研究発表, お知らせ

2019.07.02

「子ども期の逆境体験と高齢期の成人疾患との関連:日本フィランド比較研究」がアクセプトされました。

この研究は、フィンランドのトゥルク大学、東京大学、大阪大学、千葉大学との共同研究です。

Amemiya A, Fujiwara T*, Shirai K, Kondo K, Oksanen T, Pentti J, Vahtera J. Association between adverse childhood experiences and adult diseases in older adults: A comparative cross-sectional study in Japan and Finland. BMJ Open (in press) *Corresponding author

目的
子どもの頃の虐待などの逆境体験(adverce chiuldhood experience,ACE)と高齢期における成人疾患罹患との関連を調べた。

方法
解析には日本老年学的評価研究(JAGES)とフィンランドの公務員を対象とした②つのデータを用いて、日本とフィンランドのそれぞれ約1万人の高齢者を対象とした。子ども期の逆境体験は両親の離婚、虐待など家庭内における恐怖、子ども期の貧困を用いた。高齢期におけるがん・心疾患・脳卒中・糖尿病の罹患や不健康観、喫煙、肥満をアウトカムに用いた。分析にはロジスティック回帰分析を用いて性別や年齢、教育歴、婚姻歴、就業の有無を調整した。

結果
日本の高齢者では50%、フィンランドの高齢者では37%が子ども期の逆境体験を経験していた。子ども期の逆境体験は高齢期の成人疾患の罹患と有意な関連を示し、オッズ比についても不健康観では日本で1.35(95% 信頼区間: 1.25-1.46)、フィンランドで1.34 (95% CI: 1.27-1.41)と同様の値を示した。逆境体験の数どちらの国においてもがん、心疾患、脳卒中、糖尿病、喫煙、BMIの増加との有意な関連を示した。

結論
子ども期の逆境体験と高齢期における不健康観、成人疾患、不健康行動との関連は日本、フィンランドそれぞれで確認され、その関係性の強さも同程度であった。この研究結果から、子ども期の逆境体験の健康への影響が高齢期まで続くことは注目すべきであり、文化や環境の違いを超えて普遍的である可能性が示唆された。