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2025.11.11

論文「女性と男性における軽度から中等度の飲酒量変化後の血圧変化:日本人年次健診縦断解析」がアクセプト/プレスリリース/Webニュース等に掲載されました!

大学院生の鈴木隆宏さんの論文「女性と男性における軽度から中等度飲酒量変化後の血圧:日本人年次健診縦断解析」がJournal of the American College of Cardiology(IF 22.3)にアクセプトされました。

本研究は、軽度から中等度の飲酒(女性で1日1杯以下、男性で1日2杯以下)の中止・開始と血圧変化との関連を、日本の予防医療センターで2012年10月から2024年3月に実施された年次健診データ(58,943名、359,717回の受診)を用いて解析しました。その結果、少量飲酒でも血圧上昇と関連し、飲酒中止により用量依存的に血圧が低下することが明らかになりました。この効果は男女ともに認められ、アルコールの種類に関わらず一貫していました。

本学のプレスリリースからも詳細な情報をご覧いただけます。

少量の飲酒でも禁酒で血圧が低下することを実証

(書誌情報)

Suzuki T*, Fukui S, Yoneoka D, Aoki J, Fujiwara T. Blood Pressure After Changes in Light-to-Moderate Alcohol Consumption in Women and Men: Longitudinal Japanese Annual Check-up Analysis. JACC. 2025 Oct 22; doi:10.1016/j.jacc.2025.09.018

【背景】
飲酒は血圧上昇の既知の要因であるが、軽度から中等度の飲酒(女性で1日1杯以下、男性で1日2杯以下)の変化、特に飲酒中止と血圧との関連は不明である。本研究では、飲酒の中止・開始と血圧変化の関連を、性別、軽度から中等度の摂取量、アルコール飲料の種類に焦点を当てて評価することを目的とした。

【方法】
2012年10月から2024年3月に日本の予防医学センターで年次健診を受けた成人のデータを解析した。連続する受診間の収縮期および拡張期血圧(SBP/DBP)の変化を評価した。アルコール摂取量は標準ドリンク(1ドリンク=エタノール10g)として自己申告された。飲酒中止・開始と血圧変化の関連は、人口統計学的要因、臨床歴、生活習慣行動で調整した一般化推定方程式を用いて評価した。

【結果】
58,943名の参加者から359,717回の受診データを解析した。飲酒中止コホート(53,156回受診、25,621名、女性52.1%、年齢中央値50.5歳)では、飲酒中止は用量依存的な血圧低下と関連していた。女性では、0.5-1.0杯/日の中止でSBPは有意な変化なし(-0.44 mmHg、95%CI: -0.93~0.06)、DBPは-0.41(-0.77~-0.05)mmHg低下、1.0-2.0杯/日の中止でSBPは-0.78(-1.53~-0.04)mmHg、DBPは-1.14(-1.68~-0.61)mmHg低下した。男性では、0.5-1.0杯/日の中止でSBP(-0.27 mmHg、-0.81~0.27)およびDBP(-0.39 mmHg、-0.77~0.01)は有意な変化なし、1.0-2.0杯/日の中止でSBPは-1.03(-1.70~-0.35)mmHg、DBPは-1.62(-2.11~-1.12)mmHg低下した。飲酒開始コホート(128,552回受診、31,532名、女性70.4%、年齢中央値50.0歳)では、飲酒開始後に用量依存的な血圧上昇が認められ、その効果は男女で一貫していた。飲料別の解析では、両コホートでアルコールの種類に関わらず同様の血圧への効果が示された。

【結論】
少量飲酒でも血圧上昇と関連し、飲酒中止は男女ともに血圧低下と関連していた。これらの知見は、軽度から中等度の飲酒者においても、血圧管理のための広く適用可能な戦略として飲酒中止が有効であることを示唆している。