那波准教授の論文「暑熱とアナフィラキシーの関連」が国際科学誌Allergy(IF=12.6)にアクセプトされました。
アナフィラキシーは、急性発症を特徴とする重篤な全身性アレルギー反応です。アナフィラキシーが暖かい季節に多いことは知られていましたが、これまで日ごとの気象データと入院データを連結して検討した研究は不足していました。本研究では、約5万5千件の入院データと気温データを解析し、気温が高いほどアナフィラキシーによる入院リスクが増加することを明らかにしました。本研究の結果は、気候変動が健康に与える悪影響の新たな証拠であり、公衆衛生の観点からも気候変動対策を急ぐ必要性を示しています。
(書誌情報)
Nawa N, Nishimura H, Fushimi K, Fujiwara T. Association Between Heat Exposure and Anaphylaxis in Japan: A Time-Stratified Case-Crossover Study. Allergy. 2025 Feb 1. doi: 10.1111/all.16488. (in press)
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/all.16488
【タイトル】
暑熱とアナフィラキシーの関連
【背景・目的】
暑熱への曝露は、間接的(例えば、食事内容の変化、花粉レベルの上昇、または虫刺されの頻度の上昇など)または直接的(例えば、免疫反応の増強など)にアナフィラキシーのリスクを高める可能性があります。しかし、全国規模の日ごとの入院データと気象データを連結して暑熱への暴露とアナフィラキシーの関連性を検討した研究は不足していました。
【方法】
2011年から2022年までのアナフィラキシーによる入院患者数を、DPCデータベースから抽出しました。日平均気温は気象庁のデータを活用しました。
本研究では暑熱への曝露に焦点を当てているため、最も気温の高い5か月間(5月から9月)に発生した入院患者について分析を行いました。時間層別化ケースクロスオーバーデザインを用いて、暑熱への暴露とアナフィラキシーの関連性を検討しました。
【結果】
研究期間中のアナフィラキシーによる入院患者数は55,298人にのぼりました。1日の平均気温が高くなると、アナフィラキシーによる入院リスクが上昇することが確認されました。特に、99パーセンタイルに該当する極めて高い気温(30.7度)にさらされた場合、入院リスクが49%増加することが明らかになりました(95%信頼区間: 19%〜85%)。さらに、アナフィラキシーのタイプ別に解析を行った結果、高気温への曝露と入院リスクの関連性は、医療処置や治療に関連するタイプのアナフィラキシーでは認められませんでした。一方で、医療処置や治療とは無関係な食物性などのアナフィラキシーのタイプでは、この関連性が特に顕著であることが分かりました。
【結論】
気温が高いほどアナフィラキシーによる入院リスクが増加することが示されました。この関連は、食物性などのアナフィラキシーのタイプに特に顕著でした。本研究の結果は、気候変動が健康に与える悪影響の新たな証拠であり、公衆衛生の観点からも気候変動対策を急ぐ必要性を示しています。