Doi S, Fujiwara T, Isumi A. Association between maternal adverse childhood experiences and mental health problems in offspring: An intergenerational study. Development and Psychopathology. in press.
【目的】
幼少期の逆境体験は成人期のメンタルヘルスの問題につながることがわかっている。さらに、その幼少期の逆境体験による悪影響は世代を超えて、次の世代の子どもにおける発達および身体的健康とも関連していることが明らかとなっている。一方で、母親の幼少期の逆境体験と、その子どものメンタルヘルスとの関係を検証した研究はない。そこで本研究では、母親の幼少期の逆境体験と、思春期児童におけるメンタルヘルスの問題との関連を明らかにすることを目的とした。
【方法】
2016年に実施された「高知県子どもの生活実態調査」に参加した高知県の小学5年生(3,144組)、中学2年生(3,497組)、高校2年生(4,169組)の児童・生徒10,810名を対象とした。児童・生徒の母親に、幼少期の逆境体験、子どもの頃の社会経済的状況、現在のメンタルヘルス、現在の社会経済的状況、ポジティブな養育行動、不適切な養育行動、Strength and Difficulty Questionnaireを用いて子どもの問題行動について回答を求めた。児童・生徒には、Depression Self-Rating Scaleを用いて抑うつ症状について回答を求めた。
【結果】
交絡変数を調整した多変量回帰分析の結果、幼少期の逆境体験の数が多い母親を持つ子どもほど、問題行動が多く見られ(p for trend < 0.001)、抑うつ症状がある(p for trend < 0.001)ことが明らかとなった。また、母親の現在のメンタルヘルスの問題は、母親の幼少期の逆境体験と子どものメンタルヘルスの問題との関係を媒介していた。 【結論】 母親の幼少期の逆境体験は、世代を超えて、思春期児童の問題行動および抑うつ症状に悪影響を与えることが示唆された。今後は、母親の幼少期の逆境体験とその子どものメンタルヘルスの関連を媒介するその他の要因について詳しく検討する必要がある。