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論文「乳児の泣きに関する教育ビデオによる産後うつ症状の予防効果:クラスターランダム化比較試験」がアクセプトされました

2020.02.19

Doi S, Fujiwara T, Isumi A, Mitsuda N. Preventing postpartum depressive symptoms using an educational video on infant crying: A cluster randomized controlled trial. Depression and Anxiety. in press.

【背景・目的】
母親の産後の抑うつ症状のリスク要因の中でも、乳児の泣きに対する認識と対処行動は変容可能なリスク要因である。乳児の泣きは虐待(乳児の揺さぶりや口塞ぎ)につながることから、乳児の泣きに関する教育ビデオが複数開発され、虐待の予防効果が示されている。一方、乳児の泣きに関する教育ビデオによる産後の抑うつ症状の予防効果は明らかにされていない。そこで本研究では、産科での入院中(産後1週間)に、乳児の泣きに関する教育ビデオを視聴することによって、産後1ヶ月時点で抑うつ症状を呈する母親の割合が減少するか検討することを目的とした。また、乳児の泣きに対する認識と対処行動は母親の年齢によって異なるため、母親の年齢によって予防効果が異なるかも検討した。

【方法】
大阪府の150の産科医療機関のうち47施設が研究参加に同意した。地域別および病院の機能別に層別化し、参加施設を介入群と対照群に無作為に割り付けた。介入群の母親は、産後1週間の入院中に約11分の乳児の泣きに関する教育ビデオを視聴した。44施設(介入群22施設、対照群22施設)が実施し、産後1ヶ月時点の質問紙への回答が得られた介入群1,040名、対照群1,561名を解析対象とした(回答率:介入群=47.2%、対照群=69.3%)。産後の抑うつ症状の評価には、Edinburg Postnatal Depression Scale(EPDS)を使用し、9点以上を「抑うつ症状あり」とした。

【結果】
産後1ヶ月に抑うつ症状を呈していた母親は、対照群で250名(16.0%)、介入群で142名(13.7%)であった。Intention-to-treat analysisの結果、介入群と対照群で産後の抑うつ症状の割合に差はなかった(OR=0.85; 95%CI=0.64-1.12)。一方、25歳未満の母親を対象とした場合、対照群と比べて介入群の抑うつ症状を呈する母親が67%減少していた(OR=0.33; 95%CI=0.15-0.72)。25歳以上の母親を対象とした場合には、予防効果は認められなかった(OR=0.94; 95%CI=0.70-1.26)。

【結論】
産後1週間の入院中における乳児の泣きに関する教育ビデオの視聴によって、産後1ヶ月の抑うつ症状を予防する効果は認められなかった。しかし、若年の母親(25歳未満)に限った場合は、乳児の泣きに関する教育ビデオ視聴によって産後の抑うつ症状が予防されることが明らかとなった。産後1週間の入院という既存の枠組みに加えられること、専門的スタッフが必要ないことなど、低いコストで実施可能な予防的介入の一つとなるだろう。今後は、若年以外の母親に対する予防的介入について検討する必要がある。

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