「米国成人における歯科疾患の質調整余命への寄与」に関する論文がアクセプトされました。
Yusuke Matsuyama, Georgios Tsakos, Stefan Listl, Jun Aida, and Richard G.Watt. Impact of Dental Diseases on Quality-Adjusted Life Expectancy in US Adults. Journal of Dental Research. 2019. [accepted].
【背景】
歯科疾患の健康への負荷を他の疾患と比較可能な指標で推計することは、政策決定に有用である。
【目的】
米国成人における、歯科疾患による質調整余命の損失年数およびその社会格差を推計すること。
【方法】
National Health and Nutrition Examination Surveyの2001-2002, 2003-2004, 2011-2012の3回の横断調査を統合し分析した(n = 9,445, 平均年齢48.4歳)。主観的健康感および過去30日間で身体的に不健康だった日数、精神的に不健康だった日数、活動に制限があった日数からdisutility score (0から1の値をとり、0が完全に健康な状態、1が死亡を表すQuality of Lifeの指標)を求め、歯科疾患(未治療のう蝕、喪失歯数、歯周病の程度)との関連を年齢で層別化した多変量線形回帰分析で検討した。共変量は年齢、性別、調査年度、教育歴、喫煙状況、糖尿病の有無とした。さらに、得られた推定値と米国の生命表から、平均的な米国成人の20歳時点での歯科疾患による質調整余命の損失年数を推定した。
【結果】
未治療のう蝕と喪失歯はdisutility scoreに統計的に有意に関連した。一方で、歯周病とdisutility scoreに統計的に有意な関連はみられなかった。未治療のう蝕とdisutliy scoreの関連は高齢者で大きく、喪失歯とdisutility scoreの関連は若い人で大きかった。歯科疾患による質調整余命の損失は一人平均0.43年(95%信頼区間:0.28, 0.59)と推定され、これは他の疾患の5.3%に相当した。高校卒業未満の人は、大学卒業以上の人にくらべ、歯科疾患による質調整余命の損失が0.32年多いという社会格差がみとめられた。
【結論】
質調整余命への歯の寄与は他の疾患にくらべても決して小さくなく、歯の状態を改善することは集団の健康度の改善に大きく寄与する可能性が示された。