森田講師の論文「子ども期における親の関わりと高齢期の認知機能:日本人地域在住高齢者を対象にした横断研究」が、Geriatrics & Gerontology International (IF = 2.730)にアクセプトされました。
この論文は、親の関わりが子どもの認知機能に与える影響に着目し、子ども期における親の関わりの程度や関わり方と高齢期における認知機能との関連を解析したものです。子ども期に親が積極的に関わった高齢者は高い認知機能を示すこと、中でも子ども期の読み聞かせは高い論理的記憶力と関連することを明らかにしました。
【背景】劣悪な養育環境下で育った子どもは、そうでない子どもと比べて、高齢期の認知機能が低いことが知られています。しかし、ポジティブな育児行動が、劣悪な養育環境とは独立して高齢期の認知機能に与える影響についてのエビデンスは少なく、本研究は、子ども期の親の関わりと高齢期における認知機能との関連を検討しました。
【方法】認知障害の兆候がない宮城県涌谷市在住の高齢者266名(65~88歳)を対象に調査を実施しました。子ども期の親の関わりは質問票で評価し、高齢期の認知機能は日本語版のQuick Mild Cognitive Impairment(QMCI)スクリーンテスト(得点範囲:0-100)で測定した。重回帰分析を行い、交絡因子と媒介因子の影響を考慮した解析を行いました。
【結果】年齢・性別・子ども期の虐待経験・貧困・栄養状態・小学6年時の学業成績を調整した結果、子ども期に親の関わりが高い高齢者は、そうでない高齢者に比べて総合得点が6.00(95%CI:2.39、9.61)ポイント高くありました。子ども期における親の関わりは、総合得点(p<0.001)、時計描画テスト得点(p<0.05)、言語的流暢性得点(p<0.001)と有意な用量反応的な正の関連を示しました。6種類のポジティブな親の関わり方のうち、本の読み聞かせは総合得点(p < 0.01)および論理的記憶スコア(p < 0.01)と有意な独立した正の相関を示しました。上記の関連は、成人期以降の社会的環境や生活習慣の影響を調整後も有意でありました。
【考察】子ども期の親の積極的な関わりが高齢期の高い認知機能と関連することが示されました。今回検討した親の関わりの中では、本の読み聞かせが、高い論理的記憶能力と関連することが示されました。