研究発表

2018.12.11

論文「唾液中オキシトシンおよびオキシトシン関連遺伝子多型と親による養育態度が三世代にわたる親子関係の世代間連鎖を説明する」がアクセプトされました

唾液中オキシトシンおよびオキシトシン関連遺伝子多型と親による養育態度が三世代にわたる親子関係の世代間連鎖を説明する

Fujiwara T, Weisman O, Ochi M, Shirai K, Matsumoto K, Noguchi E, Feldman R. Psychoneuroendocrinology. 2019;102:172-181.
PubMed

*イスラエル・Tel Aviv大学、Baruch Ivcher School of Psychology、国立成育医療研究センター、筑波大学等との共同研究です。

背景:
人間および動物の研究から、親子関係にオキシトシンが重要な役割を果たすことがわかっている。そして人間の研究から、オキシトシン関連遺伝子の多型および体内のオキシトシン濃度が養育態度のパターンを決め、子どもの情緒社会的能力が決まるとされる。しかし、オキシトシンおよび養育態度の影響について両方を三世代に渡って調べた研究はこれまでにない。

方法:
本研究に参加したのは115組の祖母、母、その乳児(計345人)である。親子関係に関連することがわかっている唾液中のオキシトシン、オキシトシン受容体(rs53575およびrs2254298)とCD38(rs3796863)のSNP多型を全ての参加者で調べた。さらに、祖母から母に対しての、母から乳児に対しての養育態度を質問紙で調べた。

結果:
祖母から過保護な養育を受けていた母親は、オキシトシン受容体(rs53575)がG
アレル(AG /GG)の場合、乳児に対してより拒否的な態度を取っていた。この過保護であった祖母のオキシトシンは低かった。乳児のオキシトシン受容体(rs2254298)がAアレル(AA /AG)で母親が拒絶を示した場合、乳児のオキシトシンは高かった。祖母のオキシトシン受容体(rs2254298)がGGであると、曽祖母から過保護な養育を受けていた場合、そうでない場合と比べて、母に対して望ましくない養育態度を行なっていた。

結論:
この研究は、オキシトシン関連遺伝子と体内のオキシトシン濃度が被養育体験との交互作用を通して次世代の親子関係を三世代に渡り形作ることを示した初めての研究である。この結果は世代を超えた愛着の適応(あるいは不適応)パターンの連鎖に関する生物学的および行動的決定要因を示唆する、重要なものである。