那波准教授の論文「2011年から2022年の日本における暑熱と子どもの免疫性血小板減少性紫斑病の関連:全国データを用いた時間層別化ケースクロスオーバーデザインによる検討」が国際科学誌Haematologica(IF=8.2)にアクセプトされました。
子どもの免疫性血小板減少性紫斑病は、年間10万人あたり2~7人の割合で発症する血液疾患です。ウイルス感染が誘因になる可能性は示されていますが、環境要因についてはまだまだ解明が進んでいません。本研究は、2011年から2022年の全国規模の入院データを解析し、子どもが高温にさらされると、免疫性血小板減少性紫斑病のリスクが増加することを明らかにしました。本研究の結果は、気候変動が人間の健康に及ぼす悪影響をさらに裏付けるものであり、公衆衛生の観点からも気候変動への対応が求められることを示しています。
(書誌情報)
Nawa N, Nishimura H, Fushimi K, Fujiwara T. Heat exposure and pediatric immune thrombocytopenia in Japan from 2011 to 2022: a nationwide space-time- stratified case-crossover study.
Haematologica. 2025 Jan 23. doi: 10.3324/haematol.2024.287176. (in press)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39844760
【タイトル】
2011年から2022年の日本における暑熱と子どもの免疫性血小板減少性紫斑病の関連:全国データを用いた時間層別化ケースクロスオーバーデザインによる検討
【背景・目的】
子どもの免疫性血小板減少性紫斑病は、年間10万人あたり2~7人の割合で発症する血液疾患で、ウイルス感染などが発症の誘因となる可能性が示唆されていますが、環境要因についてはほとんど解明されていません。
【方法】
本研究では、2011年から2022年までの12年間において、1年で最も熱い5か月間(5月から9月)の日本全国の入院データと気象庁の気温のデータを用い、時間層別化ケースクロスオーバーデザインにより、暑熱と子どもの免疫性血小板減少性紫斑病の関連を検討しました。、また、気温曝露から影響が現れるまでの時間差(ラグ効果)を解析に考慮しました。
【結果】
高温曝露が子どもの免疫性血小板減少性紫斑病のリスクを高める可能性が示されました。特に、極端な暑熱(1日の平均気温が上位1%に該当する30.7度)にさらされた場合、入院リスクが67%増加することが分かりました(95%信頼区間: 33%~109%)。
【結論】
本研究により、高温曝露が子どもの免疫性血小板減少性紫斑病のリスクを高める可能性が示されました。本研究の結果は、気候変動が人間の健康に及ぼす悪影響をさらに裏付けるものであり、公衆衛生の観点からも気候変動への対応が求められることを示しています。