土井特別研究員(学振PD)の論文「母親の子ども期の逆境体験と子どものレジリエンスおよび自己肯定感の関連:高知県子どもの生活実態調査」がChild Abuse & Neglect(IF=3.928)にアクセプトされました!
Doi S, Fujiwara T & Isumi A. (2022). Association between maternal adverse childhood experiences and child resilience and self-esteem: Results from the K-CHILD study. Child Abuse & Neglect. 2022 May;127:105590. https://doi.org/10.1016/j.chiabu.2022.105590
【背景】
母親の子ども期の逆境体験(Adverse Childhood Experiences: ACEs)は、その子どもの精神的健康に悪影響を及ぼすことがわかっている。一方で、母親のACEsが、その子どものストレス状況を対処する能力であるレジリエンスおよび自己肯定感と関連するかは明らかになっていない。
【目的】
母親のACEsが、子どものレジリエンスおよび自己肯定感と関係するかを明らかにする。【方法】本研究では、2016年に実施された高知県子どもの生活実態調査のデータの一部を用いて、高知県の小学校1年(2,759組)、小学校5年(2,878組)、中学校2年(3,143組)、高校2年(3,611組)の全児童・生徒およびその保護者12,391組を対象とした。母親のACEs(両親の離婚、虐待やネグレクトなど7項目)、交絡変数となる基本属性、子ども(小学校1年、小学校5年、中学校2年)のレジリエンスについて、母親に回答を求めた。子どもの基本属性、自己肯定感について、小学校5年、中学校2年、高校2年の児童・生徒に回答を求めた。
【結果】
交絡変数を調整した場合、母親のACEsは、子どものレジリエンスの低さ(p trend < 0.001)と自己肯定感の低さ(p trend < 0.001)と関連していた。媒介変数を調整した場合には、有意な関連性は認められなかった。母親のメンタルヘルス、現在の社会経済的状況、育児行動が、母親のACEsと子どものレジリエンスおよび自己肯定感との関連を媒介していた。
【結論】
本研究から、母親のACEsの経験数が多いほど、その子どものレジリエンスは低く、自己肯定感が低いことが明らかとなった。また、母親のメンタルヘルス、現在の社会経済的状況、育児行動が、その関係性を媒介することが示唆された。今後は、母親のACEsが子どものレジリエンスと自己肯定感に与える影響を軽減するような介入研究が必要である。