研究発表

2017.08.30

「思いがけない妊娠と若年妊娠が乳児虐待に与える相乗効果」に関する論文がアクセプトされました

「思いがけない妊娠と若年妊娠が乳児虐待に与える相乗効果」に関する論文がアクセプトされました。

Isumi A*, Fujiwara T. Synergistic Effects of Unintended Pregnancy and Young Motherhood on Shaking and Smothering of Infants among Caregivers in Nagoya City, Japan. Front. Public Health. (in press) *Corresponding author

http://journal.frontiersin.org/article/10.3389/fpubh.2017.00245/abstract

【背景】
揺さぶりと口塞ぎは、乳児の泣きが引き金になって起こり、死に至ることも多い虐待である。思いがけない妊娠と若年妊娠はそのような虐待のリスク要因であり、同時に起こることが多いが、それらが乳児虐待に与える相乗効果について検討した研究はこれまでほとんどない。本研究では、日本の養育者において揺さぶりと口塞ぎに対する思いがけない妊娠と若年妊娠の相乗効果を調べた。

【方法】
愛知県名古屋市において2013年10月から2014年2月の間に3、4か月健診に対象となったすべての母親を対象として自記式質問紙調査を実施した。調査データを、妊婦の年齢や妊娠がわかったときの気持ち等を含む妊娠届のデータと突合した(N=4,159)。分析はロジスティック回帰分析を用いて2016年に行われた。

【結果】
過去1か月間で1度以上、泣き止まない乳児を激しく揺さぶったと回答した養育者は2.0%、手やクッションなどで口を塞いだと回答した養育者は1.5%であった。思いがけない妊娠をした母親は24.8%、25歳未満(本研究では若年妊娠と定義)の母親が7.3%であった。分析の結果、妊娠を予定していた25歳以上の母親に比べて、思いがけない妊娠をした若年の母親の乳児が揺さぶり虐待を受けるリスクは2.77倍(95%信頼区間:1.15–6.68)、口塞ぎを受けるリスクは5.56倍(95%信頼区間:2.36–13.10)高いことがわかった。さらに、この口塞ぎのリスクは、思いがけない妊娠をした25歳以上の母親の乳児がもつリスクと比べても統計的に有意に高いことが明らかとなった(オッズ比:2.16, p=0.02)。

【結論】
本研究では、思いがけない妊娠と若年妊娠が口塞ぎに与える相乗効果が確認された。つまり、思いがけない妊娠をした若年の母親の乳児は、虐待、とくに口塞ぎを受けるリスクが高い。思いがけない妊娠をした若年の母親を対象とした予防的介入が必要であることが示唆された。