「赤ちゃんとの分離・再統合時における父親・母親のオキシトシン濃度と前頭皮質活性との関連を機能的近赤外線スペクトロスコピー(fNIRS)を用いて明らかにした研究」
Ito J, Fujiwara T*, Monden Y, Yamagata T and Ohira H. Association of
Oxytocin and Parental Prefrontal Activation during Reunion with Infant: A
Functional Near-Infrared Spectroscopy Study. Front. Pediatr. 2017;5:271.
*Corresponding author.
要約
親の養育行動にオキシトシンが関わっていることが過去の研究で明らかにされているが、養育行動中の親の脳活性とオキシトシンとの関連を直接調べた研究はこれまでなかった。そこで機能的近赤外線スペクトロスコピー(fNIRS)を用い、自分の赤ちゃんを分離から実際に抱っこしている時の前頭皮質活性を母親15名、父親21名について測定し、唾液中オキシトシン濃度と比較した。NIRS測定は、部屋に一人で椅子に座っている時(赤ちゃんは別室)の前頭皮質活性(ベースライン/120秒間)と、座ったまま我が子を抱っこしている時の前頭皮質活性(ターゲット/45秒間)を3回繰り返して測定した。
その結果、両親の前頭皮質22チャンネル中9チャンネルで、分離から子どもを抱っこした際に酸素化ヘモグロビンの有意な上昇を認めた。また、父親において唾液中オキシトシン濃度との有意な相関を認めたが、母親では認めなかった。さらに、唾液中オキシトシン濃度の高い父親は低い父親に比較して左半球の前頭皮質活性が有意に高く、一方で唾液中オキシトシン濃度の高い母親は低い母親に比較して右半球の前頭皮質活性が有意に高かった。
本研究から、父親のオキシトシンを高めることで養育行動に関連する前頭部の活性を高める可能性があると考えられる。