大学院生の寺田周平さんの論文「大気圧の低下とその後の分娩数の変動: ケースクロスオーバー研究」がPaediatric and Perinatal Epidemiology (IF 2.7)にアクセプトされました。
台風など気圧の急激な低下のあと、出産が増えることは産科医療の現場で経験的に知られていました。今回、日本産科婦人科学会の周産期登録データベースを用いて、特に妊娠38〜40週の女性において、気圧低下から0〜4日間に分娩数が一時的に増加していたことを明らかにしました。
(書誌情報)
Terada S, Nishimura H, Miyasaka N, Fujiwara T. Drops in atmospheric pressure and subsequent fluctuations in daily delivery volume: A case-crossover study. Paediatr Perinat Epidemiol. (in press)
【タイトル】
大気圧の低下とその後の分娩数の変動: ケースクロスオーバー研究
【背景】
分娩数の変動は、産科医の負担やバーンアウトにつながりうる。台風やハリケーンなどによる大気圧の急激な低下は、その後数日間の分娩数の増加と関連している可能性があるが、遅延効果を考慮した研究はほとんどなかった。
【目的】
大気圧の低下が、自然陣痛発来による分娩数の変動と関連しているかを明らかにすることを目的とした。
【方法】
ケースクロスオーバー研究を行った。2011年から2020年までの47都道府県の自然陣痛発来による分娩数のデータを、日本周産期登録ネットワークのデータベースから取得しました。Distributed lag non-linear modelを用いた疑似ポアソン回帰モデルで、大気圧の低下(-13.8 hPa、1パーセンタイルに相当)と一日当たりの分娩数の関連を、分娩前最大14日間の期間にわたって検討した。都道府県ごとの推定値をランダム効果メタアナリシスで統合した。また、妊娠週ごとの層別解析を行った。
【結果】
1,074,380件の自然陣痛による分娩を対象に解析した。自然陣痛発来による分娩のラグ累積相対リスクは、分娩前4日間の遅延効果を考慮した時に最も大きかった。特に、妊娠38週から40週において、気圧低下と分娩数の関連が強く見られた。具体的には、-13.8 hPaの気圧低下による0〜4日間のラグ累積相対リスクは、気圧変化がなかった場合と比較して、妊娠38週で1.07(95%信頼区間1.00, 1.14)、妊娠39週で1.08(95%信頼区間1.02, 1.14)、妊娠40週で1.10(95%信頼区間1.03, 1.19)だった。
【結論】
大気圧の低下は、特に妊娠38~40週において、その後数日間における自然陣痛発来による分娩数のわずかな増加と関連していた。