「産後の自傷念慮に与える幼少期の逆境体験と若年妊娠の付加効果」がアクセプトされました。
Doi S, & Fujiwara T. Combined effect of adverse childhood experiences and young age on self-harm ideation among postpartum women in Japan. J Affect Dis. 2019; 253(15): 410-418.
【背景】産後の母親における自殺は、先進国で大きな問題となっている。産後の自傷念慮に関連するさまざまなリスク要因が明らかにされてきているが、リスク要因の付加効果について検討した研究はない。そこで本研究では、産後の自傷念慮に与える母親の幼少期の逆境体験と年齢との付加効果について検討することを目的とした。
【方法】本研究は、A県A市で2013年9月から2014年8月までの3-4ヶ月乳幼児健診に参加した母親8,074名を対象とした横断データを用いた。産後の自傷念慮は、Edinburgh Postnatal Depression Scale(EPDS)の項目10を用いて評価された。また、自傷念慮のリスク要因として、母親の幼少期の逆境体験、母親の属性、パートナーとの関係性、世帯の属性、子どもの属性、産後の状況、自傷念慮以外の産後の抑うつ症状について母親に回答を求めた。
【結果】幼少期の逆境体験を3つ以上もつ若年(25歳未満)の母親は、幼少期の逆境体験をもたない35歳以上の母親と比較して、10.3倍(95%信頼区間=5.3-20.2)産後に自傷念慮を抱きやすいことが明らかとなった。初産の母親においても同様の付加効果が見られた(OR=7.6; 95%信頼区間=3.2-17.9)。
【考察】幼少期の逆境体験を3つ以上もつ25歳未満の母親は、産後に自傷念慮を抱くリスクが高いことが示唆された。複数のリスク要因を持つ母親、特に幼少期の逆境体験をもつ若年の母親をターゲットとした予防的介入が必要である。