土井特別研究員(学振PD)の論文「COVID-19による保育所閉鎖が日本の未就学児における非認知スキル(社会情動的スキル)に与える影響」が、Frontiers in Psychiatry (IF =4.157)にアクセプトされました!
日本における新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の第1波の状況下で、多くの保育園が閉園をしたり、発表会などの園行事を中止したりしました。この論文は、偶然にもCOVID-19拡大前の2019年11月、2020年1月および第1波の渦中である2020年3月にかけて、保育園児の非認知スキル(社会情動的スキル)を縦断的に3園で調査することができ、かつそのうちの1園では園行事を中止しなかったために保育園での行事の効果を検証することができた結果をまとめたものです。COVID-19拡大前と比べて、第1波中の園児の非認知スキルの得点は低くなっていましたが、行事を中止しなかった保育所では、園児の非認知スキルの得点がCOVID-19拡大前の得点と変わらず維持されていることが明らかになりました。この研究結果は保育園での行事の効果を自然実験により検証できた貴重な結果であり、コロナ禍でも感染対策に十分注意しながら園行事を行うことが子どもの育ちに重要であることを示唆していると考えられます。
Doi S, Miyamura K, Isumi A, Fujiwara T. Impact of school closure due to COVID-19 on the social-emotional skills of Japanese preschool children. Frontiers in Psychiatry (in press).
【目的】本研究では、2020年における新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の第1波による自主的な保育所閉鎖に伴う、園行事の縮小が日本の未就学児の社会情動的スキルに与える影響を検討することを目的とした。
【方法】本研究では、厳しい園封鎖は行われておらず、自主的な園封鎖が推奨されていた東京都内の3つの保育所に通園する4〜5歳の32名の子どもを対象とした。子どもの社会情動的スキルは、Devereux Student Strengths Assessment mini (DESSA-mini)を用いて、2019年11月、2020年1月(COVID-19拡大前)、および2020年3月(COVID-19第1波中)の3回にわたり、担任保育士によって評価された。すべての保育所が2020年3月2日から自主的な園封鎖を実施し、2園(A園、B園)が園行事である発表会を中止し、1園(C園)のみが3月4日に発表会を開催した。COVID-19拡大前と第1波中のDESSA-miniのT得点の違いを検討するために、反復測定分散分析を実施した。
【結果】C園の子どもは、安定したDESSA-miniのT得点を示したものの、A園とB園の子どもは、COVID-19前と比べて第1波中のT得点は低くなっていた。また、時間と園の交互作用が示された(F=7.05, p<0.001)。
【考察】本研究の結果から、保育所での発表会が、COVID-19のパンデミック下でも子どもの社会情動的スキルを維持するために重要であった可能性が示唆された。