研究発表, お知らせ

2022.09.29

論文「社会的ネットワーク分析を用いた日本人高齢者における抑うつ症状の類似性の検証」がアクセプトされました!

森田准教授の論文「社会的ネットワーク分析を用いた日本人高齢者における抑うつ症状の類似性の検証」がFrontiers in Public Health(IF=6.461)にアクセプトされました!

人は自分と似た人とつながろうとする傾向があり、また近しい人の感情が伝染することが報告されていますが、高齢者の社会的ネットワークにおける抑うつ症状の類似性はわかっていません。

同じ町に住む日本人地域高齢者のネットワークを分析することによって、抑うつ症状、特に無気力度が似ている者同士で構成されている可能性を明らかにしました。

www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpubh.2022.965026/full

Morita A, Takahashi Y, Takahashi K & Fujiwara T. Depressive symptoms homophily among community-dwelling older adults in Japan: A social networks analysis. Frontiers in Public Health. 2022. Sep. 1-8. doi:10.3389/fpubh.2022.965026.

【背景】

老年期うつ病は、高齢者における深刻な事態を引き起こす精神疾患であり、認知症とならんで発症頻度が高いものの、大多数は未治療であり、再発が多いことが知られている。

本研究は、高齢者の社会的ネットワークにおける抑うつ症状の類似性を検証し、効果的な介入方法を考察することを目的とした。

【方法】

2017年、宮城県涌谷町の国保または高齢者医療制度に加入する地域高齢者を対象に、地域で困りごとや不安を相談する相手・抑うつ症状(GDS-15に基づいて測定)・性別・年齢などの基本属性・世帯構成・生活機能に関する質問票を配布した。分析対象者660名における217,470個の潜在的な結びつきについて、Exponential Random Graph Modelを適用し、全体的および特異的な抑うつ症状の類似度による親密な関係性の有無のオッズ比を推定した。

【結果】

全体的な抑うつ症状の共起はわずかに有意であり(p<0.10)、2人の地域在住高齢者の抑うつ症状の度合いの差(最大15ポイント)が1ポイント増加すると、親密な関係である確率は5%減少することが示された(オッズ比[OR]、0.95;95%信頼区間[CI]、0.90-1)。うつ症状の特定領域に着目したところ、自殺念慮の度合いの差は親密な関係との関連が認められなかった(OR, 1.00; 95%CI, 0.87-1.14)。しかし、2人の地域在住の高齢者の間のアパシーの度合いの差(最大3ポイント)が1ポイント増加すると、親密な関係である可能性が19%減少することが示された(OR, 0.81; 95%CI, 0.67-0.98)。

【結論】

高齢者の社会的ネットワークは、抑うつ症状が類似する者達で構成されている可能性が示唆された。老年期うつ病予防には、ネットワーク介入が重要と考えられる。