MD -PhDの医学生である小山佑奈さんの論文「2011東日本大震災の被災児における、心拍変動と内的問題行動の関連について」がJournal of Psychiatric Research(IF=4.791)にアクセプトされました!
自然災害への曝露が子どもの精神疾患のリスクを上昇することは知られていますが、災害の慢性期に精神的健康上の問題が発症したり悪化したりするメカニズムは明らかになっていません。東日本大震災の被災者の4年にわたる追跡調査により、自律神経系の機能異常が関連している可能性があることを明らかにしました。
Koyama Y, Fujiwara T, Doi S, et al. Heart rate variability in 2014 predicted delayed onset of internalizing problems in 2015 among children affected by the 2011 Great East Japan Earthquake [published online ahead of print, 2022 May 23]. J Psychiatr Res. 2022;151:642-648. doi:10.1016/j.jpsychires.2022.05.039
2011東日本大震災の被災児における、心拍変動と内的問題行動の関連について
【背景】自然災害を経験することは、長期的に、子どもの内的問題のリスクを高めることが知られている。我々は、災害でのストレスへの曝露が、その後のストレス体験に対する反応性を高める(神経回路の感作)ことで、災害の慢性期における内的問題行動を引き起こすのではないかと仮説を立てた。災害でのストレスへの曝露による神経回路感作のバイオマーカーとして心拍変動(HRV)に着目し、HRVと内的問題行動の関連を明らかにすることを目的とした。
【方法】被災地3県(宮城、福島、岩手)と非被災地1県(三重)の4-6歳の子どもとその兄弟姉妹、両親を対象に、4年間にわたり追跡調査を行った(n= 155)。子どもの内的問題行動は、「子どもの行動チェックリスト(CBCL)」を用いて親により評価された。
【結果】T2時点でのHRVはT3時点での子どもの内的問題行動と関連が認められなかった。しかし、T3時点におけるLF-HRVが低いほど、T4時点での内的問題行動の得点が高いことが示された(B= -1.72, 95%CI= -3.12 to -0.31)。
【考察】災害の慢性期における内的問題行動の悪化は、自律神経系の機能障害によって予測される可能性があることが示唆された。