「2015年日本の小児病院におけるエンテロウイルスD-68型(EV-D68)呼吸器感染症のアウトブレイク」が出版されました。
Funakoshi Y, Ito K, Morino S, et al. Enterovirus D68 respiratory infection in a children’s hospital in Japan in 2015. Pediatr Int. 2019 May 28. doi:10.1111/ped.13903. [Epub ahead of print]
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31136073
【背景】
エンテロウイルスD-68型(EV-D68)の小児における呼吸器感染症のアウトブレイクが2014年世界中で報告された。日本では2015年秋にEV-D68のアウトブレイクを経験した。本研究の目的はEV−D68特異的PCR陽性群と陰性群とを比較することである。
【方法】
2015年9月より10月までに呼吸器症状を示し入院した患者を対象とした。鼻腔拭い液を採取、呼吸器感染症の原因となるウイルスに対するマルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応(PCR)およびEV−D68特異的PCRを行った。EV−D68特異的PCR陽性群、陰性群間で患者背景、臨床情報を比較した。
【結果】
対象患者165名中76名の検体を採取し、52.6%(40/76検体)からEV−D68を検出した。陽性群、陰性群それぞれの年齢中央値は3.0(IQR5.5)歳、3.0(IQR4.0)歳であった。共感染は陽性群で32.5%、陰性群で47.2%だった。両群間では、喘息と反復性喘鳴の既往歴の有無、入院日数、集中治療室の入室率の差は明らかではなく、発症から検体採取までの期間は陰性群で長かった(3.0日vs5.0日、p=0.001)。系統樹解析ではクレードBであった。急性弛緩性麻痺症例はなかった。
【考察】
本研究では、アウトブレイク発生期間中に呼吸器症状を示して入院した小児の半数以上でEV−D68特異的PCRが陽性となった。喘息歴は重症呼吸器感染症の発症とは関連していなかった。