お知らせ, 研究発表

2019.04.22

論文「近隣の食料品店数と死亡リスクについて」がアクセプトされました

Tani Y, Suzuki N, Fujiwara T, Hanazato M, Kondo N, Miyaguni Y, Kondo K. Neighborhood food environment and mortality among older Japanese adults: results from the JAGES cohort study. Int J Behav Nutr Phys Act , vol.15, 101 (2018)

■背景
近隣の食料品店へのアクセスの悪さが不適切な食生活につながる可能性が報告されていますが、死亡のリスク については分かっていません。そこで、日本の高齢者を対象に、近隣の食料品店の数と死亡との関連について追跡 調査をしました。

■対象と方法
2010年に実施したJAGES(Japan Gerontological Evaluation Study, 日本老年学的評価研究)調査に参加した 65歳以上の高齢者を約3年間追跡し、近隣の食料品店の数と死亡との関連について分析しました。性別、年齢、 死亡、近隣の食料品店の数の情報が得られており、歩行・入浴・排泄に介助が必要な人を除いた49,511名のデー タを使用しました。近隣の食料品店数は、主観的方法と客観的方法の2通りで測定しました。主観的方法では「あな たの家から1キロ以内に、新鮮な野菜や果物が手に入る商店・施設はどのくらいありますか」という質問に対し、4段 階の選択肢「たくさんある、ある程度ある、あまりない、まったくない」を用いて4群に分けました。客観的方法では、参 加者の居住地の半径500mおよび1km内にある生鮮食料品店数をGIS(Geographic Information System)により算 出し、四分位で4郡に分けました。車利用の有無は、外出する時に利用している交通手段として「車を自分で運転」 または「家族の車に同乗」している場合を車利用ありとし、ともに利用がない場合を車利用なしとしました。死亡のリス クは年齢、性別、教育歴、経済状況、同居の有無、婚姻状況、就労状態の影響を調整して、統計学的な評価を行 いました。

■結果
主観的方法で測定した食料品店の数が死亡リスクと関連がありました。外出時に車の利用がない高齢者では、 近隣に野菜や果物が手に入る店が「たくさんある」、「ある程度ある」、「あまりない」、「まったくない」と回答した人がそ れぞれ3,359人、12,102人、3,565人、809人でした。そのうち、約3年間の追跡期間中に死亡した人が77人、424 人、144人、35人でした。一方外出時に車の利用がある高齢者では「たくさんある」、「ある程度ある」、「あまりな い」、「まったくない」と回答した人がそれぞれ4,539人、17,911人、5,370人、1,856人であり、死亡した人が214人、 811人、252人、92人でした。年齢、性別、教育歴、経済状況、同居の有無、婚姻状況、就労状態の影響を取り除 いて解析した結果、車の利用がない高齢者では「たくさんある」と回答した人に比べて「ある程度ある」と回答した人 の死亡リスクが1.4倍、「あまりない」または「まったくない」と回答した人の死亡リスクが1.6倍でした。

■結論・本研究の意義
外出時に車の利用がない高齢者では、近隣の食料品店へのアクセスの悪さが死亡リスクとなる可能性が示され ました。また、近隣に食料品店があることで、外出の機会や歩行時間が増え、死亡リスクの低下につながっている可 能性が考えられました。高齢化に伴い車の利用が困難になるため、徒歩圏内に野菜や果物が手に入る店が存在す ることが重要かもしれません。

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