特任助教の小山さんの論文「オキシトシンおよびドーパミン関連遺伝子の相互作用と信頼の関連」がPLOS ONE(IF2.9)にアクセプトされました。
本論文では、信頼に関連する遺伝子としてこれまでの研究で示されてきたオキシトシン関連遺伝子およびドーパミン関連遺伝子に着目し、それら遺伝子間の相互作用と信頼の関連を明らかにすることを目的としました。その結果、男性においてのみ、あるオキシトシン受容体遺伝子とドーパミン関連遺伝子の間に、信頼に対する相互作用が見られた。
(書誌情報)Koyama Y, Nawa N, Ochi M, Surkan PJ, Fujiwara T. Epistatic interactions between oxytocin- and dopamine-related genes and trust. PLoS ONE. 2024 Sep 19;19(9):e0308728. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0308728
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39298414/
【目的】
これまでの研究で、オキシトシン関連遺伝子とドーパミン関連遺伝子がそれぞれ信頼形成に影響することが示唆されているが、オキシトシン関連遺伝子とドーパミン関連遺伝子の遺伝子間の相互作用効果に焦点を当てた研究はほとんどない。オキシトシン関連遺伝子およびドーパミン関連遺伝子の相互作用と、信頼との関連を明らかにすることを目的とした。
【方法】
成人348名(男性114名)のサンプルを用いて、オキシトシン関連遺伝子およびドーパミン関連遺伝子の一塩基多型の相互作用と、一般的信頼、近隣信頼、施設信頼との関連を、性差を考慮しながら解析した。
【結果】
オキシトシン受容体遺伝子(OXTR)rs1042778とカテコール-O-メチルトランスフェラーゼ遺伝子(COMT)rs4680遺伝子型(p=0.02)、OXTR rs2254298とドーパミンD2受容体遺伝子(DRD2)rs1800497遺伝子型(p=0.01)において、相互作用が認められた。さらに性別を層別化した解析を行ったところ、男性ではOXTR rs1042778とCOMT rs4680遺伝子型の交互作用が近隣の信頼と関連していた(p = 0.0007)。また、OXTR遺伝子型rs2254298とDRD2遺伝子型rs1800497の交互作用は、男性の施設信頼と関連していた(p = 0.005)。事後分析の結果、OXTR rs1042778 TG/TTおよびCOMT rs4680 GG遺伝子型を有する男性は、GG+AG/AA(B=13.49、SE=4.68、p=0.02)、TG/TT+AG/AA(B=23.00、SE=5.99、p=0.001)、およびGG+GG(B=18.53、SE=5.25、p=0.003)を有する男性よりも、近隣の信頼が高いと報告した。同様に、OXTR rs2254298 AG/AAとDRD2 rs1800497 CCの遺伝子型を持つ男性は、AG/AA + TT/TCの遺伝子型を持つ男性よりも高い施設信頼を示した(B = 15.67、SE = 5.30、p = 0.02)。女性では相互作用的な関連は認められなかった。
【結論】
本研究のサンプルサイズと候補遺伝子アプローチには、偶然の発見をもたらす潜在的リスクがあることに留意する必要があるが、本研究は、信頼形成におけるオキシトシン関連遺伝子とドーパミン関連遺伝子の性特異的な相互作用効果のさらなる探索に向けた重要な基盤を提供するものであり、信頼形成におけるオキシトシン・ドーパミンシステムの重要性を示すものである。
研究発表, お知らせ
2024.09.24