お知らせ, 研究発表

2021.10.03

論文「思春期児童における逆境体験とテレビゲーム時間の関連:A-CHILD Study」がアクセプトされました

土井特別研究員(学振PD)の論文「思春期児童における逆境体験とテレビゲーム時間の関連:A-CHILD Study」がInternational Journal of Environmental Research and Public Health (IF=3.390)にアクセプトされました!


子ども期の逆境体験は、依存性の強い問題行動を取りうることがわかっています。一方、子どものテレビゲーム時間の長さに関連する要因はいくつか示されいますが、子ども期の逆境体験とテレビゲーム時間の長さを検討した研究はありませんでした。足立区子どもの健康・生活実態調査を用いて、逆境体験を経験する数が多い思春期児童ほど、テレビゲーム時間が長いことを明らかにしました。特に、ひとり親家庭であること、保護者に精神疾患の既往歴があること、友人から孤立していることが独立して、テレビゲーム時間の長さと関係していることがわかりました。


Doi, S.; Isumi, A.; Fujiwara, T. (2021). Association between adverse childhood experiences and time spent playing video games in adolescents: Results from A-CHILD Study. Int J Environ Res Public Health, 18(19), 10377. doi: 10.3390/ijerph181910377

https://www.mdpi.com/1660-4601/18/19/10377

思春期児童における逆境体験とテレビゲーム時間の関連:A-CHILD Study


【背景】
過度なテレビゲーム時間は、思春期児童の健康に悪影響があることがわかっている。親子関係の問題や友人関係の問題は、ゲーム時間の長さを予測するとされているが、子ども期の逆境体験(ACE)がテレビゲーム時間と関連するかは明らかになっていない。本研究では日本の思春期児童を対象にACEとテレビゲーム時間との関連を明らかにすることを目的とした。


【方法】
2016年、2018年に実施された足立区子どもの健康・生活実態調査(Adachi Child Health Impact of Living Difficulty (A-CHILD) study)の小学4年生、小学6年生、中学2年生合計6799名の横断データを用いた。思春期児童は、平日1日におけるテレビゲーム時間(1時間未満、1時間以上3時間未満、3時間以上)、ACE(8タイプ)について質問紙で回答した。


【結果】
順序ロジスティック回帰分析の結果、共変量を調整後もACE得点の高い(ACEの数が多い)ほど、テレビゲーム時間が長いことが示された(1 ACE: OR = 1.28, 95%信頼区間 = 1.10–1.48; 2 ACEs: OR = 1.25, 95%信頼区間 = 1.06–1.48; 3 + ACEs: OR = 1.44, 95%信頼区間 = 1.14–1.82, p for trend < 0.001)。ACEの8つのタイプそれぞれについて検討した結果、ひとり親家庭であること、保護者に精神疾患の既往歴があること、友人から孤立していることが、独立してテレビゲーム時間の長さと関係していた。


【結論】
子ども期の逆境体験の問題に取り組む健康政策が、思春期児童のテレビゲーム時間の短縮に重要である可能性がある。