大学院生の寺田さんの論文「妊婦とその両親の妊娠中の関係性の変化と産後うつの関連:多施設共同前向きコホート研究」がFrontiers in Psychiatry(IF=5.435)にアクセプトされました!
妊婦の被虐歴や、妊婦とその両親との関係の悪さは、産後うつの危険因子として知られていますが、妊娠中の親子関係の変化が産後うつと関連するかは知られていませんでした。本研究では、日本の4府県で行われた多施設コホート研究のデータを利用して、出産時に評価した親との関係が妊娠初期から「悪化」または「一貫して悪かった」妊婦で、産後1か月での産後うつのリスクが高くなることが示されました。本研究は厚労科研の研究班(主任研究者 光田信明先生)との共同研究です。
Terada S, Doi S, Tani Y, MaedaY, Isumi A, Sugawara J, Maeda K, Satoh S, Mitsuda N, Fujiwara T. Relationship trajectories of pregnant women with their parents and postpartum depression: A hospital-based prospective cohort study in Japan. Front Psychiatry. In Press.
【背景】妊婦の幼少期の被虐歴やその後の両親との関係(親娘関係)の悪さは、産後うつの危険因子として知られている。親娘関係は妊娠中に変化することがあるが、その軌跡が産後うつに影響を与えるかどうかは分かっていない。そこで本研究では、妊娠中の親娘関係の軌跡が産後うつと関連するかどうかを明らかにすることを目的とした。
【方法】日本で実施された前向き多施設コホート研究において、4,772人の女性を初診から産後1ヶ月検診まで追跡した(追跡率:77.4%)。親娘関係は、①初診時および②出産直後に、親との関係に満足しているかどうかを質問し、「一貫して満足」「妊娠中に改善」「妊娠中に悪化」「一貫して不満足」の4つの軌跡を定義した。産後うつはエジンバラ産後うつ病質問票で評価した。 共変量を調整するためにロジスティック回帰モデルを適用した。
【結果】親娘関係の軌跡は、「改善群」が129例(2.7%)、「悪化群」が122例(2.6%)、「一貫して不満足群」が181例(3.8%)だった。交絡因子調整後、「一貫して満足群」に比べ、産後1か月での産後うつのリスクが「悪化群」では 2.81倍(95%信頼区間1.73-4.55)、「一貫して不満足群」では2.39倍(95%信頼区間1.58-3.62)高かった。
【結論】妊娠中に両親との関係が「悪化」または「一貫して不満足」と感じていた女性は、産後うつのリスクが高いことがわかった。妊婦検診や保健指導の場面で、妊婦とその両親との関係に注意を払い、前向きな変化を促すことが、産後うつの予測・予防に役立つと考えられた。