研究発表, お知らせ

2022.02.18

論文「父親における職場と地域のソーシャル・キャピタルと産後のうつ・不安との関連に関する縦断調査」がアクセプトされました

土井特別研究員(学振PD)の論文「父親における職場と地域のソーシャル・キャピタルと産後のうつ・不安との関連に関する縦断調査」がFrontiers in Psychiatry (IF=4.175)にアクセプトされました!

母親のみならず、父親における産後のうつ・不安も予防すべき大きな問題です。うつ・不安を予防する要因としてソーシャル・キャピタルがわかっていますが、父親における職場のソーシャル・キャピタルと地域のソーシャル・キャピタルが、産後のうつ・不安と関連するかは明らかになっていません。産後の母親と父親を対象とした縦断調査を用いて、地域のソーシャル・キャピタルが高い父親ほど、産後3ヶ月時点での抑うつ症状および不安症状が低いことを明らかにしました。

Doi S, Isumi A, Fujiwara T. (2022). Association of paternal workplace and community social capital with paternal postnatal depression and anxiety: A prospective study. Front Psychiatry. 2022 Feb 17;13:782939.

https://doi.org/10.3389/fpsyt.2022.782939

父親における職場と地域のソーシャル・キャピタルと産後のうつ・不安との関連に関する縦断調査

【背景】

うつ・不安を予防する要因としてソーシャル・キャピタルがわかっているが、父親における職場と地域のソーシャル・キャピタルと産後のメンタルヘルス不調との関連は明らかではない。そこで、父親における職場と地域のソーシャル・キャピタルと産後3ヶ月時点でのうつと不安の関連を明らかにすることを目的とした。

【方法】

東京都の2つの産科医療機関で研究参加募集を行い、417名の父親が本研究に参加した(参加率76.2%)。父親は、職場のソーシャル・キャピタル、地域のソーシャル・キャピタル、抑うつ症状(Edinburgh Postnatal Depression Scale)、不安症状(State-Trait Anxiety Inventory)に関する質問紙に、産後1週および3ヶ月時点で回答した(N=398、追跡率91.2%)。欠損値は多重代入法を用いて処理し、重回帰分析を行った。

【結果】

重回帰分析の結果、共変量を調整した後も、地域のソーシャル・キャピタルの高いほど、産後3ヶ月時点の抑うつ症状(Coefficient = -0.21, 95%信頼区間 = -0.33 to -0.08)と不安症状(Coefficient = -0.38, 95%信頼区間 = -0.66 to -0.11)が低いことが示された。一方、職場のソーシャル・キャピタルは、産後1週時点での抑うつ症状または不安症状を調整した後は、産後3ヶ月時点の抑うつ症状と不安症状との関連は認められなかった。

【結論】

父親における地域のソーシャル・キャピタルの高さは、産後3ヶ月時点までの抑うつ症状と不安症状を予防しうることが明らかとなった。父親における産後のメンタルヘル不調を予防するために、職場のソーシャル・キャピタルよりも地域のソーシャル・キャピタルを促進するような介入が必要である可能性が示唆された。