論文「暑熱と子どもの腸重積症の関連」がアクセプトされました!
那波准教授の論文「暑熱と子どもの腸重積症の関連」が国際科学誌Pediatric Research(IF=3.1)にアクセプトされました。
腸重積症は、子どもの腹部救急疾患の最も一般的な原因のひとつで、診断や治療の遅れが深刻な結果を招く可能性があるため、リスク要因の解明が重要です。
これまでの研究は、月ごとまたは週ごとのデータを用いており、また、長期的な傾向や季節性などの潜在的な交絡因子を考慮していないものが多く、日ごとの気温と子どもの腸重積症の関連性を全国規模の大規模データで検討した研究はありませんでした。
本研究では、12年間の約1万症例の全国データを解析し、気温が高いほど子どもの腸重積症による入院リスクが増加することを明らかにしました。今後、気候変動により高温の日が増えることで、腸重積症の患者数が増加する可能性があり、公衆衛生の観点から気候変動対策の重要性が示されました。
(書誌情報)
Nawa N, Nishimura H, Fushimi K, Fujiwara T. Association Between Heat Exposure and Intussusception in Children in Japan from 2011 to 2022. Pediatric Research. 2025; (in press)
https://www.nature.com/articles/s41390-025-03930-4
【タイトル】
暑熱と子どもの腸重積症の関連
【背景・目的】
暑熱への暴露は、食事内容や腸管蠕動の変化を含むさまざまなメカニズムにより、子どもの腸重積症のリスクを高める可能性があります。しかし、日ごとの暑熱への暴露と子どもの腸重積症の入院リスクとの関連を調査した全国的な研究はこれまで行われていませんでした。本研究は、高い気温と子どもの腸重積症との関連を検討することを目的としました。
【方法】
2011年から2022年までの5歳以下の子どもの腸重積症による入院患者数を、DPCデータベースから抽出しました。1日の平均気温は気象庁のデータを活用しました。本研究では、暑熱への曝露に焦点を当てるため、分析では最も気温の高い5か月間(5月~9月)に発生した入院について検討しました。熱への曝露による腸重積症の相対リスクを、時間層別化ケースクロスオーバー法により推定しました。
【結果】
研究期間中の腸重積症による子どもの入院患者は13,083人でした。日平均気温が高いと、腸重積症による入院リスクが高くなることが分かりました。特に、99パーセンタイルの極めて高い日平均気温にさらされると、入院リスクが39%増加することが分かりました(95%信頼区間: 5%〜83%)。
【結論】
この研究では、日平均気温が高いと子どもの腸重積症による入院リスクが増加することがわかりました。今後の研究では、高い日平均気温と子ども腸重積症による入院リスクとの関連のメカニズムを解明する必要があります。