土井特別研究員(学振PD)の論文「日本の思春期児童における低所得世帯と友人からの孤立を含む逆境体験と肥満の関連:A-CHILD study」がFrontiers in Public Health (IF=3.018)にアクセプトされました!
子ども期の逆境体験は、思春期の肥満、そして成人期の肥満に関連する要因であることがわかっています。低所得世帯と友人から孤立を子ども期の逆境体験として含めるかは議論が分かれていますが、本研究ではその2つの経験を含めて、子ども期の逆境体験と思春期の肥満との関連を検討しました。足立区子どもの健康・生活実態調査を用いて検討した結果、子ども期の逆境体験と過体重および肥満とは関係ありませんでした。一方、逆境体験の1つであるひとり親世帯と低所得世帯が独立して肥満と関係することが明らかになりました。
Doi S, Isumi A, Fujiwara T. (2022). Association of adverse childhood experiences including low household income and peer isolation with obesity among Japanese adolescents: Results from A-CHILD Study. Frontiers in Public Health.doi:10.3389/fpubh.2022.754765
日本の思春期児童における低所得世帯と友人からの孤立を含む逆境体験と肥満の関連:A-CHILD study
【背景】
子ども期の逆境体験(ACE)は、成人および思春期児童における肥満の主なリスク因子であることがわかっている。友人からの孤立と低所得世帯はACEの1つと考えられるが、これらの体験をACEとして取り上げた研究はほとんどない。そこで本研究では、友人からの孤立と低世帯所得を含むACEが、思春期児童の肥満と関連するかどうかを検討することを目的とした。
【方法】
2016年、2018年に実施された足立区子どもの健康・生活実態調査(Adachi Child Health Impact of Living Difficulty (A-CHILD) study)の小学4年生、小学6年生、中学2年生合計6946名の横断データを用いた。8タイプあるACEうち、児童は友人からの孤立に関する1項目、保護者はその他の7項目について質問紙にて回答した。児童のBMIは学校健診データから、世界保健機関(WHO)の基準に沿って算出した。多項ロジスティック回帰を用いて、ACEの経験数および各タイプのACEと、BMIとの関連性を検討した。
【結果】
共変量で調整した結果,ACEの数は青年期の過体重や肥満と関連しなかった。ACEの種類別では,ひとり親世帯と低所得世帯が肥満と有意な独立した関連を示した。
【結論】
ACEの数は、日本人思春期児童の過体重や肥満と関連しなかったが、ひとり親世帯と低所得世帯は、肥満と有意な正の関連を示した。今後は、思春期児童におけるこの関連を再現するために縦断的研究が必要である。