Caoimh R, Murayama H, Molloy DW, Inoue S, Shobugawa Y, Fujiwara T. Validity of the Japanese version of the Quick Mild Cognitive Impairment Screen. Int J Environ Res Public Health. 2019 Mar 14;16(6):917.

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    「Quick Mild Cognitive Impairment Screenの妥当性について」

    認知症の早期発見・早期診断は、認知症の進行遅延や発症予防のための介入機会を創出するものである。我々は、簡便かつ認知症スクリーニング検査として妥当性・信頼性の評価が高い神経心理学検査Quick Mild Cognitive Impairment Screenの日本語版(Qmci-J)を開発し、妥当性を検証した。65歳から84歳の新潟県在住の地域高齢者526名に対して、Qmci-Jと我が国で使用頻度が高い精神状態短時間検査日本語版(sMMSE-J)を同時に実施し、結果を比較した。年齢調整済sMMSE-Jのカットオフ値に照らし合わせたところ、52名(9.9%)が認知症疑い、123名(23.4%)が軽度認知障害(MCI)の疑い、残りの351名が健常と判定された。Qmci-J及びsMMSE-Jの総合得点は、中程度の正の相関と認知障害(MCI/認知症)の検出された。ROC曲線に基づいて認知障害のカットオフ値を60/61点をカットオフ値としたところ、Qmci-Jの感度は73%、特異度は68%、陽性反応適中度は53%、陰性反応適中度は83%であった。他に本論文ではsMMSE-Jが27点未満の健常者のデータも示している。本研究結果は、認知症スクリーニング検査としてのQmci-Jの有用性を示唆しており、引き続き研究を行っていく予定である。

  • Sato R, Fujiwara T*, Kino S, Nawa N, Kawachi I. Pet ownership and children’s emotional expression: Propensity score-matched analysis of longitudinal data from Japan. Int J Environ Res Public Health. 2019 Mar 2;16(5):758.

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    「傾向スコアマッチングを用いた幼少期のペットの飼育と感情表現発達との関連に関する縦断研究」

    【目的】本研究は、幼少期のペットの飼育と子供の感情表現の発達との関連を傾向スコアマッチングを用いて検討することを目的とする。

    【方法】21世紀出生児縦断調査によって得られたデータのうち、0歳半時から5歳半時までの縦断データを解析に用いた。2001年に生まれた子供の保護者が回答した47,015人のデータから、データの欠損値を除いた31,453人のデータにおいて3歳半時のペットの飼育の有無によって傾向スコアマッチング行い、5歳半における感情表現の発達に問題があるかについて関連を検討した。

    【結果】3歳半時にペットを飼育していた子供の割合は36%であった。傾向スコアマッチングを用いた解析の結果、幼少期にペットを飼育していた子供は飼育していなかった子供と比較して、感情表現の発達に問題を生じる割合が6%、有意に低かった(PR = 0.94, 95%CI 0.90-0.99)。

    【結論】幼少期のペットの飼育とその後の感情表現の発達との間に有意な関連が認められた。この結果は、ペットの飼育は子供に自分の感情を制御する機会を与え、感情表現の発達に問題を持つリスクの低下に寄与する可能性を示唆している。

  • Inoue Y*, Stickley A, Yazawa A, Aida J, Kawachi I, Kondo K, Fujiwara T. Adverse childhood experiences, exposure to a natural disaster and posttraumatic stress disorder among survivors of the 2011 Great East Japan earthquake and tsunami. Epidemiology and Psychiatric Sciences. 2019 Feb;28(1):45-53.

  • Miki T, Fujiwara T*, Yagi J, Homma H, Mashiko H, Nagao K, Okuyama M. Impact of parenting style on clinically significant behavioral problems among children aged 4-11 years old after disaster: A follow-up study of the Great East Japan Earthquake. Front Psychiatry. 2019 Feb 19;10:45.

    日本語アブストラクト

    「東日本大震災の被災地における親の養育が4-11歳の子どもの問題行動に与える影響に関する研究」

    目的:本研究の目的は、2011年に起きた東日本大震災後の養育スタイルが子どもの行動問題に及ぼす影響を調査することである。

    方法:参加者は、就学前年齢で2011年に被災した子供たちで(n = 163)、データは2012年8月から2013年3月まで、および2014年7月から2015年3月まで(それぞれ地震後2年および4年)に収集したため、評価時の年齢は4〜11歳だった。養育スタイルは、被災後2年目の親の関わり、肯定的な子育て、不十分な監視/監督、一貫性のないしつけ、および体罰を測定するAlabama Parenting Questionnaire(APQ:保護者の自記式)で評価した。問題行動は子どもの行動チェックリスト(CBCL:保護者記入式)を使用し、震災後2年目と4年目に内向性尺度、外向性尺度、および総合尺度を評価した。

    結果:被災2年目の体罰は、被災4年目のCBCL内向性尺度(偏係数:0.78、95%CI:0.12-1.45、p = 0.023)、度、外向性尺度(偏係数:0.74、95%CI:0.09-1.39、p = 0.025)、総合尺度(偏係数:0.85、95%CI:0.16-1.55、p = 0.016)とも悪化した。共変量として、子供の年齢、性別、震災に関連したトラウマの数、母の学歴、きょうだいの数、仮設住宅の入居経験、そして被災2年目のCBCL総合尺度を調整した。他の養育スタイルは子供の問題行動に影響を及ぼさなかった。

    結論:自然災害後の不適切な養育が、震災から4年後の被災した子どもの問題行動に悪影響を及ぼしていることが示唆された。特に、体罰は子供の問題行動に悪影響を及ぼす。養育に悩んでいる親(特に体罰に至る可能性が高い親)への支援が、子どもの健全な養育へ良い影響を与える可能性がある。

  • Amemiya A, Kondo N*, Saito J, Saito M, Takagi D, Haseda M, Tani Y, Kondo K. Socioeconomic status and improvement in functional ability among older adults in Japan: A longitudinal study. BMC Public Health. 2019 Feb 19;19(1):209.

  • Saito J*, Kondo N, Saito M, Takagi D, Tani Y, Haseda M, et al. Exploring 2.5-year trajectories of functional decline in older adults by applying a growth mixture model and frequency of outings as a predictor: A 2010-2013 JAGES longitudinal study. J Epidemiol. 2019 Feb 5;29(2):65-72.

  • Amemiya A, Fujiwara T*. Association of low family income with lung function among children and adolescents: Results of the J-SHINE study. J Epidemiol. 2019 Feb 5;29(2):50-56.

    日本語アブストラクト

    「低所得と子どもの呼吸機能との関連:まちと家族の健康調査から」

    目的:日本における家庭の所得と子どもの呼吸機能の関連を調べた。

    方法:分析には「まちと家族の健康調査(J-SHINE)」のデータを用いた。まちと家族の健康調査(J-SHINE)対象は東京近郊に住む5歳から17歳までの1224人で、呼吸機能の指標にはFEV1(1秒量)/FEV6(6秒量)(FEV:Forced Vital Capacity)を用いた。所得や他の項目についてはJ-SHINEの質問紙で回答を得た。所得は5段階に分け、低所得の家庭は「世帯所得が300万円未満」と定義した。分析には多重回帰分析を用いた。

    結果:一番所得の高い家庭の子どもの群と比べて、一番所得の低い子どもの群の呼吸機能は統計的に有意に低かった。この関連は、両親の喫煙や両親の喘息の影響を調整してもみられた。

    結論:低所得家庭の子どもたちの呼吸機能が低いことが明らかとなった。そのような環境下にある子どもの肺機能発達を守るために早期介入が必要である。

  • Nawa N, Fujiwara T*. Association between social capital and second dose of measles vaccination in Japan: Results from the A-CHILD study. Vaccine. 2019 Feb 4;37(6):877-881.

    日本語アブストラクト

    「ソーシャルキャピタルと麻疹含有ワクチン接種(第2期)との関連:足立区子どもの健康・生活実態調査から」

    【目的】本研究は、ソーシャルキャピタルと麻疹含有ワクチン接種(第2期)との関連をマルチレベル分析を用いて検討することを目的とする。

    【方法】東京都足立区の全小学1年生を対象として実施された子どもの健康・生活実態調査(Adachi Child Health Impact of Living Difficulty: A-CHILD study)の横断的データを解析に用いた。足立区内の全公立小学校69校に通う1年生(6〜7歳)の保護者4,291人のデータから、データの欠損値を除いた4,222人のデータにおいて、マルチレベル分析を用いて解析を行った。
    【結果】8.9%の子どもが麻疹含有ワクチン接種(第2期)の接種を受けていなかった。社会的なつながり、社会的な信頼と麻疹含有ワクチン接種(第2期)との間に有意な生の関連を認めた。互酬性と麻疹含有ワクチン接種(第2期)との間には有意な関連は認めなかった。

    【結論】ソーシャルキャピタルと麻疹含有ワクチン接種(第2期)との間には有意な生の関連を認めた。

  • Fujiwara T*, Shobugawa Y, Matsumoto K, Kawachi I. Association of early social environment with the onset of pediatric Kawasaki disease. Ann Epidemiol. 2019 Jan;29:74-80.

    日本語アブストラクト

    「幼少期の社会的環境と小児川崎病の発症との関連」

    目的:本研究の目的は幼少期の社会的環境と小児川崎病の発症との関連を明らかにすることである。

    方法:厚生労働省が実施する21世紀出生児縦断調査の10歳までの追跡データを用いた。両親の教育歴、世帯年収、家族の人数について生後6ヶ月の質問紙から得た。過去1年における医師による川崎病の診断について、10歳までの毎年の質問紙によって把握した。川崎病の発症に関するリスク要因について、コックス比例ハザードモデルを用いて解析した。

    結果:世帯年収が1000万以上の家庭で育った子どもは、400万未満の世帯で育った子どもに比べて、川崎病を発症するリスクが1.76(95%信頼区間:1.15-2.69)倍高かった。世帯の人数が3人以下の場合、6人以上の世帯と比べると川崎病の発症リスクは1.62(95%信頼区間:1.10-2.40)倍であった。都市部で生まれた子どもも田舎で生まれた子どもに比べて川崎病の発症リスクが高かった(ハザード比:1.55, 95%信頼区間:1.06-2.26)。

    結論:高収入、少ない家族数、都市部での出生が川崎病の発症リスクと関連していた。しかしながら、幼少期の感染曝露と川崎病との有意な関連は見出されなかった。

  • Matsuyama Y, Ju¨rges H, Listl S. The causal effect of education on tooth loss: Evidence from United Kingdom schooling reforms. Am J Epidemiol. 2019 Jan 1;188(1):87-95.

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    「教育年数が歯の本数にあたえる影響:イギリスの教育制度改正を利用した自然実験研究」

    背景:教育年数が長いことと口腔の健康が良好であることの関連は多く報告されている。しかし、因果関係を明らかにした研究はまだない。

    目的:教育年数が高齢期の歯にあたえる影響を明らかにすること。

    方法:イングランドの50歳以上成人を対象にした調査である、English Longitudinal Study of Ageing (waves 3, 5 and 7)の3時点の横断データを統合し分析した。1947年と1972年にイギリスで導入された、義務教育の延長政策を操作変数とした2段階最小二乗法により、教育年数がおよぼす高齢期の無歯顎(自分の歯が一本もない状態)への影響を推定した。

    結果:分析の対象となった5,667名(平均年齢67.8歳, 44%が男性)のうち、819(14.5%)名が無歯顎だった。同政策により、教育年数は平均0.624年(95%信頼区間: 0.412, 0.835)増加した。教育年数が一年長くなるごとに、無歯顎である確率は9.1%(95%信頼区間: 1.5%, 16.8%)減少した。この影響は1947年の政策に影響された集団で大きかった。

    結論:教育年数を長くすることで高齢期の無歯顎が減るという因果関係が示された。

  • Ogawa K*, Morisaki N, Kobayashi M, Jwa SC, Tani Y, Sago H, Horikawa R, Fujiwara T. Reply to Shakira et al.: Validation of a food frequency questionnaire for Japanese pregnant women in mid to late pregnancy. Eur J Clin Nutr. 2019 Jan;73(1):155-156.