「子どもにおける震災関連トラウマと血圧との関連:東日本大震災における追跡調査」が出版されました。
この論文は、プロジェクトセメスターという、東京医科歯科大学医学部4年生の学生が研究室に6ヶ月配属する制度によって当教室に所属した渡部昌大くんが、ハーバード大学のイチローカワチ教授の下に短期留学し書き上げた論文です。
Disaster-related trauma and blood pressure among young children: a follow-up study after Great East Japan earthquake. Watanabe M, Hikichi H, Fujiwara T, Honda Y, Yagi J, Homma H, Mashiko H, Nagao K, Okuyama M, Kawachi I.Hypertens Res. 2019. doi: 10.1038/s41440-019-0250-6.
https://www.nature.com/articles/s41440-019-0250-6
【目的】
本研究の目的は、2011年に起きた東日本大震災でのトラウマ体験と小児の血圧の関連を明らかにする事である。
【方法】
参加者は被災地3県(宮城・福島・岩手)と対照群(三重県)からの計320名である。震災後の2012年から2015年まで約4
年間の追跡を行った。調査開始時の平均年齢は6.6歳で4年後の追跡率は71%であった。参加者とその保護者に対して質問紙・インタビューにより種々なトラウマ体験を調査した。調査開始時および追跡時に血圧を計測し、年齢・性別・身長に特異的なz-scoreに変換した値をアウトカムとして、震災関連トラウマとの関係を回帰分析によって調べた。
【結果】
トラウマ経験の合計数は弛緩期血圧の上昇と線量反応関係的に関連しており、BMI・年収・年齢・性別・住居(仮設住宅等)で調整した後も関連が見られた。4つ以上のトラウマ体験に暴露された群の弛緩期血圧上昇が有意傾向だった(β=0.43, p=0.059)。
個々のトラウマ体験の中では、火事の目撃体験が有意に弛緩期血圧上昇と相関していた。(β=0.60, p=0.009)
【結論】
震災関連トラウマ体験が弛緩期血圧の上昇と関連している事が示された。本研究から因果関係は不明であるが、血圧の上昇は長期的な健康問題を引き起こす可能性があるため、さらなる追跡調査が必要である。