論文「対処スキルを有することはいじめと自己肯定感の関係に影響しない:高知県子どもの生活実態調査」がFrontiers in Psychology(IF=4.232)にアクセプトされました!
この論文は、プロジェクトセメスターという、東京医科歯科大学医学部4年生の学生が研究室に6ヶ月配属する制度によって当教室に所属した齋門有紀乃さんが書き上げた論文です。
https://doi.org/10.3389/fpsyg.2022.1004482
Saimon Y. Doi S. & Fujiwara T. (2022). No moderating effect of coping skills on the association between bullying experience and self-esteem: Results from K-CHILD study. Frontiers in Psychology, 7675.
【背景】いじめられた経験と低い自己肯定感との関連に対する対処スキルの調整効果を調べた研究はほとんどない。本研究では、日本の小中学生を対象に、いじめられた経験と自己肯定感の関連に対処スキルが調整効果を持つかどうかを検討することを目的とした。
【方法】2016年に高知県で実施された子どもの健康・生活実態調査(Kochi Child Health Impact of Living Difficulty(K-CHILD)study)のデータを使用した。研究対象者は、高知県の小学5年生と中学2年生で合った。子ども5,991人を対象とした質問紙で、いじめられた経験、自己肯定感(日本語版Harter’s Perceived Competence Scale for Children)、6種類からなる対処スキル(小学生のコーピング尺度短縮版)の評価を行った。多変量線形回帰分析により、いじめられた経験と自己肯定感の関連を検討することに加え、6種類の対処スキルが相互作用項としていじめられた経験と自己肯定感の関連に対する調整効果を検討した。
【結果】いじめられた経験と自己肯定感の低さが関連していた。交絡要因を調整した場合でも、6種類の対処スキルはいずれも、いじめられた経験と低い自己肯定感との関連を緩和しなかった(交互作用のPはすべて>0.15)。
【考察】対処スキルは、いじめられた経験と自己肯定感との関連を緩和しなかったことから、いじめられた経験の悪影響を緩和するために対処スキルを高める介入は期待できない可能性が示唆された。