大学院生・野村健志さんの論文「子ども期の逆境体験と美容外科手術との関連:性的指向による修飾効果」が(Aesthetic Plastic Surgery (IF 2.8))にアクセプトされました。
(論文の要約)
美容外科手術を受ける人々の背景や特徴はこれまで十分に調査されていません。本研究では、日本全国の大規模調査データ(JACSIS)を用いた分析により、子ども期の逆境体験(ACEs)が多いほど美容外科手術を受けやすく、特に非異性愛者男性でその傾向が強いことが示されました。また、ACEsが多い場合、手術結果に不満を抱きやすいことが明らかになり、美容医療における心理社会的背景の理解の重要性が示唆されました。
(書誌情報)
Nomura T, Tani Y, Tabuchi T, Fujiwara T. Associations between adverse childhood experiences and cosmetic surgery: effect modification by sexual orientation. Aesthetic Plastic Surgery. (in press)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41171311
【背景】
子ども期の逆境体験(Adverse Childhood Experiences:ACEs)が美容外科手術の受療に及ぼす影響を検討した研究はほとんどない。また、その関連は性的指向によって異なる可能性がある。本研究の目的は、ACEsと美容外科手術との関連を明らかにし、さらに性的指向による修飾効果を検討することであった。
【方法】
本研究では、2023年に実施された「Japan COVID-19 and Society Internet Survey(JACSIS)」の18~79歳の参加者27,824人を対象とした。参加者は、ACEs、美容外科手術の経験、および社会人口学的特徴について回答した。多変量ロジスティック回帰分析を用いて、ACEsと美容外科手術との関連を検討し、さらに性的指向との交互作用を含めて解析を行った。
【結果】
社会人口学的特徴を調整した後、4つ以上のACEsを有する者は美容外科手術を受ける可能性が2.97倍高かった(95%信頼区間[CI]:2.51–3.51)。この関連は非異性愛者男性においてより強く認められた(オッズ比[OR]:14.60、95%CI:8.49–25.11)。また、4つ以上のACEsを有する参加者は、美容外科手術の結果に不満を抱く可能性も高かった(OR:1.92、95%CI:1.36–2.71)。
【結論】
4つ以上のACEsを有する者は、美容外科手術を受ける可能性が高く、特に非異性愛者男性でその傾向が顕著であった。さらに、4つ以上のACEsを有する参加者は、手術結果に不満を抱きやすい傾向がみられた。これらの知見は、美容外科における患者評価およびケアに際して、ACEsを含む心理社会的背景を考慮することの重要性を示唆している。

