大学院生の寺田さんの論文「 妊娠中の体重増加量と6-7歳児の行動に関する問題との関連: 日本における集団ベースの研究 」が International Journal of Gynecology & Obstetrics (IF=3.8) にアクセプトされました。
本論文では、藤原研究室が東京都足立区と共同で実施している「子どもの健康・生活実態調査」のデータを用いて、妊娠中の体重増加量と小学1年生での行動に関する問題(総合的困難さ)や向社会的行動との関連を分析しました。
その結果、共変量調整後も、体重増加が+10kg未満では総合的困難さのリスクが増加し、逆に+10kg以上では向社会的行動が異常となるリスクが低下する可能性が示唆されました。
Terada S, Isumi A, Doi S, Tani Y, Fujiwara T. Association between gestational weight gain and behavioral problems of the offspring aged 6–7 years: A population-based study in Japan. International Journal of Gynecology & Obstetrics. (in press)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37087710/
【タイトル】
妊娠中の体重増加量と6-7歳児の行動に関する問題との関連: 日本における集団ベースの研究
【目的】
妊娠中の体重増加量と、小学1年生における行動に関する問題や向社会的行動との関連を明らかにすること。
【方法】
「足立区子どもの健康・生活実態調査(A-CHILD)」のデータを用いて、東京都足立区の全公立学校の小学1年生(2017年・2019年・2021年)を対象に後ろ向きコホート研究を実施した(n=11,048、回答率=80.1%)。妊娠中体重増加量は、自記式質問票を用いて、母子健康手帳の記録に基づき保護者が回答した。行動に関する問題(総合的困難さ)や向社会的行動は、子どもの強さと困難さアンケート (SDQ)を用いて保護者が回答した。妊娠中体重増加量をスプライン関数または五分位として扱ったロジスティック回帰モデルを用いて、交絡因子を調整したうえで、妊娠中体重増加量と総合的困難さおよび向社会的行動の異常との関連を検討した。
【結果】
妊娠中体重増加量と総合的困難さの関連は逆J字型のパターンを示した。中央値(+10kg)を基準として、 妊娠中体重増加量が10kg未満ではリスクが増加したが、10kg以上では有意なリスク増加は認められなかった。第3五分位(+10kg)と比較し、第1五分位(7kg未満)ではオッズ比1.20、95%信頼区間1.01-1.42、第5五分位(14kg以上)ではオッズ比1.03、95%信頼区間0.85-1.24だった。また、 妊娠中体重増加量が+10kg以上では、向社会的行動の異常のリスクは低下し、第5五分位(14kg以上)ではオッズ比0.77、95%信頼区間0.62-0.95だった。
【結論】
妊娠中体重増加量は小学校1年生における総合的困難さや向社会的行動と関連していた。日本産科婦人科学会の示す体重増加の目安の範囲内において、妊娠中の十分な体重増加を促す栄養指導が重要かもしれない。