研究業績 Teaching

研究業績Publication

2025

  • 山岡祐衣,井土優,森尾真由美,小江充大,福井充,近藤強,木村一絵,越智真奈美. 虐待ネグレクト予防のための家庭訪問プログラム「セーフケア(SafeCare®)」―エビデンスに基づく家庭訪問を導入・実装するには. 子どもの虐待とネグレクト (2025) 第27巻第1号 p.114-123.

    日本語アブストラクト

    概要:
    家庭訪問プログラム「セーフケア(SafeCare®)」は、虐待ネグレクト予防を目的としたエビデンスに基づいた家庭訪問プログラムである。主に未就学児とその養育者を対象とし、子どもへの声の掛け方や関わり方に関するペアトレを行う「相互交流の科目」と室内の事故予防について学ぶ「安全の科目」があり、養育者は訪問員と一緒にペアレンティング・スキルを練習し身につけていくことを目指している。本稿では、家庭訪問プログラム「セーフケア」を自治体にて導入・実装するための段階的なプロセスとして、①プログラムの翻訳と文化的適応、②自治体との実装会議・コーディネーターの設置、③訪問員への研修と支援体制の構築をいう段階が必要であったことを報告した。今後さまざまな地域での導入・普及に向けて、対象家族への実践を増やしていきながら、ペアレンティング・スキルの向上や虐待・ネグレクトリスクの低下などプログラムそのものの効果検証に加えて、エビデンスに基づくプログラムをどのように導入・実践すると期待される効果が出るのかという、実装の仕方による効果の違いについても検証していくことが求められる。

  • Nawa N, Nishimura H, Fushimi K, Fujiwara T. Heat exposure and pediatric immune thrombocytopenia in Japan from 2011 to 2022: a nationwide space-time- stratified case-crossover study. Haematologica. 2025 May 1;110(5):1217-1220.

    日本語アブストラクト

    「2011年から2022年の日本における暑熱と子どもの免疫性血小板減少性紫斑病の関連:全国データを用いた時間層別化ケースクロスオーバーデザインによる検討」

    【背景・目的】
    子どもの免疫性血小板減少性紫斑病は、年間10万人あたり2~7人の割合で発症する血液疾患で、ウイルス感染などが発症の誘因となる可能性が示唆されていますが、環境要因についてはほとんど解明されていません。

    【方法】
    本研究では、2011年から2022年までの12年間において、1年で最も熱い5か月間(5月から9月)の日本全国の入院データと気象庁の気温のデータを用い、時間層別化ケースクロスオーバーデザインにより、暑熱と子どもの免疫性血小板減少性紫斑病の関連を検討しました。、また、気温曝露から影響が現れるまでの時間差(ラグ効果)を解析に考慮しました。

    【結果】
    高温曝露が子どもの免疫性血小板減少性紫斑病のリスクを高める可能性が示されました。特に、極端な暑熱(1日の平均気温が上位1%に該当する30.7度)にさらされた場合、入院リスクが67%増加することが分かりました(95%信頼区間: 33%~109%)。

    【結論】
    本研究により、高温曝露が子どもの免疫性血小板減少性紫斑病のリスクを高める可能性が示されました。本研究の結果は、気候変動が人間の健康に及ぼす悪影響をさらに裏付けるものであり、公衆衛生の観点からも気候変動への対応が求められることを示しています。

  • Terada S, Nakayama SF, Fujiwara T. Household income, maternal allostatic load during pregnancy, and offspring with autism spectrum disorders. Autism Res. 2025 Apr;18(4):881-890.

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    「妊娠中の世帯年収と児の自閉スペクトラム症の関連、およびアロスタティック負荷の媒介効果」

    【目的】
    本研究は、妊娠中の世帯年収と子どもの自閉スペクトラム症(ASD)との関連を明らかにするとともに、妊娠中の慢性的な生理的ストレス負荷を示すアロスタティック負荷が、この関連にどのように関わっているかを検証することを目的とした。

    【方法】
    本研究はエコチル調査(子どもの健康と環境に関する全国調査)のデータを利用した。59,998組の母子を対象とし、世帯年収を3群(400万円未満、400–600万円、600万円超)に分類した。ASDの診断は4歳時点の保護者回答に基づいた。母親の自閉症特性における広域表現型(BAP)を含む交絡因子を調整し、ベイジアン・ロジスティック回帰モデルを用いて分析を行った。また、妊娠中のアロスタティック負荷が媒介するか媒介分析で検討した。

    【結果】
    世帯年収低群では、高群と比較して子どものASDリスクが58%(95%信用区間: 28–98%)、中群では37%(95%信用区間: 12–70%)高かった。一方、アロスタティック負荷とASDの関連は認められず、媒介効果もなかった。これらの結果は、母親のBAPやその他の交絡因子を調整した後も一貫していた。

    【結論】
    本研究は、妊娠中の世帯年収低群および中群が子どものASDリスク上昇と関連することを明らかにした。これらの結果は、低所得層におけるASDリスクの要因を理解し、社会的支援等の公衆衛生的介入を検討する上で重要な知見を提供する。

  • Terada S, Nishimura H, Miyasaka N, Fujiwara T. Heat Stress and Placental Abruption: A Space–Time Stratified Case‐Crossover Study. BJOG: An International Journal of Obstetrics and Gynaecology. 2025 Apr 10. doi: 10.1111/1471-0528.18163. Online ahead of print.

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    「暑さ指数と常位胎盤早期剝離の関連」

    【背景】
    近年の気候変動により、暑さが妊婦や胎児の健康に与える影響が注目されている。「常位胎盤早期剝離」という、胎盤が出産前にはがれてしまう重篤な合併症について、暑さとの関係はこれまで不明だった。

    【目的】
    妊娠中に強い暑さにさらされると、1週間以内に常位胎盤早期剝離が起こりやすくなるかどうかを調べることを目的とした。

    【方法】
    2011年から2020年の夏季(6月〜9月)に、日本全国11地域で出産した6,947件の常位胎盤早期剝離のデータを使用した。WBGT(湿球黒球温度)という、気温・湿度・日射を総合した熱ストレス指標(いわゆる暑さ指数)を用いて、その日の暑さが発症に与える影響を、最大7日間の遅延効果を考慮して解析した。分析には、ケースクロスオーバー法という統計手法を使った。

    【結果】
    強い暑さ(暑さ指数95パーセンタイル以上)の翌日には、常位胎盤早期剝離のリスクが23%高まることが確認された。一方で、その2日後にはリスクがやや下がる傾向も見られ、1週間全体で見るとリスクの増減が打ち消し合うような形となっていた。妊娠週数による違いは大きくなかったが、妊娠高血圧症候群や胎児発育不全がある妊婦では、暑さの翌日にさらに大きくリスクが上昇していた。

    【結論】
    妊娠中に強い暑さにさらされると、その翌日に常位胎盤早期剝離が起こるリスクが高まり、もともと起こるはずだった胎盤早期剥離の発症時期が暑さにより1日程度早まってしまう可能性が示唆された。とくに妊娠高血圧症や胎児発育不全がある妊婦では、暑さへの注意がより重要と考えられる。

  • Sulaimanova G, Yamaoka Y, Bardella IJ, Fujiwara T. Prevalence of Domestic Violence Against Pregnant Women Living in Rural Areas. Systematic Review and Meta-Analysis. J Epidemiol Community Health. 2025 Apr 10;79(5):380-387.

  • Terada S, Nishimura H, Miyasaka N, Fujiwara T. Drops in atmospheric pressure and subsequent fluctuations in daily delivery volume: A case-crossover study. Paediatr Perinat Epidemiol. 2025 Mar 27. doi: 10.1111/ppe.70012. Online ahead of print.

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    「大気圧の低下とその後の分娩数の変動: ケースクロスオーバー研究」

    【背景】
    分娩数の変動は、産科医の負担やバーンアウトにつながりうる。台風やハリケーンなどによる大気圧の急激な低下は、その後数日間の分娩数の増加と関連している可能性があるが、遅延効果を考慮した研究はほとんどなかった。

    【目的】
    大気圧の低下が、自然陣痛発来による分娩数の変動と関連しているかを明らかにすることを目的とした。

    【方法】
    ケースクロスオーバー研究を行った。2011年から2020年までの47都道府県の自然陣痛発来による分娩数のデータを、日本周産期登録ネットワークのデータベースから取得しました。Distributed lag non-linear modelを用いた疑似ポアソン回帰モデルで、大気圧の低下(-13.8 hPa、1パーセンタイルに相当)と一日当たりの分娩数の関連を、分娩前最大14日間の期間にわたって検討した。都道府県ごとの推定値をランダム効果メタアナリシスで統合した。また、妊娠週ごとの層別解析を行った。

    【結果】
    1,074,380件の自然陣痛による分娩を対象に解析した。自然陣痛発来による分娩のラグ累積相対リスクは、分娩前4日間の遅延効果を考慮した時に最も大きかった。特に、妊娠38週から40週において、気圧低下と分娩数の関連が強く見られた。具体的には、-13.8 hPaの気圧低下による0〜4日間のラグ累積相対リスクは、気圧変化がなかった場合と比較して、妊娠38週で1.07(95%信頼区間1.00, 1.14)、妊娠39週で1.08(95%信頼区間1.02, 1.14)、妊娠40週で1.10(95%信頼区間1.03, 1.19)だった。

    【結論】
    大気圧の低下は、特に妊娠38~40週において、その後数日間における自然陣痛発来による分娩数のわずかな増加と関連していた。

  • Owusu FM, Nawa N, Nishimura H, Khin YP, Doi S, Shakagori S, Isumi A, Fujiwara T*. Association of communication methods and frequency with BMI among adolescents during the COVID-19 pandemic: Findings from A-CHILD Study. Front Public Health. 2025 Feb 28:13:1433523. doi: 10.3389/fpubh.2025.1433523. eCollection 2025.

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    「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下におけるコミュニケーションスタイル・頻度とBMIの関連:足立区子どもの健康・生活実態調査(A-CHILD Study)から」

    【背景・目的】
    これまで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下におけるコミュニケーション方法とBMIの関連についての研究が不足していました。そのため、本研究では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下において、対面およびオンラインといったコミュニケーションスタイルの違いとBMIの関連を検討することを目的としました。

    【方法】
    本研究は、足立区子どもの健康・生活実態調査(N=3,178)の2022年のデータを用いた横断研究です。 コミュニケーション方法を評価するために質問票を用いました。 BMIは、WHOの基準に基づき、過体重および肥満(+1SD)、正常体重(-1SD~<+1SD)、低体重(<-1SD)に分類しました。多項ロジスティック回帰分析を用いて、コミュニケーション方法とBMIの関連を検討しました。

    【結果】
    対面式コミュニケーションの頻度が減少すると、過体重および肥満のリスクが94%上昇していました(RRR=1.94、95%CI;1.38、2.72)。一方、オンラインコミュニケーションの頻度が増加すると、リスクが46%上昇していました(RRR=1.46、95%CI;1.10、1.95)。オンラインと対面でのコミュニケーションを同時にモデルに投入すると、対面でのコミュニケーション頻度の減少のみが、過体重および肥満のリスクの上昇と関連していました(RRR=1.56、95%CI;1.09, 2.25)。性別で層別化すると、女子では対面でのコミュニケーションの頻度の低下が過体重および肥満のリスクの上昇と関連していましたが、(RRR=2.12、95%CI;1.20, 3.73)、男子では関連は認めませんでした。

    【結論】
    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下において、対面でのコミュニケーションの頻度の低下は、特に女子において、過体重および肥満のリスクの上昇と関連していました。

  • Nawa N, Nishimura H, Fushimi K, Fujiwara T. Association between heat exposure and intussusception in children in Japan from 2011 to 2022. Pediatric Research. 2025 Feb 19. doi: 10.1038/s41390-025-03930-4. Online ahead of print.

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    「暑熱と子どもの腸重積症の関連」

    【背景・目的】
    暑熱への暴露は、食事内容や腸管蠕動の変化を含むさまざまなメカニズムにより、子どもの腸重積症のリスクを高める可能性があります。しかし、日ごとの暑熱への暴露と子どもの腸重積症の入院リスクとの関連を調査した全国的な研究はこれまで行われていませんでした。本研究は、高い気温と子どもの腸重積症との関連を検討することを目的としました。

    【方法】
    2011年から2022年までの5歳以下の子どもの腸重積症による入院患者数を、DPCデータベースから抽出しました。1日の平均気温は気象庁のデータを活用しました。本研究では、暑熱への曝露に焦点を当てるため、分析では最も気温の高い5か月間(5月~9月)に発生した入院について検討しました。熱への曝露による腸重積症の相対リスクを、時間層別化ケースクロスオーバー法により推定しました。

    【結果】
    研究期間中の腸重積症による子どもの入院患者は13,083人でした。日平均気温が高いと、腸重積症による入院リスクが高くなることが分かりました。特に、99パーセンタイルの極めて高い日平均気温にさらされると、入院リスクが39%増加することが分かりました(95%信頼区間: 5%〜83%)。

    【結論】
    この研究では、日平均気温が高いと子どもの腸重積症による入院リスクが増加することがわかりました。今後の研究では、高い日平均気温と子ども腸重積症による入院リスクとの関連のメカニズムを解明する必要があります。

  • Nawa N, Nishimura H, Fushimi K, Fujiwara T. Association Between Heat Exposure and Anaphylaxis in Japan: A Time-Stratified Case-Crossover Study. Allergy. 2025 Feb 1. doi: 10.1111/all.16488. Online ahead of print.

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    「暑熱とアナフィラキシーの関連」

    【背景・目的】
    暑熱への曝露は、間接的(例えば、食事内容の変化、花粉レベルの上昇、または虫刺されの頻度の上昇など)または直接的(例えば、免疫反応の増強など)にアナフィラキシーのリスクを高める可能性があります。しかし、全国規模の日ごとの入院データと気象データを連結して暑熱への暴露とアナフィラキシーの関連性を検討した研究は不足していました。

    【方法】
    2011年から2022年までのアナフィラキシーによる入院患者数を、DPCデータベースから抽出しました。日平均気温は気象庁のデータを活用しました。
    本研究では暑熱への曝露に焦点を当てているため、最も気温の高い5か月間(5月から9月)に発生した入院患者について分析を行いました。時間層別化ケースクロスオーバーデザインを用いて、暑熱への暴露とアナフィラキシーの関連性を検討しました。

    【結果】
    研究期間中のアナフィラキシーによる入院患者数は55,298人にのぼりました。1日の平均気温が高くなると、アナフィラキシーによる入院リスクが上昇することが確認されました。特に、99パーセンタイルに該当する極めて高い気温(30.7度)にさらされた場合、入院リスクが49%増加することが明らかになりました(95%信頼区間: 19%〜85%)。さらに、アナフィラキシーのタイプ別に解析を行った結果、高気温への曝露と入院リスクの関連性は、医療処置や治療に関連するタイプのアナフィラキシーでは認められませんでした。一方で、医療処置や治療とは無関係な食物性などのアナフィラキシーのタイプでは、この関連性が特に顕著であることが分かりました。

    【結論】
    気温が高いほどアナフィラキシーによる入院リスクが増加することが示されました。この関連は、食物性などのアナフィラキシーのタイプに特に顕著でした。本研究の結果は、気候変動が健康に与える悪影響の新たな証拠であり、公衆衛生の観点からも気候変動対策を急ぐ必要性を示しています。

  • Murayama H, Iizuka A, Machida M, Amagasa S, Inoue S, Fujiwara T, Shobugawa. Impact of social isolation on change in brain volume in community-dwelling older Japanese people: The NEIGE Study. Arch Gerontol Geriatr. 2025 Feb:129:105642

  • Tazawa M, Nawa N, Yamauchi S, Tokunaga M, Fushimi K, Kinugasa Y, Fujiwara T*. Impact of the coronavirus disease 2019 pandemic on the number of colorectal cancer surgeries performed based on a nationwide inpatient database in Japan. Surgery Today. 2025 Feb;55(2):247-256.

    日本語アブストラクト

    「全国入院患者データベース(DPCデータベース)を用いて解析したCOVID-19のパンデミックが大腸がん手術件数に与えた影響」

    【背景・目的】
    本研究では、COVID-19の流行が日本における大腸がん手術件数に及ぼす影響を検討した。

    【方法】
    Diagnosis Procedure Combination(DPC)データベースより、2017年1月から2020年12月の間に大腸がん手術を受けた患者を抽出した。COVID-19発生初期の流行を3つの波に分けた。COVID-19パンデミックの各波における大腸がんの手術件数の変化をがんの病期別に層別化し、ロバスト標準誤差を用いたポアソン回帰を用いて評価した。

    【結果】
    結腸がん手術は、第1波では、Stage IIIの手術が6%有意に減少(RR, 0.94)し、第2-3波ではStage 0-IIの手術は4%有意に減少(RR, 0.96)し、Stage IVの手術は9%有意に増加(RR, 1.09)した。直腸がん手術は、第1波でStage 0-IIの手術は9%有意に増加(RR、1.09)し、Stage IVの手術は16%有意に減少(RR、0.84)した。

    【結論】
    COVID-19のパンデミック時には大腸がんの診断と治療が遅れ、通常よりも進行した段階で治療が行われたことが示唆された。さらに、流行の初期には手術件数の減少を認めた。しかし、流行が続くにつれて、恐らく医療資源が適切に配分されたためと思われるが、手術件数は徐々に通常通りに回復した。

  • Doi SK, Isumi A, Sugawara J, Maeda K, Satoh S, Mitsuda N, Fujiwara T. Social life impact for mother scale at first trimester predicts postpartum suicide risk: A prospective study. Suicide Life Threat Behav. 2025 Feb;55(1):e13157.

    日本語アブストラクト

    「妊娠初期のSocial life impact for mother scale(SLIM尺度)による産後の自殺リスクの予測:前向き研究」

    【背景・目的】
    妊産婦の死因第一は自殺であり、自殺リスクを早期に把握し、早期支援に繋げることは重要である。産科医療機関の初診時(妊娠初期)に「Social life impact for mother scale(SLIM尺度)」を実施することで、産後の自殺リスクを予測することができるかを検討した。

    【方法】
    日本の4つの都府県の産婦人科クリニックおよび病院で実施された病院ベースの前向き研究の一部データを使用した(N=7,462)。研究対象者は、妊娠初期に9項目のリスク要因で構成されたSLIM尺度に回答し、産後1か月時点にエジンバラ産後うつ病自己質問票(EPDS)に回答した。EPDSの項目10(自傷行為念慮)を用いて産後の自殺リスクを評価した(N=5,697)。

    【結果】
    産後の自殺リスクをアウトカムとしたオッズ比の結果から重み付けされたSLIM尺度合計得点は、産後の自殺リスクを中程度の精度で予測した。SLIM合計得点で6点以上を記録した妊婦は、産後の自殺リスクが4.26倍(95%CI=3.12–5.01)高いことが示された。原版のSLIM尺度得点(社会的ハイリスクをアウトカムとしたオッズ比の結果から重み付け)も、産後の自殺リスクを予測したが、本研究の新しいSLIM尺度得点は原版よりも高い精度を示した。

    【結論】
    妊娠初期の産科医療機関での健診でSLIM尺度を実施することで、産科医療機関が産後の自殺リスクを予測し、妊婦に対するサポートを開始するための有用なツールとなる可能性がある。産科医療機関でSLIM尺度を実施する際には、目的に応じて本研究で得られた重み付け得点または原版の重み付け得点を活用することができるだろう。

  • Nishimura H, Nawa N, Ogawa T, Fushimi K, Schwartz BS, Fujiwara T. Projections of future heat-related emergency hospitalizations for asthma under climate and demographic change scenarios: a Japanese nationwide time-series analysis. Environ Res. 2025 Feb 1:266:120498.

  • Mita N, Khin YP, Nawa N, Yamaoka Y, Fujiwara T. Fathers’ perceptions of factors associated with the attainment of paternity leave: A qualitative study. Frontiers in Global Women’s Health.2025 Jan 28. doi: 10.3389/fgwh.2024.1466227

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    「父親の育児休業取得に関連する要因に対する父親の認識: 質的研究」

    【背景・目的】
    システマティック・レビューによると、父親の関与は子どもの社会的、行動的、心理的問題の軽減に有益であると報告されている。しかし、父親の育児休業取得に関する要因を調査した研究は限られている。本研究の目的は、父親の育児休業取得に関する要因についての父親の認識を探ることである。

    【方法】
    父親の育児休業についての認識に関する情報を得るため、全体で21人の父親にインデプスインタビューを行った。また、父親の育児休業に対する意見を把握し、本研究の示唆が職場において適切であることを確認するため、企業の上司4名にもキーインフォーマントインタビューを実施した。データは主題分析により分析した。育児休業に関する先行研究をもとに演繹的コーディングを行い、その後、帰納的コーディングを行った。最終的なコードはエコロジカルモデルに基づき整理した。

    【結果】
    父親のキャリアへの関心、乳幼児や母親のサポートに対する父親のコミットメント、母親や乳幼児における父親の関与の重要性、父親の育児休業に対する同僚の見解、父親の仕事のスケジュールや責任、親族からのサポート、育児休業に関する政策やガイドライン、父親の関与にまつわる社会の動向などが、育児休業の取得に関するテーマとして挙げられた。企業の上司は、長期的な効果や組織への影響など、より広い観点から育児休業に関するテーマを挙げていた。

    【結論】
    本研究は、父親の育児休業取得に関する要因についての父親の認識を明らかにした。この結果は、父親が育児休業を取得しやすい環境を作るために有用な情報を提供すると考えられる。

  • Nawa N, Okada E, Akashi Y, Kashimada A, Okada H, Okuhara T, Kiuchi T, Takahashi M, Ohde S, Fukui T, Tanaka Y, Yamawaki M. Analysis of the Growth Trajectories of Junior Residents in Japan: A Longitudinal Cohort Study Utilizing Data from a Nationwide E-Portfolio System (EPOC2). BMJ Open. 2025 Jan 15;15(1):e087625.

  • Khin YP, Owusu FM, Nawa N*, Surkan PJ, Fujiwara T. Barriers and facilitators for healthcare access among immigrants in Japan: A mixed method systematic review and meta-synthesis. The Lancet Regional Health – Western Pacific. 2025 Jan 10:54:101276.

    日本語アブストラクト

    「日本における在留外国人の医療アクセスに関する障壁と促進要因:混合研究法を用いた系統的レビューとメタ統合」

    【背景・目的】
    日本では国民皆保険制度が整備されているが、在留外国人の医療アクセスには障壁がある可能性がある。さらに、在留外国人の医療アクセスに関する体系的な研究は十分ではない。本システマティックレビューでは、日本における在留外国人の医療アクセスに関する障壁と促進要因を検討することを目的としている。

    【方法】
    2024年1月9日までに発表された英語および日本語の文献を検索した。Levesqueのフレームワークに基づき、在留外国人の医療アクセスの各ステージに影響を及ぼす要因を評価した研究を対象とした。さらに、主題分析を行い、結果の分類を行った。

    【結果】
    2,791件の論文を精査した結果、量的研究40件、質的研究23件、混合研究4件の合計67件の研究が特定された。限られた医療情報により、在留外国人は代替の情報源を求めるようになり、移民の医療ニーズの認識に影響を与えた。また、滞在期間が長くなるほど、医療情報へのアクセスが改善された。文化や医療制度の違いが医療の受診に影響を与えた。過重労働、無登録の滞在、経済的困難、保険の制約により医療へのアクセスや利用が妨げられたが、家族や友人の支援はこれを促進する要因となった。医療制度は、在留外国人の言語や文化的なニーズをサポートするには不十分であることが多く、その結果、満足度やコンプライアンスの低下につながることが明らかになった。

    【結論】
    本研究の結果は、医療情報へのアクセス改善から在留外国人に配慮した医療制度づくりに至るまで、日本の在留外国人を支援するための多角的なアプローチの重要性を浮き彫りにしている。また、無登録の滞在者や低技能労働者としての在留外国人、子どもなど、特に脆弱な立場にある在留外国人の医療アクセスに関しては、さらなる研究が求められる。

  • Khin YP, Nawa N, Namboonsri N, Owusu FM, Miyanishi A, Shrestha S, Tshering U, Shimizu K, Sugawara J, Kaewboonchoo O, Fujiwara T. Experiences of Myanmar migrants working in healthcare-related sectors in Thailand and Japan during COVID-19: A qualitative study. Asia Pac J Public Health. 2025 Jan;37(1):170-172.

  • Hanafusa M, Nawa N, Owusu F, Kondo T, Khin YP, Yamoka Y, Abe A, Fujiwara T. Do the norms of tolerance for child physical abuse modify the intergenerational transmission of physical abuse? Child Abuse Negl. 2025 Jan:159:107156.

    日本語アブストラクト

    「子どもへの身体的虐待を容認する地域の規範は、身体的虐待の世代間連鎖を修飾するか?」

    【背景】
    身体的虐待の世代間連鎖については昔からよく取り上げられていますが、それに対する地域の文脈的な修飾効果については知見が不足しています。

    【目的】
    子どもへの身体的虐待を容認する地域の規範が、身体的虐待の世代間連鎖を修飾するかどうかを検証しました。

    【方法】
    日本の3県で2016年から2018年にかけて実施された「子どもの生活実態調査」(小学5年生と8年生)のデータを分析しました。33地域(43,534人)ごとの、養育者が子どもに身体的虐待を行う割合を、子どもへの身体的虐待を容認する地域の規範の近似値として利用しました。養育者の小児期の身体的虐待(被害)と、子どもへの身体的虐待(加害)については、質問紙で評価しました。父親(4,334人)と母親(38,290人)は層別化し、子どもへの身体的虐待における、養育者が小児期に身体的虐待を受けた経験と、子どもの身体的虐待を容認する地域の規範との交互作用を調べるために、マルチレベル分析を行いました。

    【結果】
    地域別では、身体的虐待を行った養育者の割合は平均14.4%でした。父親、母親ともに、身体的虐待の世代間連鎖が確認されました。また、子どもへの身体的虐待を報告した割合が高い地域(つまり、子どもへの身体的虐待に寛容と思われる地域)に住む父親では、身体的虐待の世代間連鎖の確率が高まりましたが、母親では同じような傾向は見られませんでした (交互作用項 p値: 父親0.06, 母親0.29)。

    【結論】
    子どもへの身体的虐待を容認する地域の規範は、父親において、身体的虐待の世代間連鎖の確率を高めていました。身体的虐待の世代間連鎖を断ち切るためには、地域全体で身体的虐待に対する意識を高め、容認規範を厳しく否定するような取り組みが有用である可能性が示唆されました。

  • Okamoto T, Hanafusa M, Abe T, Shimamura T, Ito M, Wakai Y, Jinta T, Higa K, Kondoh Y, Okouchi Y, Okuda R, Bando M, Suda T, Tomioka H, Fujiwara T, Takase M, Yoshihara S, Odajima H, Miyazaki Y*. Estimated prevalence and incidence of hypersensitivity pneumonitis in Japan. Allergol Int. 2025 Jan;74(1):66-71.

  • Khin YP, Nawa N, Yamaoka Y, Owusu F, Abe, A, Fujiwara T. Association between elementary and middle school children with mixed/foreign roots and influenza vaccination in Japan. Pediatr Int. 2025 Jan-Dec;67(1):e15851.

    日本語アブストラクト

    「日本における小中学生の外国籍・混合世帯/とインフルエンザワクチン接種との関連」

    【背景・目的】
    日本では外国籍の親を持つ子どもの数が増加しているが、毎年任意で自己負担により接種することが推奨されているインフルエンザワクチンの接種率が低い可能性がある。さらに、社会経済的地位は任意接種の効果修飾因子の一つである可能性がある。本研究では、日本における混合(両親のどちらかが外国籍)/外国ルーツ(両親が外国籍)の小中学生とインフルエンザワクチン接種との関連を、世帯収入と母親の学歴で層別化して調査を行った。

    【方法】
    2016年から2019年の首都圏8都市のデータを統合し、小中学生とその保護者16,368人を対象とした。 保護者は、昨年度に子どもがインフルエンザワクチン接種を受けたかどうか、および外国籍であるかどうかについて回答した。 マルチレベルポアソン回帰分析を適用し、さらに所得状況と母親の学歴によって層別化して解析を行った。

    【結果】
    391人(2.4%)の子どもが混合世帯、91人(0.6%)が外国籍であった。日本人の子どもと比較すると、混合世帯の子どもおよび外国籍の子どもはインフルエンザワクチンの接種率が低いことが分かった。層別化後、外国籍・混合世帯の子どもは、高所得および母親が高学歴の家庭においてのみ、日本人の子どもよりもインフルエンザワクチンの接種率が低いことが分かった。

    【結論】
    特に高所得および母親が高学歴の家庭において、日本人の子どもよりも混合世帯の子どもおよび外国籍の子どもはインフルエンザワクチンの接種率が低いことが分かった。