谷准教授の論文「読書は貧困にある子どものレジリエンスを育てる: 日本の縦断研究の結果」が Journal of Epidemiology (IF: 3.0)にアクセプトされました。
(要約)
レジリエンスは、貧困による健康リスクを軽減する上で重要な力です。今回、子どものたくさん本を読んでいると、貧困家庭の子ども達のレジリエンスが高いことを明らかにしました。
(書誌情報)
Tani Y*, Isumi A, Yamaoka Y, Fujiwara T, Kondo K. Reading Books Helps Children in Poverty Become More Resilient: Results from a Population-based Longitudinal Study in Japan. J Epidemiol. in press
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40545343
【背景】
レジリエンスは、貧困による健康リスクを軽減する上で重要な力です。本研究は、小学4年生時の読書が小学6年生時のレジリエンスを高めるかどうか、さらに、貧困状態にある場合に読書による効果が異なるかどうかを検証しました。
【方法】
2018年から2020年にかけて実施された「子どもの健康・生活実態調査(A-CHILD)」における縦断データを用いました。分析には、小学4年生とその保護者を2年後まで追跡したデータ(n = 3,136、9~10歳、男子49.6%、追跡率 = 87%)を使用しました。貧困状況と小学4年生時の子どもの読書状況をベースライン時に評価しました。小学4年生時と6年生時の子どものレジリエンスは、保護者が評価しました。
【結果】
小学4年生時には、20%の子どもが全く読書をしておらず、15%の子どもが週に4冊以上の読書をしていました。小学4年生時により多くの本を読んだ子どもは、4年生のレジリエンスを調整した後でも、6年生時のレジリエンスが高くなっていました。4年生時の貧困状況は、4年生時と6年生時の両方でレジリエンスの低さと関連していましたが、貧困状況で層別化すると、貧困層の子どもにおいてのみ、読書冊数とレジリエンスの上昇との有意な関連が見られました(読書をしていなかった子どもに比べて、週に4冊以上読んでいた子どもでは6年生時のレジリエンスが5.13点高かった(95%信頼区間:1.20~9.06))。
【結論】
日本の小学生にとって、読書はレジリエンスを高め、特に貧困層の子どもにおいてその効果が顕著でした。小学生における読書に関する教育政策は、子どもの貧困対策において重要である可能性があります。

