お知らせ, 研究発表

2021.10.21

論文「高齢者における社会的つながりは子ども期の虐待経験と感謝の関連を修飾するか?:NEIGE Study」がアクセプトされました

土井特別研究員(学振PD)の論文「高齢者における社会的つながりは子ども期の虐待経験と感謝の関連を修飾するか?:NEIGE Study」がInternational Journal of Environmental Research and Public Health (IF=3.390)にアクセプトされました!

子ども期の虐待経験は、感謝する傾向を低くする可能性が指摘されています。本研究では、高齢者において社会的つながりが子ども期の虐待経験と感謝の関連における関連を修飾するか、について検討しました。
NEIGE Studyを用いて、子ども期に親から愛されていなかったという経験(情緒的ネグレクト)が高齢期における感謝の度合い(人生や人に感謝する傾向)の低さと関連していることが明らかになりました。さらに、社会的つながりが少ない人において、この関連が強く見られ、社会的つながりが多い人は子ども期の情緒的ネグレクトは感謝の度合いに影響しないことがわかりました。

Doi, S.; Koyama, Y.; Tani, Y.; Murayama, H.; Inoue, S.; Fujiwara, T.; Shobugawa, Y. (2021). Do social ties moderate the association between childhood maltreatment and gratitude in older adults?: Results from NEIGE Study. Int J Environ Res Public Health, 18(21), 11082. doi: 10.3390/ijerph182111082

https://www.mdpi.com/1660-4601/18/21/11082

高齢者における社会的つながりは子ども期の虐待経験と感謝の関連を修飾するか?:NEIGE Study

【背景】
子ども期の虐待経験があると、感謝する傾向が低いことが示されているが、高齢者においても同様の結果が得られるのか、その関連における保護要因はわかっていない。本研究では、1)高齢者における子ども期の虐待経験と感謝との関連について検討する、2)社会的つながりが子ども期の虐待経験と感謝の関連を修飾するかを検討することを目的とした。


【方法】
2017年に実施されたNeuron to Environmental Impact across Generations (NEIGE)の横断データを用いて、新潟県十日町市の機能的障害がない65歳から84歳までの地域高齢者524名を対象とした。質問紙を用いて、18歳までの3種類の虐待経験(身体的虐待、情緒的ネグレクト、心理的虐待)、感謝の度合い(人生で感謝することがたくさんある、いろいろな人に感謝する)、社会的つながり(ご近所付き合い、友人に会う頻度)について回答を求めた。


【結果】
情緒的ネグレクト(親から愛されていると感じなかった経験)は感謝の度合いの低さと関連していることが示された。さらに情緒的ネグレクトと感謝における負の関連は、社会的つながりが低い高齢者においてのみ見られた。


【結論】
社会的つながりを高めることで、情緒的ネグレクトが感謝の度合いに与える悪影響を軽減できる可能性が示唆された。