研究業績Publication
in press
-
Hanafusa M, Nawa N, Owusu F, Kondo T, Khin YP, Yamoka Y, Abe A, Fujiwara T. Do the norms of tolerance for child physical abuse modify the intergenerational transmission of physical abuse? Child Abuse Negl. (in press)
日本語アブストラクト
「子どもへの身体的虐待を容認する地域の規範は、身体的虐待の世代間連鎖を修飾するか?」
【背景】
身体的虐待の世代間連鎖については昔からよく取り上げられていますが、それに対する地域の文脈的な修飾効果については知見が不足しています。
【目的】
子どもへの身体的虐待を容認する地域の規範が、身体的虐待の世代間連鎖を修飾するかどうかを検証しました。
【方法】
日本の3県で2016年から2018年にかけて実施された「子どもの生活実態調査」(小学5年生と8年生)のデータを分析しました。33地域(43,534人)ごとの、養育者が子どもに身体的虐待を行う割合を、子どもへの身体的虐待を容認する地域の規範の近似値として利用しました。養育者の小児期の身体的虐待(被害)と、子どもへの身体的虐待(加害)については、質問紙で評価しました。父親(4,334人)と母親(38,290人)は層別化し、子どもへの身体的虐待における、養育者が小児期に身体的虐待を受けた経験と、子どもの身体的虐待を容認する地域の規範との交互作用を調べるために、マルチレベル分析を行いました。
【結果】
地域別では、身体的虐待を行った養育者の割合は平均14.4%でした。父親、母親ともに、身体的虐待の世代間連鎖が確認されました。また、子どもへの身体的虐待を報告した割合が高い地域(つまり、子どもへの身体的虐待に寛容と思われる地域)に住む父親では、身体的虐待の世代間連鎖の確率が高まりましたが、母親では同じような傾向は見られませんでした (交互作用項 p値: 父親0.06, 母親0.29)。
【結論】
子どもへの身体的虐待を容認する地域の規範は、父親において、身体的虐待の世代間連鎖の確率を高めていました。身体的虐待の世代間連鎖を断ち切るためには、地域全体で身体的虐待に対する意識を高め、容認規範を厳しく否定するような取り組みが有用である可能性が示唆されました。 -
Yamaoka Y, Hangai M, Sampei M, Morisaki N. The Associations Between COVID-19-related Stigma of School-age Children and Communicative Support from Parents and Teachers. J Child Fam Stud. (in press)
日本語アブストラクト
「学童期の子どもにおけるコロナに関するスティグマと親や教師からの会話によるサポートとの関連」
【背景】
コロナウイルス感染症(COVID-19)流行に伴う恐怖や脅威はスティグマの原因となることがあるが、子どもたちのCOVID-19関連スティグマについてはあまり研究されていない。そのため本研究では、学童児におけるCOVID-19関連のスティグマと、スティグマを緩和するための関連因子を検討した。
【方法】
本研究では、2020年12月に日本で無作為に抽出された5年生と6年生の子どもを対象とした全国郵便調査から得られた1500世帯のデータセットを利用した。子どもたちは、養育者や教師によるコミュニケーション支援(自分の考えを尋ねたり、受け入れたりすること)の頻度と、3つのタイプのスティグマ(self-stigma:自分に対して否定的な感情を持つ、stereotype:決めつけた考えを持つ、discrimination: 差別的な行動をとる)について回答した。スティグマ変数の欠損データを除き、分析対象サンプルは768組(対象サンプルの51.2%)であった。マルチレベル混合効果一般化線形分析を行った。
【結果】
Self-stigmaが子どものスティグマの最も一般的なタイプであった。養育者と教師からのコミュニケーション的支援は、discriminationの低さと有意に関連していた。教師からのより高い支援があると中学2年生ではself-stigmaがより低くくなり、小学5年生ではstereotypeが低かった。困難な時期に、精神的な安全を提供しスティグマを軽減するためには、子どもの気持ちや考えに耳を傾けるという養育者や教師によるコミュニケーション支援が不可欠である。 -
Nawa N, Nishimura H, Fushimi K, Fujiwara T. Association Between Heat Exposure and Kawasaki Disease: A Time-Stratified Case-Crossover Study. Environmental Research. 2024; (in press)
日本語アブストラクト
「暑熱と川崎病の関連」
【背景・目的】
これまで全国規模の入院データを用いた日平均気温と川崎病の関連の検討は十分でなかった。
本研究では、全国規模の入院データを利用し、気温と川崎病の関連を明らかにすることを目的とした。
【方法】2011 年から 2022 年までの 12 年間において、それぞれ1年で最も気温の高い5か月間(5月から9月)の川崎病の入院対象に検討を行った。
入院データはDPC(Diagnosis Procedure Combination)データベースから抽出し、気温は気象庁のデータを使用し、気温の影響が現れるまでの時間差(ラグ効果)を解析において考慮した。
【結果】
調査期間中の川崎病による入院患者は合計48,784例で、そのうち87.9%が5歳未満であった。
1日の平均気温が高いと、川崎病による入院リスクが高くなることが分かった。特に、1日平均気温が極端な高温(99パーセンタイルの高温)への曝露は、入院リスクを33%高めることが分かった(RR 1.33、95%信頼区間(CI):1.08、1.65)。
【結論】
1日の平均気温が高いと、川崎病による入院リスクが高くなることが分かった。
今後の研究では、高温と川崎病が関連するメカニズムを検討する必要がある。 -
Doi S, Nawa N, Yamaoka Y, Nishimura H, Koyama Y, Kuramochi J, Fujiwara T. Adverse childhood experiences, economic challenges, and suicide risk under COVID-19 pandemic: Results from U-CORONA study. Journal of Public Mental Health. (in press)
日本語アブストラクト
「子ども期の逆境体験・経済的困難はCOVID-19における自殺リスクと関連するか?: U-CORONA研究」
【目的】
本研究では、2019年のCOVID-19パンデミック下での、子ども期の逆境体験(ACEs)と経済的困難が自殺リスクに与える相乗的な影響を、縦断研究を用いて検討した。
【方法】
栃木県宇都宮市で実施された人口ベースの縦断研究「U-CORONA研究」に参加した、18歳から92歳(平均53.8歳)の成人435人を対象とした。ベースライン調査は2020年6月、COVID-19パンデミックの第一波と第二波の間に実施された。ACEsは13項目で評価され、COVID-19による経済的困難は1項目で評価された。フォローアップ調査は2020年10月、第二波と第三波の間に実施され、Mini-International Neuropsychiatric Interview(MINI)から6項目を使用した自己報告形式の質問票を用いて、自殺リスクを評価した。
【結果】
本研究では、ACEsとCOVID-19による経済的困難が、自殺リスクと独立して関連していることに加え、相乗的な影響も明らかとなった。具体的には、ACEsが1つあることと経済的困難を抱える者、ACEsが2つ以上あることと経済的困難を抱える者は、ACEsと経済的困難がない者と比較して、自殺リスクが高くなる傾向にあった。
【結論】
ACEsが多く、さらに経済的困難を経験した成人は、COVID-19パンデミック中に自殺リスクが高くなる可能性がある。 -
Khin YP, Nawa N, Yamaoka Y, Owusu F, Abe, A, Fujiwara T. Association between elementary and middle school children with mixed/foreign roots and influenza vaccination in Japan. Pediatrics International. 2024; (in press)
日本語アブストラクト
「日本における小中学生の外国籍・混合世帯/とインフルエンザワクチン接種との関連」
【背景・目的】
日本では外国籍の親を持つ子どもの数が増加しているが、毎年任意で自己負担により接種することが推奨されているインフルエンザワクチンの接種率が低い可能性がある。さらに、社会経済的地位は任意接種の効果修飾因子の一つである可能性がある。本研究では、日本における混合(両親のどちらかが外国籍)/外国ルーツ(両親が外国籍)の小中学生とインフルエンザワクチン接種との関連を、世帯収入と母親の学歴で層別化して調査を行った。
【方法】
2016年から2019年の首都圏8都市のデータを統合し、小中学生とその保護者16,368人を対象とした。 保護者は、昨年度に子どもがインフルエンザワクチン接種を受けたかどうか、および外国籍であるかどうかについて回答した。 マルチレベルポアソン回帰分析を適用し、さらに所得状況と母親の学歴によって層別化して解析を行った。
【結果】
391人(2.4%)の子どもが混合世帯、91人(0.6%)が外国籍であった。日本人の子どもと比較すると、混合世帯の子どもおよび外国籍の子どもはインフルエンザワクチンの接種率が低いことが分かった。層別化後、外国籍・混合世帯の子どもは、高所得および母親が高学歴の家庭においてのみ、日本人の子どもよりもインフルエンザワクチンの接種率が低いことが分かった。
【結論】
特に高所得および母親が高学歴の家庭において、日本人の子どもよりも混合世帯の子どもおよび外国籍の子どもはインフルエンザワクチンの接種率が低いことが分かった。 -
Okamoto T, Hanafusa M, Abe T, Shimamura T, Ito M, Wakai Y, Jinta T, Higa K, Kondoh Y, Okouchi Y, Okuda R, Bando M, Suda T, Tomioka H, Fujiwara T, Takase M, Yoshihara S, Odajima H, Miyazaki Y*. Estimated prevalence and incidence of hypersensitivity pneumonitis in Japan. Allergology International. (in press)
-
Maeda Y, Morita A, Nawa N, Yamaoka Y, Fujiwara T. The Risk of Self-stigma and Discrimination for Healthcare Workers in Developing Countries during COVID-19 pandemic: International multisite study. Stigma and Health. (in press)
日本語アブストラクト
「COVID-19パンデミック中における途上国の医療従事者のセルフスティグマと差別に関する国際比較:国際多施設共同研究」
【目的】
本研究の目的は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック中に、発展途上国と先進国の医療従事者とその家族に対するセルフスティグマと差別の有病率を比較することである。
【方法】
2020年8月から10月にかけて、ブラジル(n=55)、ガーナ(n=61)、インド(n=99)、メキシコ(n=27)、ミャンマー(n=35)、日本(n=55)の医療従事者を対象とし、スノーボール・サンプリングを用いて参加者を募った。
医療従事者とその家族におけるセルフスティグマと差別経験を測定するために、3項目の質問を含むオンライン質問票を用いた横断研究を行った。多変量ポアソン回帰モデルを適用し、年齢、性別、職業、都道府県のCOVID-19患者数、心理的苦痛(Kessler-6スコア≧13と定義)を調整した上で、日本を対照群として6カ国間のセルフスティグマ、及び医療従事者とその家族に対する差別の頻度を比較した。
【結果】
6カ国より合計336件の回答が得られた。全体では、セルフスティグマを経験した医療従事者の割合は69.9%(235/336人)、差別を経験した医療従事者の割合は38.7%(130/336人)、差別を経験した医療従事者の家族の割合は14.3%(48/336人)であった。日本と比較して、インドとミャンマーは医療従事者とその家族に対するセルフスティグマと差別の有病率が有意に高かった。また、ブラジルとガーナは医療従事者に対する差別の有病率が有意に高く、メキシコはセルフスティグマの有病率が有意に高かった。
【結論】
医療従事者とその家族に対するセルフスティグマと差別の有病率は、COVID-19パンデミック期間中、日本よりも発展途上国で高かった。パンデミック時の医療従事者の健康と安全を確保するためには、医療従事者に対するスティグマと差別を防止するための対策を実施する必要がある。