研究業績 Teaching

研究業績Publication

2025

  • Khin YP, Owusu FM, Nawa N*, Surkan PJ, Fujiwara T. Barriers and facilitators for healthcare access among immigrants in Japan: A mixed method systematic review and meta-synthesis. The Lancet Regional Health – Western Pacific. 2025 Jan;54(1):101276.

    日本語アブストラクト

    「日本における在留外国人の医療アクセスに関する障壁と促進要因:混合研究法を用いた系統的レビューとメタ統合」

    【背景・目的】
    日本では国民皆保険制度が整備されているが、在留外国人の医療アクセスには障壁がある可能性がある。さらに、在留外国人の医療アクセスに関する体系的な研究は十分ではない。本システマティックレビューでは、日本における在留外国人の医療アクセスに関する障壁と促進要因を検討することを目的としている。

    【方法】
    2024年1月9日までに発表された英語および日本語の文献を検索した。Levesqueのフレームワークに基づき、在留外国人の医療アクセスの各ステージに影響を及ぼす要因を評価した研究を対象とした。さらに、主題分析を行い、結果の分類を行った。

    【結果】
    2,791件の論文を精査した結果、量的研究40件、質的研究23件、混合研究4件の合計67件の研究が特定された。限られた医療情報により、在留外国人は代替の情報源を求めるようになり、移民の医療ニーズの認識に影響を与えた。また、滞在期間が長くなるほど、医療情報へのアクセスが改善された。文化や医療制度の違いが医療の受診に影響を与えた。過重労働、無登録の滞在、経済的困難、保険の制約により医療へのアクセスや利用が妨げられたが、家族や友人の支援はこれを促進する要因となった。医療制度は、在留外国人の言語や文化的なニーズをサポートするには不十分であることが多く、その結果、満足度やコンプライアンスの低下につながることが明らかになった。

    【結論】
    本研究の結果は、医療情報へのアクセス改善から在留外国人に配慮した医療制度づくりに至るまで、日本の在留外国人を支援するための多角的なアプローチの重要性を浮き彫りにしている。また、無登録の滞在者や低技能労働者としての在留外国人、子どもなど、特に脆弱な立場にある在留外国人の医療アクセスに関しては、さらなる研究が求められる。

  • Hanafusa M, Nawa N, Owusu F, Kondo T, Khin YP, Yamoka Y, Abe A, Fujiwara T. Do the norms of tolerance for child physical abuse modify the intergenerational transmission of physical abuse? Child Abuse Negl. 2025 Jan:159:107156.

    日本語アブストラクト

    「子どもへの身体的虐待を容認する地域の規範は、身体的虐待の世代間連鎖を修飾するか?」

    【背景】
    身体的虐待の世代間連鎖については昔からよく取り上げられていますが、それに対する地域の文脈的な修飾効果については知見が不足しています。

    【目的】
    子どもへの身体的虐待を容認する地域の規範が、身体的虐待の世代間連鎖を修飾するかどうかを検証しました。

    【方法】
    日本の3県で2016年から2018年にかけて実施された「子どもの生活実態調査」(小学5年生と8年生)のデータを分析しました。33地域(43,534人)ごとの、養育者が子どもに身体的虐待を行う割合を、子どもへの身体的虐待を容認する地域の規範の近似値として利用しました。養育者の小児期の身体的虐待(被害)と、子どもへの身体的虐待(加害)については、質問紙で評価しました。父親(4,334人)と母親(38,290人)は層別化し、子どもへの身体的虐待における、養育者が小児期に身体的虐待を受けた経験と、子どもの身体的虐待を容認する地域の規範との交互作用を調べるために、マルチレベル分析を行いました。

    【結果】
    地域別では、身体的虐待を行った養育者の割合は平均14.4%でした。父親、母親ともに、身体的虐待の世代間連鎖が確認されました。また、子どもへの身体的虐待を報告した割合が高い地域(つまり、子どもへの身体的虐待に寛容と思われる地域)に住む父親では、身体的虐待の世代間連鎖の確率が高まりましたが、母親では同じような傾向は見られませんでした (交互作用項 p値: 父親0.06, 母親0.29)。

    【結論】
    子どもへの身体的虐待を容認する地域の規範は、父親において、身体的虐待の世代間連鎖の確率を高めていました。身体的虐待の世代間連鎖を断ち切るためには、地域全体で身体的虐待に対する意識を高め、容認規範を厳しく否定するような取り組みが有用である可能性が示唆されました。

  • Okamoto T, Hanafusa M, Abe T, Shimamura T, Ito M, Wakai Y, Jinta T, Higa K, Kondoh Y, Okouchi Y, Okuda R, Bando M, Suda T, Tomioka H, Fujiwara T, Takase M, Yoshihara S, Odajima H, Miyazaki Y*. Estimated prevalence and incidence of hypersensitivity pneumonitis in Japan. Allergol Int. 2025 Jan;74(1):66-71.

  • Khin YP, Nawa N, Yamaoka Y, Owusu F, Abe, A, Fujiwara T. Association between elementary and middle school children with mixed/foreign roots and influenza vaccination in Japan. Pediatr Int. 2025 Jan-Dec;67(1):e15851.

    日本語アブストラクト

    「日本における小中学生の外国籍・混合世帯/とインフルエンザワクチン接種との関連」

    【背景・目的】
    日本では外国籍の親を持つ子どもの数が増加しているが、毎年任意で自己負担により接種することが推奨されているインフルエンザワクチンの接種率が低い可能性がある。さらに、社会経済的地位は任意接種の効果修飾因子の一つである可能性がある。本研究では、日本における混合(両親のどちらかが外国籍)/外国ルーツ(両親が外国籍)の小中学生とインフルエンザワクチン接種との関連を、世帯収入と母親の学歴で層別化して調査を行った。

    【方法】
    2016年から2019年の首都圏8都市のデータを統合し、小中学生とその保護者16,368人を対象とした。 保護者は、昨年度に子どもがインフルエンザワクチン接種を受けたかどうか、および外国籍であるかどうかについて回答した。 マルチレベルポアソン回帰分析を適用し、さらに所得状況と母親の学歴によって層別化して解析を行った。

    【結果】
    391人(2.4%)の子どもが混合世帯、91人(0.6%)が外国籍であった。日本人の子どもと比較すると、混合世帯の子どもおよび外国籍の子どもはインフルエンザワクチンの接種率が低いことが分かった。層別化後、外国籍・混合世帯の子どもは、高所得および母親が高学歴の家庭においてのみ、日本人の子どもよりもインフルエンザワクチンの接種率が低いことが分かった。

    【結論】
    特に高所得および母親が高学歴の家庭において、日本人の子どもよりも混合世帯の子どもおよび外国籍の子どもはインフルエンザワクチンの接種率が低いことが分かった。