研究発表, お知らせ

2022.07.30

論文「日本で継続的に虐待を受けた子どもたちのレジリエンスを高める学校や地域レベルでの保護要因」がアクセプトされました

伊角助教の論文「日本で継続的に虐待を受けた子どもたちのレジリエンスを高める学校や地域レベルでの保護要因」がSocial Psychiatry and Psychiatric Epidemiology(IF=4.328)にアクセプトされました!

本論文では、著者らが東京都足立区と共同で2015年度より実施している「子どもの健康・生活実態調査」の縦断データを用いて、小学校4年生時点での学校のソーシャル・キャピタルと親以外のロールモデルの存在が、小学校1年生でも4年生でも虐待を受けていた子どもたちのレジリエンスを高めることを明らかにしました。虐待を受けている子どもたちに対して学校や地域が介入できる可能性があることを大規模な縦断データを用いて示した重要な論文です。

Isumi A, Doi S, Ochi M, Kato T, Fujiwara T. School- and community-level protective factors for resilience among chronically maltreated children in Japan. Soc Psychiatry Psychiatr Epidemiol. In press.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35842522/

【背景】継続的に虐待を受けている思春期前の子どもたちのレジリエンス(逆境から回復し対処する能力)が、学校や地域レベルで介入可能な要因によって向上するかということを調べた研究はほとんどない。そこで本研究では、虐待に対するレジリエンスを高める学校や地域レベルでの要因を検証することを目的とした。

【方法】東京都足立区における全公立小学校の1年生全員を対象に2015年から実施されている縦断調査「足立区子どもの健康・生活実態調査」のデータを用いた。小学1年時と4年時に虐待を受けており、レジリエンスの得点が欠損でない789名の児童を対象とした。児童が小学4年時に回答した学校レベルの要因(例:学校のソーシャル・キャピタル、相談できる友人の数)と地域レベルの要因(例:親以外でロールモデルとなる大人がいること、サポートしてくれる大人がいること、第三の居場所があること)が、親回答による小学4年時の子どものレジリエンスとどのように関連しているかを検討するため、単回帰および重回帰分析を行なった。これらについて男女別にも解析した。

【結果】小学1年時のレジリエンスを含む共変量を調整しても、小学4年時の学校のソーシャル・キャピタルと親以外のロールモデルの存在はレジリエンスと正の関連を示した(係数:3.63, 95%信頼区間:2.26,4.99; 係数:2.52, 95%信頼区間:0.57, -4.38)。男女別の解析からは、女子においては、ロールモデルではなく、サポートしてくれる大人の存在がレジリンエンスと関連していることが明らかになった。

【結論】本研究では、学校や地域レベルでの要因が虐待に対するレジリエンスを高めること、それらの要因が男女で異なることが示唆された。