研究発表, お知らせ

2018.05.29

「日本における留守番と子どものメンタルヘルスとの関連:足立区子どもの健康・生活実態調査から」に関する論文がアクセプトされました

「日本における留守番と子どものメンタルヘルスとの関連:足立区子どもの健康・生活実態調査から」

Doi S, Fujiwara T*, Isumi A, Ochi M, Kato T. Relationship between leaving children at home alone and child mental health in Japan: Results from the A-CHILD study. Frontiers in Psychiatry. *Corresponding author

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyt.2018.00192/abstract

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【背景】欧米諸国を中心に子どもだけで留守番をさせることは「ネグレクト」の一つとして捉えられることが多い。一方日本では、地域の安全性の高さからか、留守番を制限する法律やガイドラインはない。留守番が子どものメンタルヘルスに与える影響に関する知見は一致しておらず、これまでその影響を検討してきた研究も少ない。そこで本研究では、日本の小学校1年生の子どもを対象として、留守番と子どものメンタルヘルスとの関連を調べることを目的とした。本研究では子どものメンタルヘルスについて、ポジティブな側面(レジリエンス、向社会性)とネガティブな側面(問題行動)の両側面に注目し検討した。

【方法】本研究では、東京都足立区の全小学1年生を対象に実施された子どもの健康・生活実態調査(Adachi Child Health Impact of Living Difficulty: A-CHILD study)で得られた横断的なデータを用いた。調査対象者は、足立区内の全公立小学校69校に通う1年生(6〜7歳)の保護者4,291名であった。説明変数および目的変数に関する項目に欠測値がなかった4,195名のうち、留守番を全くしたことがない子どもが2,190名(52.2%)、週1回未満1時間以上の留守番をしている子どもが1,581名(37.7%)、週1回以上1時間以上の留守番をしている子どもが424名(10.1%)であった。子どものレジリエンスの測定にはChildren’s Resilient Coping Scale、問題行動(情緒、行為、多動・不注意、仲間関係)と向社会性の測定にはStrength and Difficulty Questionnaireを使用した。本研究では留守番と子どものメンタルヘルスにおける量反応(dose response)関係を検討するために、傾向スコアを用いた多変量解析を行なった。

【結果】多変量解析の結果、留守番を全くしない子どもに対し、留守番を週1回以上する子どもは、問題行動、特に行為、多動・不注意、仲間関係の問題が多かった。一方、留守番を全くしない子どもと留守番を週1回未満する子どもの間ではメンタルヘルスに違いは見られなかった。

【結論】本研究の結果から、欧米諸国において子どもだけでの留守番が制限されているように、日本でも子どもだけで留守番をさせることは避けた方が良いことが示唆された。