「子どもの貧困と虐待における親の心理的ストレスと個人レベルのソーシャル・キャピタルの媒介効果」に関する論文がアクセプトされました。
Isumi A, Fujiwara T*, Nawa N, Ochi M, Kato T. Mediating effects of parental psychological distress and individual-level social capital on the association between child poverty and maltreatment in Japan. Child Abuse Negl. 2018; 83; 142-150. *Corresponding author
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0145213418302722
【目的】
貧困は子ども虐待のリスクと考えられているが、親の心理的ストレスや個人レベルのソーシャル・キャピタル(SC)が貧困と子ども虐待との関連を媒介しているかは検討されていない。そこで本研究では、足立区の小学1年生を対象とした悉皆調査を用いて、親の心理的ストレスやSCの媒介効果を明らかにすることを目的とした。
【方法】
平成27年7月および11月に、足立区立小学校に在籍する小学1年生の保護者5,355名(有効回答率80.1%)を対象に実施された質問紙調査「子どもの健康・生活実態調査」のデータを用いて、ロジスティック回帰分析およびポワソン回帰分析を行った。本研究では、①世帯年収300万円未満、②生活必需品の非所有、③支払い困難経験のいずれかひとつでも該当する場合、生活困難にある状態と定義した。
虐待傾向については、身体的虐待、ネグレクト、心理的虐待を含む9種類の虐待の頻度を尋ねた。分析には、生活困難と虐待傾向に欠損のない3,944名のデータを用いた。
【結果】
生活困難と虐待はどの虐待においても関連があることが確認された。さらに媒介分析により、親の心理的ストレスは生活困難と身体的虐待、また生活困難と心理的虐待との関連の60%以上を説明することが明らかになった。一方、SCは生活困難といずれかの虐待の10%しか説明していなかった。
さらに構造方程式モデリングによって、親の心理的ストレスとSCが同時に媒介していることがわかった。
【考察】
本研究より、親の心理的ストレスが軽減するようにサポートすることが貧困が子ども虐待に与える影響を緩和させるのに効果的かもしれないことが示唆された。