「思春期児童における貧困から自己肯定感の低さへの経路について」がアクセプトされました。
【背景】
子どもの貧困は、低い自己肯定感など、さまざまな悪影響を及ぼすとされている。自己肯定感の低さは、精神疾患、自殺、学力の低さのリスク要因であるが、子どもの貧困がどのようにして自己肯定感の低さにつながるかという経路は明らかになっていない。本研究では、家族レベル、学校レベル、地域レベルの要因を含むエコロジカルモデルに基づいて、子どもの貧困から自己肯定感の低さへの経路について検討することを目的とした。
【方法】
2016年度の「足立区子どもの健康・生活実態調査(Adachi Child Health Impact of Living Difficulty: A-CHILD)」に参加した足立区の小学4年生(534組)、小学6年生(530組)、中学2年生(588組)の児童・生徒及びその保護者(1652組)を対象とした。保護者の質問票では、子どもの貧困、保護者のメンタルヘルス、保護者の子どものとの関わり、保護者のソーシャルキャピタルについて尋ねた。子どもの質問票では、自己肯定感と学校のソーシャルキャピタルについて尋ねた。家族レベル(保護者のメンタルヘルス、子供との関わり)、学校レベル(学校のソーシャルキャピタル)、地域レベル(保護者のソーシャルキャピタル)の要因を用いて、構造方程式モデリング(SEM)によって子どもの貧困から自己肯定感の低さへの経路について検討した。
【結果】
子どもの貧困は自己肯定感の低さと関係していた。子どもの貧困は、保護者の子どもとの関わりの欠如に直接的につながっていることに加え、保護者のメンタルヘルスの問題と保護者のソーシャルキャピタルの欠如を媒介して子供との関わりの欠如につながっていた。そして、保護者の子どもとの関わりの欠如は直接的に自己肯定感の低さにつながり、かつ学校のソーシャルキャピタルを介して間接的に自己肯定感の低さに影響していることが明らかとなった。
【考察】
子どもの貧困が自己肯定感の低さに与える影響を弱めるために、家族レベル、学校レベル、地域レベルの要因に焦点を当てた包括的な政策が有効である可能性が示唆された。