研究発表, お知らせ

2025.03.19

論文「妊娠中の世帯年収と児の自閉スペクトラム症の関連、およびアロスタティック負荷の媒介効果」がアクセプトされました!

大学院生の寺田周平さんの論文「妊娠中の世帯年収と児の自閉スペクトラム症の関連、およびアロスタティック負荷の媒介効果」がAutism Research (IF 5.3)にアクセプトされました。

社会経済的に豊かでない母親は、慢性的なストレスにより子どもの自閉スペクトラム症のリスク増加と関連する可能性があります。今回、エコチル調査の妊娠期~4歳までのデータを用いて解析を行い、妊娠中の世帯年収低群(400万円未満)および中群(400~600万円)が子どもの自閉スペクトラム症リスクの上昇と関連することを明らかにしました。妊娠中の慢性的な生理的ストレス負荷を示すアロスタティック負荷はこの関連を媒介しておらず、メカニズムの解明には更なる研究が必要です。

(書誌情報)
Terada S, Nakayama SF, Fujiwara T. Household income, maternal allostatic load during pregnancy, and offspring with autism spectrum disorders. Autism Research. 2025 Mar 24. doi: 10.1002/aur.70022. Online ahead of print.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40125880

【タイトル】

妊娠中の世帯年収と児の自閉スペクトラム症の関連、およびアロスタティック負荷の媒介効果

【目的】

本研究は、妊娠中の世帯年収と子どもの自閉スペクトラム症(ASD)との関連を明らかにするとともに、妊娠中の慢性的な生理的ストレス負荷を示すアロスタティック負荷が、この関連にどのように関わっているかを検証することを目的とした。

【方法】

本研究はエコチル調査(子どもの健康と環境に関する全国調査)のデータを利用した。59,998組の母子を対象とし、世帯年収を3群(400万円未満、400–600万円、600万円超)に分類した。ASDの診断は4歳時点の保護者回答に基づいた。母親の自閉症特性における広域表現型(BAP)を含む交絡因子を調整し、ベイジアン・ロジスティック回帰モデルを用いて分析を行った。また、妊娠中のアロスタティック負荷が媒介するか媒介分析で検討した。

【結果】

世帯年収低群では、高群と比較して子どものASDリスクが58%(95%信用区間: 28–98%)、中群では37%(95%信用区間: 12–70%)高かった。一方、アロスタティック負荷とASDの関連は認められず、媒介効果もなかった。これらの結果は、母親のBAPやその他の交絡因子を調整した後も一貫していた。

【結論】

本研究は、妊娠中の世帯年収低群および中群が子どものASDリスク上昇と関連することを明らかにした。これらの結果は、低所得層におけるASDリスクの要因を理解し、社会的支援等の公衆衛生的介入を検討する上で重要な知見を提供する。