MD-PhDの医学生である小山佑奈さんの論文「母親への支援的ソーシャルネットワークに対するオキシトシンおよびドパミン関連遺伝子と幼少期のペアレンティングの相互作用」がChild Psychiatry & Human Development(IF=2.776)にアクセプトされました!
産後の母親へのソーシャルサポートの形成に関して、遺伝的影響およびペアレンティングの影響はそれぞれ示唆されてきたが、それらの相互作用について、遺伝子環境相互作用(Gene-by-environment interaction)の観点からは明らかにされていません。親子3世代からなるデータを用いて、母親の産後のソーシャルサポートの形成には、遺伝的リスクとペアレンティングの相互作用が存在することが示されました。これは、ジョンズ・ホプキンス大学との共同研究です。
Koyama Y, Nawa N, Ochi M, Surkan PJ, Fujiwara T. Joint Roles of Oxytocin- and Dopamine-Related Genes and Childhood Parenting Experience in Maternal Supportive Social Network. Child Psychiatry & Human Development. 2022 Sep 13. https://doi.org/10.1007/s10578-022-01434-4.
【背景】
産後うつの重要な予防因子である母親へのソーシャルサポートの形成に対して、母親自身の遺伝子と幼少期に受けたペアレンティングがそれぞれ単独で関連があることは示唆されてきたが、それらの相互作用については明らかになっていない。
【方法】
祖母、母親、乳児からなる115組の3世代のデータを用いて、社会性に関連する遺伝子(OXTR rs53576, rs2254298, rs1042778; COMT rs4680)に関する遺伝リスクと幼少期に受けたペアレンティングとの相互作用を分析した。
【結果】
遺伝的リスクの高い母親は、幼少期に不適切なペアレンティングを受けていた場合、ソーシャルサポートが少ない(B = – 0.02, 95%CI = – 0.04 to – 0.01)ことが示された一方で、遺伝的リスクの低い母親では、ペアレンティングとソーシャルサポートの間に関連は認められなかった。遺伝的リスクの高い母親では、ソーシャルサポートが少ないことは、産後うつと関連していた(B = – 0.88, 95%CI = – 1.45 to -0.30)。
【考察】
社会性に関連する遺伝子のリスクアレルを多く持つ母親は、幼少期のペアレンティングに対してより強い感受性を示すことを示唆した。産後の母親の援助希求の理解において、遺伝的リスクと幼少期に受けたペアレンティングの両方を考慮する重要性を示した。