研究発表, お知らせ

2019.05.31

「傾向スコアマッチングを用いた幼少期のペットの飼育と感情表現発達との関連に関する縦断研究」が出版されました。

「傾向スコアマッチングを用いた幼少期のペットの飼育と感情表現発達との関連に関する縦断研究」が出版されました。

この論文は、プロジェクトセメスターという、東京医科歯科大学医学部4年生の学生が研究室に6ヶ月配属する制度によって当教室に所属した佐藤梨花子さんが、ハーバード大学のイチローカワチ教授の下に短期留学し書き上げた論文です。

Sato R, Fujiwara T, Kino S, Nawa N, Kawachi I. Pet Ownership and Children’s Emotional Expression: Propensity Score-Matched Analysis of Longitudinal Data from Japan. Int J Environ Res Public Health. 2019;16(5). pii: E758. doi:10.3390/ijerph16050758.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30832360#

https://www.mdpi.com/1660-4601/16/5/758

【目的】
本研究は、幼少期のペットの飼育と子供の感情表現の発達との関連を傾向スコアマッチングを用いて検討することを目的とする。

【方法】
21世紀出生児縦断調査によって得られたデータのうち、0歳半時から5歳半時までの縦断データを解析に用いた。2001年に生まれた子供の保護者が回答した47,015人のデータから、データの欠損値を除いた31,453人のデータにおいて3歳半時のペットの飼育の有無によって傾向スコアマッチング行い、5歳半における感情表現の発達に問題があるかについて関連を検討した。

【結果】
3歳半時にペットを飼育していた子供の割合は36%であった。傾向スコアマッチングを用いた解析の結果、幼少期にペットを飼育していた子供は飼育していなかった子供と比較して、感情表現の発達に問題を生じる割合が6%、有意に低かった(PR = 0.94, 95%CI 0.90-0.99)。

【結論】
幼少期のペットの飼育とその後の感情表現の発達との間に有意な関連が認められた。この結果は、ペットの飼育は子供に自分の感情を制御する機会を与え、感情表現の発達に問題を持つリスクの低下に寄与する可能性を示唆している。