谷講師と河原助教の論文「教育歴が低い場合、子どもの頃に家に本があることが高齢期の認知機能維持に役立つ:NEIGE Study」がThe Journals of Gerontology: Series B (IF=6.2)にアクセプトされました!
教育歴が低いことが高齢期の認知機能低下と関連することがわかっています。本研究の目的は、子どもの頃の本の利用可能性が、教育歴の低さによる認知機能の低さを緩和するかを調べこと、および脳領域体積が子どもの頃の本の利用可能性と認知機能との関連を媒介するかどうかを検討することです。
NEIGE Studyを用いて、子どもの頃の本の利用可能性が、教育歴の低さによる認知機能の低さを緩和するがわかりました。さらに、教育歴が低い参加者では、左上側頭葉皮質体積が子どもの頃の本の利用可能性と認知機能との関連を媒介していました。
Tani Y, Kawahara T, Sugihara G, Machida M, Amagasa S, Murayama H, Inoue S, Fujiwara T, Shobugawa Y. Childhood book availability helps to preserve cognitive function in older adults with low education: Results from the NEIGE study. J Gerontol B Psychol Sci Soc Sci, IF6.2 (2024) Online ahead of print. doi: 10.1093/geronb/gbae052
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38567641/
【背景】
教育歴が低いことが高齢期の認知機能低下と関連することはよく知られている。子どもの頃に家に本があったかどうか(本の利用可能性)は、低学歴の高齢者の認知機能の維持に役立つ可能性がある。本研究の目的は、子どもの頃の本の利用可能性が、教育歴の低さによる高齢期の認知機能の低さを緩和するかを調べこと、および脳領域体積が子どもの頃の本の利用可能性と認知機能との関連を媒介するかどうかを検討することである。
【方法】
65~84歳の地域在住日本人高齢者を対象としたNeuron to Environmental Impact across Generations (NEIGE)の横断データを用いた(n=474)。認知機能はMini-Mental State Examination(MMSE)を用いて評価した。子どもの頃の本の利用可能性は、15歳時点に家にあった本の数を質問票にて評価した。脳領域体積は磁気共鳴画像法を用いて測定した。解析には多変量回帰分析と構造方程式モデリングを用いた。
【結果】
教育歴の高さと子どもの頃の本の利用可能性は、ともに高齢期の認知機能の高さと独立して関連していた。教育歴の違いごとに分けて解析してみると、教育歴が低い参加者では、子どもの頃の本の利用可能性が認知機能と正の関連を示したが(係数=1.48、95%信頼区間(CI):0.31~2.66)、教育歴が中または高い参加者ではその関連は認められなかった(教育歴中:係数=-0.01、95%CI:-1.44~1.42、教育歴高:係数=-1.21、95%CI:-3.85~1.42)。教育歴が低い参加者では、左上側頭葉皮質体積が子どもの頃の本の利用可能性と認知機能との関連を媒介した。
【結論】
教育歴が低い高齢者において、子どもの頃に本が利用可能だった場合、左上側頭葉皮質体積を介して認知機能の維持に役立つ可能性が示唆された。これらの知見を再現するためには、さらなる研究が必要である。