お知らせ, 研究発表

2021.11.11

論文「子ども期の逆境体験と父親における産後のうつ・不安との関連に関する縦断調査」がアクセプトされました

土井特別研究員(学振PD)の論文「子ども期の逆境体験と父親における産後のうつ・不安との関連に関する縦断調査」がPsychiatry and Clinical Neurosciences (IF=5.188)にLetter to editorとしてアクセプトされました!

母親のみならず、父親における産後のうつ・不安も大きな問題です。父親における産後のうつ・不安に関連する要因はいくつか示されていますが、子ども期の逆境体験と父親における産後のうつ・不安を検討した研究はありませんでした。産後の母親と父親を対象とした縦断調査を用いて、子ども期に逆境体験を経験していた父親ほど、産後1週時点での抑うつ症状および不安症状が高いことを明らかにしました。また、産後3ヶ月時点では、子ども期に逆境体験を経験していた父親ほど、不安症状だけが高いことがわかりました。


Doi S, Isumi A, Fujiwara T. (2021). Association of adverse childhood experiences with postpartum depression and anxiety in fathers: A prospective study. Psychiatry and Clinical Neurosciences. doi: 10.1111/pcn.13312

https://doi.org/10.1111/pcn.13312

子ども期の逆境体験と父親における産後のうつ・不安との関連に関する縦断調査


【背景】
母親の子ども期の逆境体験(Adverse Childhood Experience: ACE)が産後のメンタルヘルス不調と関係していることがわかっているが、父親におけるACEと産後のメンタルヘルス不調との関連は明らかではない。そこで、父親におけるACEと産後1週および3ヶ月時点でのうつと不安の関連を明らかにすることを目的とした。

【方法】
東京都の2つの産科医療機関で研究参加募集を行い、417名の父親が本研究に参加した(参加率76.1%)。父親は、ACE、抑うつ症状(Edinburgh Postnatal Depression Scale)、不安症状(State-Trait Anxiety Inventory)に関する質問紙に、産後1週および3ヶ月時点で回答した(追跡率93.3%)。欠損値は多重代入法を用いて処理し、重回帰分析を行った。

【結果】
重回帰分析の結果、ACEを2つ以上経験していた父親は、ACEを経験していない父親と比べて、産後1週時点の抑うつ症状が高く(Coefficient = 1.77, 95%信頼区間 = 0.27 to 3.27)、産後1週時点および3ヶ月時点での不安症状が高かった(産後1週:Coefficient = 7.80, 95%信頼区間 = 3.73 to 11.85;産後3ヶ月:Coefficient = 4.41, 95%信頼区間 = 0.08 to 8.73)。一方、父親のACEと産後3ヶ月時点での抑うつ症状との関連は認められなかった(Coefficient = 1.60, 95%信頼区間 = -0.22 to 3.43)。

【結論】
父親におけるACEは、産後1週時点の抑うつ症状、産後1週および3ヶ月時点の不安症状と関連する要因であることが示唆された。